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★その42

ゆっさ、ゆっさ、ゆっさ、ゆっさ、ゆっさ

誰だ、俺の身体を揺すっているのは…
「…てください、起きてください、ヨウヘイさん。」

「あと5分、あと5分だけ…」
昨日遅かったんだ、もう少しだけ寝かせてくれ。

「えいっ」
―――――ドス

「ぎゃぁぁぁぁぁ!なんてことするんだ、アイビス…」
「セレン様より、あまりに起きない場合は殴ってでも起こすよう
 指示されています。」

一瞬で目が覚めた、だが最悪な起こされ方だ。
「その指示は撤回する。例え遅刻寸前でも優しく起こしてくれ。」

「それは無理です。」
「なんでさ?」

「指示の優先度が、セレン様>ベアトリス様>ヨウヘイさん
 の順に設定されているからです。」
余計な事を吹き込んだのはベアトリスの奴だな。

「すぐに支度をしてください。遅刻してしまいますよ。」
アイビスは1階に降りていった。

時計の針はいつも家を出る時間を既に過ぎている。
目覚まし時計を無意識のうちに止めてしまったのか。
こりゃ、朝飯食ってる時間は無さそうだ。
急いで行動しよう。

用意を整えて1階に降りた。
「すまん、朝食を食べてる余裕はなさそうだ。今日はパス。」
「昨日の残りをサンドウィッチにしてみました。休み時間にでも食べてください。
 朝食は重要です。」
気が利くじゃないか。

「サンキュ、じゃあ行ってくるよ。」
「いってらっしゃいです。」
俺は少し慌てて家を出た。

いつもの通学路を自転車で急ぐ。
やっぱり朝何も食べないと力が出ないな。
ペダルを漕ぐ足が重い。

グ~

腹の虫も鳴いている。
ちょっと行儀悪いがサンドウィッチを食べながら行こう。
アイビスが昼の弁当と一緒に渡してくれたバスケットから
サンドウィッチを取り出して口に頬張った。

ここで俺は前方に注意して走らなければならない。
Q、それは何故か?
A、パンを口に咥えて急ぐと、何故か人とぶつかりやすくなるからだ。

世の中にはこういう不思議な法則がある。
俺は今自転車に乗っているから、ぶつかったら大惨事必至。
それだけは回避せねばなるまい。

「せんぱーい!」
ほら誰か来た。絶対にぶつからないからな。

ドカーン!

思い切りオカマを掘られてしまった。
後方から勝手にぶつかって来るのは反則だろ…

「先輩、大丈夫?」
「ちゃんとブレーキを掛けようよ、レジーナ。」
この元気娘は全く…

「ちゃんと掛けたんだけど勢い余っちゃって、ごめんね!」
「まあ、サンドウィッチは無事だったしいいよ。」

「…………」
レジーナは無言でバスケットを凝視している。
ちょっとよだれが出てるぞ。
また何も食べてないのか、この子は。

「少し食べるか?」
「いいの?」
凄い嬉しそうな顔。

レジーナと一緒に、サンドウィッチを頬張りながら学園を目指した。
彼女は満面の笑顔でサンドウィッチを食べている。
なんだか餌付けしているみたいだ。

それにしてもレジーナはいつも飢えてるな。
どんな食生活してるんだろう?
パンの耳を大事そうにかじっている姿を一瞬想像してしまった。
案外、冗談じゃなくて本当にそうかも…

食べ終わるのとほぼ同時に学園に到着。
「ああ、美味しかった~!またご馳走になっちゃいましたね。」
「いいさ、こっちはレジーナの見事な食べっぷりを見せてもらったし。」

「もう、からかわないで下さいよ。」
恥ずかしそうにしている顔はちょっと可愛い。

キーンコーンカーンコーン

「予鈴か…急がなくちゃな。遅刻するなよ。」
「はーい!じゃあね、先輩。」
レジーナは手を振りながら走って行った。

パンを口に咥えて急ぐと、何故か人とぶつかる法則。
真であったか…

さて、俺も教室に行こう。

★その43

教室に到着だ。
さっさと席に着こう、授業が始まる。

「エクレールさん、おはよう!」
「………」
あれ?聞こえてない。

「エクレールさん?」
「………」
彼女はキサラギのパーツカタログに夢中になっている。
凄い集中力、周りの声が全く聞こえていない。

「おーい、エクレールさーん。先生来ちゃうよ~」
「………」
ちょっと突っついてみようか…

ツンツン、ツンツン、ツンツン

「イヤん!、イヤん!、イヤん!」
またこの反応だ。非常に面白い。

「何するのよ!槍杉君。」
俺の顔がニヤけていたんだろう。エクレールさんの語気が荒い。
面白がってツンツンしすぎた。

「いや、あの、夢中になってたみたいだからさ…ほら、先生が来たし。」
ナイスタイミングで現れてくれるじゃないか、エヴァーファイター先生。

「そうなの…でも、あまり後ろから突かないでよ。」
なんとか納得してくれたみたいだ。

「ふぅ…」
危ないところだった。
エクレールさんは怒ると怖いな。

でもこれだけいいリアクションされると、もっとツンツンしてみたくなるのが男心…
いやいや、これじゃ俺、只の変態じゃないか。
馬鹿な事を考えてないで授業に集中しよう。

「えー、みなさん。教科書のP23を開いてください。」
この人は『傭兵現代史』担当のエヴァーファイター先生。
かなりのご高齢で、本当かどうかは知らないけど
大深度戦争時代からの生き残りという噂。

今は仲介組織の成り立ちについて講義しているけど
単調な話し方で、聞いていると眠気を誘われる。

そういえば卒業後の仲介組織どこにしよう…
まだ先の事だと思ってたけど、2年になる頃にはみんな大体決めているらしい。
リンクス科とは事情が少し違う。
エクレールさんはコーテックス希望って言ってたな。

いきなり無所属とかは自信無いし
企業とか武装勢力に入れてもらえるようなコネや実力も無い。

やっぱり仲介組織に入るのが一番無難だよな。
できれば大手、コンコード、コーテックス、アークのどれかがいい。
弱小組織より待遇が良さそうだしな、うんうん。

教科書の仲介組織のページをパラパラめくっていると見知った名前があった。
レイヴンズアーク宰相 ジャック・O
マスターと全く同じ名前だ。

まさかな…同姓同名ってやつだよな?ジャックなんてよくある名前だし…

★その44

午前の授業が終わって学食に集まった時、林檎に訊いてみた。
卒業後の仲介組織はどこを希望するのかと。

「僕はコーテックス希望だよ。」
エクレールさんと同じか、コーテックス人気だな。

「何か理由ってあるのか?」
「色々と理由はあるけど、大手の中でも比較的穏健派だからかな。」

「どこも同じ様な感じに見るんだけど、結構違うんだな。」
「そりゃ違うよ。」

林檎は呆れた顔をしながら続けた。
「例えば、そうだな…殆どの組織はレイヴンの格付けをアリーナの成績で決めるけど
 アークは出撃したミッションの成否によって決めてるとか。」
「ふむ、ふむ。」

「よく調べて、自分に合いそうな所を選んだ方がいいよ。」
「よく分からんが、色々あみたいだな。」
こういう細かい事を調べるのは性に合わない。
めんどくさいな~

「洋平、俺には聞かないのかよ。」
「お前はリンクスなんだからカラードだろ。」

「おいおい、勝手に決めるなよ。」
古王のやつ何かボケる気か?一応、訊いてやろう。

「じゃあ、卒業後どうするつもりなんだ。
 まさかリンクスにはなりませんとか言い出すつもりか?」
「首輪を付けられるのまっぴら御免だからな、自分で武装勢力を作る。」

「……………」
「……………」
俺も林檎も言葉が出てこなかった。

新卒でいきなり武装勢力を作る。
普通なら一笑して終わりだが、こいつなら本当にやりかねん。
いかにも古王らしい答えだった。

「お前らの就職先が決まらなかったら、俺が雇ってやろうか?」
「「遠慮します。」」

俺と林檎の返事がシンクロした。

★その45

「やっと終わったぜ!俺様は自由だ、ヒャッハ~!」
授業終了と同時に神威は叫びながら立ち上がった。

今日も急いでどかに行く様子。

⇒《後をつけてみる》
 《どこに行くのか訊ねる》

「じゃあな、槍杉、ヒャッハー!」
「じゃあな、神威。」
と自然に答えておいて、尾行開始だ。
どこに行くのか突き止めてやろう。

気付かれないぐらい距離を離しつつ、後をつける。
神威を見失わないようにしないとな。

 ・
 ・
 ・

どこまで行くんだろう…もう学園を出てかなり経つ。
これで家に帰るだけでした。とかいうつまらないオチだったら悲惨だな。

そんな事を考えていたた矢先に、神威が私有地に入って行った。
しばらくしてから俺も神威が入って行った正面に回りこむ。

門の横に大きく『クンプレアーノス保育園』と書かれている。
保育園…ここに何の用があるんだろう?
まさか神威の奴、既に子持ちとかじゃないだろうな…

塀越しに保育園の中を窺って見ると、神威が小さな子供たちと遊んでいた。
神威の厳つい外見にも拘らず園児たちは懐いている様子。
あいつも「ヒャッハ~!」を連呼して楽しそうに相手をしている。

子持ち説はちょっと薄くなってきたな。
多分アルバイトか何かだろう。

あれ?レイヴン科の制服を着た人がもう1人来た。
ジノーヴィー先輩じゃないか。

神威と一緒に園児たちと遊び始めた。
先輩と直接話した事はないけど、学園での姿からは想像できない程
楽しそうにしている。小さい子供が好きなんだろうか?

「何をしている?」
誰かが近づいてくるのに全く気付かなかった。これはマズイ…
塀にへばり付いて中の様子を窺っている俺はどう見ても怪しい。
「………………」

「そんなに警戒しなくてもいいぞ、怪しい者じゃない。」
俺は自分が不審者と間違われないか、ビクビクしてるだけなんだけど。

中年の男性は俺の心配を他所に続けた。
「私はニーニャ、クンプレアーノス保育園の園長だ。
 制服から察するに君は神威君とジノーヴィー君の友人だろう?」

「ええ、まあ…」
嘘は言っていない。

「そうかそうか、あの2人にはいつも助けられている。
 お迎えが遅い園児の相手をボランティアでしてくれていてな。
 君も手伝いに来てくれたのか?」

「いえ、ちょっと寄ってみただけなんで、失礼しまーす!」
俺は咄嗟に逃げ出した。

「ふぅ…」
危ない所だった。あのまま中に入って行ったら
神威を尾行してたのがバレバレじゃないか。

それにしても神威はともかくジノーヴィー先輩は意外だったな。
学園のエースが保育園でボランティア活動か…
人は見かけじゃ分からないもんだ。

さて家に帰ろうか。

★その46

「ただいまー、おわっと!」
勢いよく家の玄関を開けた瞬間、ベアトリスとぶつかりそうになった。
後ろにアイビスもいる。

「もう帰ってたのか。そんでもって2人でお出かけ?」
「おかえり兄さん。ちょうどよかったわ。買い物に付き合ってよ。」

買い物に付き合う=荷物持ち、という図式が容易に想像出来る。
でも、たまには兄らしい事をするのも悪くないか。付き合ってやろう。
「別にいいけど、何買うつもりなんだ?」

「アイビスの服よ。姉さんのお古ばっかりじゃ可哀相だし
 ちょっとサイズが合ってないのよね。」
確かにアイビスは服の袖や裾を少し余らせている。

それならサイズ合わせも兼ねて、荷物持ちはアイビスがいるんじゃないか?
と思ったが、ベアトリスの事だ2人じゃ持ちきれないくらい買うつもりなんだろう。
俺と違ってこいつは高給取りだからな。

こうしてベアトリスとアイビスの買い物に付き合う事になった。
荷物持ちとして…

2人は繁華街にあるデパートの高そうな店をグルグル回っている。
女の人は基本的に買い物が遅いというがベアトリスは例外、即決タイプだ。

ただ買う量が尋常じゃない。気に入った物は見境なくお買い上げ。
加減というものを知らない。
店を出る度に荷物が増えていく、そろそろ俺の腕部が重量過多…

「よし!こんなものかしら。ちょっとお手洗い行ってくるわね。」
やっと満足してくれたみたいだ。

「こんなに沢山…よろしかったのですか?」
引っ張り回されていたアイビスが申し訳無さそうに呟いた。
圧倒されっぱなしだったんだろう。

「いいんじゃない?ベアトリスが好きでやってる事だ。
 それにあいつが歳相応に買い物を楽しんでる姿は結構レアなんだ。」

「そう…なのですか…?」
「申し訳無さそうな顔より、ありがとうの方が喜ぶと思うぞ。」

「わかりました。」
アイビスは帰ってきたベアトリスに礼を言いに行った。

ベアトリスのアイビスに対する興味は研究者としてのものかと思ったが
どうも違うようだ。

よく考えてみれば当然かもしれない。
ベアトリスは飛び級しまくってるせいで歳の近い友達が少ないからな。
フォーミュラFでも周りは年長者ばかりだし。友達ができたみたいで嬉しいんだろう。

「そろそろ帰りましょ。」
「そうだな、俺の両腕が千切れる前に帰ろう。」

ガヤ、ガヤ、ガヤ、ガヤ、ガヤ、ガヤ、ガヤ、ガヤ…

1階の出入り口付近に凄い人だかりだ。
「催し物会場で何かしてるのか?」

「アーケード・コアⅩⅢの体験会をやってるみたいよ。」
「あれってもうⅩⅢまで出てるのか。」

『アーケード・コア』っていうのはACを操縦して戦う
メカカスタマイズアクションゲームだ。
俺も小さい頃に近所のゲームセンターでよくやったな。
あの時はⅤぐらいだったか、結構な人気で今でも続いているようだ。

「そういえば買い物した時に体験チケット2枚貰ったわね。兄さんやってみたら?」
「いいね~、ベアトリスちょっと揉んであげよう。」

「アタシはああいうの苦手だからパス。代打アイビス!」
「私ですか?」

「大丈夫、機体はアタシが考えてあげるから。」
「でも…あの…」
半ば強引に対戦相手が決定。

順番を待っている間に体験会の係員さんが簡単なレクチャーをしてくれた。
俺が遊んでいた頃よりだいぶ進化しているみたいだ。
本物のACにかなり近づいている。

30分程待った頃にやっと俺たちの番が回ってきた。
「俺の実力を見せてあげようじゃないか、アイビス君!」
「よろしくお願いします。」

案内されたプレイヤーシートはゲーム機と言うより
学園にあるシミュレーターに近い。かなり本格的じゃないか。

向こう側でベアトリスはアイビスの横に付いてアセンを指示している。
さて、俺も取り掛かるか。

授業で使ってるガチアセンに似せて機体を組もう。
大人気ないって?
ハッハッハッハッ、俺は遊びにも全力で臨む主義なのさ。

ピッ、ポッ、パッと。
よし、できたぞ。

しばらく経って対戦相手にも準備完了の文字が出た。
始まるみたいだ。

 3
 2
 1
BATTLE START

遮蔽物の無いドーム状の景色が画面に映し出された。
アリーナステージが選択されたのか。

アイビスとの距離が近い。アセンを目視で確認。
オーソドックスな軽二か…
素人でも扱いやすいようにベアトリスが考えたんだろう。

準備運動がてらブーストを吹かして後退してみたが。
学園のシミュレーターに近い感覚で動ける。最近のゲームは凄いな。

そして俺が負ける要素は無くなった。
さあ、覚悟してもらおうかアイビス!

こっちから仕掛けてやろう。

おっ、ちゃんと避けてる。

じゃあ、これはどうかな?

まだ避けれるか、だが偶然はそう続かないぞ。

おっと、今度は反撃してきた。

ちょっと当てられたか、やるじゃない。

なんだと!追撃?

一気に畳み掛けるつもりか。

ちょっ…ヤバ…

ああ…ええ…

YOU LOSE

あれ?負けた…

「兄さんちょっと手を抜きすぎなんじゃないの?」
いや、全力でやったんですが…

「まあ、ゲームで本気出すのも大人気ないし~
 あはは、あはは、あはははは…」
どうしてこうなった?

「こんな感じでよろしかったのでしょうか?」
「兄さん手を抜いてたんだって、でもアイビス凄かったわよ!」

「そうだな凄かったな、まあ俺が本気を出せば一発なんだけどな。」
口では何とでも言えるが自分に嘘はつけない、むなしい…
俺の自尊心ががががががが…

「さあ、帰りましょ。」




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