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告白します。
私は、あなたのことが大好きでした。
あの、はにかんだ笑顔も、優しい瞳も、包みこんでくれる温かさも。
全てが、大好きでした―――。


「ある男に接近しろ」
それが、私に課せられた使命だった。
私にとってミラージュの命令は絶対。
孤児だった私を救ってくれた、ミラージュ。
忠誠を尽くす理由は、それだけで十分だった。



今日もあの男と任務に出る。
どうやら信頼を得ることができたらしい。
男は頻繁に私に僚機の依頼をしてくるようになっていた。
「今日もよろしく頼む」
「はい、よろしくお願いします」
軽くあいさつを交わして、任務を開始する。
依頼内容は施設内の武装勢力の排除だった。

私達はテンポよく敵を掃討していく。
男の機体が飛翔する。
敵の攻撃を避けながら、また一機、一機とMTを撃破していく。
―――成程、ミラージュが危険視するのも分かる。
この男の操縦技術は、他の者のそれとは何かが違う。
そして、更に恐ろしいのは、男の機体の動きが任務に出る度に良くなっていくことだ。

……今なら、まだ消せる。私という、犠牲のみで。

一瞬の、逡巡。
決して忘れてはいけない。
戦場ではそれを「油断」と呼ぶ

物陰から私を狙うグレネードの銃口。
それに気づいたときには、既に引き金は引かれ―――。


私を吹き飛ばす筈の砲弾は、しかし、鋼の塊に防がれていた。
あの男のAC。
庇って、くれたのか。

攻撃してきた最後のMTを撃破。
任務は完了した。


「何故、私を庇ったのですか?」
男に問う。純粋な疑問だった。
「何故って、そんなこと言われても……なんでだろうなぁ?」
はにかみと共に疑問形で返される。
「……」
何故だろう、それが―――、
「……ふふっ」
「む。俺、変なこと言ったか?」
「いいえ、なにも。……ああ、言い忘れていましたね」
とても、温かく感じた。
「ありがとう、レイヴン」



その後も僚機として、彼と任務に出続けた。
より親密な関係になり、彼はいろんなことを話すようになった。
私はそれを逐一ミラージュに報告する。
罪悪感は、ない。
これが私の使命なのだから。

でも、
「私は、ある人に拾われたんです」
ならば何故、
「その人には、感謝してもしきれません」
私は自分の話など―――! 
「なら、君はその人の為にも生き残らないとな」
そう言って微笑む彼。
「一緒に頑張ろう」
「……はい」


全て、忘れてしまいたい。
何も、変わって欲しくない。
このまま、ずっと。
ずっと、このまま―――。

ある日、ミラージュから伝達が下った。
「イレギュラー要素を確定。あの男を排除しろ」
願いは、あっけなく打ち破られた。



彼と共に遺跡に向かう。
そこで、私は彼を殺す。
全てはミラージュの為だ。
迷いは、無かった。

『……なぁ』
彼からの通信。
「はい、何でしょうか」
『実は、今、やってることがあるんだ』
知っている。だから、私はあなたを。
『それが終わって、その、もし、君が良ければだけど』

『……レイヴンをやめて、二人で、一緒に旅でもしないか? 』

「――――え? 」
なに、を。
『二人で、世界を見に行こう。ゆっくり、時間をかけてさ』
どうして、こんな時に。
「……へへっ、世界は広いから、もしかしたら一生かかっちまうかもな」
もう、何も、分からない。
「ダメ、か? 」

聞かれて私は、
「……楽しみに、していますね」
最後に、嘘をついた。

遺跡に到着する。
反対側のゲートが開き、ランカーAC『インターピッド』が姿を現す。
『イレギュラー要素は排除する。ミラージュはそう判断した』
レイヴン:ファンファーレが告げる。
救援信号を敵対信号に切り替える。
「この世界に、あなたは不要なのよ……」

「―――消えなさい、イレギュラー」



遺跡は一瞬で戦場と化した。
私の機体『ルージュ』のオービットと『インターピッド』のロケットが、彼を追い詰めていく。
確かに、彼は強い。
それでも、AC二機。
しかも、2人ともこの戦場を想定した訓練を徹底的にこなしている。
勝敗は、初めから決していたと言ってもよかった。

彼のACが膝をつく。
「……イレギュラー、か。恐ろしいものだ」
ファンファーレが呟く。
『ルージュ』も『インターピッド』も、もうボロボロだった。
彼の最後の抵抗の激しさを物語っている。

終わった。
―――終わらせて、しまった。
乾いた笑いが、口から零れ出る。
なんて、滑稽。
涙が出るほどに。

『リップハンター、トドメはお前が刺せ』

「………………え? 」
それは、あまりに唐突で、
『上からの命令だ。お前が、とどめを刺せ』
あまりにも、無慈悲な一言だった。




彼と過ごした日々を思い出す。
使命のための、偽りの思い出。

EN銃を構える。
彼は何も言わない。
いっそのこと、ボロボロに罵倒してくれたら楽になれるのに。
やっぱり、彼は強い。

『……レイヴンをやめて、一緒にゆっくり旅でもしないか? 』
叶う筈のない夢。
なんて、空虚な妄言。

トリガーに指を掛け、

それでも私は、
「―――ありがとう」
本当に、嬉しかったのだ。

引き金を引いた。

はたして私の放った閃光は、
『インターピッド』を貫いていた。
「……貴様! 」
ロケットを乱発しながら崩れ落ちる『インターピッド』。
一発が私に直撃し、『ルージュ』は機能を停止した。
そして、他のロケットで、真上にあった天井が崩れ落ちてきた。

最後に、彼を見る。
彼の機体も、私を見つめている。

ああ、良かった。
彼に見られたまま死ねる。

彼が何かを叫んだ気がしたが、ガレキの音で聞こえない。
轟音に包まれて、私の意識は遮断された。



その後、あるレイヴンによって管理者が破壊され、地上への道が開かれた。
英雄と称えられた彼は、しかし、唐突に姿を消す。
多くの者が彼の必要性を主張したが、人類の地上への移動に伴う様々な混乱により、彼の存在は次第に忘れられていった。



眼を覚ます。
ここはどこだろうか?
何故、こんな所にいるんだろうか?
―――私は、誰なのだろうか?
何も、分からない。
不安で不安で、しょうがない。

部屋に男の人が入ってきた。
しばらく呆然とした顔をしていて、
「良かった。眼が、覚めたのか」
嬉しそうに、はにかんだ。
何故だろう。
―――懐かしい。

「あなたは、誰ですか? 」
そう聞いて、少し悲しそうな顔をする彼。
「……ごめんなさい、何も覚えていないんです」
「……そう、か。やっぱり、なのか」
2人の間を沈黙が覆う。


「……もし、君が良ければだけど」
「……はい?」
彼が、ポツリポツリと話し出す。
「君が退院したら、一緒にゆっくり旅をしないか」
「――――」
なんでだろう、理由は分からない。
でも、その一言は、
「……はい」
涙が出るほど、嬉しかった。
「―――楽しみに、していますね」

何も思い出せないし、何も分からないけれど、
―――きっとこれから、楽しいことが始まる気がした。




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