※上記の広告は60日以上更新のないWIKIに表示されています。更新することで広告が下部へ移動します。

★その76

大会用アセンを申請してから3日後の早朝、パーツが届いた。
AC5機分のパーツだ。何台もの大型トラックが学園に集まり
トラックで運ばれて来たパーツたちは格納庫ヘ。

組み立て自体はあっという間で、直ぐ終わってしまった。
まあ、パーツの組み換えや組み立ての容易さ、汎用性の高さが
アーマード・コア最大の特徴だからな。

どこかのメーカーは買ったパーツと同じ物を修理が終わるまで
無償で貸してくれるサービスをしていると聞いたことがある。
組み換えは修理よりも時間が掛からないから
1日に幾つも依頼をこなすタフなレイヴンには好評だそうだ。

組みあがったグローランサーに見蕩れている俺の肩をがっしりとした手が掴む。
「格納庫でぼーっとするのは危ないぞ。」
「あっ、すみません。つい…」

この作業着の人はメカニック科の3年、クラフツパーソンさん。
グローランサーを組み立ててくれた、俺担当の人だ。
この後も微調整やら何やらでお世話になる予定。

「まあ気持ちも分からんでもないがな。勝ったらこいつが自分の物になるんだ。」
ニヤリと笑って見せるクラフツさん。

彼は実直な性格なのに話しやすくて、仕事はキッチリとこなすタイプ。
会って数時間しか経っていないが、いい人だ。俺は本当にツイてる。

「それにしてもお前のクラスメイトは面白いな。」
「えっ?」
何の事かと思ってクラフツさんの視線の先を追う。
少し離れた場所、そこには神威MkV。

「げぇ!」
神威やつACの装甲に頬擦りしてる。
うわぁ、エクレールさんも自分のACをなでなでしてるぞ。
しかも満面の笑みで…

何やってんだ、あの2人は…
「あんまり気にしないで下さい。」
「ACに劣情を催す奴って本当にいたんだな、初めて見たよ。」

「俺も初めて見ました。」
重症患者じゃないか…

「昼休みまでにコックピットの調整を済ませてしまおう。付き合ってくれ。」
「はい。」

★その77

ACの調整をきりの良いところまで済ませ、俺は学食に向かった。

いや~やっぱり本物のACはいいわ~!
少し触るだけでワクワクする。
エクレールさん程じゃないけど、俺の顔もきっとニヤケている事だろう。

いつもの席に古王と林檎を発見。
「よっ!お2人さん!」
「えらくご機嫌だな、洋平。」
「わかる?」

「パーツが届いたんでしょ?朝、学園の中に凄い数のトラックが入ってきたね。」
「AC5機分のパーツだからな。」

「お前はどんなアセンにしたんだよ?」
「それは試合当日のお楽しみ。」

対戦相手にこちらの機体特性を知られる可能性は少ない方がいい。
関係者以外にアセンを教えないように決めたのだ。
アナークやクラフツさんにも箝口令を敷いてある。

「チッ、手に入れたら俺にも乗らせろよ。」
「ええ~、ちゃんとノーマルを動かせるのか?」
お前はリンクスだろうが。

「減るもんでもないし、いいじゃねぇか。それに言うだろ?
 ”お前の物は俺の物、俺の物も俺の物”ってな。」
なんというジャイアニズム。これを本気で言ってそうなのが何ともコイツらしい。

「まあちょっとぐらいなら…」
「じゃあ僕も、古王君の次でいいから僕も乗らせてよ。」

「別にいいけどさ、お前らちょっと気が早すぎないか?勝ったらの話だぞ?」
「「……………」」
あれ?何かおかしい事言ったか?
2人が顔を合わせてキョトンとしている。

「お前は勝つよ。ここ一番での洋平は強い。」
「何となくだけど僕も勝つと思う。」
「お前ら…」
それなりに俺を評価してくれているのか。

「他のメンバーも凄いじゃない。あのジノーヴィー先輩
 スーパー転校生のジナイーダさん、近接無双のエクレールさん。
 この3人で3勝狙えるよね?」
「まあな。」
神威がナチュラルに戦力外通告されている。

「そういや、今度テレビ局の取材が来るんだろ?」
「ああ、SPアリーナの特番を作るらしい。インタビューを頼まれてる。」

「無理して格好つけようとするなよ。弱そうな奴に見えるのが望ましい。」
「なんだよそれ。」

「お前が勝った時の配当が高くなるからな。」
「はいぃ?」

「俺は洋平を一点買いするつもりなんだよ。自分の経歴を考えてみろ。
 リンクス科の落ちこぼれで、レイヴン科に移って間もない、言わば素人中の素人。
 普通に考えてこんな奴が勝つと思うか?”堅い大穴”なんだよ、お前は。」

「なるほど!僕も買ってみようかな。頑張ってね、洋平君。」
こいつら…俺の一世一代の勝負を何だと思ってやがるんだ。

「まあ、お前はどう頑張っても強そうには見えないから安心か。
 インタビューで格好つけようとして、逆にとちるかもな。」
「あるある。」
林檎まで俺を馬鹿にしやがって…

ピンポンパンポーン

『R-2-1の槍杉洋平君。レオス・クライン先生がお呼びです。
 至急、職員室まで来てください。繰り返します。
 R-2-1の槍杉洋平君。至急、職員室まで来てください。』

「ナインブレイカー様がお呼びだぜ。」
クライン先生が俺を呼ぶなら、多分SPアリーナ関係の話だろう。

俺は古王のオッズ予想を聞き流しながら、弁当をかき込んで職員室に向かった。

★その78

「失礼します。」
職員室に入り、クライン先生の元に向かう。

「遅くなりました。」
クライン先生は「休憩中に済まん。ACの調整はどうだ?」なんて前置きは一切無し。
すぐに本題に入った。

「これをお前に渡しておきたくてな。」
「何ですか、これ?」
小型のデータメモリを受け取りながら訊ねる。

「MNA選抜メンバーのデータだ。」
「おおぉ、そんな物が!でもあの学校は火星にあるんですよね?」
どうやって情報を集めたんだろう…

「リサーチャー科の3年に口は悪いが有能な男がいてな。
 そいつに火星まで飛んでもらった。」
「ええぇ!」
さらっと言ってるけど、太陽系第4惑星、火星だぞ?
ちょっと近所にお出かけってレベルじゃない。それをさらっと…

「MNA側も恐らくリサーチャーを送り込んで、こちらを研究してくるだろう。」
「そう…なんですか?」
リサーチャーを使って情報収集か…既に戦いは始まっていた訳だ。
そこまで頭が回らなかったな。

クライン先生に礼を述べてから職員室を出た。

一刻も早くデータメモリの中身を見てみたい。
俺は急いで教室に戻り、メモリを端末に差し込んで中身を読み出してみる。

「どれどれ。」
データは『各選手のアセン傾向』と『選抜メンバー考察』の2つに分かれているのか。
アセン傾向の方は俺がパーツに詳しくないせいもあって、パッと見じゃ分からないな。
メンバー考察の方を開く。

■アレス
MNA最強の男子レイヴンで、学生ながら『ナインブレイカー』の称号を持っている。
高火力武器によって相手を封殺する戦闘スタイルで、負け知らず。
あまりの強さゆえ、勝利することにすら退屈しているらしい。
孤高の王者を気取るキザ男だが、ナインブレイカーの称号に見合う実力者だ。
選抜メンバーの中でも要注意。こいつは強いぞ。

■イツァム・ナー
MNA最強の女子レイヴンで、通称『女帝』。
かなりの美人らしく、数多くの男子生徒が彼女に交際を申し込んだが
全員模擬戦で敗北、玉砕されてきた。彼女もアレスと同じく無敗記録保持者だ。
機動力と瞬間火力の双方を備えたアセンを好み、ラッシュで相手を圧倒する。
神業とまで言われる操作技術の持ち主らしい。要注意人物その2だ。

■ポーコ・ア・ポーコ
機動力と防御力に特化したフロートを駆る男。
残忍な性格らしく『死神』と呼ばれているが、少々名前負けしている。
他のメンバーに比べると一段下の実力と言えるだろう。
MNAには他にもっと強い奴がいるはずなんだがな。
こいつが選抜された理由がよく分からん。

■ライオンハート
弱点の全く無い強さと、正々堂々とした戦いを好む事から
『究極の騎士』の異名を持つ。
逆関節使いとしては最強を自称している。
得意のエネルギーライフルによる攻撃は流星に例えられるそうだ。
”自称最強”だが油断はするなよ。実力は確かだ。

■ザルトホック
2年生ながら選抜メンバーに選ばれるだけあって戦闘力は高い。
中~近距離を得意としており、こいつのペースにはめられると厄介だろう。
プライドが高く、相手を軽く見る傾向があるようだ。
自分を負かした相手には”勝つまで再戦を申し込む”粘着気質”で有名。
これを繰り返しているうちに自然と強くなったのかもな。

全体的にいいメンバーが揃っている。
流石、火星一のレイヴン養成学校MNAといったところだな。
このリポートが無駄にならない事を祈る。以上だ。
                                エド・ワイズ

「ふぅ…」
やっぱり強敵だなMNA。
中でもアレス、ナーの2人はジノーヴィー先輩が言っていた通りか。
相当ヤバいだろ、これ…どの学校にもいるんだな、こういう化け物。
考察を読んだだけで萎縮してしまいそうだ。

だがこのリポートはかなり助かる。
シミュレーターでこれに近いAIと訓練すれば
勝算が高くなるかもしれない。

★その79

放課後、第3シミュレーター室、いつものメンバーが集まっております。

「アレスっていう奴、ナインブレイカーなのな?
 こいつを倒せば俺様がナインブレイカーだぜ、ヒャッハ~!」
「フフフッ、神威さん頼もしいですね。」

「大丈夫かしら…」
「エクレール君らしくもない。瑞穂ぐらいの意気込みで臨むべきじゃないかな?」
「ジノーヴィー先輩の仰る通りです。」
(ジナ、また腰巾着みたいになってるぞ…)

ワイズリポートを読んだ反応は千差万別だ。
先輩はこのくらい想定内といった感じで落ち着いてる。
ジナは相手が誰だろうと関係ないらしい。
エクレールさんは少し弱気になった、これが普通の反応。

神威は相変わらずマイペース。
こいつがナインブレイカーなら、世界はナインブレイカーで溢れかえるだろうさ。
それにしてもこの自信は一体どこから出てくるんだ?
1ミリグラムでもいいから分けてもらいたいね。

MNAメンバーについて、ああだこうだと意見を出し合っている皆を見ながら
ふと思った。結構いいチームだな。

ジノーヴィー先輩は面倒見のいいチームのお父さん。
ネルさんはサポート役だからお母さんかな。
ジナはお父さんにベッタリだが頼もしい長女。
エクレールさんは常識的な次女。
神威は厳つい外見とは裏腹にムードメーカーな末っ子って感じか。

全く違うタイプが集まっているのに不思議と纏まって見える。
俺は何処にどんな役割で入っているんだろうか…
こういうのは自分じゃよく分からないな。

「槍杉さん、どうしたんですか?」
「なんでもないよ、ちょっと考え事してただけ。変な顔してた?」
「変じゃないですけど、少し笑ってましたよ。」
「そっか…」

どうしても勝ちたいな。
勝てばグローランサーが手に入るってのを抜きにしても勝ちたい。
何故だかそう思える…




| 新しいページ | 編集 | 差分 | 編集履歴 | ページ名変更 | アップロード | 検索 | ページ一覧 | タグ | RSS | ご利用ガイド | 管理者に問合せ |
@wiki - 無料レンタルウィキサービス | プライバシーポリシー