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俺は今なんとも薄気味悪い感じの建物の前にいる
よく見ると決して突拍子も無い部分は無いのだが、全体から受ける印象は間違いなくマイナスイメージな建物である
ここを拠点にして活動してるレイヴンがフロッグマンという奴だ
フロッグマンは俺から見ればそれなりに年上なんだが、奇特で暗い感じの風貌からは想像しづらい事に、俺とは随分と仲良くしてくれている

「よう、フロッグマンの兄貴、元気にしてたか?」
「おお、久しぶりだな、フェイヴレイヴ
とりあえず上がってくれよ」
そう言うとフロッグマンは俺を出迎えてくれた
「とりあえず今はこれぐらいしか無いが、つまんでいってくれ」
そう言うとフロッグマンはおもむろにイナゴの佃煮を出してきた
実はこのイナゴの佃煮を見るのも初めてではない
ここに来る度にいつもこれが出てくるのだ
俺は元々これが好きでは無かったのだが、何度も出されているうちに少しずつ慣れてきている

「あぁ、一応もらっておくよ」
そう言うと俺は一匹だけつまんで食べる
これを食べると嫌な感触が口に残るのだが、フロッグマンの不器用な親切心をないがしろにする気も無かった

佃煮を食べ終えると、しばらくの間沈黙が流れた
フロッグマンはフロッグマンで俺の事にとくに気を止めるでもなく、ただ座っている
フロッグマンは何か用があるかどうかなどと無粋な事は聞いてこない、ただ、居合わせているだけという感じだ
フロッグマンはやはり奇人なのだろうか、だがそんな事はどうでも良かった
俺も俺で特に用があってここに来た訳ではない
ただなんとなく来たのだった
フロッグマンはそんな俺の需要を完全に満たしてくれる、それだけで充分だった

俺はふっと頭に言葉が浮かんだので、呟くように話し始めた
「なぁ、フロートにはやっぱりバックブースターだよなぁ」
「そうだなぁ、フロートならマルチブースターの出力を余さず使うことが出来る
距離を維持して中距離で回避戦に持ち込めればこちらのものだ」
「だよなぁ」

フロッグマンのACは速度に特化したフロートにバックブースターを積んでいる
武装はハンドガンと垂直ミサイルという、確実に相手のAPを奪うような物だ
何よりもフロートとバックブースターの機動力が大前提にある構成だ

「なぁフロッグマン、もし、もしもこの俺達の穏やかな関係が、ある日急に無くなってしまったら、それはきっと悲しい事だろうな」
フロッグマンは偶然耳に入らなかったかのような素振りをして、何も答えない
「まあお互いがそう決断したんなら、それがお互いの選択肢の中では、ベストな選択って事になるんだろうなぁ」
フロッグマンは流石に困ったような顔をしている
「ある種の運命みたいな物かな」

「運命…か」
フロッグマンは俺の言葉遊びに興味を示したようだ
「常に結果は一つしか無くても、僕はそれが前々から決まっていた物だとは思わない
一つ一つの結果は、常にそれ以前の出来事の集積と連結している、そしてその結果すらも次の結果の為の過去の出来事に過ぎない
もし運命という物が存在するなら、運命はその結果と結果同士が常に1対1で連結していなければならない」
熱の入り始めたフロッグマンに対抗するように俺も熱中してもきっと楽しいのだが、俺としては今はこの話を綺麗にまとめたかった

「だけど、仮に可能性上の複数の結果同士が複雑に絡み合って拡散している状態だったとしても
結局俺達が経験する結果は1対1対応でしか無いじゃないか
それを運命と呼んで何が悪いんだい?
振り出しに戻ってしまったね」
俺は敢えて煽るような調子で言った
フロッグマンはこういう事に関してとても純粋な筈だ
すぐにも別の言葉を用意してくるだろう
しかしフロッグマンの様子はどうも違っていた
「僕は今こんな事を考えている
仮に運命という1対1対応で結果同士が繋がってる一本の鎖があっても、それを関係を切る方法があるんじゃないかってね」
「これはまた随分と飛んだなぁ」
「運命の鎖を切る方法は簡単だよ
運命を逆になぞっていく事は容易だ、それは過去の全てが現在という結果に繋がってるからだ
だが、僕がある事をすると途端に運命を逆になぞる事が出来なくなってしまう
何だと思う?」
フロッグマンの顔は不気味なまでに生き生きとしていた
「とりあえず物騒な事でければ、教えておくれよ」

「それはね、過去の一切の関係性を捨て去って、新しい心で行動する事だよ」
フロッグマンはこんな事を真面目に言っているのかと思うと少しおかしくなってきた
「その過去の一切の関係性を捨て去る事自体、過去から繋がってる一つの結果に過ぎないんじゃないか?
大体、運命が存在するとしたらなんて言ってしまった時点で、運命の絶対性を肯定してしまったような物じゃないか
運命を断ち切る事が出来たって、そこから新しい運命が始まるだけの事だよ」
フロッグマンはさらに熱を込めてこういった
「じゃあこうしよう、僕が運命を断ち切った時、君に「切った」と伝えるよ
僕は何も運命を全て自分で支配しようなんて思っちゃいない
ただ一瞬、本当に一瞬だけ、運命を断ち切って自分の主体性を取り戻す事が出来れば、それで良いんだ」
「本当に「切った」なんて声が聞けるか、見物だな」
俺はその時はフロッグマンの言葉をまるで信じていなかった
俺はただ、運命を受け入れる覚悟をする事に必死だったから

日が落ちて、外の空気が若干鋭さを感じるくらい寒くなる
ガレージの中は冷たい金属ばかりで、よりいっそう空気が鋭い
その鋭さが、俺の頭をギリギリの所で冷静にしてくれていた

俺は自分の機体を見上げる
フロートにバックブースターを装備した、フロッグマンの機体コンセプトとよく似た機体だ
ライフル、マルチミサイル、ロケットとバランスの良い汎用的な武装を取り揃えている

俺はエムロード社に所属している、いや、明日から正式に所属すると言った方が正しいか
溶鉱炉で誤作動を起こした機器の破壊という、簡単な任務が俺のエムロード社所属レイヴンとしての最初の仕事になる

俺は今までは無所属のレイヴンとして、そこそこの実績を上げてきた
どんな依頼を受けるかも自分の自由、ただ自分の体だけを頼みにここまでやってきた
だが俺は、度重なる生命の危険の度に、いつしか心が老いてしまったようだ
気がつくと不安と死の恐怖で押しつぶされそうな自分が居た
昔はそんな事は一度として無かったというのに

結局俺は、ただ先送りする事にしたのだった
レイヴンという稼業をするからには逃れられない死という問題を、ただ遠くへやってしまいたかったのだ
企業の庇護を得れば、ある程度の延命は望めるだろう
だがそれが果たしてレイヴンを志した若き日の自分の求めた物だったのか
そんな事を考えると、胸の奥から熱湯が湧いてくるかのように、胸が痛んだ

ならいっそレイヴンなどやめてしまえば良い
そう考えた時もあった
しかし、俺はもはやレイヴンではない自分という者を想像する事すら難しくなっていた
どうせならレイヴンのまま死にたい、老いてしまった今も、何故かそんな事を思うのだ
それはきっと、俺の心の奥底に残っている、微かな輝きの欠片なのかもしれない

俺の次の心配事はフロッグマンだった
フロッグマンば主にバレーナ社の依頼を好んで受ける
おそらくバレーナ社と何らかの繋がりがあるのだろうが、フロッグマンとそんな無粋な話をした事は一度もない
もしエムロード社がバレーナ社に対して何かしかける時に俺を使ったら、俺はフロッグマンと戦う事になるかもしれない

俺はその時、果たしてフロッグマンと戦えるのだろうか
そんな事を考えている
企業所属レイヴンになれば、かつてのように依頼を自分で選ぶ事など出来まい
ただ企業の意に沿って動く、そして使い捨てられる、それだけだ

フロッグマンは俺より年を喰っている癖に、俺のように老いてはいない
ただレイヴンという稼業を迷い無く黙々とこなし続けている
時々フロッグマンには死の恐怖という感覚がすっぽり抜けているんじゃないかとすら思う事もある
それくらい、フロッグマンは純粋な男だ

「フロッグマンになら…」
殺されても構わない、そう言おうとした、言おうとしたが、言えなかった
俺はやはり死ぬのが怖い、ただそれだけの存在なのだ
流されて、延ばされて、押し込められて、ちぎれてしまう
そんな滑稽な存在が俺だった


徐々に眠気が俺を支配していく
頭がろうで固められて意識が重くなっていく感じ
いつしかその弱々しい状態が、老いた俺の全てになるのだろう
それなら俺は、全てを惰性で受け入れるだけだ
そんな事を思いながら、眠りについた

「レッドコヨーテは、そこで待機していてくれ」
溶鉱炉中の壊れそうな隔壁の上に、ACが投下されていく
隔壁は何層かはあるようだ、その下には溶鉱炉が広がっているに違いない
俺のAC、レッドコヨーテはフロート型で、溶鉱炉の上でも浮遊し続ける事が出来る、万に一つも失敗はない、そんな気がした

しかし、レーダーで辺りを探してみても、誤作動を起こした機器など見つからない、レーダーには本当に自分一人の反応しかない
「こちらレッドコヨーテ…」
通信を送ろうとしたのも束の間、その場に別のACが現れた
僚機か?いや、まさか、そんな事はない
この場には俺とそのAC以外、何者も存在しないのだから

近づいてきたACは中量二脚型に中量パーツを積んだ、汎用的な機体のようだ
武装はブレードとライフルとミサイルとレーダー、それだけだった
どんな相手にもそれなりに戦える構成ではある、だがしかしこれと言った強みもない
俺は戦慄した、目の前のACにとってこの俺など、何度もこなしてきた無数のミッションのうちの一つに過ぎないのかもしれない
だから目の前のACは、汎用的な構成を貫いているのかもしれない

まさかこんな所で死の危険が迫るとは、俺は思いもしなかった
だが今は、今までのレイヴンとしての経験が、ただ生き残る事だけを考えるように働きかけていた
俺は今から、フェイヴレイヴという、ただレイヴンというだけの存在になる
「なるほど、テストのつもりか…」
途端に、相手のACが動き出した
まずレッドコヨーテはバックブースターを発動して距離を取る

相手はまずミサイル構え、ロックするのを待っている
レッドコヨーテはすかざすロケットを構えた

普通のレイヴンならこの距離ならマルチミサイルを選択して牽制するだろう
しかし、フェイヴレイヴにとって相手がミサイルを構えている事はこれ以上無いチャンスなのだ
フロートの機動力があれば通常のミサイルを避けるのは容易い、そしてミサイルを構えている間は射撃が出来ない
レッドコヨーテは発射されるであろうミサイルを避けるように迂回しながら、一気に相手に接近する
すると相手はミサイルを発射する事無く、ライフルを構えて、フェイヴレイヴの迂回路を先回りするように逆方向に迂回しながら、後退しだした

フェイヴレイヴは考える、相手はあくまで自分が退きながらの正面からの撃ち合いに誘い込もうとしている
この場合、装甲の劣っているレッドコヨーテはロケットとライフルの火力差を考慮しても不利な事は一目瞭然だった
相手のライフルの初弾が発射された時には、レッドコヨーテはバックブースターを起動し、また距離を取っている

このままでは持久戦になるだろう、フェイヴレイヴはそう思った
もし仮に相手が痺れを切らして近付いてくれば、一気にフェイヴレイヴの勝利は見えてくる、だが相手もそんな事は見抜いているような気がした
おそらく、基本に忠実に行くしかあるまい

レッドコヨーテはマルチミサイルを選択する
相手も距離を維持しながらミサイルを選択する
いつ終わるともわからない、神経をすり減らすような回避戦の始まりだった

相手は二脚の空中能力を生かして、拡散するミサイルの中心部をくぐり回避する
レッドコヨーテはフロートのスピードに任せて通常ミサイルを振り切る
レッドコヨーテは素早くロケットを選択して、浮いた相手の機体を射抜こうとするも、マルチミサイルからロケットを選択している間に相手は地面を踏んでしまう

このままではお互いミサイルの弾切れを待つだけだ
ただ相手の方から近付いて来ざるを得ない状況を作らなければ…
そう考えた時、フェイヴレイヴに一つの策が浮かぶ

レッドコヨーテはミサイルを回避しつつロケットを選択し、唐突に相手の乗っている辺りの隔壁に向かってロケットを発射した
その直後、相手は一気に距離を詰めるべくライフルを撃ちながら一気に接近してくる

おそらく相手はフェイヴレイヴの策を見抜いたのだろう
このまま隔壁を破壊され続けた場合、最終的な行きつく先は溶鉱炉の真上だ
フロートのレッドコヨーテは大丈夫でも、二脚型の相手は無事では済まない
ならば、出来るだけ隔壁が破壊される前に、中距離射撃戦に持ち込んでしまわなければならない
おそらく、そう思ったのだろう

距離を詰められたフェイヴレイヴは、悠長に隔壁を破壊する訳にも行かずに同じくライフルを選択し応戦する
おそらく、武器がミサイルからライフルという確実に装甲を削りやすい武器に変わっただけで、また回避戦が続くに違いない
フェイヴレイヴは内心焦っていた、このまま戦いを続けても、確実に勝てる保証は何処にもないのだから

しかしフェイヴレイヴにとって幸運な事が起きた
相手は中距離を維持する事無く、一気に接近してきたのだ

おそらく旋回戦に持ち込む気であろう、多彩な武装を積んだレッドコヨーテに対し、相手はブレードとライフルとミサイルのみという軽い出で立ち
その軽さを生かし、中量二脚とは思えぬ旋回性能で相手を翻弄するのが、相手の汎用的な武装を補う決め手になっていたに違いない

だがそれは慢心だ、フェイヴレイヴはそう思った
レッドコヨーテはバックブースターを起動しつつ、冷静に引き撃ちの体制に入った
ロケットを構え、撃つ
接近してくる相手の次の移動先を読むように、撃つ
接近してくる相手には、これが非常に避けにくい

相手もライフルで確実にレッドコヨーテの装甲を削り取っている、が、フェイヴレイヴのロケット弾の方が火力は上だった
このまま行けば勝てる、そう思った

だが操作技術で言えば相手の方が巧かったようだ、気づくとレッドコヨーテと相手の距離はもう少しに狭まっている
完全に距離を詰められたら、勝てる可能性は限りなく低く思えた
フェイヴレイヴは再びバックブースターを起動すると、慣性のまま動くに任せて、ロケットの照準に集中する
これを外したらおしまいだ、そんな事を呟きながら、ロケットを撃つ

相手は一気にオーバードブースターを吹かし、ロケットを被弾しつつレッドコヨーテの後方へ飛び込んだ

視界外から消えた相手を探そうと旋回する事もせずに、フェイヴレイヴはリロードを終えたバックブースターを吹かす
すると、視界の端の方から、膝をついた相手の機体の姿が見えてきた

勝った、勝ったのだ
エムロード社には何個か文句を言ってやりたい所だったが、これがおそらくエムロード社なりの採用試験だったに違いない
「こちらレッドコヨーテ、ミッションの完了を確認、帰還する」
そういうと俺は、死の危険を回避した事の安堵感からか、ホッと一つ溜め息をついた

その日から俺は正式にエムロード社所属のレイヴンになった
それなりに回された依頼をこなし、ある程度の平穏な日々を過ごす
だがしかし、その日は来てしまった


俺のその日受けた依頼は、バレーナ社の潜水艦の破壊、ただそれだけの任務だった
バレーナ社という所で思わずフロッグマンの事が頭を掠めたが、数多くある依頼の一つに過ぎないその依頼に、特に特別な関心は持たなかった

作業的にACに搭乗し、潜水艦の停泊している湾状の地形の港へ輸送機に載せられ運搬される
地上には砲台が点在している、海上から侵入した方が良さそうな気がした
「作戦領域に到達」
レッドコヨーテが投下され、水上に浮かんだ

砲台さえ迂回する事が出来れば、敵方の防衛戦力などヘリ数機に過ぎない
簡単な依頼だと思った
ライフルでヘリを撃墜し、港に浮かぶ潜水艦にロケットを撃つ

潜水艦を破壊する瞬間、輸送機から通信が入った
「ACが居ては回収は困難です」
AC?一体何のことだ?
とりあえず回収地点に引き返すべく、港を出ると、そいつは待っていた

「やぁ、久しぶりだね」
直接通信が入ってくる
「僕はこの日を楽しみにしていたよ」

フロッグマンだった、それも、とても上機嫌そうで、不気味なフロッグマンだった
「楽しみだって?馬鹿な、俺はお前とやりあう事が楽しいなんて思わない
悪いが、撤退してくれないか」
「残念だけどそれは出来ないよ、君がレイヴンなのと同じように、僕もレイヴンだからさ」
分かってはいたが、やはりフロッグマンもレイヴンだった
レイヴンだからこそ、こうやって相対する事は何も不思議な偶然なんかではない、運命なのだ

「こうなる事は分かってはいた、でも、何も俺達が争いあう事を楽しみだなんて言わなくて良いじゃないか」
俺は悲しかった、あの二人でだらだらと過ごした快適な時間が、無かったことのようにされている気がして
「そんな事はないよ、今日僕は、君に一つの結論を提示する事が出来る、それだけで充分僕は満足さ」
「わからない、俺にはわからない、親友同士が殺し合いをする事に、結論も何も無いじゃないか
俺はこの運命を受け入れてやる、戦って、勝って、生き残ってやる
でも、それと同時にこの運命を呪い続けてやるさ」

「君が運命を呪う必要は無いよ」
そういうと、フロッグマンは垂直ミサイルを構え、発射してきた
レッドコヨーテはライフルを構えながら、垂直ミサイルを回避するべく充分に引きつけてから一気に前進する
フロッグマンも同時に距離を詰めて、ハンドガンを構えた

フロートに高反動のハンドガンは分が悪い、しかも熱量の高いハンドガンと近距離で撃ち合えば、ライフルでは確実に火力負けしてしまう
フェイヴレイヴはバックブースターを起動しつつロケットの狙いを合わせた
と同時にフロッグマンもバックブースターを起動し、一瞬でかなりの距離が開けた

フェイヴレイヴは違和感を感じた、機動力で僅かに勝るフロッグマンの方から距離をとる必要は全く無かった
むしろ追撃しても、ハンドガンで硬直させる事さえ出来れば一気に沈める事も出来た筈
手加減されているのか?だがその甘さが命取りになるぞ、フロッグマン
そう思ったとき、正面からオーバードブースターでフロッグマンが突っ込んできた

馬鹿な、あの思慮深いフロッグマンがこんな戦法を、そんな事を思ったが、もはや考えている余裕は無い
武装を切り替える時間すらない事を悟ったフェイヴレイヴは、ただ飛んでくる目標に対して、相討ち覚悟のブレードを突き立てた

一瞬の後、ブレードが装甲を焼き切る音にハッとなると、レッドコヨーテの腕部が深々とフロッグマンのACのコアに突き刺さっていた
フロッグマンのACはブレードを構えてすらいなかった、まさに、自殺行為だった

唖然としている時、フロッグマンから通信が入る
「切った」
俺は一瞬何のことかわからなかった、何も言うことが出来なかった
「ちゃんと断ち切れたよ、運命をね」
俺はハッとなって口を開く
「そんな事は有り得ないよ、フロッグマン、こんな事をしても、これが運命だったんだよ」
俺は悲しかった、だがフロッグマンはこう続ける

「もし運命が1対1の関係で続く結果の鎖だとしたら、僕の今までの結果を受け継いできた自分はもう居ないよ
ここで今死ぬのは、全く新しい自分なんだ
ここから新しい運命は始まらない、新しい僕は今ここで始まって、今ここで終わるんだ
この一瞬だけ、僕は自分の主体性を取り戻せる」
「なんで今のお前が新しい自分なんて言えるんだい?フロッグマン」
「だって僕は、産まれた時から今に至るまで、ずっと死ぬのが怖かったからね」
俺はそのあまりに下らない理由に思わず笑った

「さて、そろそろお別れだ」
フロッグマンはバックブースターに残っていたエネルギーを使った
バックブースターが作動し、浮力を失ったフロッグマンの機体が、レッドコヨーテの腕から離れる
最後にフロッグマンが笑ったような気がする
そのまま、フロッグマンは海の底に沈んでいった

俺は今フロッグマンのガレージに来ている
今となって主の居なくなったガレージは、心なしか居心地が悪かった
フロッグマンの居た頃は、あんなに居心地が良かったのに
「フロッグマン、もし君が俺を殺さない為に、レイヴンとしての自分を捨てたのなら
それもやはり、俺との関係性を捨てきれなかった、繋がった運命なんだよ
ただ俺は、お前に貰った命なんて思っちゃいないよ
本気で戦っても、俺は多分勝っていたからね」
そういうと、俺はそこに残っていたイナゴの佃煮を一口頬張る
相変わらず不味かった
「そうか、きっと運命では、お前は戦ってレイヴンとして死んでいったのだろう
運命は既に変わっていた、そんな可能性も、無きにしも非ず、か」




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