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「お兄ちゃん起きて!」という澄んだ少女の声で目が覚めた。
 薄く目を開けば、カーテンの隙間から真っ赤な太陽が俺を見つめている。
 朝が来たのだ。
 枕元ではいまだに「お兄ちゃん起きて!」と目覚まし時計が叫んでいた。
 引っつかんで床に叩きつける。「ふぎゅ」と不愉快な音を立てて壊れた。
 右の手で汗まみれの顔を拭い、布団を撥ね除ける。
 洗面所に行って、捻った蛇口から吐き出された冷たい水で顔を洗い、正面の鏡を見ると、俺の背後ではツインテールの小柄な少女が向日葵のような笑顔を咲かせていた。
 鏡をパンチ。パンチパンチパンチ。吐き気がする!
 味気ない緑色のドアの前には、パンとミルクが置いてあった。
 食欲が出ないので無視した。一緒に数錠の薬があったが、やはり飲む気にならない。
 今朝ぐらい飲まなくたって大丈夫だろう。
 ローゼットを開き、パイロットスーツを取り出し、寝間着から着替える。
 そのままベッドに座って待機していると、携帯電話が愛らしい嬌声で「お兄ちゃんお兄ちゃんはお兄ちゃんお兄ちゃん!」と喧しく怒鳴り立てた。握りつぶしたくなったが、我慢して出てみた。
 クール・ビューティな感じの少女の、なんとも照れたような声で囁かれた。
『一時間後にミッションがあるわ。容易しておいて』
「はい」
 気持ち悪いので素っ気無く答える。
 電話は切れた。
 やがてポニーテールの背の高い利発そうな顔の美少女が部屋に入ってきた。
 Yシャツの胸元は大きく開かれ、短いプリーツスカートからは真っ白い肌が覗いている。
 
 ――この娘、以前は男に見えていたのに……!

「お兄ちゃんったら、まだ準備出来てないの?」
「いいえ」
 きめぇ。こっちみんな。
「そっか。良かった」
 彼女は笑った。
 任務だ。くそ、誰か助けてくれ、誰か助けてくれ誰か助けてくれ……。
 現実は非情である。誰も助けてはくれない。
 俺はポニーテール娘の後ろに付いて部屋から出た。


 コックピットは少女期特有の甘い香りで満たされていた。
 ――うああああああああああああああああああああああああああああああ!
 もたれかかると、「んっんっ」と喘ぎ声のようなものが聞こえて、甘い香りが一層強く臭い立ち込めた。
 操縦桿を青筋の浮かんだ手でギリギリと握り締める。
 我慢しろ、我慢しろ、我慢しろ、我慢しろ!
 レバーを弾くとモニタに光が灯った。
 シートからケーブルを引っ張り出す。後頭部のデバイスへ接続する。
 なにか凄まじい快感が背筋を突き抜ける。性的な意味で。
 ――うわああああああああああああああああああああああああああああ!
 マジ気持ちわりぃ! なんだよこれ!
 モニタで、格納庫のドアが開かれる。
 

 戦闘があった。キモかった。全略。


 部屋に帰ると、俺は『お兄ちゃん大好きだよ。えへへ』と甘えてくる人型パソコンを踵落しで粉砕した。
 もはや俺には何もわからない。
 ――おまけに俺のまわりには女ばかり!
 頭痛が酷かった。
 なんで全部女に見えるんだ?!
 ――俺は何かをされた。
 ――俺は、確か、手術を受けて!
 ――うああああああああああああああ! 畜生ムラクモ・ミレニアム! 
 ――俺は手術を受け続けていた。最初の数回の手術ではもうなんか全部グロ肉に見えるようなってやばかったが。
 背後から抱きついてきた無表情な少女の首筋に手刀を食らわせる。切なげな声が聞こえた。
 ――なんなんだこれは! 最悪だ! これなら全部グロ肉のほうがマシだ!
 ――実際は少女じゃないし、全部幻で俺の妄想なんだけど、
 ――しかし男がいない!
 ここは地獄だ! 
 ガチムチの兄ちゃんの写真を見ても美少女!
 鏡を見ても美少女!
 ゲイポルノを見ても美少女おおおおおおおおおおおおお!
 全てを書き換えられている人間でなくなっている。
 ちっくしょおおおおおおおおお!
 親の名前とか思い出せないけどそれ以上にちくしょおおおおおおおおおおお!
 男のアナルが見たいよおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!
 手術が決まったときはどうしようかと思ったが……。
 まさかウホッもアッー!もない世界になってしまうとは!
 男! 俺に必要なのは男なんだよ!
 濃厚なホモ・セックスができる男が欲しいとは言わない!
 せめて、せめて逞しい腹筋や、極太のペニ○や、刈り上げた頭が見たい……!
 ちくしょおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!
 ――そう言えば、もうすぐポニテ娘がやってくる。
 本当はあいつも、おっさんの医者なのだ、今の俺には美少女に見えるが……。
 ん? 
 つまり、中身はおっさんなんだな?
 ……。
 オラなんだかムラムラしてきたぞ!
 洗面所に向かう。
 鏡には頬を赤らめた黒髪ロングの薄い胸をした少女が全裸で立っている。
 ――これは俺の幻覚。
 ――汗臭さすらない最悪の幻覚!
 ――俺は人間ではなくなってしまった。
 ――手術されたせいだ。死ねよムラクモおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!
 滅びろ強化手術!
 鏡をキックキックパンチ! っていうかこの鏡朝壊したのになんで戻ってるんだよおおおおおおおおおおおおお!
 ドアが控えめにノックされる。
 ――来た!
 俺は息巻いて急いでドアへと向かった。
 服を脱ぎ捨て、驚いた顔のポニテ娘に飛び掛る。
 ――見た目は男でも、ケツの穴があれば……!
 


 ――そして一晩たって、俺は後悔した。
 やっぱり俺の感覚には女と変わらなかった。
 上の意向で無罪放免になったが……。
 くそっ、もう俺は男の瑞々しいアナルを味わえないのか?! 
 そんなことを考えながら研究所の庭を散歩していると、猫が一匹歩いているのを見つけた。
 くそっ、お前はいいよな、自由で……。
 待てよ?
 もしや!
 捕まえて股座を覗いてみれば、そこには立派な竿とタマがあった。



 












                    俺は、生唾を飲み込んだ。




 






補足:三日後、猫は無事に保護されました。




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