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 朝、薄暗いバジルの寝室に仄かな光が差す。
あまり掃除が行き届いていないため、差し込む光にほこりがキラキラと揺らめく。
バジルはベッドで惰眠をむさぼっていた。
そんな静かな部屋にこだまする声。



「起きるにゃ、バジル。起きるにゃ」



「んぁ?誰だ、こんな朝っぱらから」
 バジルはねむけまなこをこすりながら上半身をベッドから起こす。
周りを見渡すが誰もいない。
「こっちにゃ、こっちを見るにゃ」
 再び声だけが部屋の中をこだまする。
バジルの近くには、ねこが一匹いるだけである。
昨日、アリーナ帰りに拾ったねこ、シェルーである。



「俺、寝ぼけてんのかな」
 そういいながらバジルはシェルーを抱きかかえる。
つやつやの黒色の長毛が、手のひらを心地よくくすぐる。
「わたしだにゃ」
 シェルーがいきなり言葉を発したことから、バジルは抱いていた腕の力を強めてしまった。
「おいおい。やっぱり俺はまだ寝てるみたいだな」
「いたいにゃ。何するにゃ」



 その言葉を聴き、バジルの頭の中は混乱する一方だった。
訳が分からなかった。
なぜこのねこの言葉が分かるのだろう。
いや、そもそもねこは言葉を発しない。
バジルの混乱振りは傍目からでも分かるほどだった。
そんなバジルをよそに、シェルーは再び口を開く。



「おちつくにゃ、バジル。私のことをよく聞くにゃ」
 シェルーはそういうとバジルの瞳を見つめた。
そういわれても、落ち着けるはずもない。
バジルはシェルーを抱えたままどうしたらいいのか分からなくなっていた。



「まずは深呼吸するにゃん。」
 それを聞いてバジルは、大きく息を吸い込んだ。
そしてゆっくりと吐き出した。
「おちついたかにゃ?」
 シェルーはそういうと首をかしげた。
これに対してバジルは無言でうなずく。



「じゃあ、わたしを放すにゃ。苦しくて息もできにゃい」
「あぁ、すまなかった」
 そういうと、バジルは腕の力を抜いた。
そうすると、シェルーは器用に腕から抜け出しベッドの横のいすにちょこんと座った。
いすの上で、シェルーは毛づくろいを始めた。



「ホントにお前が話しているのか。シェルー?」
 バジルはバカらしいと思いながらも、シェルーに尋ねる。
シェルーは毛づくろいから顔をあげて、
「ようやく信じるようになったかにゃ?
 さっきは痛かったにゃん」



「ははは、俺やっぱりおかしくなっちゃったかな」
 バジルはそういうとシェルーのほうに向き直った。
「バジル、おまえはおかしくにゃいにゃ。
 ちょっと普通と違うだけにゃん。私の話をよく聞くにゃ」
 シェルーはバジルの顔を見つめながら続ける。
「バジル、おまえは小さなときからゲームが弱くにゃかったかにゃ?
 チェスやポーカーで負けた記憶しかにゃいだろう。」
 確かにバジルはチェスやポーカーはもとよりテーブルゲーム全般においてとてつもなく弱かった。
それを思い出して、バジルはこくりとうなずいた。
「そして、いまアリーナで全く勝てていないにゃ。
 自分でもなんで負けるのか理由が分からないはずにゃ。
 でも、これらには全部原因があるにゃ」
 「原因?」
「そうにゃん。これもあれも全部おまえの体質のせいだにゃん。」
 そういうとシェルーは背筋を伸ばした。
「俺の・・・・・・体質・・・?」
バジルはもはやシェルーが喋っていることを疑問には思わないようになっていた。


「そう、おまえは精神感応体質にゃん」
「・・・・・・?」
「わからないかにゃぁ?簡単にいうとテレパシーが使える体質にゃん」
「ちょっと待て。今までそんなの感じたことないぞ」
「そこがバジルの珍しいところだにゃん。バジルのテレパシーは発散型なんだにゃん。
 自分の考えていることは他人に伝わってしまうけど、
 他人の事はは感じられないにゃん」
「そんなの誰も教えてくれなかったぞ」
「もちろん普通の人にはなんとなくとしか伝わらないにゃん。
 でもそのなんとなくがゲームにゃんかには大切にゃぁ。
 バジルの考えてることはテレパシーでみんながにゃんとなく知ってるにゃぁ。
 だからバジルはゲームが弱いにゃー。そして、アリーナの対戦もにゃ」
「そうだったのか。俺はいつも考えを読まれていたのか」
 そういうとバジルはがっくりと肩を落としてしまった。



「そんなに落ち込まにゃいなぁ。でもそのおかげでわたしと出会えたんだからにゃ。
 テレパシーが使えなかったら出逢えてないにゃん」
「そういえば、シェルーはどうやって話してるんだ?」
 バジルはずっと疑問に思っていたことを口にした。
「もちろんテレパシーにゃ」
「でも、俺は発散型とか何とか・・・。それになんでテレパシーが使えるんだよ?」
「それはわたしが強化猫だからにゃ。精神感応度が大幅に強化されてるにゃん。
 だからバジルのことも分かるし、わたしのこともバジルに伝えられるにゃん」
「そうか、そうだったのか。
 これって夢じゃないよな」
 そういいながら、バジルは頬をつねってみた。



「夢じゃなさそうだ。それにしても俺にこんな能力があるなんて」
「ずっとバジルのような人を探していたにゃ」
「ん?どういうことだ」
「そうだにゃん。忘れてたにゃ。
 バジルぅ、これから一緒に来て欲しいにゃん。
 そこでもっと詳しく説明するにゃん」
 シェルーはそういうといすから飛び降りた。
そしてそのままスルスルと玄関の方へと向かっていった。



「ちょっと、おい」
 バジルは、置いてきぼりを食らってしまい、
急いで服を着替えるとシェルーの後を追った。




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