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*主人公は便宜上“×××××”と表記します

「もお~い~くつ寝ぇるぅとお~、おーしょーおーがーつー♪」
「あと10分もねえよ……」
「大声やめて……」
大晦日、新年まであと数分という時にコタツの囲んでいるのは、×××××、レジーナ、アップルボーイだった。
レジーナは既に大分出来上がっているようで先ほどから大声で歌を歌いまくり、ダウン寸前のアップルボーイはその大声に悩まされっぱなしだった。
コタツの上には空の焼酎の瓶が2本転がっており、さらに半分まで中身を減らした焼酎がレジーナの手のうちにあった。
アップルボーイの向かいに座る×××××も相当飲んでいる様子だったが、ザルなのかあまり酔っている様子はない。
「ねえ~レインはぁ~?」
「とっくにそこで死んでるよ……」
レジーナの向かい、彼女からは見えない位置に、幸せそうな寝顔をしたレイン・マイヤーズが転がっていた。
「起こせえ~♪一緒に年超すろぉ~♪」
「寝かせといてやれって……」
ちなみに彼女が今寝息を立てている理由は、約二時間ほど前に宴会が始まった当初、レジーナに焼酎一気飲み(一応水割りではあった)をやらされたためである。
普段は真面目一筋のクールビューティーと言った感じのレインだが、こういうときのノリは良いようだ。
「年越しなんらから起きとかなきゃらめなんらぁ~♪」
「じゃあ飲ますなよ……レインが弱いの知ってるだろ……」
「あははははははは♪」
段々レジーナのテンションが上がるとともに呂律が回らなくなり、それと反比例するように段々アップルボーイの口数が減ってくる。
このままではまともに覚醒している人間が×××××だけのまま年を越しかねなかった、というか十中八九そうなるだろう。
「そうこうしてる間にあと一分か……おいアップルボーイ、起きてるか?」
「まぁ、なんとか……」
とは言いつつも彼の顔はコタツに突っ伏したままだ。沈黙するのは時間の問題だろう。
「死に正月、か……」
「縁起わるぅ~い♪」
けらけらと笑うレジーナにはそろそろ静かにして欲しいところだ。その焼酎の瓶とグラスを放せ。
「ほれ、あと20秒だぞ。アップルボーイ、カウントダウン終わるまではがんばれ」
「はぃ……」
「じゅうごー♪じゅうよーん♪」
「レイン、起きるかー?」
「……すぅ……」
レインはすっかり夢の中。
「じゅうにー、じゅういちー♪」
「10……9……うっぷ」
「8!7!6!」
「ごー♪よーん♪さーん♪」
「に……」
「いち!」
「あけましておめでとーう♪」
「おめでと……ございます……」
「はい、おめでとう」
「……むにゃ……」

「さて、あたしはおいとまするかなぁ~」
「一人で大丈夫か?」
「だいじょうぶだいじょうぶ~」
そう言って立ち上がるレジーナの足取りはかなり危なっかしい。
「……送るよ。行先、結構遠いだろ」
×××××も立ち上がり、レジーナに肩を貸す。
「ん、すまんねぇ~」
「あれ?家に帰るんじゃないんですか?」
「うん、まだぁ~」
「こいつには他に、行くところがあるだろ?」
「……ああ、トルーパーさんのところですか」
「おう。送ったらすぐ帰ってくるから、お前は寝てていいぞ。あとレインを襲ったりすんなよ」
「しませんよ……じゃあ、おやすみ、なさ、い……」
途切れ途切れに言い終わると、そのままアップルボーイは動かなくなってしまった。

「明けましておめでとう。……今年もあいつのこと、見守ってくれな」
トルーパーの目の前には清酒がなみなみと注がれたグラスが二つ、さらにその前には、
トルーパーの妻、つまりレジーナの母親と思われる女性の写った写真が置かれていた。
「怒ってるか?あいつを俺と同じ、傭兵の世界でいさせてること」
自分のグラスを手に取り、一口飲む。目の前の女性は、写真の中でずっと笑っていた。
不意に、玄関のチャイムが鳴らされる。
自分を訪ねてくる人間など限られているが、もしやと思う期待がトルーパーにはあった。
玄関の扉を開けると、そこには真っ赤な顔をした娘が立っていた。
「オス。明けましておめでとー」
「……お前、大分飲んでるな?」
「あはは、バレたぁ?」
娘は元々明るい性格ではあるが、ここまでけらけらとしているところは見たことがない。
「誰が見てもわかる……入れ」
「おう」
レジーナを家に招き入れ、ドアを閉める。外から少し風が入り込んできたが、どうやら外はかなり冷えているようだった。
「……む」
部屋に戻ると、レジーナは先程までトルーパーが座っていた椅子に座り、母親の写真を無言で見つめていた。
「……覚えてるか?母さんの顔」
「ううん。ほとんど覚えてない」
「……だろうな」
レジーナがまだ小さい頃に、母親は病死した。
だからこそトルーパーは、娘に苦労をかけまいと依頼を受け続け、皮肉にもそれが、娘を家出させるきっかけになってしまった。
「その写真、持って帰ってもいいぞ」
「ん、いいよ。親父のとこ来れば、いつでも会えるし」
「……そうか」
トルーパーの飲みかけのグラスに口を付けながら、レジーナは母親の写真を穏やかな顔でずっと見つめている。
「……すまなかったな」
きょとんとトルーパーの方へ振り向き、すぐにふっと笑う。
「やめよ。新年から暗い話は良くないよ。それに、親父が仕事ばかりしてたのは、あたしのためだもんね」
「……そうか」
レジーナがグラスを一つ取り出してきて、酒を注ぐ。
「飲も、親父。親子“三人”水入らずで、さ」
その言葉に、トルーパーは眼を丸くする。
「まだ飲むのか、お前」
「だーいじょうぶだって。焼酎一本分ぐらいしか飲んでないよ」
「十分だろう……」
そうは言いつつも、トルーパー自身まんざらではない様子でテーブルに着く。
「はい、明けましておめでとー」
「おう、おめでとうな」
カチリ、とグラスを合わせ、母親とも乾杯を交わす。
そして、二人同時に一気に酒をあおった。
「親父、今年もよろしく!」
「おう、こちらこそ、な」




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