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★その11

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目覚まし時計を勢いよく止める。何度聞いてもこの目覚ましには慣れないな…
ノーマルの起動ボイスと同じ音で、朝気持ちよく起こしてくれるって代物らしいが
この目覚ましで気持ちよく起きれた例は無い。
何でこんなのを使ってるかというと、ベアトリスが誕生日にくれた物だからだ。
相変わらずいいセンスしてる。

昨日寝るのが遅くなってしまったせいで、まだ少し眠い。
制服に着替えて1階に降りると、朝食が始まろうとしていた。
今日は3人一緒に朝食を食べられるな。

セレン姉さんは新聞を読みながら、ベアトリスは端末をいじりながら朝食を食べている。
会話はない…
2人とも、朝はかなりテンションが低いのだ。
試しに何度か話しかけてみたが「ああ。」とか「うん。」とかしか返ってこない。

せっかく3人で朝食を食べているんだ。
楽しい雰囲気にしてやろうと思って、会話が弾みそうなことを言ってみた。
「最近2人とも、ちょっと太ったんじゃないの?」

案の定、2人から「ああ。」と「うん。」の返事が返ってきた。
少し経って、自分たちが答えてしまった質問の内容に気付いたらしく
凄い目で俺を睨んでいる。軽いジョークだったんだけどな…

ベアトリスには端末で頭を、姉さんにはグーで顔を殴られた。
「いってきます…」
送り出しの言葉は2人から返ってこない。

朝から酷い目に遭った…
自転車を漕ぎながら、殴られたところを摩る。相当強く殴られたぞ。
学園の駐輪所に着いた。停めてあったバイクのミラーで自分の顔を確認すると
やっぱりアザになっている。姉さん顔はやめてよ…

水道で濡らしたハンカチで顔を冷やしながら教室に入った。
「よお~、洋平。何だぁ、その顔は?」
古王だ。
「ちょっとぶつけただけだよ…」
「ホントかよ、あのおっかない姉貴に殴られたんじゃねぇの?」
こいつの勘は獣なみだな。流石、野生児…

「お前の姉貴、ルックスは悪くないが、ちょっと気が強すぎる。
 まあ、俺はそういうのも嫌いじゃないんだがな。」
古王とセレン姉さんのカップリングを一瞬想像してしまった。最悪だ…
「人の姉をそんな目で見るな!」

古王は俺の反応を面白がりながら、自分の席に戻って行った。
授業が始まるみたいだ。教室に先生が入ってきたぞ。

新学期一発目の授業は『独立傭兵学』。
休憩を挟みながら午前中を丸々使うみたいだ。
1年の時には無かった授業だ。教科書があるから多分、座学中心なんだろうな。
予習はバッチリ、教科書の最初の方なら結構答えられるはずだ。

「新2年生。お前たちに1年間、独立傭兵学を教える
 ロイ・ザーランドだ。よろしくな。」
結構フレンドリーな感じのする先生だ。

「殆どの奴が俺と初対面になると思う。
 1年の時は独立傭兵学の授業は無かったからな。」
くだけた感じがいかにも独立傭兵っぽい。

「お前たちのデータは学部長から渡されているが、目を通していない。
 俺は自分の目で見たも以外は信用しないからだ。」
んん?何が言いたいんだこの人…
「この目でお前たちの実力を見ておきたい。そこで今日は模擬戦をやってもらう。」

「「ええーーーーーーーーー!」」
みんな一斉に声を上げた。
この展開は誰も予想できていなかったんだろう。

ロイ先生は構わず続けた。
「更衣室に新しいパイロットスーツが用意してある。
 それに着替えて、15分後に第8シミュレーター室に集合!
 あと、ネクストのアセンデータを持って来い、自分が一番得意なやつをな。」

優等生のジェラルド・ジェンドリンが手を挙げて抗議した。
「授業で使うと聞いていなかったのでアセンデータを持ってきていません。」
俺も持ってきてないぞ。
クラスの半数近くが「自分もです。」と言って手を挙げた。

「データを持ってきてない奴は企業標準機の中から好きなのを選ばせてやる。
 以上だ、遅れるなよ。」
ロイ先生はさっさと教室から出て行ってしまった。

完全に座学だと思ってた…。いきなりシミュレーターで模擬戦かよ。
騙して悪いがってレベルじゃないぞ…

★その12

とりあえず更衣室でパイロットスーツに着替える。
「古王、お前アセンデータ持ってきてるのか?」
「ああ、あるぜ。」
「お前にしては珍しく用意周到だな。」

「授業で使いそうな物は全部ロッカーにぶち込んでおいたからな。
 朝、全部持ってくるの重かったぜ・・・。もう二度と持って帰らねぇ。」
そういえばこいつ始業式の途中で帰って、授業予定表貰ってなかったな。
何の授業があるのか全く知らずに来たのか。あきれた…

第8シミュレーター室に続々とクラスメイトが集まってきた。
部屋にはネクストのコックピットを模したカプセルが20機ほど並んでいる。
これがシミュレーターだ。
この中に入ると、本物のネクストに乗っている状態に限りなく近づける。

授業で本物ネクストを使う事は殆ど無い。
学園のある不路夢市ではネクストの使用が禁止されているからな。
当然、学園内も禁止だ。

3年になると砂漠とかの無人地帯で本物のネクストに乗れるらしい。
わざわざ往復してると時間が掛かるので1~2週間の合宿をするそうだ。
ちょっと楽しそうだな。

「よし、全員集まったな。今から2人ずつ名前を呼んでいく。
 そいつが模擬戦の相手だ。」
ロイ先生は淀みなく対戦カードを決めていく。
実力差がかなりある組み合わせも目立つ。適当に決めているのかな?

古王の相手はサー・マウロスク、知らない奴だな。
古王はもちろん、サーも妙に自信ありげな顔をしている。
エイプは粗製で有名なドン・カーネルとか…
こいつは確か1年の途中でレイヴン科から編入してきたんだよな。

組み合わせがどんどん決まっていく。
 ・
 ・
 ・
あれ?最後まで俺呼ばれなかったぞ。

ロイ先生がこちらに近づいてきた。
「このクラスの生徒数は奇数だったな。槍杉、余ったお前の相手は俺がしてやる。」
「ええー!」
変な声が出た。
「そんなに嫌そうな顔をするなよ。」
言いながら、先生は俺の肩をおもいきり掴んだ。凄い馬鹿力。
何故か敵意のようなモノを感じた。気のせいか…?
気のせいだよな、先生とは初対面だし…

そろそろ模擬戦が始まるみたいだ。
初めの一組はかなり緊張している。シミュレーターに入る動きがぎこちない。
この様子を見ていた先生が適当な事を言った。
「新しいクラスだ。お互い知らない奴も多いだろう。親睦会だと思って気軽にやれ。」
こんな親睦会ねぇよ。と心の中で毒づく。

仮想空間上のネクストが映されているディスプレイを俺たちは見ている。
シミュレーターは他にも余っているが一組ずつやるらしい。
人の戦いを見るのも勉強だそうだ。

順番に模擬戦が行われていく。
勝った方は喜んだり、騒いだり、「当然だ」と、すかした態度を取ってみたり。
負けた方はみな一様にぐったりとしている。
シミュレーターでも結構疲れるんだなこれが、負けた時は特にね。

古王は得意の高機動戦でサー・マウロスクを翻弄。
エイプもドン・カーネルをミサイルでボコボコにしていた。
さあ、最後は俺の番だ。
企業標準機の中から入学したての頃に使っていたTELLUSを選択する。
現役リンクスの胸を借りるつもりで行かせてもらいますか。

シミュレーターに入ろうとした時にロイ先生が話しかけてきた。
「槍杉、せっかく俺とやるんだ、賭けをしないか?」
「えっ、賭け…ですか?」
「そうだ。お前が勝ったら前期の独立傭兵学の成績を無条件でGOLDにしてやる。
 俺が勝ったら、そうだな…。
 放課後に旧倉庫の掃除でもしてもらおうか。悪い話じゃないだろう?」

先生の申し出に歓声が上がる。本人の俺をほったらかして周りは大盛り上がりだ。

おいおい、冗談だろ?現役リンクスに俺が勝てるわけない。
こんなの受けたら旧倉庫の掃除をしますって言ってるようなモンじゃないか。
「冗談ですよね?」

「俺は本気だぜ。勿論ハンデは付けてやる。
 現役リンクスとリンクスの卵、お前が企業標準機だって事を吟味して
 俺のマイブリスのAPを三分の一からスタートってのでどうだ?」

クラスメイトたちから「受けろ」コールが巻き起こった。
なんだか断りにくい雰囲気になってきたぞ…

⇒《賭けを受ける。》
 《賭けを受けない。》

APを三分の一からスタートか…。悪くない条件かもしれない。
自慢じゃないがGOLDなんて1科目たりとも取ったことない。
それがこの勝負に勝てば手に入る。負けても掃除をするだけ。
よく考えるとローリスクハイリターンじゃないか!
「分かりました。受けましょう。」

今度は俺の返答に対して歓声が上がった。
こういうイベントが好きなのは普通の学校と変わらない。
「よし、決まりだな。」
ロイ先生は満足気な顔でシミュレーターの中に入っていった。

「男を見せろよ~、洋平。」
俺の背中を叩きながら古王が言った。
強く叩かれた背中がヒリヒリする。でも気合は入ったな。
これは古王なりの激励なのかもしれない。

俺もシミュレーターに入ってセッティングを済ませた。
目を閉じるとAMSを介してネクストが体の一部になっているような錯覚が起こる。
いつもの感覚だ。接続が正常に行われた証でもある。

TELLUSの武装を確認しておくぞ。
手にはプラズマライフルとレーザーライフル、背中にしょぼいASミサイル。
この3つで先生のネクストを倒さなければならない。
万全とは言えないが、GOLD評価の為にやってやろうじゃないか。

BATTLE START

戦闘開始の合図と共に、周囲の景色が映し出される。
真っ赤な仮想空間、バーチャルBだ。
遮蔽物が全くないという最悪の事態は回避された。

マイブリスの機体構成を記憶して一気にOBで距離を開く。
遮蔽物を盾にしながら作戦タイムだ。
俺は戦いながら考えるなんて器用な事はできない。

マイブリスはコア以外全てHILBERT。
アセンからAPを逆算すると約4万5千。つまり1万5千スタートって事か…
武装は手にハイレーザーとガトリング、両背中と連動にミサイル。
火力は高いが動きはそんなに速くなさそうだ。

ハイレーザーとガトリングにはそうそう当たらない。
怖いのはミサイルだ。だがそれさえ何とかなれば勝機はある。
相手のAPは既に三分の一なのだから。

得た情報から作戦を立てる。
まずASミサイルをあさっての方向に撃ちまくって相手の気をそらす。
その隙にOBで突撃、プラズマライフルを適当に撃つ。
ここでは正確に狙う必要はない。
プラズマのECM効果で相手のレーダーを撹乱するのが目的だからだ。
相手の混乱に乗じて死角を取り、プラズマとレーザーの一斉射撃。
AP1万5千ならこれで削り切れるはずだ。

我ながら悪くない作戦。これなら本当に勝てるかもしれない…

★その13

結果から言うと負けた…。惨敗だった。

今は昼休み、古王と林檎の3人で学食を食べている。
あの後、古王は俺のやられっぷりを散々馬鹿にして、笑い倒した。
まだ飽きないのか今度は、模擬戦の事を林檎に話して聞かせている。

「それでな林檎、洋平のやつミサイルばら撒いてOBで格好良く飛び出したんだがよ。」
そう、ここまでは作戦通り、完璧だった。

「プラズマ乱射してEN切らしてやんの、ロイのおっさんの目の前で。」
ここからが酷い…

「そらもうヨチヨチ歩いてんだからボコボコよ。」
もう止めてくれ…

「そんで、慌てて逃げようとした洋平の尻に、おっさんのミサイルが刺さる刺さるw」
我ながら最悪だ…

「俺を笑い死にさせる気かと思ったぜ。ウケを狙ったんだよな?洋平。」
こいつは俺が本気だった事を知ってて、こんな事言ってやがる。
林檎も腹を抱えて笑っている。こいつは味方だと思っていたのに、裏切り者め…

「うるせぇ!本気で勝ちに行ってたんだよ。」
古王と話していると、こっちまで口調が荒くなってしまう。
「俺ならハンデ無しでも殺れたぜ。」
こいつなら本当に勝ってしまいそうだから何も言えない…

新学期早々、放課後に旧倉庫の掃除か…。何でこんな事になってしまったんだろう。
今思えばペアを組まされた所から
ロイ先生の計画通りに事を運ばれていた様な気がする。
「ロイ先生に嫌われるような事はしてない筈なんだけどな…」

俺の呟きを聞いて、林檎が口を開いた。
「洋平君がウィン・D先生と仲がいいからじゃないかな?」
何でここでウィン・D先生が出てくるんだ?

「別にウィン・D先生と仲がいいって訳じゃない。
 ちょっと気にしてもらってるだけだ。」
「よく先生と話してるじゃない。他の人から見ると、仲よさそうに見えるよ。」
「仲がよさそうに見えるとして、それと何か関係があるのか?」

「ロイ先生はウィン・D先生に気があるみたいなんだ。
 何度かアプローチしてる所が目撃されてる。」
林檎は交友関係が広いだけあって情報通だ。
何故か人の学科の教師の事まで知っている。

ロイ先生がウィン・D先生に気があるのは分かったが、それに何の関係があるんだ…?
林檎に説明を求める。
「よく分からない。どういう事だ?」

古王が割り込んできた。
「鈍い奴だな。お前がウィン・Dのお気に入りだから
 ロイのおっさんにライバル視されてんだよw」
「ええーっ!!!」
驚きの声を隠せない。

古王が続ける。
「一発目の授業でお前をヘコましておこうって腹だったんじゃねぇの?」
そういう事だったのか…
先生から敵意のようなモノを感じたのは気のせいじゃなかった。
「酷い職権乱用だ。」

「でも賭けを受けたのはお前だ。
 GOLD評価って餌に、ホイホイ釣られちまったんだからな。自業自得だぜ。」
古王の言ってる事は正論だ。うう、言い返せない…

散々な昼食を済ませて教室に戻った。
午後からの授業は座学のみで、疲れた心と身体を癒すにはちょうどよかった。

模擬戦でのあまりに無様な戦い方からクラスでは
ドン・カーネルと共に2大粗製と呼ばれるようになってしまった。
一生の不覚…

___2大粗製の称号を手に入れた!

こんな称号いらねぇよ。でも簡単に捨てられるようなモノじゃない。
いつか返上しなくちゃな。

今日最後の授業が終わって、みんな帰り支度をしている時に古王が来た。
「賭けに負けたんだから、しっかり掃除してこいよ。じゃあな、洋平。」
不真面目な奴だがこういった勝負事には変にうるさいんだよな。
「分かってるよ、ちゃんと行って来る。」
俺の返事を聞いて古王はニヤニヤしながら去って行った。

「ふぅ…」
さてと、賭けの負け分を清算しに旧倉庫へ行きますか…

★その14

旧倉庫っていうのは今は使われていない古い倉庫だ。
なんでも学園が設立された当初に建てられた物らしい。
今では古くなった訓練用パーツとかの放置場になっている。

まあゴミ置き場みたいなもんだな。掃除をする意味もあまりない。
ここの掃除をしろっていうのは単なる嫌がらせな訳だ…

旧倉庫の前にやって来た。校舎から離れた草むらの中にポツンとある。
結構大きな建物だな。外装に所々ヒビが入っている。ボロボロじゃないか…
実は俺も中に入った事はない。
旧倉庫の鍵は預かってるきてるから、早速開けてみようか。

ギギギギギギギー

扉は物凄い音を立てている。もう何年も開けられていないのかもしれない。
開けた瞬間にモワッっていう音がしそうなくらい、埃が噴き出してきた。

中は酷い有様だ。床に4~5センチは埃が積もっている。
一応、箒と塵取は持ってきたけど、これじゃ間に合いそうにないな…

倉庫の中に入って周りを見回した。中は薄暗い。
壁にはAC用の古いライフルやショットガンなんかが立て掛けられている。
「おおお!」
他にもガトリングやバズーカ、隅には丸々一機、軽二のノーマルACなんかもあるぞ。

埃を落として確認してみると、まだ使えそうなパーツも結構ある。
故障したパーツだけじゃなく、型落ちした物もここに放り込まれているみたいだ。
売ればいいお金になるかもしれない…

パーツに気を取られていて、さっきまで気付かなかったが
よく見ると内側の壁や床にもかなりのヒビが入っている。
これ、危ないんじゃないか?

嫌な予感がしたので一旦倉庫の外に出ようとした時、何か硬いモノにぶつかった。
「いってぇ…」
俺が痛がっている間に倉庫の中では事態が急変していた。
立て掛けられていたライフルやショットガンがドミノ倒しの要領で次々倒れだしたのだ。
床は巨大なパーツが倒れる度に悲鳴を上げている。
そしてとうとう…

「嘘ッ…!」
嘘みたいな話だが、床が抜けた。
旧倉庫の床が抜け、パーツもろとも落下してしまった。

し、死んだかな…?
 ・
 ・
 ・
全身が痛い…。だがこれは生きている証拠だ。どうやら俺は死んでないらしい。
「ふぅ…」

辺りは暗い、腕時計に付いている小さなライトで状況を確認する。
先ずは自分の身体。
制服はボロボロ、擦り傷や切り傷だらけだが、骨折などの重傷はないみたいだ。
ああ、買い換えたばかりの携帯電話が粉々に…、なんてこった。

下には水が流れている。これがクッション代わりなってくれたらしい。
下水道に落ちたのか…

周囲には瓦礫やパーツが散乱している。
ノーマルACも一緒に落ちたみたいだ。これの下敷きにならなくて本当によかった…

上には大きな穴が開いている。倉庫も見えているが、下水道の天井は結構高い。
登れそうにないな…

「何で俺がこんな目に…。ロイのおっさんめ。
 もう先生を付ける必要もないだろう、全面戦争だ!」
………………1人で毒づいていても虚しい。出口を探そうか。

嫌な臭いがする。下水の匂いだろう。
長くいると気分が悪くなりそうだ。早くここから出たい。

ガシャン、ガシャン、ガシャン、ガシャン、ガシャン、ガシャン…
ャン、ガシャン、ガシャン、ガシャン、ガシャン、ガシャン…

何だろう、遠くの方から機械の足音のようなものが聞こえて来る。
2機分の足音だ。こちらに近づいてくるぞ。

一応警戒して、身を隠しながら覗き込んだ。
『何か』が下水道を歩いて来るのが見える。
暗いせいもあって、まだよく分からない。

そばを通り過ぎる時にやっと確認できた。
四角い箱型の胴体に逆脚が二本生えた格好のMTだ。
同じタイプが2機、並んで歩いている。

何でこんな所にMTが…。どこかの業者さんか?
通り過ぎた2機の背中を見て、その考えは吹き飛んだ。
背中に爆弾らしき物を積んでいたからだ。

テロリスト?狙いは学園か?
でもこの学園を攻撃して、得をするような奴はあまりいない。
学園には企業の資本がかなり入っている。企業が襲ってくるとは考え難い。
武装勢力も迂闊に学園を敵に回したくない筈だ。

そもそも本当に爆弾だったのか?

 《暗くて見間違えたんだろう。》
⇒《いや、間違いなく爆弾だった。》

いや、間違いなく爆弾だった。
それにMTは2機とも機銃で武装している。工事業者に武装は必要ない。
どうする、急いで先生を呼びに戻るか?時間は掛かってしまうが…

2機のMTは恐らく無人機、動きからAI制御と推測できる。
目的地に到達した瞬間に即、起爆する可能性も…
助けを求めに行ってる間に手遅れになる可能性が高い。
どうすればいいんだ…

数瞬の後、一つのアイデアが頭に浮んだ。
倉庫から一緒に落ちたあのAC使えないか…

思い立ったら直ぐ行動。時間が経てば選択肢は確実に減っていくのだから。
急いでノーマルACが倒れている所まで戻った。
手動でハッチを開いて中に乗り込む。

外装はボロボロだが中はマシな方だった。まだ生きているかもしれない。
祈りを込めながらACに火を入れる。
「かかってくれよ…」

キュ、キュ、キュ、キュ、キュィ、キュィィィィィィィィン

「かかった!」
コンソールに光が点り始めた。いけそうだ。
とりあえず立ち上がってみる。脚はまだしっかりしているみたいだ。
腕も俺が操作した通りに動いてくれる。
「よし、ちゃんと動く。」

次は武器だ。何か使えそうな物はないか…
色々な武器が落ちていたが、弾が入っていたのはガトリングとショットガンだけだった。
弾と言ってもペイント弾だが…。無いよりはマシか。
右手にガトリング、左手にショットガンを装備した。

後はぶっつけ本番。初めての実戦だが、やるしかない。
システムを戦闘モードに移行させるぞ。

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こんな状況なのに笑ってしまった。
あの目覚まし時計と全く同じ起動ボイスだったからだ。
おかげで少し緊張がほぐれたな。ベアトリスに感謝しておこう。
模擬戦のような失敗は許されない。行くぞ。

まずカメラを暗視モードに切り替える。ノイズが多い。
「オンボロめ…」
この際、贅沢は言ってられないか…

出来るだけ音を立てないように、後方からMTとの距離を少しずつ詰める。
「この辺りが限界か…?」
相手のレーダー範囲に入れば、こちらの存在に気付かれてしまうからな。
それでは奇襲が成り立たない。
MTの速度に合わせ、一定の距離を保ちながら後を追う。

ここからの勝負は一瞬だ。
MTの後方から一気に距離を詰めて、速攻で撃破する。
AIが任務達成不可能と判断した場合、即座に起爆する可能性も考えられるからな。
スピード勝負だ。

OBを起動。ACの背部にエネルギーが満ちてくるのが分かる。
下水道内に轟音が響く。
「まだ気付かないでくれよ…」

貯まったエネルギーを一気に開放して飛び出す。
機体がボロいせいでガタガタ揺れている、制御が難しい。
オマケに視界も最悪。

距離を半分ほど詰めた所でMTが旋回した。機銃がこちらを向く。
敵のレーダー範囲に入ったのだろう。無警告で撃って来た。

はい、テロリスト確定です。
これで万が一にも一般MTを破壊してしまったという事にはならない。
思い切りやらせてもらう。
ガトリングとショットガンを2機のMTに向けて撃ちまくった。

ガガガガガガガガガガガガガガガガガガガ…
バシュッ、バシュッ、バシュッ、バシュッ…

ペイント弾で倒そうとしている訳じゃない。
MTのカメラを潰してAIの反応を鈍らせるのが狙いだ。

MTとの距離は数メートルまで縮まったが、減速はしない。
OBの速度を利用して、左手のショットガンで手前のMTを思いきり突き刺す。
衝突の衝撃で左手首から先が粉々に砕け散る。MTを1機道連れにして。

___あと1機

1機目との衝突でOBのスピードは失われている。ENも底を突きそうだ。
ここが踏ん張りどころ。

残り全てのENを使ってブーストを吹かせ、左脚を軸にしてACをターンさせた。
その遠心力を利用して2機目をガトリングで殴りつける。
「潰れろー!」
衝撃に耐えられず、右腕が肩口から千切れそうだ。だが構わずガトリングを振りぬく。
右腕がACの胴体から吹き飛ぶのと同時に、MTの目から光が失われた。

2機のMTは完全に停止した。爆弾に誘爆する危険性も無さそうだ。

「ハァ、ハァ、ハァ、ハァ、ハァ…」
息が苦しい。目眩がする。
成功したんだ、落ち着け俺…

気持ちは落ち着いてきが、呼吸は荒くなる一方だ。
意識が朦朧としてきた…

コンソールに目をやると、何かが光っている。
『Air』と書かれているランプが赤々と点滅していた。
何だコレ?

俺は意識を失った…

★その15

目が覚めると、そこはベッドの上だった。
俺はACの中で意識を失って…、ここに運ばれてきたのか?
まだ頭がボーっとしている。

「洋平、気がついたのか。」
セレン姉さん…
「兄さん、よかった…」
ベアトリスもいる。

2人とも心底ほっとした顔。かなり心配をかけてしまったみたいだな。
「俺は…」
「ここは病院だ。お前は酸欠で倒れたんだよ。」

そうか、コンソールの『Air』と書かれたランプ。
あれはコックピット内の空気循環が上手くいってない事を知らせていたのか。
それで息が苦しかった訳だ。

「兄さんは何時間も意識を失ったままだったのよ。心配したんだから。」
俺そんなに寝てたのか…
病室の壁に掛かっている時計で時間を確認した。
気を失ってから6時間程経っている。外はもう暗い。
こりゃ心配されるよな。

そういえば…
「あのMTはどうなったんだ?」
咄嗟に出た独り言に姉さんが答えてくれた。
「大方の話はウィンディーから聞いている。
 MTと爆発物は無事処理されたそうだ。よくやったな、洋平。」
そうか学園は無事か、よかった…

その後、簡単な検査を受けた。
検査の結果、酸素欠乏症による脳へのダメージは奇跡的に無いそうだ。
もう少し遅れていたら、脳に障害が残っていたかもしれないと医師に脅された。
俺は運がよかったらしい。

特に問題も無いので、無理に入院する必要も無いとの事。
俺は家に帰らせてもらう事にした。病院は何だか落ち着かない。

病院を出る時、もし身体に異常を感じたら直ぐ連絡するようにと
担当の医師が名刺をくれた。

___不路夢市立病院 脳神経外科 Dr.?

呼びに難ければブレインウォッシュとでも呼んでくれと言っていたな。
脳外科医でブレインウォッシュ、ギャグのつもりなのか?
結構変わった人だったな。

姉さんの車で3人一緒に家へ帰って、遅い夕食を済ませた。
2人とも妙に優しくて、逆に気持ち悪い…
こんなに優しくされたのは生まれて初めてかも。
相当心配かけちゃったんだな…

あまり気を使われるのに慣れてないので居心地が悪い。
俺はさっさと自分の部屋に入った。

ベッドの上に倒れこむ。
「ふぅ…」
今日は凄いことになっちゃったな…
まさかACで実戦をする羽目になるとは思わなかった。

そういえば、あの時は無我夢中で考えもしなかったけど
なんで俺ノーマルを操縦できたんだろう?
ネクストとはかなり勝手が違うし…
授業で習っ事なんかないぞ。勿論乗らせてもらった事も無い。
 ・
 ・
 ・
ううん…、考えても分からん。しょうがない、考えるのは止めにしよう。

あれだけ寝たのにまだ眠いや…。瞼が重くなってきた。
身体が睡眠を欲しているみたいだ。

明日は大事を取って学園を休めと言われている。
ゆっくり休ませてもらおう。
おやすみ…




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