――質問です。
 ――あなたはなんのために戦っているのですか?

 『私は、私は自分が愛する、そして私を愛してくれる人の為に戦っている。
  アルテリア・クラニアムの防衛へまわったのも、ORCAに賛同する事をしなかったのもそれが理由、
  ……といいたいところだが、そうではないだろうな。理由は他だ』

 ――他の理由というと?

 『自分の為だよ。私は自分の勝手な思いで戦っているんだ。
  私はあなた方が思っているような善人では決してないんだよ』

 ――善人ではない? 

 『人類の未来を天秤にかけても、私は私でありたかった……。
  私の価値は戦う事だけだ。戦って勝って利益をもたらす事だけだ。
  戦う術をなくして、私は成り立たないんだ』

 ――術?

 『そう、術だな……。
  ……さっきの質問についてだが、すこし付け足しておこうか。
  私はネクストに乗る前、企業に拾われる前孤児だったんだ』

 ――戦争孤児……ってやつですか。

 『戦争孤児というより小競り合い孤児と言ったほうがいいかもな。
  今は私自身がネクストに乗ってるが、そのときの私はネクストなんて消えればいいと思っていた。
  大人たちからも色々、こんな事ばっか言われたから。
  「ネクストの所為でコジマ汚染が確実に進んでいる」
  「ネクストがあるからこの世界に平和が訪れない」
  「ネクストが戦場を作っている」
  クレイドルへ運良く上る事が出来た私のかつての仲間達もそう思っていただろうね。
  私の敵はネクストだったんだ。戦場で一番目立っていたんだよ、ネクストは』

 ――アームズ・フォートよりもですか。

 『アームズ・フォートなんかよりも、ずっとだよ。あんなに小さいのにね。
  そんな彼等が、再び空から墜ちてきて、ORCA旅団主体の地球再生プログラムなんかに参加したら世界はどうなると思う。
  まずはコジマ関連兵器の凍結だ。すなわち紛争の根絶。
  ネクストなんかもってのほかだ。ネクストは真っ先に廃棄される兵器の一つだ。
  ネクストが不要に、いや、戦場がなくなるからどのみち私はネクストから降ろされる。
  私のただ一つの誇りがなくなってしまう。それが恐ろしかったんだ。恐かったんだよ。
  私の身体を見てくれ。機械の補助無しでは何にも出来ない身体だ。
  ネクストと繋がってこそ、私は自由になれる。
  有澤やローディーのような化け物とは違って、私は極度なコジマ過敏だったのだ。
  ネクストに乗ってから、それは一段と進行して、このざまって訳だ。
  だからって企業を恨んでいるわけでもないけどな』

 ――戦う事をやめられないのですか?

 『戦う事はやめられないし、やめさせてもらえないだろうな。
  ORCA旅団のおもわくが崩れた今、企業の金回しだけが世界をコントロールしていくのだ。
  しかしそれも長くは無いだろう。きっと私が死んでから……死んでから百年くらいは続くと思う。
  百年経っても企業自体は今のままとほぼ変わらないだろう。だが地球が終ってしまう。
  宇宙へも逃げられない。なんせ成層圏には……アッ!』

 ――成層圏には、例のあれですものね。

 『なんだ知っているのか。
  あれはエーレンベルグの宇宙まで届く粒子波動ビームで粉粉にして初めて破壊できる。
  中途半端に壊しても自己再生して更なる形態へと変身してしまうからな。
  まかり間違って企業陣がエーレンベルグを建造しようとしても造れない。
  設計図はオーメル内の旧レイレナ陣営の重役が粛清されて、その騒動でみんな焼かれてしまった。
  このまま汚染が続けば地上は元より海もクレイドルが浮んでいる高高度の空も……地球全体がコジマ並行によって汚染される。
  ORCAが消えた今人類にもう逃げ場なんて何処にも無いんだ』

 ――ですよね。私達の孫の孫の孫くらいが、どう動くのか……。

 『孫、か……。機械の私には到底縁の無い代物だな』

 ――すみません。わたしはそんなつもりでは……!

 『誤る事無いさ。私はこれでいいのさ。
  生身で今もいきていたら、なんて想像も出来ない。
  そうだ。なら、あなたには子供がいるのかい』

 ――この前分かったんですが、妊娠三ヶ月です。

 『そうか。こんな私からだが、これだけは言える。
  おめでとう、だ。大事にしろよ』

 ――はい。それはもう……!
 ――《PiPiPi!》
 ――あ、時間ですね。今日はありがとうございます。

 『ああ。こちらこそ。
  まあ、ただ、今の最後のほうなんだがオフレコにしてもらえないだろうか。
  例のあれを公表されるのはよろしくない。
  私についても、愛する人を救いたかった、とでも書いておいてくれ。
  そのほうがかっこいいから』

 ――了承しました。私も襲撃なんてされたくないですからね。
 ――あ! 私が来てから初めて笑いましたね。結構かわいいですよ?
 ――ええ! 冗談ではありませんよ。本当です。
 ――はい。それではまた会う日まで。
 ――またあいましょう。ウィン・D・ファンションさん。

 尾張
























ハーンコスコス





| 新しいページ | 編集 | 差分 | 編集履歴 | ページ名変更 | アップロード | 検索 | ページ一覧 | タグ | RSS | ご利用ガイド | 管理者に問合せ |
@wiki - 無料レンタルウィキサービス | プライバシーポリシー