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 グラッジは、隣の黒と赤の逆足ACを見やった。
 彼ももう、ACに乗って、彼女と同じ状態になっている。
 ただ殺すことしか出来ない、戦闘マシーンになっている。

 アリーナ参加時の機体構成とはかなり異なっていた。カラーリングは同じだが。
 脚部は重逆にコアタイプはOBに。ガトマシは更に巨大な物に換装されていた。多分クレストの試作品だろうか。
 肩武器はリニアキャノンと大型グレネード。EXに追加ブースタを装備している。殲滅戦闘特化機体だ。

 ドリルロケット内部には彼と、彼女以外にもう一人いた。
 フロートタイプ。腕マシンガンを装備、両肩にチェーンガンを装備していた。
 機体色はキャンディーみたくカラフル。
 カラードネイルは、こんなやつが僚機で付いてくるとは知らなかった。
 フロートの彼の瞳はカラードネイルにではなく、ゼロへ向けられていた。
 ゼロのぼうっとした紅い瞳に、彼のEYEは向けられていた。
 それには強い何かが感じられる。が、しかし、カラードネイルのような復讐心ではない。
 何か別のものだ。別の何かだ。

 拘束具に肩と腰を固定され、壁に押し付けられる。
 フロートも、ゼロも、また、固定具につかまって壁に押し付けれられた。
 『貫通螺旋回転開始、超電磁加速用意、撃ちだし五秒前、五、四、三、二、一……』
 カラードネイルは舌を噛まぬよう、歯を食いしばった。
 いま彼女に出来るのは、突入前に死なないよう祈るだけだ。
 誰に祈るのか。レイヴンの信ずるのは最終的には己だ。
 己の他に神は居ず、己の全ては手足の知る処にあり。
 強烈な加速Gで目の前がまっ赤に染まる。
 音が何も、聞こえなくなった……。

 ――漫画のような音を立てて、壁をブチ抜く鋭いドリル。
 最後の目標壁をぶち抜き終わり、後方部分――荷台そこにおいて切り離す。
 未だ勢い衰えぬドリルは自分だけ勝手に通路を直進して、群がるガードメカをまとめて排除し、最後に爆発して粉微塵になった。
 鉄ホロの爆砕ボルトが弾けて、ACが三機、出てくる。他の区画でも、同じ事が起きているだろう。
 施設壁突破以前に死んでいなければの話だが。

 通路はサイレンが鳴り響く。
 まっ赤な警告灯が点滅を繰り返す。
 瓦礫の山を一越えし、飛び散ったオイルの血溜まりに二足の二機は機械の脚を浸す。
 反重力装置《フロート》の騎士はその複雑な地形をものともせず走破する。
 彼がまっ先に侵入ゲートを開ける。そして爆発的な開幕弾幕を浴びせ、
 それに伴う大量の小爆発によって炎がゲートから上がる。
 人型の二機も彼に追従し、爆炎の中敵を叩き潰し、先へと進む。

 誰の声も聞こえなかった。聞こえるのは馬鹿みたいな銃声と機械の断末魔だけ。
 話が出来なかった。通信装置は、ジャミングされていて、雑音しか聞こえなかった。
 そうとうな電波障害である。接触通信も受け付けてくれない。
 だがカラードネイルにはありがたかった
 今すぐにでも殺してしまいたい相手と何をドウ話せばいいのか、よくわからなかったから。
  
 右左に曲がり、降りて登る。まるで延々と続くかのように思われる通路。
 雑魚敵で満杯の部屋にも遭遇した。
 敵はバズーカで根こそぎ吹き飛び、グレネードが弾けて粉微塵。高速鉄甲弾は彼らを蜂の巣にする。
 グラッジは肩に追加弾層を装備し、クラッキングは陸上戦艦。フロート型は元より弾が尽きる事は無い。   

 「……しまったッ!」
 
 グラッジは無人MTに背後を取られた。そしてその銃口が彼女に向けられようとしているその時!
 弾丸がMTに突き刺さる。爆炎を上げて倒れる戦闘機械。その陽炎の向こうにいるのはゼロだ。
 クラッキングが彼女を見ていた。あの時と同じ眼で。くつくつと。楽しそうに。笑っているように!
 
 無人機械を蹴散らし進んで行くと今まで施設内にあった沢山の扉とはかなり異質な扉に行き当たった。
 今度はゼロが先行してその部屋に入った。その部屋ではサイレンも、赤い警告灯も何もなかった。
 真っ赤なランプは通路の向こうへ消えた。
 サイレンの音が聞こえない。何も、無かったかのように……。

 声が聞こえた。
 通信が入る。
 通信障害から回復したらしい。

 『ゼロだ。どうやらジャミングは此処までの様だな』
 「……だからなんだ?」
 『此処は安全なようだが、俺は先へ進もう。先行した分だけ、報酬は上乗せだそうだからな』
 「わたしに来るなと言っているのか」
 『そう聞こえたのか、それはお前が思っていることじゃあないのか』
 「なんだと……」

 実際、カラードネイルはこれ以上もなく疲れていた。あれほどの兵器と戦ったことは初めてだった。
 一機一機は弱くとも、束でかかってくるのだから、普通なら神経が持たない。
 だが彼女は帰る訳にはいかない。
 「あたしがこのままのこのこ帰るだと? そんなことするはずなかろうに!」
 『ハッハ! そうだったなあ復讐者、カラードネイル?
  毒の爪は最後まで取っておくべきだよなあ」
 ゼロが、くつくつと苦笑する。

 『んじゃああんたはどうだい、サイプレス=テン・コマンドメンツ?』

 フロートのAC――テン・コマンドメンツは、腕と一体化した銃口をゼロに向けて撃った。
 鉄甲弾がゼロのギリギリを通り過ぎて後ろのゲートに突き刺さり、爆発した。
 爆炎が晴れると、その先には、超電磁スクリーンが貼られているのが見えた。もし進んでたら最後だった。
 『はっはっは、なるほど……。つまり、こう行けって事だな』
 ゼロはガトマシで部屋の壁を指し、トリガーを引いた……。

 四角いのから、丸い透明チューブに、通路は変わった。
 チューブ通路では、自走しなくても、機体は先に進んでいく。

 透明なチューブの外は、見た事も無い世界だった。
 雪が舞っていた。仄蒼く光雪。降り積もるアスファルトもう見えない。光る粒子に半ば埋まった都市。
 稲妻がキノコの様なビルの合間に定期的に走る。まるで生き物の鼓動の様に。
 滅びさった『オールドコート』の人々が住んでいた地下都市だろうか。
 しかしレイヤードとは、いや我々人類とはかけ離れたこの建築構造。本当に『人間』がいた世界なのだろうか。
 人類の考え得る街とは到底思えない、異質と嫌悪を感じる……。 
 
 ここにも管理者がいた筈だ。  
 人類は、管理者が人類を地下に閉じ込めていたのは、地球の汚染の問題だけでは無かった。
 人類のレベルを測り、再び地上に出ても大丈夫なレベルに達したと判断した時、試練が下され、その試練を乗り越えれば人類は帰還を許される。
 それが行われ、乗り越えられねば、箱庭で滅びるだけだ。
 オールドコートの彼等はそれを行う事が出来なかったのだろうか。
 それとも……彼等はもう、此処から出て行ってしまっていて……まさか、此処はもう抜け殻で――……、 

 「……地上に、わたし達より先に到達していた」
 『お前も、そう思うか』
 「聞こえてたの?」
 『ああ、なんだか此処では逆に通信しない方が難しいみたいだ』
 「なんて都合の良い……。でも、彼、さっきから一言も話さないようだけど」
 『アイツは無口なのさ。そう。昔からな』
 「知り合いなの?」
 『ちょっとしたな』

 サイプレス=テン・コマンドメンツは、瞳を下に向けていた。

 『まあ、復讐者のレイヴン、あんただって、知り合いくらいいるだろう。
  そういうことだ。……んでだ、その『先に地上に出た人類』は、一体何処に消えたと思う?』
 「空に……いや、海の中とか、また地に潜ったとか」
 『海はワカランなあ。だが、地下に戻るんなら、此処に戻って来しやしないかい』

 そうだ。これだけ保存されているのだから、此処に戻ってきてもいい筈だ。
 しかしそもそも戻る必要はあったのだろうか。地上は綺麗だった。物凄く、綺麗だったのだ。
 地上が、綺麗だったのは、地上に出た彼等が戦争を起こして、いなくなった訳でない事を示している。
 戦争の痕跡なんて、何処にも無かった。弾の破片一個も発見されていないのだ。
 あったのは、管理者が作ってくれていた最初の町に、自然の大地と海だけだ。
  
 「……レイヤード人類が、地下の潜ったのは今から五百年から千年前だそうだが定かじゃあない」
  そしてレイヤード時間を地球暦に戻したのが百五十年位前。確かなのはこれだけだ」
 「かなりの空白がある……のかしら」
 『空白がある、か。ではどうだ、管理者が空白を作っているとすればだ』
 「管理者が記録に残すのを禁止してたっていうの?」
 『そうだ百五十年前以前の記録は一切無い。
  だが何も残っていないのはおかしい。口伝すら無い。俺達は一体何をして過してきたんだ?
  MTでさえその当時は無かったんだ。つい百年前。最近だ。開発されたのは。
  石と棍棒で生活していたわけでもあるまい』
 「そんなの知らないよ。興味深いけど、そんな事話していたわけじゃなかったでしょ」
 『ああそうだそうだそうだった! 話を戻そうか』

 ゼロはかなり興奮しているようだった。
 カラードネイルは驚いた。ゼロは漫画の中の殺し屋のように冷酷だと思っていた。
 自分の中で完結していた彼の像は今塗り替えられた。
 彼は呆気にとられる彼女を余所にベラベラと喋りまくる。

 『人類は順番交代に地上に進出しているんだ。大災害以前の賢人が、管理者を作った技術者たちが。彼らが定めた順番でだ!
  そして地上に進出した彼らはいなくなる。俺達が最初の地上進出だとは思えない。
  なあ、どこへだと思う……。ハハ! そうだ、そうだよ。宇宙へだよ。地球を離れたんだ。
  畑のように栽培されているんだよ、俺達は。胞子のように散らばるんだよ、これから俺達は!
  そう定められているんだ。決められていたんだよ。
  管理者は人では無い。失敗はしない。人類をかならず進出させる。
  お前は知っているか分からないが、管理者はやりすぎる事は無いんだ。
  嗚呼、千年の昔の宇宙進出。俺達は! 何千年の昔にだよ。決められて……ッ!
  俺は確かめたいんだ。俺達は一体何なのか、という事を。その為に俺は……』

 テンコマが少し黙れ、と言うように銃口を向けていた。今度は外さない狙いだ。
 
 『ああすまない。ちょっと熱くなりすぎたようだ。……ああ、ああ。
  そうだ、そう、ただたんに、この『オールドコート』の人類は皆滅びたんだよ。
  ここの管理者は、そう判断したんだろうな。俺達は運がよかったんだ。上手く事が運びすぎているようだがな』
 「……事が上手く運びすぎている?」
 『そう……、そうだよ、まったくな……、ん、ああ、もうすぐチューブも終わりなようだ。この先に何があるかワカラン。注意しておけよ』

 ゼロはそう言って、黙った。カラードネイルも続いて黙った。サイプレスは最初から黙ったままだった。
 通路が終わり、イカの嘴のような扉が開き、ちっぽけな侵入者たちを施設内奥深くへと導く。
 まるで誘っているように。 

 そして銃声が聞こえる。
 第二ラウンドが始まった。
 まだ先は長い。

 つづく




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