「ジャック・・・どこへ行ったのだ・・・」
エヴァンジェは一人奔走する。
自らがドミナントと認めさせるため、彼は各地で戦いに明け暮れていた。
彼には好敵手と認めた3人のレイヴンがいた。しかしながら各雄とも行方が知れず。
一人残された男は虚しくも孤独な頂に君臨していた
「最強と謳われているものの・・」
エヴァンジェしかいなかっただけだ。
横に並ぶものがいなくなってしまった。只それだけだ。
そんな苦悶を抱える日々に転機が訪れる。
―ジャック・Oの居場所を教えてやる―
偽りの情報かもしれない、それでも行く。
エヴァンジェは退屈している。たとえ偽りでも退屈を紛らわせるなら・・・
期待と諦めを抱き目的地に赴く
目的地が近くになると通信が入った
「久しぶりだな、隊長殿」
「ゴールディ・ゴードンか・・俗物が、私に何の用だ」
ヒューっと茶化したようにゴードンが息を吹く。
「隊長、用があるのはアンタの方だろう?」
成程、コイツが情報の提供者というワケだな。
ということは
「ゴードン、誰に依頼された?」
「ハッ、何を言ってるのか分かりませんねぇ隊長殿」
エヴァンジェは落胆してみせるものの、その瞳に闘志を宿らせる。
目的地につくと銃弾が出迎えた
予想はしていたものの、予想通り過ぎてウンザリしてくる。
「俗物よ、お前一人でガレージから出てこれるなんて偉いモノだな」
「昔の俺とは違うのさ」
確かに動きからその自信がどこから来ているのか分かる
動きが違う。重量級ACの動きではない
「レイジングトレントⅨ・・・次世代ACとは素晴らしい物だなぁ!?」
今まで見たことの無いパーツで組まれたACは圧倒的な力でAC:オラクルを蹂躙していこうとしていた。
(どこの企業のACだ・・あまりに規格外な性能だ・・・)
「しかし・・・幾ら機体がよくとも、レイヴンとしての差!俗物とドミナントの差を思い知らせて見せよう!」
―脚部破損―
―左腕破損―
―頭部損壊―
―AP80%低下―
一方的に勝負は終わろうとしていた、所詮自分はドミナントでは無かったというのだろうか。
「情けないなぁ、ヒヨっ子」
「手こずっているようだな」
「存外そんなものか」
自らの死も受け入れようと言う時にエヴァンジェは見た。五機のACを
「 烏大老・・・?貴様死んだはずでは・・・」
「何、大人には大人の事情があるんだよ」
いずれも索敵に長けた外見をしているACが瞬く間にレイジングトレントを追い詰める。
「おい、冗談じゃねぇぞ・・お前、データにあるぞ・・・セロだな?」
聞いたことのないレイヴンだ。
「リンクスがどうして俺に銃を向けてるんだ?」
リンクス?何がなんだか状況が分からない。
「向こうの企業も一枚岩じゃあないんだ。こっちでもそうだろう?」
銃声―
破壊―
俗物の最後だった。
気がつくとベッドの上にいた
傍らには赤いつなぎの男がいた。
「気がついたか」
男が口を開く
「ああ、お前は?」
「私はゲド、レイヴンだ」
男は答える。逞しい肉体によく似合う笑顔で。
「聞いたことが無い名だ。」
「だろうな。この世界のレイヴンではないからな」
サラっと理解できないことを言われた。こいつ頭は大丈夫なのだろうか。
「驚くのも無理もない。しかし、この世界の技術では不可能なものを見ただろう?」
レイジングトレントのことだろうか、確かにすさまじい火力と機動力だった。
「詳しくはまだ解明されていない。しかし私のいたところは2週間前にこの世界とつながった」
ゲドが説明してはいるが頭に入ってこない。
「そういえばこの世界でジャックという男と出会ったな。彼はうまくやっているだろうか」
世界のジャックといえば、彼しかありえない
「ジャックは?ジャックにあったのか?」
ああ、彼は今ね、とまで呟き少し間が空く
「どこかの施設の地下で瀕死の重体だったのだがね、見つけたところを応急処置しようとしたんだが巻き込まれて」
振り返るように語った
「巻き込まれ・・・・。ジャックは今どこにいる?」
「彼はね、旅立ってしまったよ。」
どこに?旅立った?まさかジャックは既に・・・と言ったつもりも、声がでなかった。
「会いたいかい?では君も行くか?」
「ラインアークに」