↓の続きだってよ
http://wiki.livedoor.jp/armoredcore1234/d/AF%bc%e7%bf%cd%b8%f8%a3%d8%a5%e1%a5%ea%a1%bc%a5%b2%a1%bc%a5%c8
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GA社 ガレージ内休憩室 現地時間1806時
数ヶ月前、ラインアークを襲撃した際にホワイトグリントを撃破した俺は独立傭兵の立場から一転し、企業連直属のリンクスとして特例でカラードランク1に登録された。
名誉などあったものではない、企業連から監視を受けねばならないのだ。
そのため、『企業連』に反しない経済戦争に参入する依頼受領許可や企業連が所有する施設利用の許可が下りた。
が、前半は名ばかりで半分ほどが検閲されているのが有様だ。
6月、GAとの取引が終わった俺は携帯端末でメイを呼び出した。
ガレージ地下のカフェで待っててと言われ、合成品のコーヒーを注文する。店内には5~6人しかいない。ある者は煙草を吹かし、ある者は端末を使い事務処理を行っていた。
適当にこちらも煙草を取り出し一服してコーヒーを啜る。30分ほど待っているが連絡など一切入らない。
もう連絡をこちらから入れようとした時、カフェの空気が一変した。
煙草を吹かしていた者は直立不動し敬礼、事務員の女性は立ち上がり深々と頭を下げている。
気になって目を向けると何とも場違いな人がいた。
リリウム=ウォルコット、見た目は20前の少女にしか見えないが、カラードランク2位という優秀なリンクスの一人だ。
余談だが、リンクス戦争で活躍したヘリックスⅠ、ヘリックスⅡはウォルコット家の出身でありリリウムとは親類に当たる。
両機は姉弟という立場からツーマンセルを組み、一定以上の戦果を上げたが、『アナトリアの傭兵』に撃破されている。
リリウムはキョロキョロと周りを見回し、誰かを探しているようだったが、悪いが知らん顔をしておこう、本日はメイと予定があるのだ。
普通に煙草を吹かそうとしたが、周りは女神でも見たかの様な顔を浮かべ突っ立っている野郎ばかりなので渋々リリウムに手を振った。
GA社内BFF施設 リリウムの個室 現地時間1840時
個室に通され適当に椅子に座る。
「お初にお目にかかります。BFF所属、リリウム=ウォルコットです」柔和な笑みを浮かべてリリウムは言った。
「はじめまして、俺は――」
「存じております。企業連所属エニオン=ネックリング様ですね。GAの施設を利用されるとお聞き致したのでご挨拶に参りました」
馬鹿丁寧過ぎると正直思った。かといって皮肉には聞こえないあたりこれが地なのだろう。さすがイギリス貴族の御出身だ。アメリカ人らしいフランクな言葉遣いをするメイとは違う。
「カラードのランク1を取得してもやることは何も変わらないさ」
「だとしても並の腕前では『アナトリアの傭兵』を撃破できません」
「実力には程遠いよ。運が良かっただけだ」
「お言葉ですが、ストレイドのブラックボックスを拝見しましたがとてもそうは思えません。あの機動は常に二手三手読んでいるようでした」
「……オッツダルヴァの協力のおかげだよ」
「いえ、戦闘はほぼ単機で行い、ホワイトグリントは再起動までしています。もう少し自分の腕に自信をお持ち下さい。度の外れた謙虚は鼻につきます」
「そうだな、次からはそうしよう。だが、俺が言っているのは事実だよ。たいした腕もない、運でここまで来たようなものだ」
「ネックリング様はフランシス、ユージンの二人をご存知でしょうか?」もちろん知っている。リンクス戦争で『アナトリアの傭兵』に撃破された……ああそういうことか。
「敵は自分で取りたかったのか?」
無躾すぎるかと思ったがしかたないだろう。ただ、本意は知っておきたい。リリウムは困ったような表情をしてこう言った。
「その願望はありました。ですが、王大老からお許しが出なかったのです」
当然だ。ラインアークの主戦力であるホワイトグリントはランク9と低い位にあるが数々の伝説を残している。いわく、蹂躙兵器の破壊だったり、オリジナルのリンクスを何機も撃破している。BFF所属、メアリー=シェリーを撃破したのも彼だ。
「BFFは、無駄に戦力を消耗したくはないはずだ。その、半年前に俺もあんたらのAFを落したから」
「そうかもしれません、ですが―――」
「ストップ。ちょっとしたクイズをやろう、何故俺がホワイトグリント襲撃を依頼されたと思う?」
「それは――」
リリウムが言葉に詰まった。発言してもいいのか困っているようだ。
「捨石だよ。企業は自分の利益しか考えていない。俺は奴らにとって尖兵に過ぎないからね。だが、俺が生き残るとは誤算だったようだな」自嘲気味に笑う。僚機の尻拭いはしなければならないのだ。
「――それでも、貴方は私の英雄です」
「英雄扱いはやめろ。運で生き残って来た俺にその称号は重すぎる」
苛立ちを覚える。英雄なんかあの戦闘には一人も居なかった。『アナトリアの傭兵』は伝説の活躍をしているが、撃破できたじゃないか。
「――私も同じです」
耳を疑う。冗談じゃないと思ったが、リリウムの表情は一蹴出来ない面持ちがあった。
「メアリー様が倒れてからは、私は王大老から育てられてきました。このランク2という肩書きも、リンクスになったことも私の意志ではありません」
「高嶺の花じゃなかったんだな、リリウムは」当たり前です、とリリウムは笑う。
「ウォルコット家に生まれなかったら、私は今頃クレイドルの中に生活して、素敵な恋人でも見つけていますよ」
「そんなもんか」
ということはリリウムには今恋人いないのか。いい事を聞いたような気分じゃなかった。
「ええ、恋人になりたい人は今近くにいますけどね」
「なんだ、惚れてる男がいるんじゃないか」
なんだよ、夢くらい見せてもいいだろうに。
「ええ、とても近くに居るんですよ。でも、私の気持ちには気づいてはくれないです」
頬を染めるリリウムがとても可愛く見えた。その、羨ましい男がいるもんだなとしか思わないが。
「誰だよそれ?リンクスか?」
「リンクスですよ。最近企業に入って来た方です」
「んー……ダン=モロ?」
「馬鹿にしてませんか?私よりランクが低い人とは付き合いたくありませんね」
「リリウムよりランクが高いリンクスなんて俺しか居ないじゃないか」
あ。自分で言って気が付く。え?でも、ちょっと待って。
「……俺?」
「ようやく気がついてくれたんですね。メイが悩む理由もよく分かります。あなたは本当に鈍感なんですね」
「メイとは仲が良いのか?」
「あなたが砂漠でメイを抱かれたのも教えてくれましたし、交際の状況も教えてくれますよ」
職業上年齢が近い同姓がメイしかいないのだという。GAの連中は基本的に年食ってる奴らばかりだからか。
「俺にはメイがいるんだ。君の望みには応えられない」
「そうですか」無茶苦茶に凹んでいるようには見える。どうしたらいいんだ。浮気?冗談じゃない。そんなことしたらメイに殺される。
浮気は許さないってメイに言われた。ああ、畜生。
「済まない。このことはメイには黙っておくよ。」
もう、ここには来れないだろう。身支度を整え、ドアに手を伸ばす。
「いいんです。でも、気が向いたら連絡してください」
「わかった。こちらのオペレーターに連絡してくれ」
プライベート回線の情報が記してある名刺を渡す。
「さよなら」
扉を閉めた途端、嗚咽が扉ごしから聞こえた。
「どうしたの?」
事の最中だった。表情が硬くなっていたんだろう。メイにそう言われた。
「いや、別になにもない。ただ――」
「ただ、何よ?あーもしかして浮気した?」
「するわけないだろ。英雄に恋する女の子がいただけだ、それだけ。それだけだよ」
「何それ?ふざけてるの?」
偶像に恋するもんじゃない。この世界ではそれさえも許されない。
了
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GA社 ガレージ内休憩室 現地時間1806時
数ヶ月前、ラインアークを襲撃した際にホワイトグリントを撃破した俺は独立傭兵の立場から一転し、企業連直属のリンクスとして特例でカラードランク1に登録された。
名誉などあったものではない、企業連から監視を受けねばならないのだ。
そのため、『企業連』に反しない経済戦争に参入する依頼受領許可や企業連が所有する施設利用の許可が下りた。
が、前半は名ばかりで半分ほどが検閲されているのが有様だ。
6月、GAとの取引が終わった俺は携帯端末でメイを呼び出した。
ガレージ地下のカフェで待っててと言われ、合成品のコーヒーを注文する。店内には5~6人しかいない。ある者は煙草を吹かし、ある者は端末を使い事務処理を行っていた。
適当にこちらも煙草を取り出し一服してコーヒーを啜る。30分ほど待っているが連絡など一切入らない。
もう連絡をこちらから入れようとした時、カフェの空気が一変した。
煙草を吹かしていた者は直立不動し敬礼、事務員の女性は立ち上がり深々と頭を下げている。
気になって目を向けると何とも場違いな人がいた。
リリウム=ウォルコット、見た目は20前の少女にしか見えないが、カラードランク2位という優秀なリンクスの一人だ。
余談だが、リンクス戦争で活躍したヘリックスⅠ、ヘリックスⅡはウォルコット家の出身でありリリウムとは親類に当たる。
両機は姉弟という立場からツーマンセルを組み、一定以上の戦果を上げたが、『アナトリアの傭兵』に撃破されている。
リリウムはキョロキョロと周りを見回し、誰かを探しているようだったが、悪いが知らん顔をしておこう、本日はメイと予定があるのだ。
普通に煙草を吹かそうとしたが、周りは女神でも見たかの様な顔を浮かべ突っ立っている野郎ばかりなので渋々リリウムに手を振った。
GA社内BFF施設 リリウムの個室 現地時間1840時
個室に通され適当に椅子に座る。
「お初にお目にかかります。BFF所属、リリウム=ウォルコットです」柔和な笑みを浮かべてリリウムは言った。
「はじめまして、俺は――」
「存じております。企業連所属エニオン=ネックリング様ですね。GAの施設を利用されるとお聞き致したのでご挨拶に参りました」
馬鹿丁寧過ぎると正直思った。かといって皮肉には聞こえないあたりこれが地なのだろう。さすがイギリス貴族の御出身だ。アメリカ人らしいフランクな言葉遣いをするメイとは違う。
「カラードのランク1を取得してもやることは何も変わらないさ」
「だとしても並の腕前では『アナトリアの傭兵』を撃破できません」
「実力には程遠いよ。運が良かっただけだ」
「お言葉ですが、ストレイドのブラックボックスを拝見しましたがとてもそうは思えません。あの機動は常に二手三手読んでいるようでした」
「……オッツダルヴァの協力のおかげだよ」
「いえ、戦闘はほぼ単機で行い、ホワイトグリントは再起動までしています。もう少し自分の腕に自信をお持ち下さい。度の外れた謙虚は鼻につきます」
「そうだな、次からはそうしよう。だが、俺が言っているのは事実だよ。たいした腕もない、運でここまで来たようなものだ」
「ネックリング様はフランシス、ユージンの二人をご存知でしょうか?」もちろん知っている。リンクス戦争で『アナトリアの傭兵』に撃破された……ああそういうことか。
「敵は自分で取りたかったのか?」
無躾すぎるかと思ったがしかたないだろう。ただ、本意は知っておきたい。リリウムは困ったような表情をしてこう言った。
「その願望はありました。ですが、王大老からお許しが出なかったのです」
当然だ。ラインアークの主戦力であるホワイトグリントはランク9と低い位にあるが数々の伝説を残している。いわく、蹂躙兵器の破壊だったり、オリジナルのリンクスを何機も撃破している。BFF所属、メアリー=シェリーを撃破したのも彼だ。
「BFFは、無駄に戦力を消耗したくはないはずだ。その、半年前に俺もあんたらのAFを落したから」
「そうかもしれません、ですが―――」
「ストップ。ちょっとしたクイズをやろう、何故俺がホワイトグリント襲撃を依頼されたと思う?」
「それは――」
リリウムが言葉に詰まった。発言してもいいのか困っているようだ。
「捨石だよ。企業は自分の利益しか考えていない。俺は奴らにとって尖兵に過ぎないからね。だが、俺が生き残るとは誤算だったようだな」自嘲気味に笑う。僚機の尻拭いはしなければならないのだ。
「――それでも、貴方は私の英雄です」
「英雄扱いはやめろ。運で生き残って来た俺にその称号は重すぎる」
苛立ちを覚える。英雄なんかあの戦闘には一人も居なかった。『アナトリアの傭兵』は伝説の活躍をしているが、撃破できたじゃないか。
「――私も同じです」
耳を疑う。冗談じゃないと思ったが、リリウムの表情は一蹴出来ない面持ちがあった。
「メアリー様が倒れてからは、私は王大老から育てられてきました。このランク2という肩書きも、リンクスになったことも私の意志ではありません」
「高嶺の花じゃなかったんだな、リリウムは」当たり前です、とリリウムは笑う。
「ウォルコット家に生まれなかったら、私は今頃クレイドルの中に生活して、素敵な恋人でも見つけていますよ」
「そんなもんか」
ということはリリウムには今恋人いないのか。いい事を聞いたような気分じゃなかった。
「ええ、恋人になりたい人は今近くにいますけどね」
「なんだ、惚れてる男がいるんじゃないか」
なんだよ、夢くらい見せてもいいだろうに。
「ええ、とても近くに居るんですよ。でも、私の気持ちには気づいてはくれないです」
頬を染めるリリウムがとても可愛く見えた。その、羨ましい男がいるもんだなとしか思わないが。
「誰だよそれ?リンクスか?」
「リンクスですよ。最近企業に入って来た方です」
「んー……ダン=モロ?」
「馬鹿にしてませんか?私よりランクが低い人とは付き合いたくありませんね」
「リリウムよりランクが高いリンクスなんて俺しか居ないじゃないか」
あ。自分で言って気が付く。え?でも、ちょっと待って。
「……俺?」
「ようやく気がついてくれたんですね。メイが悩む理由もよく分かります。あなたは本当に鈍感なんですね」
「メイとは仲が良いのか?」
「あなたが砂漠でメイを抱かれたのも教えてくれましたし、交際の状況も教えてくれますよ」
職業上年齢が近い同姓がメイしかいないのだという。GAの連中は基本的に年食ってる奴らばかりだからか。
「俺にはメイがいるんだ。君の望みには応えられない」
「そうですか」無茶苦茶に凹んでいるようには見える。どうしたらいいんだ。浮気?冗談じゃない。そんなことしたらメイに殺される。
浮気は許さないってメイに言われた。ああ、畜生。
「済まない。このことはメイには黙っておくよ。」
もう、ここには来れないだろう。身支度を整え、ドアに手を伸ばす。
「いいんです。でも、気が向いたら連絡してください」
「わかった。こちらのオペレーターに連絡してくれ」
プライベート回線の情報が記してある名刺を渡す。
「さよなら」
扉を閉めた途端、嗚咽が扉ごしから聞こえた。
「どうしたの?」
事の最中だった。表情が硬くなっていたんだろう。メイにそう言われた。
「いや、別になにもない。ただ――」
「ただ、何よ?あーもしかして浮気した?」
「するわけないだろ。英雄に恋する女の子がいただけだ、それだけ。それだけだよ」
「何それ?ふざけてるの?」
偶像に恋するもんじゃない。この世界ではそれさえも許されない。
了