★その外伝・前編

「ヨウヘイさん、これはどうしましょうか?」
「え~と、FF関係の雑誌は全部ベアトリスの部屋に。」
「分かりました。」

俺はアイビスと2人で家の物置部屋を片付けている。
何でこんな事をしているのかというと
物置部屋をアイビスの部屋にリフォームする為だ。

せっかく余っている部屋があるんだから有効活用しようという訳。
それにアイビスが夜中に居間で転がっている(充電している)姿は
ちょっと不気味だからな。寝惚けている時に見ると心臓に悪い。

「これはどうしましょうか?」
「何だこれ?」
アイビスから手渡されたのは本…じゃないな。
パラパラと捲ってみる。父さんの字で書かれている…日記?
いや、違うな…回顧録とか自叙伝っていうんだろうか。

          *

俺の名前は槍杉 嶺文
完全フリーの独立傭兵。業界じゃ少しは名の売れたレイヴンだ。
このふざけた苗字と『レイヴン』と読める名前のせいで
仕事仲間から相当からかわれている。

「ミネフミ、そろそろよ………準備はいい…?」
「ああ。」
オペレーターから通信が入る。慣れ親しんだ声。
一緒に仕事をするようになって3年ほど経つ。

今回の仕事は彼女が取ってきてくれた。
MT部隊の排除―――簡単な依頼だ。
報酬が前払いで高額だったのが気になるが、まあいい。

騙し討ちでもしようというのなら、返り討ちにしてやるさ。
何度もそうやって切り抜けてきた。
この相棒と一緒にな。

相棒の名前は『百式・千変万化』。
”百のパーツを用いて、千にも万にも姿を変える”という意味を込めて名付けた。
簡単に言うと決まった形が無いACだ。

俺は依頼の種類に応じてアセンをコロコロと変える。
武装は勿論、フレームから内装までね。
そんな俺にぴったりの機体名。

今日の百式は高機動型の中量二脚にマシンガンとブレード
背中に大型グレネード2本担いだ、超攻撃的な組み合わせ。
俺が最も得意とするアセン。

「作戦領域に到着………AC投下します…」
通信直後に百式が輸送機から切り離される。
俺はブーストを吹かせて着地に成功した。

直ぐに作戦領域の索敵を行ったが、何も引っ掛からない。
辺りは見通しの利く荒原。隠れられそうな場所は無いぞ。
おかしい…本当にハメられた?

「オペレーター、そっちは何か見えるか?」
「……………」

「おい、どうした?」
「ごめんなさい…」
ごめんなさい?何を言っているんだ。

「ごめんなさい…」
彼女は只々、謝るばかり。自然と嫌な考えが浮かび上がってくる。
そうか………オペレーターもグルだったのか。

でも彼女が俺を裏切る理由が見つからない。
「金か?」
「ええ…どうしても必要なの…」

3年___彼女とはそれなりに信頼関係を築いてきたつもりだったが
本当に”つもり”だったみたいだ。
はぁ、金か…

「俺にだって少しぐらい貯えがある。言ってくれれば―――やめよう、もう遅い。」
レーダーに巨大な反応が映った。
真っ直ぐこちらに向かってくる。デカいのに速い。

「あなたは次世代ACのテスト目標にされるわ…」
性能をテストするだけなら普通に依頼するよな。
実戦の、しかも殺し合いをご所望ってか。

「もうオペレーターは廃業にしておけよ。」
「ええ…」

俺が喋らなくても、彼女の信用は地に落ちるだろう。
こういった話はどこからともなく広まるものだ。
もうこの業界じゃ生きていけない。
俺もお人好しだな。裏切った女の心配なんかして…

「さよなら…」
最後の通信と入れ替わりに次世代ACさんが、こんにちは。
物凄い出力のOBで吹っ飛んできて、目の前で急停止した。

何だこいつは…本当にACなのか?
こっちの2倍近い図体をしている。得物もやたらとデカい。
異形って言葉がピッタリな奴だ。もうACなのかどうかすら怪しい。

こんな状況になっても相手を見定める余裕がまだある。
俺は無節操にそこいらじゅうから依頼を受けているからな、敵が多いんだ。
こういう事態に陥ったのも一度や二度じゃない。
オペレーターに売られたのは初めてだが…

ええい、気持ちを切り替えろ。過ぎた事をくよくよしても始まらない。
先ずはこの化け物を返り討ちにしてやろう。色々と考えるのはその後だ。

それにしても次世代機はこちらと対峙したまま動かないな。
誘い出しておいて、かかって来いってか?
「舐めやがって…」

★その外伝・後編

余程この次世代機に自信があるのか、搭乗者が腕に自信があるのか
真っ向勝負もテストの内なのか…理由は分からない。
だが俺のペースで始めさせてくれるなんて、ありがたいねぇ~

オペレーターからこっちのデータは流れていると考えるのが妥当。
百式はそこいらのACとは違う。
メーカーや世代を問わず、選りすぐりのパーツで固めたカスタム機だ。
市場には出回っていない特殊なオプションパーツも付けてある。

そのスペックを知りつつも、この余裕。
出来れば鹵獲して次世代パーツを幾つか頂こうと思っていたんが、無理そうだな。
甘い考えは捨てよう。全力で―――
「潰す…」

次世代機は見るからに威力の高そうな武装ばかり。いきなり正面からは怖い。
回りこみながら、少しずつ間合いを詰める。

「おかしい…」
次世代機は頭部カメラを光らせているだけで、動き出す気配がまるで無い。
こんなに簡単に側面を取らせてくれるなんて、トラブルか?
だが、そんなのは俺の知った事じゃないね。チャンスは活かす。

射程に入った瞬間にマシンガンを撃ち込んだ。
奴はまだ動かない。当然命中して装甲が抉れる…筈だった。
マシンガンは謎の皮膜によって弾かれ、次世代機を傷つけることが出来なかった。
機体の全面を覆うENシールド!?こんな兵装を持っていたのか。

豆鉄砲など、避ける必要もないと…そう言いたい訳だ。
なら、こいつはどうよ!
背中に担いだ2本の大型グレネードを同時展開。2発同時に撃ち込む。

ドヒャァ―――――――――――――――――――――――――――――――――――

消えた!?グレネード弾は大地に着弾する。
避けられたなんてもんじゃない、一瞬で次世代機を見失った。
瞬間移動というあまりにSFな単語が頭を過ぎる。

「何だこいつは…」
慌てて再捕捉。
奴が元いた場所と今いる場所を線で結ぶ。移動の痕跡が見て取れる。

瞬間移動じゃない、静止状態から一瞬で加速したんだ。
瞬間移動したように見える程の加速…
どっちにしろ化け物じゃないか。

だが避けたな…避ける必要があった…直撃は不味いんだろう。
あの防護膜は完全防御じゃなさそうだ。それが分かっただけでも救いがある。
手持ちの火器でダメージを与えられないとなると、流石に逃げるぜ俺は。

ドヒャァ―――――――――――――――ドヒャァ――――――――――――――――

「くそっ…」
FCSの予測射撃じゃ捉えきれん。
それにあの防護膜、厄介な野郎だ。

奴の馬鹿でかい連装ガトリング砲がゆっくりと俺に向けられる。
明確な攻撃の意思表示。避けてみろと言わんばかり。
言われなくとも避けさせてもらうさ。
そいつを貰ったらひとたまりも無いんだろ?

百式を捉え損ねたガトリング弾が地面に大穴を作る。
洒落にならない破壊力。重装型のアセンで来なくて本当によかった。
これは少し被弾しただけでも致命傷になりかねない。

弾幕に注意を向けさせておいて、時折レーザーによる鋭い攻撃を雑ぜてきた。
機体性能だけじゃない、パイロットもいい腕だ。
平地で避け続けるのは辛いな。少しでも起伏のある場所に戦場を移さないと。

間隙をついてOBを起動させた。
次世代機のOBは初めに確認済み。
恐らくだが速度、継続時間の両方で負けている。
それにOB中にもあの急加速を使えるとしたら…

簡単にはいかないだろうな。
並のACなら余裕で振り切れるんだが。

「んん…?」
追って来ない?いや、追っては来ている。OBを使わずノロノロと。
見失わない距離を維持しながら追って来ている。
逃がすつもりだけは無いらしい。
それにしても余裕こきすぎだろうが…

その慢心に付け入っても、引っくり返せる戦力差じゃないのが問題だ。
あの次世代AC――『走・攻・守』全ての面で現行機を遥かに凌駕している。
さっきまでの動きも各性能のテストに思えてきた。
そういえば、あちらさんからすると性能テストだっけ?

「くそっ…」
このまま全力で逃げに徹してやろうかと思ったが止めだ。
トコトン付き合ってやるよ。

「ここいらへんでいいだろう。」
荒原地帯の中でもかなり起伏の多い場所。
俺が身を隠したり、奴の機動力を少しでも削れれば御の字だ。

「きた…」
次世代機と百式は再び対峙した。最初と全く同じ構図。
またこっちから仕掛けるのを待ってくれているのかい?

ありがたく先制させて貰おうと思った刹那―――次世代機が構えた。
「何か来る!!」
即座に丘に隠れるが…何だこの悪寒は?

ゾクッ

奴との間に丘を1つ挟んでいるんだぞ。それでも駄目なのか?
”駄目だ”
俺は直感に従って飛び出した。

化け物から緑色の光が放たれる。
光は丘を貫通して俺がさっきまで身を隠していた場所を突き抜けた。
危なかった…何だよ、今の光は?

ドヒャァ―――――――――――――――ドヒャァ――――――――――――――――

次世代機は間髪入れずに攻め込んできた。
どうやらサービスタイムは終わりらしい。
俺もそろそろ本気を出すか。

FCSのロックオン機能を全面カット。
射撃は手動、ノーロックで行う。
別に血迷った訳じゃない、見てろよ。

次世代機の攻撃を掻い潜りながら両背中のグレネードを2本同時展開。
1発目を撃ち込む―――あの急加速で躱される。
2発目を撃ち込む―――命中。

何故躱せなかったのか?奴も理解出来ていないだろう。
原理は簡単だ。1発目が牽制と誘導、2発目が本命。
どれだけ速く動いても存在を消せる訳じゃない。

急加速が連続で使えても必ず何処かに隙はできる。そこを突く。
こいつは俺に動きを見せすぎた。
どのタイミングでどこに移動するのか、既に殆ど誤差なく予測出来る。
その予測ポイントに2発目を撃ち込んでやれば目標と砲弾は自然とぶつかるって寸法。

そんな事が本当に出来るのか?ノーロックで?
できるんだよ俺には…むしろロックオンは邪魔だ。
相手の癖や思考も考慮した上で予測しているからな。

再び1発目を撃ち込む―――躱される。
今度は急加速を2回続けて躱そうとするな。
その先に2発目を撃ち込む―――ビンゴ!―――命中。

あちらさんの動きに迷いが出始めた。
当然だ、1発目を躱した先に必ず2発目が”来ている”んだから。
俺はやる専門で、やられた事がないから実際は分からないが
自機が砲弾に吸い寄せられている様な錯覚に陥るらしい。

あんたのACは非常識だが、俺も非常識だってよく言われるよ。

そろそろ終わらせよう。グレネードの直撃でも落ちないのなら…
1発目を撃ち込む―――躱される。
2発目を撃ち込む―――躱せるように。

俺は2発目を撃ち込んだ直後、3つの操作を同時に行った。
ブレード以外の武装を全てパージ____少しでも軽く、そして速く。
リミッター解除____________これでEN切れの心配は無い。
OB起動_______________3発目の砲弾となって斬り込む。

2発目を躱した後の予測ポイント、そこは起伏の激しい袋小路。
奴が気付いた時にはもう手遅れ、そこに行くよう誘導したのさ。

突っ込んでくる俺を連装ガトリングで止めようとするが、遅い。
火力を追求するあまり肥大化した得物が仇となる。
取り回しが悪いんだよ。もうブレードの間合いだ。

そして百式の左腕にあるブレードの名は『月光』。
絶大な攻撃力を誇るイレギュラーナンバー。
こいつで防護膜ごと斬り裂く。

「もらったぁ!」
月光からエネルギー刃を発生させて振りぬこうとした瞬間――
視界が真っ白になった。閃光弾か!?
機体を打ちつける衝撃が俺の問いを全否定する。
百式は遥か彼方に吹き飛ばされた。

「うっ…ううっ…」
爆発だった、次世代ACが自爆したのか?
「くそっ…やってくれるぜ…」

コックピット内に大量の血が流れている。全身が酷く痛む。
そこいらじゅう痛くてどこを怪我しているのか分かりゃしない。
しかも百式が殆ど動かない。仰向けに倒れたままだ。

こりゃ、完全に赤字だよ。
前払いで貰ってある報酬じゃ全然足りない。大赤字だ。

やってやったぞ、ざまぁみろ。
「はっはっはっはっはっはっはっはっ!」

ズドォン

機体に衝撃が走る。
「な、なんだ!?」
ノイズだらけでかろうじて映っているディスプレイを見て戦慄した。
次世代機がその尖った脚部で百式を踏みつけている。

「うそだろ…」
あの爆発は自爆じゃなかったのか?あれも次世代の兵装かよ。
「どうなってんだ…」
爆心地にいたのに傷を負っているように見えない。

月光の一振りぐらいならいけるか?
無駄と分かりつつも奴の脚1本でも貰ってやろうと思った刹那――
肩口にガトリングを撃ち込まれて、左腕がブレードごと吹き飛んだ。

「もう打つ手無し、好きにしてくれ…」
俺の呟きを聞いたかのように、化け物はコックピットハッチを無理やりこじ開け始めた。
サディスティックな趣味の持ち主なのかもしれない。
だが不思議と恐怖は感じなかった。

俺は目を閉じて最後の時を待ったが、それは一向に訪れる気配が無い。
………………………………………………焦れて目を開くと
目の前に見慣れないパイロットスーツを着た奴が立っていた。
こっちに小銃を向けている。

こいつが化け物のパイロット…?

「おっ、生きてる。やるわね、レイヴン。」
「女…なのか…?」
「へぇ…結構いい男じゃない。」

これが『リン・楠ノ葉・カイシン』―――
後に妻となるリンとの出会いだった。

          *

「父さん…母さんに撃墜されてたのか…」
道理で母さんに頭が上がらない訳だ。
槍杉家のパワーバランスが女側に傾いているのも頷ける。

「ヨウヘイさんのお母様はリンクスをされていたみたいですね。」
「初めて知ったよ…」
凄く複雑な心境。

パタン

俺は回顧録を閉じた。これ以上読むのは止めておこう。
両親の青春を覗き見るは何だか恥ずかしい。

それに父さんも俺には絶対読まれたくないだろうし…


-Boy meets Girl-





★隊長とトロットの雑談部屋★

隊長「外伝を書くのなら私が主人公だろう?」
トロット「全くです!何を考えているんでしょうね。」

隊長「ドミナントである私の華麗なる戦い…」
トロット「隊長ならアレサなんて一捻りですよね?」

隊長「……………と、当然だろう。」
トロット(今、変な間がありましたよ、隊長。)

隊長「まあ、槍杉嶺文もよく頑張ったんじゃないか?
   私より1つ下の称号、『リトルドミナント』をくれてやってもいい。」
トロット「流石は隊長、太っ腹ですね。」

隊長「それはさておき、槍杉家は逸材ばかりだな。」
トロット「凄腕のレイヴン、アレサのテストパイロット、元レオーネの最高戦力
     最年少アーキテクト、確かに凄い面子。」

隊長「逆にあいつが普通すぎて浮いているぐらいだ。」
トロット「確か洋平君には属性設定がありましたよね?」

隊長「これの事だな。」

普通人凡庸タイプ/男主人公
『槍杉 洋平』

孤高の天才タイプ/男主人公
『土御 南斗』

ドジっ子凡庸タイプ/女主人公
『エリーア・大葉』

唯我独尊天才タイプ/女主人公
『西京・イレ・ギュラー』

トロット「そう、これです。普通人凡庸タイプか~」

隊長「何でも1人で上手く出来てしまう主人公は、あまり面白くないからな。」
トロット「主人公も大変そうですね、隊長。」

隊長「ちなみに外伝2(仮)は私が主人公の物語だ。楽しみにしていてくれ。」





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