★その88

『コアの変形によって安否が気遣われていた槍杉選手ですが
 どうやら無事のようです。情報が入ってきました、無事救出された模様です。』
『ザルトホック選手の攻撃がグローランサーのコアによく命中していましたからね。
 最後の一撃もかなり深くコアに当たっていましたよ。
 勝ったとはいえ、危ない戦い方でした。』

『副将戦を制したのはAC学園。辛勝でしたが、これでどちらの陣営も2勝2敗です。』
『両陣営の大将に全てが委ねられましたね。』
『さあ、アリーナのテンションも最高潮です。
 ラストステージに上がった2機のACを紹介しましょう!』

ワァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!

『AC学園大将、ジナイーダ選手のファシネイタ~!
 腕にはマシンガンとブレード、背中にマイクロミサイル
 肩に連動ミサイルを装備した、紫の中量二脚です!』

ワァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!

『対するは赤い中量二脚!MNA大将、イツァム・ナー選手のプロトエグゾ~ス!
 腕にはガトリングマシンガンとENマシンガン
 背中にデュアルミサイル、肩に連動ミサイルを装備したACです!』

ワァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!

『左腕の武装以外は似た構成の2機ですね。』
『アンプさん、やはりダブルトリガーのプロトエグゾスの方が有利なんでしょうか?』
『プロトエグゾスは実弾EOも持っていますから、瞬間火力が高い。
 差を埋める為にも、ジナイーダ選手は積極的にブレードを狙って行きたいですね。』

『最後の最後、泣いても笑ってもこれで決着!大将戦が始まります!』
『期待しましょう。』
頼んだぞ、ジナ…

ピィ ピィ ピィ ビィーーーーーーーーー!

『試合開始の合図と同時に両機が間合いを詰めるぅ!
 互いにミサイルを発射ぁーーーーーーーーー!猶も突っ込むぅ!!』
エクステンションの連動と合わせた一斉発射。
そして自分の発射したミサイルを追いかけるかのように突撃する2機。

『どちらも当たらない、突っ込みながらも紙一重でミサイルを回避している!
 どうなっているんだぁ!?誰か説明してくれぇ!』
綺麗だ…まるで当たらない事が当然であるかのような動き、全く無駄が無い。

『そのまま近距離でマシンガンの撃ち合いが始まったぁ!流石に両者被弾するぅ!
 しかし多くの弾が散らばっているように見えるぞぉ!?』
『恐らく…彼女たちの動きにFCSの性能が追いついていないのでしょう。』

模擬戦をしていた時も相当強いと思ったけど…
相手が強ければ強いほど、強くなれるのか?FCSが追いつかないなんて
もう次元が違いすぎる。どこまで行くんだ、ジナ…

『隙を突いてファシネイターがブレードを狙うが―――躱されるぅ!』
空振りした隙をナーは見逃さなかった。誘われたのか!?
バレットシャワーがファシネイターに降り注ぐ。

『堪らず距離を離すがぁ、ナー選手が追いかけるぅ!再びミサイル合戦だぁ!』
ジナが後退している所を初めて見た。いつだって前に出て戦ってきたのに…
それ程の相手なんだ、女帝 イツァム・ナー。

2人の実力はほぼ互角だろうか?
だが、両腕のマシンガンとEOによる3点射撃、それとシングルトリガーじゃ
同じ様に撃ち合っていてもプロトエグゾスが有利なのは明白だ。このまま続けると…
いや、そんな事ない。ジナなら、ジナなら何とかしてくれる。

『少しずつ、少しずつながら、両者のダメージは積み重なっています!
 どちらのACからも煙が出始めたました!しかし確実に差が出てきたぞぉ!』
『やはりジナイーダ選手が押されていますね。』

パシュン

『弾切れでしょうか?ファシネイターが背中のミサイルをパージしました。
 プロトエグゾスはまだ残弾があるようだ、さあどうなる!』
2機とも限界が近いが、ファシネイターが特に辛い。
次にミサイルの束でも貰えば落とされてしまいそうだ。

『再びアタックを掛けるジナイーダ選手!』
機体重量が軽くなった分だけスピードは上がっている筈だ。いけるか?

『しかしナー選手は冷静です。弾幕を張りながら後退だぁーーーー!
 連動と合わせたミサイルの一斉発射再びぃ!』
何をやっているんだジナ!?その角度だと当たるぞ?突っ込みすぎだ。

デュアルミサイルは左右から回り込んでくる特殊な軌道を描く。
その避け方は真正面から突っ込む事だ。
だが相手は連動ミサイルでその隙間を埋めている。直撃してしまう、それじゃ駄目だ!
ここまで来て迂闊だぞ、ジナーーーーーーーーーーー!

『ファシネイターにミサイルの束が直撃したぁ!!!』
爆炎に包まれるファシネイター。そんな…まさか…信じられない…
ジナが負けた…終わった…終わってしまった…
現実を受け入れられない俺はモニターから顔を背けた。

『まだだぁ!まだ終わっていないぞーーーー!』
なにっ!?性質の悪い冗談か?いや、違う。
爆炎の中からファシネイターが飛び出してきた。
もう限界だった筈!?ミサイルは確かに直撃したんだぞ!?どうして動けるんだ!?

イツァム・ナーの動揺がAC越しにも見て取れた。
そりゃそうだ、仕留めた筈の相手が向かってくるんだから。
しかもファシネイターの勢いは全く殺されていない。

ファシネイターには何か特殊な装備があったか?
いや、そんな物は無い。俺が一番良く知っている。
全員のアセンを何度も確認したじゃないか。

じゃあ、何故?――――――――――――そうかッ!

爆炎に包まれる前と後ではファシネイターに1つだけ違いが…
エクステンションの連動ミサイルが無くなっている。
信じられない事だが、”それ”しか考えられない。

パージしたんだ…ミサイルが直撃する瞬間にパージして…
盾として…ぶつけた…リアクティブアーマーの要領で使ったんだ。
そう、マイクロミサイルの弾が切れた時にパージしなかったのがおかしい。
弾の切れた連動ミサイルに使い道なんて無いんだから。

『動揺を隠せないナー選手!追いつかれてしまったぁ!この距離は危ないぞ!
 躱せそうにない!迎撃が間に合うのかぁ!!!!!!!!!!!!!!!!』
プロトエグゾスも限界だ。構うな、行け!ぶった斬れ、ジナ!

ズザァァァン

ボロボロになりながらも、その斬撃は、優雅で、綺麗で、迷いが無く
息を飲むほど美しかった…

ビィーーーーーーーーー!

『決まったぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!電光石火の一撃。勝負ありです!
 勝ったのは…勝ったのはファシネイターのジナイーダ選手!
 AC学園の勝利です!スペシャルアリーナを制したのはAC学園!』

★その89

「勝った…」
ジナの事を信じていた、でも信じられない。
これは夢じゃないよな?―――夢じゃない。

「勝ったんだ…」
それ以外に言葉が出ない、見つからない。

「ヒャッハ~!勝ったぜ、勝ったんだぜ!ヒャッハ~!」
放心していた俺に抱きついてくる神威。
「勝ったのよ、私たち勝ったのよ!」
エクレールさんまで…、2人とも酷く興奮している。俺もだけど。

3人で抱き合ったまま「勝った!」の合唱だ。

「ACを売れば一財産なんだぜ?ヒャッハ~!」
「神威君、売るつもりなの!?」
「ジョークなんだぜ、ヒャッハ~!」

馬鹿な冗談もやけに面白く感じる。可笑しくてしょうがない。
頭のネジが何本か飛んでいるみたいだ。

そういえば先輩は?なんで1人だけ沈んでいるんだ。
「どうしたんだぜ、ジノ先輩?シケた面しちゃってよ、ヒャッハー?」
「……………私には…資格が無い…」
はぁ?

「何ひとつ…勝利に貢献していない…」
「何言ってるんですか、チームが纏まったのは先輩のおかげだし
 俺を鍛えてくれたじゃないですか!」

ジノーヴィー先輩から基礎を学び、エクレールさんからブレードを教わった。
短期間ながら、かなりレベルアップしたと思う。
2週間前の俺じゃあ、ザルトホックに勝てたかどうか。

「トップを走り続けているつもりだったが…本当は井の中の蛙…私は小さな存在だ…」
「男前が台無しなんだぜ?そんなに悔しいならリベンジ、リベンジ!
 卒業したら火星のアリーナに殴り込みかけようぜ!
 槍杉は強制参加だからな、ヒャッハー!」

モヒカンの癖にいい事言うじゃん。
「火星には一度行ってみたかったし、お供しますか!」
「瑞穂…槍杉君…」

「当然、私も仲間に入れてもらうわよ。ポコポコに借りを返さなきゃ。
 次は絶対に負けない!」
「エクレール君…」

ジノーヴィー先輩はジナだけじゃなく、俺の理想、憧れでもある。
目標なんだ、やっぱり胸を張っていてほしい。

「さあ、ジナを迎えに行きましょう。」

俺たちは勝った。自分のACを…グローランサーを手に入れたんだ。
姉さんたちは何て言うかな?林檎は羨ましがるだろうな。
古王は賭けでいくら稼いだんだろう?クラスの奴らは驚くぞ。
マスターとンジャムジさんはちゃんと見てくれたかな?

インタビューとか来たら何て答えよう?カッコイイ決め台詞を考えないと。
謙遜してみるのもいいな。その方が大物っぽいか?
色々なところからスカウトが来るかもしれない。
就職先も選り取り見取りかもよ?

ここから始まるんだ―――――





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