現在要請されている依頼は以下の三つです
・反政府組織襲撃
・セントラルシティ襲撃
・移民地区襲撃
受諾する依頼を選択して下さい
モニターに映し出された「反政府組織襲撃」の依頼を選択し詳細を確認
一瞥した後、溜息をついてウィンドウを閉じる
反政府組織襲撃、聞こえは良いのだが中身を開ければ単なる破壊活動でしかない
よくは知らないがどうせ法外な税金をふっかけられたのを拒否しただけだろう
別に正義の味方を気取るわけではないが、だからといって外道になりさがるのは御免である
勿論、残りの依頼など件名からして除外する、シティ襲撃なんて引き受けたら一体何人の罪もない人間が犠牲になるのか想像もしたくない
移民を嫌う心の狭いテロ組織に力を貸すなんていくら詰まれても断るくらいのプライドはあるし
(まぁ、もとより仕事する気ないけど)
ミッションは想定外の事ばかりで怖いのである、ぶっちゃけやる事がなさすぎてフリーの依頼を確認していただけだ
ただ、移民嫌い、政府信仰者、破壊快楽者、その様なレイヴンのせいで罪のない人がどれだけ死んでいくのか考えると、どうも気持ちがイライラする
コーヒーでも飲もうと椅子から立ち上がる、と同時に備え付けてある通信機器が鳴り出した
「はい」
『おはようございます、緊急の依頼です』
「内容は?」
『現在、移民地区に反政府組織と思われるMT部隊が進行中です
察するに移民の拒否を叫ぶ反政府組織が強行手段に移ったと思われます』
「・・・到着まであとどれくらいですか?」
『現在の位置から計算すると後1時間弱で移民地区へ到達します』
「こっちの移動時間は?」
『今この場で依頼を受諾されても敵の到着に間に合うかギリギリのラインです』
という事は自分が断った場合は敵の到着前には間に合わない、という事だ
「詳細は移動中に確認します、急いで輸送機を向かわせて下さい」
『そう言ってくれると信じて既にそちらに向かっています』
さすが優秀なオペレータ、この手際の良さは自分の事を理解してくれている証である
(面倒でも見捨たら胸糞悪いもんな・・・)
輸送機の中、依頼の詳細を確認する
敵のMT部隊はオストリッチ三機にオウル二機、そして武装車両が五台
せいぜい武装歩兵程度の防衛手段しか持たない移民地区を襲撃するには十分過ぎるくらいだ
だがそれもACの前では所詮烏合の集、相手にはならないだろう
よって今回の依頼の鍵は移民地区に到達する前に敵勢力を全て撃破する事
つまり移民地区に被害を出さない事の一点である
『レイヴン、そろそろ目標地点に到達する!』
「了解、こちらの準備は完璧だ」
『レイヴン、俺も元移民だ、これは他人事とは思えない・・・頼むぞ』
「期待していてくれ」
『ああ・・・目標地点に到達、ハッチ解放!』
輸送機のパイロットの声と共に輸送機のハッチが開く
「ハッチ解放問題なし、機体を投下する」
こちらも声と共にブーストを吹かし、空へ飛び出した
ブースト吹かしながらゆっくりと地面に着地する、レーダーを見るとまだ敵影は見えない、どうやら間に合ったようだ
辺りは荒野、移民地区は中央都市から大分離れた所にある為、街自体はともかく周りの整備は整っていない
近くに何か障害物になりそうな物も見当たらず、人工の物と言えば舗装された道路のみである
今回用意した機体は中量級二脚に軽量型格納コアに軽量型腕部、そして高性能の頭部だ
武器は両腕にスナイパーライフルを持ち、肩にはマクロミサイル、そして広範囲レーダー、エクステンションに連動ミサイルといった装備だ
一応格納にブレードを入れてはあるが、今回の依頼では出番はないだろう
『システム、索敵モードに変更』
辺りの観察をしながら機体を巡行モードから索敵モードに変更、注意深くレーダーを見守っているとオペレータからの通信が入った
『北に熱源を感知、どうやら来たようよ』
「了解」
『システム、戦闘モードに変更』
システムを戦闘モードに切り替えると北へ全速で移動する
『何だ・・・クソッ!ACだ!』
『各員急いで戦闘態勢に移れ!』
『うわあ!どこからだ!!』
『遠距離機体か!足を止めるな的になるぞ!』
『こちらオストリッチB!もう機体が・・・うわあああああ!!』
敵の方角へ高速で接近し、ロック射程に届くとすぐ両腕のスナイパーライフルで射撃を始める
長距離FCSを装備しているためこちらは遠距離から攻撃を行なう事ができる、敵のMTではまだ射程には遠く成す術もないまま撃破されていく
敵MT集団はこちらに全速力で接近するも距離をとろうと移動するACには追いつくことはできない
真っ直ぐこちらへ迫ってくるMTは既にただの的でしかない、だからといってこの荒野にはMTは愚か武装車両でさえ身を隠す所はない
敵部隊の全滅は時間の問題であった
そんな時、オペレータからの通信回線が開いた
『緊急事態よ!避難地区の南から敵部隊のものと思われる輸送機が接近しているわ!』
「なっ!?」
『到着まで時間はないわ!急いで敵部隊を撃破して撃墜に向かって!』
「なんてこったい!」
敵輸送機、こちらは囮だったと言う事だったのだろうか
だが移民地区の護衛は緊急の依頼だ、という事はこれは緊急の増援と言う事か
テロ組織にしては随分羽振りの良い事である
(何でそこまで人のイヤガラセに力を入れるんかね)
歯痒い気持ちを押さえつけながら敵部隊を迅速に撃破する為、両腕のスナイパーライフルを撃ちながら全速力で接近していった
『敵部隊の全滅を確認』
コンピュータが言葉を告げる前に急いで移民地区へと向かう
敵部隊とは逆の方向から接近している敵輸送機を墜とす為、全速力で移動
ぐるぐると思考が巡り、焦る気持ちを押さえつけられない
(ブーストがもっと高出力なら、いっそOBコアでくれば良かった!俺のアホ!)
チャージングにならない様、気をつけながらも最大限の速度で移動
視界の先に移民地区が見えてきた、幸い襲撃を受けている様子ではない
移民地区に近づいていくが敵輸送機が見えてくる事はなく、まだ敵の到着までは時間がある様だ
それならと移民地区を飛び越えて更に南へと疾走する
『敵輸送機と接触までもう間もなくです!』
「了解!近づく前に撃ち落とします」
『敵輸送機に到達しました!』
オペレータの声と同時に輸送機が視界に入った、あと少しでロック射程に到達する
「・・・うし!ちぇいや!!」
射程に入った瞬間、掛け声と共に両腕のスナイパーライフルを発射
弾は吸い込まれていくように輸送機に命中し、輸送機は煙を上げて堕ちて行く
『・・・敵輸送機の墜落を確認、御疲れ様、よく間に合ってくれたわ』
「はー・・・間に合って良かったです」
『念の為の残存勢力がいないか確認をして下さい』
「ふー・・・」
『確認して下さい!』
「はい!ごめんなさい!!」
オペレータに怒られて輸送機へと近づく、どうやら着地行動が早かったのか別段爆破する様子はない
ハッチが開いていない所を見るとまだ敵の増援は輸送機の中のようだ
(んー・・・着地のせいで歪んでる、成る程出れないのね)
そう思いオペレータに報告しようとする、その瞬間ハッチ部分が爆発した
「む・・・」
『熱源を感知・・・MT?違うACよ!!』
「うっそ・・・すわっ!?」
爆発し砂塵にまみれた方を見ていると、中から火球が飛んでくる
ブーストで無理矢理に機体を動かして回避行動をとると、火球は右腕部の装甲を掠りながら通過し、後方で大爆発を起こした
『ったく、巻き添えで死ぬ所だったじゃねえか馬鹿』
「こっちも不意打ちで死ぬ所だったっつのバーカ!」
『はっ、口の悪い野郎だな』
「や、お互い様だよ」
砂塵が晴れてお互いの姿が視認できる様になる
相手は重量二脚に同じく重量級の装甲の厚いコアと腕部、頭部もしっかり装甲の厚いものだ
右腕部にはグレネード、左腕部には実弾装甲のシールド、肩には中型と大型のロケットを武装しエクステンションには実弾装甲
機動力を犠牲にして装甲に重点をおいたタイプの様だ
『まあいい、とっとと終わらせてもらうぜ!』
そう吐き捨てると敵ACは肩のロケットを撃ちながらこっちに真っ直ぐ向かってくる
こちらもロケットを避け空中に舞い上がる、ロケットの様なロックオンしない武装は余程の技術がない限り当てることはできないだろう
『チョコマカすんな!』
やはりそこまでの技術はないのか敵はグレネードでこちらを狙う
グレネードの扱いには長けているのか空中での回避行動に手一杯になってしまう
反撃をしようと右腕部のスナイパーライフルを撃つも装甲の厚い相手には効いている様子がない
『はっ、そんなんで俺を倒せると思ってるのか?』
やはり効いていない様だ、ある意味親切である、ならばと武装を切り替え、さらに着地して距離を詰める
そして発射、連動ミサイルとマクロミサイルの組み合わさったミサイルの雨が相手を襲った
これはさすがに危険だと判断した相手は回避行動に移る、がミサイルを避けきる事はできず数発被弾
さすがに厚い装甲は、それだけでは破壊する事ができなかった様で敵は怯まずにロケットを打ち返してくる
だが回避する事の容易いロケットは少し横に移動するだけで真横を通り過ぎて行く
「はん!そんなんで俺を倒せるとでも!?」
『くそっ!調子づくなよ!!』
「はーはっはっは!雑魚め!!」
ロケットをヒラヒラとかわしながらミサイルを撃ちまくる、敵は回避行動に専念すればいいものの
プライドなのか攻撃をやめない、その為中途半端な回避行動で装甲はドンドン削られていった
「ほーら!とっとと降参なさい!」
『クソが舐めるなよ!』
「はっはっはっは・・・あ」
ミサイルを撃ちきってしまった
『ははは!弾切れの様だな!!』
「まだスナイパーライフルが残っているのを忘れるなよ!?」
そしてまた武装をスナイパーライフルに変更し敵の攻撃を避けながら撃ち合う
先ほどのMTや輸送機で消耗したスナイパーライフル、元々弾数の多くないそれはあっけなく弾切れした
「あ・・・」
『ふあーはっはっはっはっは!!これで弾なしか!男の癖に「弾」がないってか!?ふあーはっはっはっはっはっは!!ヒー!!』
「う、うるせえ!わかった!中の人オッサンだろお前!!」
『なっ!!だがこれで勝負は決まったな!!死ね!!』
そういって反撃のできない相手に慎重にロケットを狙い・・・
『・・・あ』
「弾切れしてやんのー!!ぶふー!!」
『うるせぇ!!まだこっちにはグレネードも!!』
叫び、武装を変更、グレネードをロックオンし放つ
「くっ!!」
『そら!降参しろ!!早く降参しないと次は当てるぞ!!』
「はん・・・誰がするかオッサン!」
『命を無駄にするな若造、お前はまだ未来があるんだぞ!』
「媚びへつらって長生きなんざしたかないさ!」
『いいから降参するんだ!!』
「だからしないって・・・あ、弾切れた?」
『ば、馬鹿野郎!俺は未来ある若者を救おうと・・・!!』
「切れたんだ・・・」
『・・・引き分けでどうだ』
「うわ!なさけねーこのオッサン!!」
『んだと!てめぇだって・・・!!』
そして相手が喋り終わらない内にこちらは武装をパージする
まずエクステンション、次にミサイル、そして右腕部のスナイパーライフル
『・・・まさか』
「残念だったね」
そして左腕部をパージすると、自動的にハンガーから「ブレード」が装着される
「降参?」
『ちっ・・・!わかったよ俺の負けだ!!チクショウ!!』
それから少しすると機体を回収しに輸送機が到着した、相手のオッサン(仮)は別の輸送機で運んでもらうまでこちらの仲間が拘束する事となった
そして輸送機に乗り込み降りようとした所でオペレータからの通信回線が開いた
『御疲れ様、今回の任務の報酬が振り込まれました』
「あー見てなかった、いくらでしたっけ?」
『50000cです』
「追加報酬とかは?」
『かけあってみますが難しいでしょう、現状で全てだと思っていて下さい』
「はー残念」
『あとですね』
「まだ何か?」
『今回の清算金額ですが約-32000cです』
「・・・ん?」
『約-32000cです』
「32000c?」
『えぇ、マイナス、ですが』
「な、なんで!?」
『機体修理費が約2000c・・・そして弾薬費は約80000cです』
「は・・・八万!?」
『あれだけミサイルをバカバカバカバカと撃てば当然でしょう!!』
「だ、だって!」
『だってじゃありません!私は毎回ミサイルを使う場合は考えて下さいと言っているじゃないですか!!』
「で、でも!」
『でもじゃありません!まったくあなたは普段人の話を聞き流すからこういう目に合うんです!!』
「うう・・・」
『まったく!あなたがミサイルを馬鹿撃ちしてマイナスになった金額はいくらだと思ってるんですか!?』
「・・・10万c」
『その五倍です!!一回や二回ならともかく!!』
「うう・・・ごめんなさいおっかさん・・・」
『誰かあなたのお母さんですか!!そうやってふざけてないでちゃんと反省したらどうです!!』
「うう・・・(メソメソ」
『泣きたいのはこっちです!!まったく!!いいですか!?』
結局輸送機が到着するまでの時間、彼はACを降りずに説教され続けた
更に『この後報告書を提出したら直接ミーティングに行かせてもらうので逃げないように!!』とのお言葉
その後、逃走を謀るも優秀なオペレータに適う事はなかった
「うう・・・足が痛いよう(メソメソ」
「こら!足を崩さない!!正座!!」
「うう・・・(メソメソ」
・反政府組織襲撃
・セントラルシティ襲撃
・移民地区襲撃
受諾する依頼を選択して下さい
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一瞥した後、溜息をついてウィンドウを閉じる
反政府組織襲撃、聞こえは良いのだが中身を開ければ単なる破壊活動でしかない
よくは知らないがどうせ法外な税金をふっかけられたのを拒否しただけだろう
別に正義の味方を気取るわけではないが、だからといって外道になりさがるのは御免である
勿論、残りの依頼など件名からして除外する、シティ襲撃なんて引き受けたら一体何人の罪もない人間が犠牲になるのか想像もしたくない
移民を嫌う心の狭いテロ組織に力を貸すなんていくら詰まれても断るくらいのプライドはあるし
(まぁ、もとより仕事する気ないけど)
ミッションは想定外の事ばかりで怖いのである、ぶっちゃけやる事がなさすぎてフリーの依頼を確認していただけだ
ただ、移民嫌い、政府信仰者、破壊快楽者、その様なレイヴンのせいで罪のない人がどれだけ死んでいくのか考えると、どうも気持ちがイライラする
コーヒーでも飲もうと椅子から立ち上がる、と同時に備え付けてある通信機器が鳴り出した
「はい」
『おはようございます、緊急の依頼です』
「内容は?」
『現在、移民地区に反政府組織と思われるMT部隊が進行中です
察するに移民の拒否を叫ぶ反政府組織が強行手段に移ったと思われます』
「・・・到着まであとどれくらいですか?」
『現在の位置から計算すると後1時間弱で移民地区へ到達します』
「こっちの移動時間は?」
『今この場で依頼を受諾されても敵の到着に間に合うかギリギリのラインです』
という事は自分が断った場合は敵の到着前には間に合わない、という事だ
「詳細は移動中に確認します、急いで輸送機を向かわせて下さい」
『そう言ってくれると信じて既にそちらに向かっています』
さすが優秀なオペレータ、この手際の良さは自分の事を理解してくれている証である
(面倒でも見捨たら胸糞悪いもんな・・・)
輸送機の中、依頼の詳細を確認する
敵のMT部隊はオストリッチ三機にオウル二機、そして武装車両が五台
せいぜい武装歩兵程度の防衛手段しか持たない移民地区を襲撃するには十分過ぎるくらいだ
だがそれもACの前では所詮烏合の集、相手にはならないだろう
よって今回の依頼の鍵は移民地区に到達する前に敵勢力を全て撃破する事
つまり移民地区に被害を出さない事の一点である
『レイヴン、そろそろ目標地点に到達する!』
「了解、こちらの準備は完璧だ」
『レイヴン、俺も元移民だ、これは他人事とは思えない・・・頼むぞ』
「期待していてくれ」
『ああ・・・目標地点に到達、ハッチ解放!』
輸送機のパイロットの声と共に輸送機のハッチが開く
「ハッチ解放問題なし、機体を投下する」
こちらも声と共にブーストを吹かし、空へ飛び出した
ブースト吹かしながらゆっくりと地面に着地する、レーダーを見るとまだ敵影は見えない、どうやら間に合ったようだ
辺りは荒野、移民地区は中央都市から大分離れた所にある為、街自体はともかく周りの整備は整っていない
近くに何か障害物になりそうな物も見当たらず、人工の物と言えば舗装された道路のみである
今回用意した機体は中量級二脚に軽量型格納コアに軽量型腕部、そして高性能の頭部だ
武器は両腕にスナイパーライフルを持ち、肩にはマクロミサイル、そして広範囲レーダー、エクステンションに連動ミサイルといった装備だ
一応格納にブレードを入れてはあるが、今回の依頼では出番はないだろう
『システム、索敵モードに変更』
辺りの観察をしながら機体を巡行モードから索敵モードに変更、注意深くレーダーを見守っているとオペレータからの通信が入った
『北に熱源を感知、どうやら来たようよ』
「了解」
『システム、戦闘モードに変更』
システムを戦闘モードに切り替えると北へ全速で移動する
『何だ・・・クソッ!ACだ!』
『各員急いで戦闘態勢に移れ!』
『うわあ!どこからだ!!』
『遠距離機体か!足を止めるな的になるぞ!』
『こちらオストリッチB!もう機体が・・・うわあああああ!!』
敵の方角へ高速で接近し、ロック射程に届くとすぐ両腕のスナイパーライフルで射撃を始める
長距離FCSを装備しているためこちらは遠距離から攻撃を行なう事ができる、敵のMTではまだ射程には遠く成す術もないまま撃破されていく
敵MT集団はこちらに全速力で接近するも距離をとろうと移動するACには追いつくことはできない
真っ直ぐこちらへ迫ってくるMTは既にただの的でしかない、だからといってこの荒野にはMTは愚か武装車両でさえ身を隠す所はない
敵部隊の全滅は時間の問題であった
そんな時、オペレータからの通信回線が開いた
『緊急事態よ!避難地区の南から敵部隊のものと思われる輸送機が接近しているわ!』
「なっ!?」
『到着まで時間はないわ!急いで敵部隊を撃破して撃墜に向かって!』
「なんてこったい!」
敵輸送機、こちらは囮だったと言う事だったのだろうか
だが移民地区の護衛は緊急の依頼だ、という事はこれは緊急の増援と言う事か
テロ組織にしては随分羽振りの良い事である
(何でそこまで人のイヤガラセに力を入れるんかね)
歯痒い気持ちを押さえつけながら敵部隊を迅速に撃破する為、両腕のスナイパーライフルを撃ちながら全速力で接近していった
『敵部隊の全滅を確認』
コンピュータが言葉を告げる前に急いで移民地区へと向かう
敵部隊とは逆の方向から接近している敵輸送機を墜とす為、全速力で移動
ぐるぐると思考が巡り、焦る気持ちを押さえつけられない
(ブーストがもっと高出力なら、いっそOBコアでくれば良かった!俺のアホ!)
チャージングにならない様、気をつけながらも最大限の速度で移動
視界の先に移民地区が見えてきた、幸い襲撃を受けている様子ではない
移民地区に近づいていくが敵輸送機が見えてくる事はなく、まだ敵の到着までは時間がある様だ
それならと移民地区を飛び越えて更に南へと疾走する
『敵輸送機と接触までもう間もなくです!』
「了解!近づく前に撃ち落とします」
『敵輸送機に到達しました!』
オペレータの声と同時に輸送機が視界に入った、あと少しでロック射程に到達する
「・・・うし!ちぇいや!!」
射程に入った瞬間、掛け声と共に両腕のスナイパーライフルを発射
弾は吸い込まれていくように輸送機に命中し、輸送機は煙を上げて堕ちて行く
『・・・敵輸送機の墜落を確認、御疲れ様、よく間に合ってくれたわ』
「はー・・・間に合って良かったです」
『念の為の残存勢力がいないか確認をして下さい』
「ふー・・・」
『確認して下さい!』
「はい!ごめんなさい!!」
オペレータに怒られて輸送機へと近づく、どうやら着地行動が早かったのか別段爆破する様子はない
ハッチが開いていない所を見るとまだ敵の増援は輸送機の中のようだ
(んー・・・着地のせいで歪んでる、成る程出れないのね)
そう思いオペレータに報告しようとする、その瞬間ハッチ部分が爆発した
「む・・・」
『熱源を感知・・・MT?違うACよ!!』
「うっそ・・・すわっ!?」
爆発し砂塵にまみれた方を見ていると、中から火球が飛んでくる
ブーストで無理矢理に機体を動かして回避行動をとると、火球は右腕部の装甲を掠りながら通過し、後方で大爆発を起こした
『ったく、巻き添えで死ぬ所だったじゃねえか馬鹿』
「こっちも不意打ちで死ぬ所だったっつのバーカ!」
『はっ、口の悪い野郎だな』
「や、お互い様だよ」
砂塵が晴れてお互いの姿が視認できる様になる
相手は重量二脚に同じく重量級の装甲の厚いコアと腕部、頭部もしっかり装甲の厚いものだ
右腕部にはグレネード、左腕部には実弾装甲のシールド、肩には中型と大型のロケットを武装しエクステンションには実弾装甲
機動力を犠牲にして装甲に重点をおいたタイプの様だ
『まあいい、とっとと終わらせてもらうぜ!』
そう吐き捨てると敵ACは肩のロケットを撃ちながらこっちに真っ直ぐ向かってくる
こちらもロケットを避け空中に舞い上がる、ロケットの様なロックオンしない武装は余程の技術がない限り当てることはできないだろう
『チョコマカすんな!』
やはりそこまでの技術はないのか敵はグレネードでこちらを狙う
グレネードの扱いには長けているのか空中での回避行動に手一杯になってしまう
反撃をしようと右腕部のスナイパーライフルを撃つも装甲の厚い相手には効いている様子がない
『はっ、そんなんで俺を倒せると思ってるのか?』
やはり効いていない様だ、ある意味親切である、ならばと武装を切り替え、さらに着地して距離を詰める
そして発射、連動ミサイルとマクロミサイルの組み合わさったミサイルの雨が相手を襲った
これはさすがに危険だと判断した相手は回避行動に移る、がミサイルを避けきる事はできず数発被弾
さすがに厚い装甲は、それだけでは破壊する事ができなかった様で敵は怯まずにロケットを打ち返してくる
だが回避する事の容易いロケットは少し横に移動するだけで真横を通り過ぎて行く
「はん!そんなんで俺を倒せるとでも!?」
『くそっ!調子づくなよ!!』
「はーはっはっは!雑魚め!!」
ロケットをヒラヒラとかわしながらミサイルを撃ちまくる、敵は回避行動に専念すればいいものの
プライドなのか攻撃をやめない、その為中途半端な回避行動で装甲はドンドン削られていった
「ほーら!とっとと降参なさい!」
『クソが舐めるなよ!』
「はっはっはっは・・・あ」
ミサイルを撃ちきってしまった
『ははは!弾切れの様だな!!』
「まだスナイパーライフルが残っているのを忘れるなよ!?」
そしてまた武装をスナイパーライフルに変更し敵の攻撃を避けながら撃ち合う
先ほどのMTや輸送機で消耗したスナイパーライフル、元々弾数の多くないそれはあっけなく弾切れした
「あ・・・」
『ふあーはっはっはっはっは!!これで弾なしか!男の癖に「弾」がないってか!?ふあーはっはっはっはっはっは!!ヒー!!』
「う、うるせえ!わかった!中の人オッサンだろお前!!」
『なっ!!だがこれで勝負は決まったな!!死ね!!』
そういって反撃のできない相手に慎重にロケットを狙い・・・
『・・・あ』
「弾切れしてやんのー!!ぶふー!!」
『うるせぇ!!まだこっちにはグレネードも!!』
叫び、武装を変更、グレネードをロックオンし放つ
「くっ!!」
『そら!降参しろ!!早く降参しないと次は当てるぞ!!』
「はん・・・誰がするかオッサン!」
『命を無駄にするな若造、お前はまだ未来があるんだぞ!』
「媚びへつらって長生きなんざしたかないさ!」
『いいから降参するんだ!!』
「だからしないって・・・あ、弾切れた?」
『ば、馬鹿野郎!俺は未来ある若者を救おうと・・・!!』
「切れたんだ・・・」
『・・・引き分けでどうだ』
「うわ!なさけねーこのオッサン!!」
『んだと!てめぇだって・・・!!』
そして相手が喋り終わらない内にこちらは武装をパージする
まずエクステンション、次にミサイル、そして右腕部のスナイパーライフル
『・・・まさか』
「残念だったね」
そして左腕部をパージすると、自動的にハンガーから「ブレード」が装着される
「降参?」
『ちっ・・・!わかったよ俺の負けだ!!チクショウ!!』
それから少しすると機体を回収しに輸送機が到着した、相手のオッサン(仮)は別の輸送機で運んでもらうまでこちらの仲間が拘束する事となった
そして輸送機に乗り込み降りようとした所でオペレータからの通信回線が開いた
『御疲れ様、今回の任務の報酬が振り込まれました』
「あー見てなかった、いくらでしたっけ?」
『50000cです』
「追加報酬とかは?」
『かけあってみますが難しいでしょう、現状で全てだと思っていて下さい』
「はー残念」
『あとですね』
「まだ何か?」
『今回の清算金額ですが約-32000cです』
「・・・ん?」
『約-32000cです』
「32000c?」
『えぇ、マイナス、ですが』
「な、なんで!?」
『機体修理費が約2000c・・・そして弾薬費は約80000cです』
「は・・・八万!?」
『あれだけミサイルをバカバカバカバカと撃てば当然でしょう!!』
「だ、だって!」
『だってじゃありません!私は毎回ミサイルを使う場合は考えて下さいと言っているじゃないですか!!』
「で、でも!」
『でもじゃありません!まったくあなたは普段人の話を聞き流すからこういう目に合うんです!!』
「うう・・・」
『まったく!あなたがミサイルを馬鹿撃ちしてマイナスになった金額はいくらだと思ってるんですか!?』
「・・・10万c」
『その五倍です!!一回や二回ならともかく!!』
「うう・・・ごめんなさいおっかさん・・・」
『誰かあなたのお母さんですか!!そうやってふざけてないでちゃんと反省したらどうです!!』
「うう・・・(メソメソ」
『泣きたいのはこっちです!!まったく!!いいですか!?』
結局輸送機が到着するまでの時間、彼はACを降りずに説教され続けた
更に『この後報告書を提出したら直接ミーティングに行かせてもらうので逃げないように!!』とのお言葉
その後、逃走を謀るも優秀なオペレータに適う事はなかった
「うう・・・足が痛いよう(メソメソ」
「こら!足を崩さない!!正座!!」
「うう・・・(メソメソ」