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★その25

今日はいつもより1時間ほど早く家を出た。
学園で自分のアセンを見直そうと思ってね。

クラスのみんなは既に自分のスタイルを確立して詰めに入ったり
バリエーションを考えている段階だ。
人より遅れている分は努力で補うしかない。

昨日の夜、ベアトリスにアセンの講義をしてもらって、基礎は大方理解できたぞ。
妹先生に散々馬鹿にされながら教わった。
本当は俺、褒められて伸びるタイプなんだけど、まあ贅沢は言ってられん。

よし、学園に到着だ。
おや、あそこに見えるのはエクレールさんじゃないか。
声を掛けてみよう。

「おはよう、エクレールさん。」
「おはよう、槍杉君。朝早いのね。」

「授業で作ったアセンを見直そうと思ってさ。エクレールさんも早いね。」
「私はこれから部活の朝練よ。」

エクレールさん部活に入ってるんだ。

 《やっぱり、ブレオン部?》
⇒《まさか、武器腕ブレード愛好会?》
 《ひょっとして、剣道部?》

「まさか、武器腕ブレード愛好会?」

「ハズレ、私が所属してるのは剣道部。」
エクレールさんは長い袋を俺に見せながら言った。
中には竹刀が入ってるんだろう。

「へぇ、剣道部か。エクレールさんはブレード系の部活に入ってると
 思ったんだけどな。」
「ACも人型だし、剣道は間合いの取り方とか勉強になるのよ。」

「なるほど、そういう事か。」
ここまで情熱をかけるなんて、本当にブレード好きなんだな。

「じゃあね、槍杉君。」
エクレールさんは行ってしまった。
俺も教室に行こう。

教室にはまだ誰もいない。アセンに集中できそうだ。
ベアトリスに教えてもらった事を活かしてアセンを再構築してみよう。

試行錯誤して中二のフレーム構成を全体的に練り直した。
ブースター、ジェネレーター、ラジエーターの組み合わせも悩むな。
データ上の事なんだから最上級の物を詰め込めばいいかと思ったが
そうでもないらしい。昨日ベアトリスに怒られてしまった。
武装やフレームとのバランスが大切なんだと。

武装は標準ライフルにロングブレード、背中にグレネードと小型ミサイルを積んだ。
ネクストではあまり使わなかったブレードを装備させたのは
多分エクレールさんの影響だろう。

よし、こんなもんでいいか。あまり癖のない感じに仕上がったと思う。
ミッションもAC戦もこなせるバランス型を目指したつもりだ。

周りを見ると教室に生徒がかなり集まっていた。
時間を忘れてアセンに没頭してしまったらしい。

「よう、槍杉。朝からアセンのお勉強か?ヒャッハー!」
神威だ。こいつは朝からテンション高いな。

「おはよう、神威。まだ自分のアセンが全然出来てなかったからな。
 それじゃあ、実技の授業で困ると思ってさ。」
「今日は俺様の大好きな『模擬依頼』の授業があるからな。
 そのためか、ヒャッハー!」
その通り、この授業の為にまともなアセンを作っておきたかったんだ。

神威と話しているとクライン先生が教室に入ってきた。
「授業を始める。お前たち席に着け。」
流石ナインブレイカー。すぐに教室が静かになった。

「槍杉とジナイーダはこの授業は初めてだな。
 私が担当している『模擬依頼』の授業について簡単に説明しておく。
 この授業は実際の依頼を想定して行われる。
 授業の始めに依頼内容が伝えられ、その情報から20分で準備を整え
 シミュレーター室でオペレーター科と合流。一斉に模擬依頼を行う。」

オペ科の生徒と合同で実戦形式の依頼に挑戦する授業か。

「評価基準は『タイム』『被弾率』『命中率』『弾薬費』そして『特殊加減』だ。
 特殊加減は依頼ごとに異なる基準が設定されている。
 これらの項目がポイント化され、その総合ポイントで競う。
 撃破された者は問題外だ。2人とも理解出来たか?」

「は、はい。」
大体分かった。できるだけ損害を出さずに早く依頼をこなせばいいんだな。
ジナイーダさんも静かに返事をした。

「では依頼内容を伝える。今回は市街地を制圧しているMT部隊の排除だ。
 機種や数は不明。部隊の全滅を以って依頼完了とする。
 特殊加減は市街建造物への被害。これが減点対象となる。」

市街地のデータが配られた。
分かっているのは作戦領域の地形と、目標がMTの部隊ってだけか。

「比較的簡単な内容だ。では今より20分、時間を与える。
 アセンの調整や地形の把握、好きに使え。」

俺は…

 《アセンを再調整する。》
⇒《市街の地形を憶える。》

与えられた目標の情報は少ない、対策を考えるのは難しいな。
アセンはさっき作ったので臨むとして、市街地の地形を頭に入れておこう。

 ・
 ・
 ・

「そこまで。パイロットスーツに着替えて第5シミュレーター室に集合しろ。」

★その26

更衣室でパイロットスーツに袖を通す。レイヴン用のは初めてだな。
サイズは合ってるのに、慣れないせいか違和感がある。
何だか少し気持ち悪い…

着替えに手間取っている間にみんな行ってしまった。
俺もシミュレーター室に急ごう。

第5シミュレーター室はここか。
この部屋は広いな、シミュレーターが40機近く並んでいる。
ちなみに第1~6がノーマル用で、第7~9がネクスト用の
シミュレーター室になっている。
ノーマル用のシミュレーター室に入るのは初めてだ。

部屋にはクラスメイトとオペ科の生徒が集まっている。
俺が最後かな?

「よし、R-2-1全員集まったな。それでは各自使用するシミュレーターを伝える。」
クライン先生が番号を読み上げていく。
「槍杉、32。」
俺は32号機か。

「漏れている者は居ないな?自分のシミュレーターに移動して
 アセンデータを入力しろ。入力が終わった者は待機して待て。」
さてと、行きますか。

当然と言えば当然だがシミュレーターの中身はノーマルのコックピットを模して
作られていた。外観はネクスト用のと変わらないカプセル型なんだけどな。
よし、アセンデータの入力が終わったぞ。

コン、コン

外からカプセルをノックする音が聞こえる。
パートナーが来たのかな?

カプセルから出ると上品な感じのする女の子がいた。
よかった、女子オペレーターに当たったぞ。

「はじめまして、今回あなたのオペレーターを担当させてもらう
 ネル・オールターです。よろしくレイヴン。」
「槍杉 洋平です。よろしく。」
彼女と挨拶を交わして軽く握手をした。
俺のフルネームを聞いても笑わないとは、人間が出来ているな。

転科してきたばかりだって事を一応伝えておくか。
「実は少し前にレイヴン科に来たばかりなんだ。
 最善を尽くすけど、君の評価に響いたらゴメン。」

「そうなんですか…でも大丈夫ですよ。オペレーターの評価は
 パートナーのスコアには左右されませんから。
 純粋にオペレーティングの内容が評価されるんです。
 槍杉さんは思いきりやってください。」

「ありがとう。そう言って貰えると助かるよ。」
優しい子だな~。嫁にもらうならこういう気遣いが出来るタイプが理想だ。

「それにしても模擬依頼の授業は凄いね。
 こんなに沢山のシミュレーターを一斉に動かすなんて。」
「同じ内容のミッションを一斉に行うのは公平性を保つ為だと思います。
 順番だと後から挑戦する人が有利になってしまう可能性がありますから。」

「なるほど!」
ネルさんは俺のくだらない話にも真面目に答えてくれる。
何でもそつなくこなす優等生って感じがするな。

「ミッションを確認しておきましょう。」
「了解。」

「今回は輸送機から槍杉さんを作戦領域に投下します。
 目標は市街地を制圧しているMT部隊。
 建造物への被害が減点対象なので気をつけてくださいね。」

「建造物を盾に使えないのが辛いけど、それ以外は大丈夫そうだ。」
「頑張ってください。では私は行きますね。」
彼女はオペレーションブースの方へ行ってしまった。

さあ、こっちもシステムを立ち上げるか。
ピッ、ポッ、パッと。

座学でACの説明を受けている時はよく分からないのに
実際にパネルを触っていると自然に手が動くんだよな。

これはあれか、難しい数式とかは使わないとすぐ忘れるのに
身体で覚えた自転車の乗り方とかは一生忘れないってやつ?

「槍杉さん聞こえますか?」
ネルさんからの通信だ。
「バッチリ聞こえてますよ、ネルさん。」

「これより作戦領域にACを投下します。ご武運を」

★その27

メインシステム 戦闘モード 起動します

ACが輸送機から投下された。ジェットコースターの降りで感じる
内臓が浮き上がったような不思議な感覚。
少しずつブースターを吹かして、その感覚を消していく。
着地成功だ。

市街地のど真ん中に降ろされたみたいだな。
大きなビルに囲まれている。

先ずはレーダーを確認。何も映ってない。
MT部隊との距離がまだ離れているのか?

「敵部隊の規模を確認します。」
「了解。」
慣らし運転も兼ねて、ちょっと前進してみるか。

ガシャン、ガシャン、ガシャン、ガシャン、ガシャン、ガシャン

うん、いけそうだ。思い通りにACが動いてくれる。

「槍杉さん、後ろ!」
「えっ?!」
咄嗟に上空に飛び上がる。

ドォォォォォン

さっきまで俺がいた場所に無数の攻撃が着弾した。

レーダーには何も映っていなかったぞ。
遠距離からの攻撃?ステルスMTか?
いや違う…これは…俺がレーダーを装備していないんだ。

しまった、ノーマルはレーダーが頭部内臓型で付いてないタイプもあるんだった。
地形把握よりもアセン確認をすべきだったか。

テンパってて射角も分からなかった。
「くそっ、敵は何処だ?」
見通しの利かない市街地でレーダー無しとか最悪じゃないか。

「落ち着いてください槍杉さん。そこから3ブロック先を左に行った所に
 身を隠せそうな路地があります。そこで態勢を整えましょう。」
「りょ、了解。」

何処から攻撃されるか分からない恐怖に怯えながら路地まで辿り着いた。
「どうしたんですか?トラブルですか?」
「ゴメン、レーダーがあるつもりで動いてたんだけど、実際は装備してなかった。」
俺、情けねぇ。

「…こちらでも確認しました。遮蔽物の多い場所でレーダーが無いのは苦しいですね。
 慣れていない場合は特に。
 こちらで確認した敵の位置情報をそちらのレーダーに反映させます。
 若干のタイムラグはありますが、無いよりはマシでしょう。」

「そんな事が出来るの?」
「少し待ってください。」

 ・
 ・
 ・

「お待たせしました。設定完了です。」
レーダーに赤い点が12個表示された。

「ありがとう、これで何とかなりそうだ。」
ネルさんは凄い。今までこんなサポートしてもらった無いぞ。

それに比べて俺は…駄目すぎる。
いや、へコんでいる場合じゃないな。気を取り直して行こう。

レーダーに映っている赤い点は3つずつ固まっている。
3機編隊×4か、集結されると厄介そうだ。
タイムも気になるし速攻で行こう。

一番近い編隊との距離を詰める。
見えてきた。赤い人型のMT、同タイプが3機。

「機種特定、クレスト社製の重装甲MT、CR-MT85Bです。
 装甲はありますが動きは速くありません。大型のバズーカに注意して。」

交戦距離に入った瞬間にライフルを撃ち込んでみたが効果はイマイチ。
やっぱり硬いな。
3機のMTからパルスとバズーカの反撃がきた。

”避けると建物に被害が出るんじゃないか?”
こんな考えが頭を過ぎり、俺の回避動作を遅らせる。

「くそ…」
パルスを少しもらってしまった。

ここは
 《ダメージ覚悟で突撃する。》
⇒《上空から攻めよう。》

上空から攻めよう。
これなら攻撃を避けても周囲の被害を減らせるはずだ。

脚で地面を蹴ってその勢いを殺さないままブーストで高度を上げる。
この辺りで十分か。

MTの真上から一気に降下する。迎撃は思っていたよりも激しい。
避けるのに神経をすり減らす。

どんどん距離が縮まっていく。
砲撃を避けるのが苦しくなってきた所で3機の中心にグレネードを撃ち込んだ。
MTがよろめき、攻撃が止む。
「もらったぁ!」

ズザァァァン
着地前に、1機

ズザァァァン
地上に降りて、1機

ズザァァァン
死角に回り込んで、1機

ロングブレードでMTを切り裂く。

結構いけるじゃないか俺。
弾薬費も節約できるし、ブレードを積んでてよかった。

「残り、敵9機です。」

★その28

同じ要領でMTを撃破していく。
基本的にACとMTの性能差はかなりある。
上手い対策さえ思いつけば葬る事は容易い。

長い得物を選んだのは大正解だったな。
動きの遅い目標になら俺でも確実に当てることが出来る。

「これでラストだ。」
最後のMTをロングブレードで薙ぎ払った。

「ふぅ…」
「作戦領域に敵反応ありません。作戦成功です。
 APは80%以上残っていますね。弾薬費もかなり抑えられまし…
 待ってください…何かこちらに向かってきます。
 この反応…AC?!」

やっぱり来たか…、変だと思ったんだよな。
レーダー騒動で始めはてこずったけど、それを除けば簡単すぎるミッションだ。
クライン先生の「比較的簡単な内容~」って台詞も怪しかった。

”傭兵の仕事に想定外の事態は付き物”
日頃からセレン姉さんがこう言ってるせいで用心する癖が付いている。

ブレードに拘ったのは弾薬費の為だけじゃなかったのさ。
温存しすぎて逆に結果が悪くなる事もあるけど、今回は当たりみたいだ。

遅れてこちらのレーダーにも反応があった。
「放置はできませんね。迎え撃ちましょう。」
「了解!」

わざわざ市街のど真ん中で戦って、周囲の被害を増やすのも馬鹿らしい。
こっちからお出迎えしよう。
敵反応目掛けてOBで疾走する。

白いフロートACが見えた。
「あれだな。」
まだ市街地に入っていない、間に合った。

「機体照会、VRアリーナ所属のランカーAC、エイプリルフール
 中距離高速戦闘を得意とするバランス型フロートです。」

ネルさんの通信と同時にフロートACの武装データが送られてきた。
両手にライフル、背中にレールガンとハイアクトミサイル、それに連動ミサイル。

俺の武装は標準ライフルとロングブレード、背中にグレネードと小型ミサイル。
こっちはAPも少し減っているし、ブレードを当てられないと火力負けしそうだな。
作戦を考えている時間は無い、来た。

互いの攻撃が交差する。俺のミサイルはかわされ、フロートのミサイルは命中した。
こいつ速い、ブレードなんてとてもじゃないが当てられそうにないな。
遮蔽物の無い所で迎え撃ったのは失敗だったか…

こちらが怯んだ隙にレールガンの追い討ちが襲い掛かってきた。
ギリギリで回避する。砲身に収束する光を見逃していたら直撃していたかもしれない。

今度は俺の周りを旋回しながら両手のライフルを乱射してきた。
これは避けきれない。
「くそ、このままじゃ…やられる。」

「AP60%」
焦るな、フロートとの戦い方をベアトリスに教わっただろ。

「AP50%」
思い出せ、思い出せ、思い出せ、思い出せ…

そうだ、思い出したぞ!簡単な事じゃないか。
脚が速くて捕らえられないなら、脚部を壊せばいいんだ。
フロートは全体的に脆い。

反撃開始だ。
サイトの中心点を少し下にずらす、ちょうど脚部に攻撃が集中するように。
回避動作は殆ど捨てて、敵の脚部破壊に全神経を集中させる。

「AP30%、危険です。」
これ以上攻撃をもらうと、こっちが先に破壊されてしまう。

祈りを込めてトリガーを引き続けた、その時
敵の動きが急に鈍った。

いけるッ!

脚部が逝ったのを確認するのと同時にOBを起動、一直線に突撃した。
フロートACは自分の得意な中距離を維持しようと後退するが、遅い。
距離はどんどん縮まっていく。

敵は距離を離すのを諦めたんだろう、レールガンを展開して迎撃の構えを取った。
これさえ避ければ…

レールガンの砲身に収束した光が目の前で開放されるのに合わせて
俺は機体を沈ませた。
こちらのコアを狙って放たれた閃光は頭部に直撃、メインカメラが吹き飛ぶ。

この距離ならカメラが無くともやれる。
すれ違いざまに敵のコアをロングブレードで横薙ぎに切り払う。

ズザァァァン

直撃したはずだが、敵はまだ生きている。仕留め損なった。
ふんばれ、この機会を逃したら負ける。もう一手だ。

俺はブレードを振った勢いを利用して機体を無理やり反時計回りにターンさせた。
これで仕留める。エイプリルフールの背後からゼロ距離でグレネードを撃ち込んだ。

「敵AC撃破です。」

密着して撃ったせいでフロートAC諸共グレネードの砲身も潰れてしまった。
満身創痍だが、勝ったぞ。
「ふぅ…」
「やりましたね、槍杉さん。今度こそ作戦成功です。お疲れ様。」

作戦目標クリア システム 通常モードに移行します

★その29

フラフラになりながらカプセルを出た。
ACは満身創痍、俺は疲労困憊。
汗が額を伝う。パイロットスーツの中もぐっしょりと濡れている。

スコアはどうだ。中央にある巨大なディスプレイに目をやった。
ミッションスコアがずらっと表示されている。
一覧の下から順番に自分の名前を探す。

下の方のスコアには全てマイナスが付いていて数字が赤い。
これは依頼を失敗したって事だろう。
クラス全体の3分の1ぐらいが赤いスコアで埋まっている。
これ難易度設定、間違ってないか?

数字が白くなってすぐ、神威 瑞穂の名前を発見。
大好きな授業と豪語してた割には大したことないじゃないか。
『被弾率』『弾薬費』『特殊加減』のスコアが特に低い。
確かモヒカンはタンク脚だったよな。
今回のミッションは相性が悪かったのかもしれない。

全体の3分の2辺りで自分の名前を見つけた。
『タイム』と『被弾率』のスコアが足を引っ張っている。
初めてのミッションだし、まあ上出来だろう。
ネルさんにかなり助けられたな。

少し上にエクレールさんの名前もある。
『弾薬費』のスコアが異様に高い。
まさかあの省エネ男前アセンで行ったんだろうか…

トップは2位以下に大きく差を付けての独走、ジナイーダさんだった。
全ての項目が信じられないスコアを叩き出している。
同じ2年なのに、これ程の差が出るんだな。
どうやったらこうなるのか今度聞いてみたいもんだ。

「お疲れ様。」
ネルさんがタオルを差し出してくれた。
「ありがとう。」
疲れてる時に優しくされるとキュンと来てしまうな。

「ネルさん、俺の嫁になってくれませんか?」
なんてことは初対面じゃ流石に言えない。

「今回のミッションは難易度が高かったですね。」
「ネルさんのサポートが無かったら俺のスコアも真っ赤だったと思う。
 本当に助かったよ。」

「フフッ、煽てても何も出ませんよ。私は少しお手伝いしただけです。」
彼女は至って謙虚だ。煽てたつもりは全く無い。
本当の事を言っただけなんだけどな。

「O-2-2、集まってください。」
オペ科の教師が集合を呼びかけている。

「機会があったらまた組みたいですね。それじゃあ!」
ネルさんは行ってしまった。

その後、俺達のクラスも集まってデブリーフィングを行い
シャワーを浴びて教室に戻った。

★その30

模擬依頼の後は特に面白い出来事も無かったので割愛。
本日ラストの授業『道徳』の時間が今さっき終わった。

いい歳して道徳なんて変だと思うかもしれないけど
一般学校での道徳教育とはちょっと違う。
傭兵業界での規範、行動の指針なんかを教わるんだ。
世間一般での道徳とは真逆になっている事が多いな。

学園を卒業後、初めての依頼で怖気づいて途中で任務放棄する人が結構いるらしい。
そうならない為の心構えというか、何というか…
まあ簡単に言うと、倫理観の一部を麻痺させる授業だ。

神威は相変わらず寝てる。
いつもは授業が終れば自然に目を覚ますのに、今回は目覚めないな。
模擬依頼で疲れているんだろうか?しょうがない、起こしてやるか。
「神威、おい、神威、授業終わったぞ。」

「むにゃむにゃ…テックボットちゃん、そんなに一遍には無理だぜ
 順番なんだぜ~ヒャッハ~!」
涎を垂らしながら、凄く楽しそうな夢を見てるな。
そっとしておいてやろう。

神威を放置して帰り支度をしているとクライン先生がやってきた。
「槍杉、少し話がある。」
「は、はい。」

「ジナイーダ、お前もだ。」
「分かりました。」
ジナイーダさんも一緒か。一体なんだろう。

「単刀直入に言おう。お前たちフライトナーズに入ってみる気はないか?
 模擬依頼のAC戦でお前たちの力は見せてもらった。2人とも申し分ない。」
あのフロートACは俺たちを試すために入れたのか。

「フライトナーズにはお前たちのような強い力が必要だ。」
―――でも待てよ。
風紀部隊といっても、別にACでドンパチする訳じゃないし
レイヴンとしての力は関係ないような気がするんだけど。
…まあ強い方が尊敬されるし、発言力もあるからなのか?

「お断りします。」
早ッ!俺が色々考えてる間にジナイーダさん、即答だな。

「槍杉、お前はどうだ?」
こっちに回って来た。こうして対面しているとクライン先生の威圧感は凄い。
何だか断りにくいぞ…

 《入隊してみます。》
⇒《遠慮しておきます。》

「遠慮しておきます。レイヴン科に来たばかりで自分の事だけで精一杯ですから。」
バイトもあるし、これ以上学園に拘束されるのは嫌だ。
それにフライトナーズに入ったら古王を追い掛け回さなくちゃいけなくなる。
ぞっとするね、想像するだけでもめんどくさい。

「そうか…気が変わったら、何時でも言いに来い。」
クライン先生は落胆した様子もなく、そのまま行ってしまった。

「何だか急な話だったね。」
「そうだな。」
「ジナイーダさん即答だったね。」
「学園の風紀に興味はない。」

ジナイーダさんに嫌われるような事はしてない筈なんだけどな。
凄く素っ気ないの反応だ。

⇒《模擬依頼の話題を振ってみる》
 《別の話題を振ってみる》

「そういえば模擬依頼のスコア断トツだったね。どうやったらあんなスコア出せるの?」
「お前たちのレベルが低いだけだ。」
ジナイーダさんは行ってしまった。
別の話題を振るべきだったか?

そういえば自己紹介の時、只のレイヴンに興味は無いとか言ってたな。
当然、俺も興味の対象外なんだろう。
何を話しても結果は変わらなかったかもしれない。

俺もそろそろ行こうか。
この後、バイトを入れてある。BARテックスに直行しよう。

★その31

BARテックスに到着だ。
店はまだ開店前、預かっている鍵で中に入ろう。
「おはようございまーす。」

返事無がない、しかも店の中は真っ暗だ。誰も居ないなか?
スタッフルームのテーブルの上に置き書きを見つけた。

今日はマスターとンジャムジさんが2人とも出れないので任せる。
日付が変わる前に店は閉めてくれて構わない。
という内容が書いてあった。

2人同時に出れないのは珍しい。
今日は1人か…、少し心細いな。

とりあえず開店の用意をしようか。
店内清掃を済ませて、入り口のプレートをOPENに変えた。

今日もBARテックスは閑古鳥が鳴いている。
数時間経って来たお客の数はたったの8人だけ。

俺1人しかいないし、あんまり忙しいのも困るけど
これじゃあ、俺のバイト代も儲かっていないんじゃないかと心配になる。
殆どの時間を酒の在庫整理とグラス磨きに使ってしまった。

「ふぅ…」
そろそろ店を閉めようかと思っていた時に女性のお客さんが入ってきた。
今日は早仕舞だと言って帰ってもらおうか…

いや、せっかく来てくれたお客さんだ。
明日は学校休みだし、ちょっとぐらい遅くなってもいいよな。

「いらっしゃいませ。」
彼女はカウンター席に座って、恐ろしく度数の高い酒を注文した。
それを平然とした顔で呑んでいる。

「さびれた店にしてはマシな酒を出すじゃないか、槍杉洋平君。」
「えっ?」
店のユニフォームに名札は付いていないぞ。
この人どうして俺の名前を知っているんだ?

「そんなに警戒するな、怪しい者じゃない。私はラナ・ニールセン
 AC学園のオペレーター科とリサーチャー科で教鞭を執っている。」
びっくりした~、学園の教師なのか。
他の学部の先生は全然知らないんだよな。

「君に興味があってね。下水道での一件、大活躍だったそうじゃないか。」
爆弾MTの事を知ってるということは、ラナ先生は学園長に信用されているんだろう。
話しても大丈夫そうだ。

「たまたま運がよかっただけですよ。」
「謙遜か?」
「無我夢中でやっただけです。」
「若いな…」

ラナ先生は俺を品定めするような目で見ている。
「君は自分がどれ程大きな事をしたか、分かっていないようだ。」
「はぁ…」

どういう事だろう?あまり実感は無いけど、沢山の人命を救ったって事か?
でも褒められてるような感じじゃない。

「また寄らせてもらうよ。」
ラナ先生はそう言って店を出て行った。

一体何が言いたかったんだろう…まあいっか。
俺はプレートをCLOSEにして後片付けを済ませ、店を出た。

愛用の自転車で夜道を走る。
かなり遅くなっちゃったな、この辺りは治安もあまりよくないし急いで帰ろう。

家に着くと玄関前に大きな荷物が置かれていた。
「何だこれ?」
届け先の欄に姉さんの名前が書かれている。
「セレン姉さん宛か。」
それにしても届け物を外に置いていくなんて、無用心すぎるだろ。

届け物が放置されてるって事は、まだ誰も帰ってないのか。
そういえば今日は姉さん帰りがかなり遅くなるって言ってたな。
ベアトリスも仕事場に泊まりとだか。
荷物は家の中に入れといてやろう。

「ぐぐぐ…重い…」
姉さん一体何買ったんだろう、腰が抜けそうになったぞ。

「ふぅ…」
今日も疲れたなぁ。さあ、風呂に入って休もう。




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