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隔離された空間、逃げ延びた人々が辿りついた世界、地下都市レイヤード。
いつものごとく管理者管理者とクレストが騒ぎ立てる。
ミラージュはそれに対して面白くない様子を、ニュースで訴えている。
しかし、我々傭兵にとって、そのようなことはどうでも良い。
戦い抜き、報酬を貰い、気ままに暮らす。それが何より大事なことだった。

薄暗い裏路地を進み、目立たぬ一角にある一軒の店に入る。
中では、騒がしさを知らぬ人間達が、静かに酒を楽しんでいた。

「遅いぞ。機体の調整に手間取ったのか?」
大柄な男が心配そうな顔する。
「相変わらず、酒のことになると足が速いな、スパルタンの旦那」
そういって、隣の座椅子に腰掛けた。

水割りをバーテンダーに注文すると、
間も無く綺麗なグラスが目の前に差し出される。
何度も足を運んでいたからか、バーテンダーも顔を覚えてしまったのだろう。

「暗いな、何があった」
「みんなが来てから話すよ」

そうして、二人で情勢を語りつつ、時間を潰した。



「遅れた。すまない」
短く、それでいて無駄のない言葉。無機質な印象を残す男が声をかけてくる。
「スキュラ。どうだい、調子の方は」

そういうと、お手上げの様子を示す。やはり、皆、同じなのか。
「珍しいわね。何か悩みごと?」
赤いコートを羽織った女性が、スキュラの後ろから顔を出す。
相変わらずといっては何なのだが、派手なコーディネートだ。

皆が席につき、注文をし終えたことを確認する。
「実は、レイヴンになろうと思うんだ」

驚く三人。
スキュラは何を考えているか解らないが、眉間に皺が寄っている。
スパルタンの旦那は、酒を呷ることをピタリと止めてしまった。
リップハンターは、何とも言えない面持ちでこちらを見ていた。

「どうしてまた、コーテックスに下ろうと思ったんだよ」
スパルタンが少しだけ声を荒げる。

「話せば長くなる。少し付き合ってくれ」

そういうと、三人は首を縦にふることで、意思表示をしてくれた。




クレスト中央研究施設。主に兵器開発に勤しむ場所であった。
MTが一機、巡回経路を移動し、フロアをチェックする。

「こちらコールハート。特に異常なし、巡回を継続する」
オペレーターに通信をいれ、また巡回経路を探りまわる。

自分の愛機であるカスタムMTは、クレストで改良してもらったものだ。
そのために、性能チェックと報告のために、よくここに訪れるのだが、
今日に限っては、警備を頼まれてしまった。

「さて、これで一応、経路は網羅したが・・なんだ?」
レーダーに反応がある。
それも4機。それに続いて、大型の熱源が1機。

緊急用の回線を開き、声を荒げる。俺だけじゃ、危険すぎる。
「オペレーター、急いでクライアントに連絡。
研究施設に接近する熱源を感知。一つはACだ!」

敵機の足止めだけでも、そう思って緊急用回線を閉じる。
果たして、どれだけの時間が稼げるだろうか。
仕事内容はいつもと変わらぬものとなったが、嫌な予感が拭えなかったのだ。
「・・もってくれよ」
自分の愛機が、今までにないくらい弱々しく見えてしまった。




「コールハート、聞えますか。近隣の施設で活動していたレイヴンに、
至急応援を頼のんだと、クレストから連絡が入りました。
その他にもう一人、同業者に依頼したそうです。そちらの様子は!」

正直、あまり芳しくない。
見たことの無い球体型の兵器だが、防御力が半端ではないのだ。
しかし、足止めは出来ている。
そういって、ライフルの狙いをつけ、連射を繰り返した。

「くそ、なんて頑丈なんだ・・うおお!?」
背後からラインレーザーを受け、前方に押し出される。
外殻は防御用、攻撃する際に開くようだ。

逆間接型が幸いしたのか、後方からの衝撃には耐性があった。
ならば。
「そこか、いけ!」
ロケット弾が命中すると、ジリジリと電子音をたてて爆散した。
だが再装填の時間を、敵が見逃すはずも無かったのだ。

「くそ・・ここまでか」
レーザー兵器で削られた装甲が、涙を流すがごとく剥がれ落ちてゆく。
あまりに無力、あまりに貧弱。そう思うほか無かった。
悲観的な思考に支配され、もう駄目だと思ったそのとき。

一閃、球体兵器が真っ二つに切り裂かれ、爆散した破片が周囲に飛び散った。
また一閃、一閃。青いブレード光波だけが、脳裏に焼きついていく。

「状況は」
ただそれだけの言葉が、これほど頼もしく思えるとは。

「かなり悪い。奥で戦闘が始まったらしい、急いでくれ!」

「了解した」
ブーストを噴かしたかと思えば、ACはさっさと奥の部屋に進んでいってしまう。
それを追いかけてみるが、この鈍足では追いつけもしなかった。


ゲートロックが解除され、重々しい扉が少しずつ道を開く。
バトルライフルの音が部屋に轟いたかと思えば、
グレネード音と小型自立兵器の攻撃音に掻き消される。

「増援か、ありがたい!
コイツ、手ごわいぞ。注意してくれ!」

近隣で雇われたレイヴンだろう。
深い緑色の四脚ACが、不気味な雰囲気を漂わすACと戦闘中だった。

「了解した、援護する!」
意気込んでみたものの、先ほどの球状MTのダメージが残っている。
正直、固定砲台といっても過言ではない。
(くそ、これじゃ何も出来ない)
固定砲台となろうとも、レイヴンばかりに良いところを持っていかれるのは悔しい。
MT乗りの意地を見せつけようと、ライフル砲とロケット弾を連射する。

だが、その攻撃が敵の注意を引いてしまったようだ。
不気味なACが高速で接近してくる。
こちらは全くの不動、動ける状態じゃない。

「・・ここまでか」
ぼそりと呟いて、操縦桿から手を離した。
瞳を閉じ、爆散する自分を受け入れようとしていた。
しかし、MTは爆発をする気配がない。

「これが・・・レイヴンか」
モニターに映し出される映像は、驚愕の一言だった。




「それで、どうなったの?」
リップハンターがグラスの縁をなぞりながら、こちらを見る。

「敵ACは四脚ACを行動不能にまで追い込んでいた。
そこに、自分のライフル砲が飛んでいった。
それに気付いたACは、こちらに向って突進してきたんだ。
やられると思った瞬間」

「ふむ」
スキュラが息をのむ。

「もう一機、あの球状MTを切り刻んでいたACが、敵を刺し貫いていた。
あの距離を一気に詰められるのは、OBくらいのものだろう。
その速度を利用して、串刺しさ。機能停止しない方がおかしい」

ふう、と息をつく。
いつ思い出しても興奮してしまう。
あの強さ、あの速さ。MTにはない、戦うことに特化した能力。
改造された作業用機械では足元にも及ばない。

スパルタンがどん、と酒瓶をテーブルに置いた。
衝撃で皆の前に置かれたグラスが揺らぐほど、力が篭っていた。

「・・なるほどな。
確かに、もうMTの時代じゃねえ。俺のテンペストもそうだった。
一緒に仕事したレイヴンと比べると、囮か盾が精一杯だ。
そろそろ鞍替えの時期なのかもしれねえな」

そういって、先ほどの勢いはどこへやら、大きな溜息をついた。
皆、うすうす気付いていたのだろう。
むざむざと見せ付けられる、圧倒的な実力の差。性能の差を。

「試験、受けてみましょうよ。
私たちはMTでの経験もある。そこらの新米以上の腕なはずよ。
機体が同じレベルなら、もう悔しい思いもしなくていいはず」

リップハンターが大きく酒を呷る。

「・・・。そうだな、やってみよう」
スキュラも賛成のようだ。

「そうか、皆、すまない。また戦場で会おう」
思わず、頭を下げる。

「次に会うときは、全員レイヴンってのが望ましいな」
そういって、スパルタンの旦那は皆に酒を注いだ。

成功と、上昇への乾杯は、
これから先も忘れる事のない、思い出のワンシーンになった。





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