※上記の広告は60日以上更新のないWIKIに表示されています。更新することで広告が下部へ移動します。

NB30位の人SS


『奴』の機体からマシンガンが放たれる。

削げおちた装甲に白熱した弾丸が容赦なく食い込む。
通信回線からは、『奴』のくぐもった笑い声がその弾丸のごとく絶えまなく響く。
そして、とうとう目の前のモニターに蜘蛛の巣状のヒビが入り、

割れた。


痛い。


左顔面に鋭い痛みが走る。
痛い。 左の方向が見えない。
痛みに耐えかね下を向く。
すると、水につけた雑巾を絞ったように、顔の左からボタボタと鮮血が落ち、膝の上を濡らした。

それに混じって、透明なゼリー状の物質も落ちる。



目だ。
俺は目を潰されたんだ。


絶望する暇もなく、今度は右のふくらはぎに激痛が走る。
まだ辛うじて見える右目で下に視線を移すと、
シート下にある緊急冷却用のパイプがへし折れ、自分の脚の骨を砕き貫通しているではないか。

ラジエータは度重なるダメージにより故障したのだろう。不幸中の幸いだった。
そのためか冷却剤もたいして出なかったので、脚が凍りつくような事態には至らなかった。
しかし、先ほどよりも出血がひどくなった。 そして今なお、容赦ない『奴』からの攻撃は続いている。





頭部パーツが壊れたのだろう、レーダー画面が消える。
出血のせいで意識が朦朧とする。
痛みも消えてゆく。




主催者側から強制停止をくらった『奴』が攻撃をやめた時には、すでに彼の意識は暗い闇へ落ちていた。


―――――数週間後。
彼は辛うじて生きていた。しかし、失った物もけして小さくはなかった。



左目は水晶体が破損しており、ガラス体がほとんど流れ出してしまっていた。
―――つまり、失明。


右足は救出までに時間がかかったため化膿し、
膝上からスッパリ切られた。





彼は周りにレイヴンを辞めようかと話した。
―――このような身体では何もできないから、と。

しかし、周りの声を聞き、彼は再び考える。


「見損ないましたよ! いつからあなたはそんなに弱くなったんですか!」
―――いつもいつも淡白な声で話すオペレータの姉ちゃんが珍しく声を荒げる。


「そうか…所詮お前はあのような俗物に一度敗北しただけで引き下がる尻の青い若造か…」
―――烏大老。まさか彼が来るなんて思っていなかった。


「お前バカか?! 本気出したお前の腕ならあんなゴミ鴉なんざ焼いて食っちまえるじゃねぇかよ!」
―――ライウン。単純だがすごくいいヤツだった。


「…あきらめる………よくない………」
―――ンジャムジ。
いまだに慣れないここの言葉で、必死に説得しに来てくれた。
……彼が帰った後で目から変な水が出てきたのはナイショだ。


「とりあえず考え直せや。せっかくだからズリネタ持ってきてやったぜ、ホレ」
(ドサッ)
―――Ω。末期2次ヲタの噂は伊達ではなかった……とりあえずこのこな×かが同人誌だけはとっておこう。




自嘲した。
俺は、何を考えていたんだろう。

彼の中で、一つの決意がまとまる。




『奴』を倒す。




まずはそこから。


Aランクの連中に、リハビリがてらの試合を頼み込む。
彼等は快くOKしてくれた。
それが何よりも嬉しかった。


この前につけた義足で、必死にペダルを踏む。
右だけの遠近感をつかめなくなった目で、必死にコンソールを見て、叩く。



―――そして、負ける。


その繰り返し。

はたから見るとACが変にガクガク動いているようにしか見えない。
しかし、彼は本気だった。
彼を、笑う者もいた。
しかし、彼は続けた。



『奴』を叩き潰すため。
少しでも、高い場所を飛ぶ鴉になるため。



5年後。
驚くことに、彼はランク入りしたままで現役復帰を果たした。



彼のランク――――30位。
つまり、最下位。




―――おもしろい、やってやろう。
再び、この混沌の空を一羽の鴉として飛んでみせる。

――――――そして。
日々、『奴』を倒すためのリハビリと称した対戦を繰り返す彼―――ネブラに、
あるレイヴンから一つの対戦依頼が届く。




それなら、ネブラも知っている。
最近デビューしたばかりだというのに、早速話題となっているレイヴンで、
トレーニングでもいくらかの好成績をたたき出していると聞いていた。





ランク外の面々を軽々と下し、破格の速さでランク入りせんばかりの彼。
障害持ち且つ病み上がりのネブラ。
そして今、自分は30位。
負ければランカーという名前の剥奪。



しかし。
ネブラは笑う。





――――――このようなところで、負けてどうする。
勝って、あいつをランク外にたたき出してやろう。






―――対戦前夜。
彼は自らの愛機『ルプス』のコクピットに身体を横たえる。


重量級のコアと腕に、さらに増加装甲をつけ、
生存率と反動吸収性を可能な限り高めた『ルプス』。
脚をフロート系に変更し、耐久性および機動性を極限までに高めた。
武装は、弾数を重視したマシンガンにレーザーライフルのみ。
一見シンプルだが、相手に確実にダメージを与えられる装備。
今までの経験を活かして組みあげ、全ての基礎性能において高い評価をたたき出した『ルプス』。




コイツとならやれる。
そのまま、ネブラは目を閉じた。










―――――対戦は、明日。


「ネブラ」について
ttp://www.gpara.com/special/soft/acnb/30.htm





| 新しいページ | 編集 | 差分 | 編集履歴 | ページ名変更 | アップロード | 検索 | ページ一覧 | タグ | RSS | ご利用ガイド | 管理者に問合せ |
@wiki - 無料レンタルウィキサービス | プライバシーポリシー