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―――シグナルが、青に変わる。

お前の元へ辿り着くまで

「手始めに、まずお前からだ!」

俺は、生きる。

ビリーはシステムクラッチを踏みつけた。

――――――――――――――――

《そっちに行ったぞ! 奴等…強過ぎる!》
《分かっている、反応もある! しかし…それらしい影や形が(ブツリ)》
《おい! どうした?!……!! 反応が上n(ザー)》
《…あれは…れ…『連星』の(ビィィー)》

ここに、とある二羽の烏がいた。
一人は『載星』。
もう一人は『B・ビリー』と呼ばれていた。

彼等は唯一無二の親友だったし、何より互いの腕を信頼し、尊敬していた。
失敗してもお互いに責めあうような事もせず、
むしろ軽く笑い飛ばしあうほどに仲が良かった。
運が悪かっただけだ、と。

誰よりも互いの腕を信頼し、尊敬しあっていたあの頃。
あの頃まではよかった。
あの頃までは。

いつしか、どこからともなくこんな噂が広まってゆく。
『あの二人は確かに強い。しかしそれはあくまでも『コンビ』時のときのみではないのか』と。
誰かがタレ流した他愛もない噂、のはずだった。
しかし、二人のファン達の間では、面白いように常時この話題がひっきりなしだった。
この世界の人々が最も熱狂する娯楽の一つである『アリーナ』では無理もない事でもある。
『載星』の人の次元でない動きについていける者はいない、と言う者。
『ビリー』の驚異的なサイティングと空中爆撃の組み合わせには耐えきれない、と反論する者。

―――そんな中、片割れであるビリーは
「コンビってのは一心同体なのさ、どっちが強いとかそんなのはコンビには関係ないんだよ」
と、軽くあしらっていた。

しかし。

ある日、載星がさりげなくこぼした。
「ところで『ビリー』……お前は『俺』と自分ではどちらが強いのか考えた事ってあるか…?」

ビリーは笑って言った。
「ハハッ! 噂してる連中にでも毒されたか!
 …あのな、俺達みたいなコンビ連中には、強い弱いとか………」

―――――――――――――――――――――

その日の夜、ビリーは一人考察にふけっていた。
仮に、俺達『コンビ』の者同士で試合をするなら、ファンの連中は狂気乱舞するだろう。
――それはともかくとして。

もし、試合を行ったとすれば必ずどちらかが勝ち、どちらかが負ける。
それは当然だ。
勝者には栄光、敗者には罵倒の言葉があるだけ。
――しかし、『コンビ』を組んでいる者同士が戦えば話は違ってくる。
どちらが強者でどちらが弱者なのか、それがハッキリと分かってしまうからである。
敗者は、勝者とコンビを組みなおす事を快く思うだろうか。 ――――否。

ビリーは怖かった。
試合を行えば、結果はどうあれ、
そうなったら二度と『コンビ』として成り立たなくなってしまうのではないか。
ビリーは自分の数少ない理解者でもあった『載星』と別れたくなかった。


―――しかし。
確実に『連星』同士の距離は徐々に離れていっていた。

――翌日。


《3日後 PM 2:30にアリーナまで。 なお、ACを持参するように  載星》

気付かぬうちに『載星』から個人回線でメールが来ていた。
………いやな予感がした。


案の定、それは的中した。


――オープン・アリーナは広い。
…いや、広さ的には屋内の一般アリーナとあまり変わりはないものの、
ステージが屋外にあるため天井がなく、感覚的にそう感じるだけだろう。
しかし、機動戦闘を得意とする『連星』ペアにはこの上なく戦いやすいエリアでもある。

やや遠い距離をおいて、逆関節ACがせり上がってくる。
黒と黄色の落ち着いた色調の機体がモニターに写る。
そのACからは濃厚な殺気がモニター越しにでも感じられ、操縦桿を握る掌に冷や汗が滲んだ。


試合開始のシグナルが青に変わる瞬間、
…俺の知っている『相棒』はすでに死んだのだ、とビリーは悟った。

―――――――――――――――――――

―――気付くとそこは病院のベッドの上だった。
首を回すだけでもやたら時間がかかり、ビリーは少なからずもどかしく
身体が思うように動かず、ナースコールのボタンを押す事もままならなかった。
数日後、ビリーは関係者の話により自分が負けた事を知った。

それも、『8年前』に。

不思議と悔しさはなかったが、すさまじいまでの倦怠感と虚無感に長期間苛まれることとなる。
せめてこの重すぎる感情を紛らわすためにと病室にあったテレビをつけた。
すると、
丁度アリーナでの試合が終わった所らしく、黒煙を上げながら片方のACが地に伏す所だった。
――あれは現3位のランカーではないのか?
観客席の面々もどこかざわついた様子を見せている。 何か変だ。

さらに。

解説1「何という動きなのでしょう…私、未だに信じられません!」
解説2「非強化であんな動きが…一体彼は…」
解説1「思えば『コンビ』同士の対戦からはじまって、ずっと無敗のままそして今日も…」

ビリーは画面に飛びついた。

解説2「やはり彼にも少なからず『野心』というものが存在したのでしょう」
解説1「たとえかつての仲間を切り捨てても…ですか」
解説2「…レイヴンなんてたいていはそういうものです」

退院後、ビリーは猛烈なリハビリを開始した。
ランカー専用ガレージに毎日通い、ランカーパイロットを見つけ次第とっ捕まえ
テストマッチ兼リハビリ試合を申し込むという何とも無理矢理なものであった。

たいていのランカーには軽くあしらわれた。
「諦めな。お前じゃ今の『元』相棒さんには何やっても勝てねえよ」 と。

しかし、ビリーは諦めなかった。
―――そんな中、一人のランカーがビリーに目をつけた。


『ジェリー・ビーン』。
実力はあれど、あえて下位にとどまり
新人ランカー達に生き残るための『戦い』を仕込んでいるというランカーで、
一般の観客よりも若手からの人気が高いという風変わりな男であった。
ビリーは彼の元で日々猛特訓を続けた。

それなりに自信があった体力も、8年という月日のせいですっかり衰えていた。
空中での高速移動時にかかる『G』は、ビリーを苦しめた。
日々頭痛と嘔吐感にさいなまれながらも、ビリーは着実に現役時代の己を取り戻していった。

血を吐くような特訓のおかげで何とかランク外から這い上がることができたビリー。
しかし彼の現ランクは29位。
比べて『相棒』の現ランクは3位。
8年という月日の壁は高すぎたが、ビリーは決して諦めなかった。

必ず『奴』に追い付く。 
再びコンビを組むつもりなどない。
ただ、一緒に飲んで笑いあえるあのころの関係に戻りたい。
それだけ。

そんな中、一つの対戦依頼がビリーのもとに舞いこむ。

彼の名なら、ビリーも知っていた。
ランク外の中でも特に異彩を放っており、凄まじいまでの技量で他を圧倒し
今でもランク内へ飛び入らんばかりの勢いを見せているとか。
トレーニングの公式記録でも複数の記録を叩きだしているとも聞く。

――病み上がりのお前で勝てるのか。
周りはそう言った。

ビリーは笑った。
何故そんなことがお前等に解る、と。



対戦前夜。
ビリーは無意識に昔の事を考えていた。
初めて『載星』と会った時の事。
『奴』と一緒に任務をこなしてきた事。
『奴』一緒に旨くない酒を飲みながら笑いあった事。

しかしどの思い出にも最後は、必ずと言っていいほどに8年前の『試合』の記憶が引き出されてきて、
ビリーはなかなか寝付けなかった。

―――――――――――――――――

対戦当日。
DBのコクピット内で胎児のようにうずくまり眠っていたビリーが起きたのは、陽の昇る少し前の事。



ビリーがどのような事を考えながら眠りに落ちたのかは、
長らく苦楽を共にしてきた愛機だけが知っているだろう。

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ttp://www.gpara.com/special/soft/acnb/29.htm
ttp://www.gpara.com/special/soft/acnb/4.htm#3rd
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