12月24日。日没とともに、クリスマスは始まった。
最初は、二日前と同じように、テレビの電波ジャックからだった。
『ベリー・メリー・クリスマァァァァス!!!』
『サンタ・クロース・プランを開始!』
『夢と希望のアームズ・フォート、コジマ・ファンタジアのお披露目だ!』
『諸君!派手に騒ごう!』

「レイテルパラッシュ、出るぞ!」
「ヴェーロノーク、出ます!」
「さて、どんなパーティーが待っているやら」
「楽しみですねえっ♪」

「アンビエント、出撃します」
「ストリクス・クアドロ、出る!」
「王大人」
「何だ、リリウム」
「コジマ牛乳は――」
「まだたんこぶを作り足らんようだな」

『フィードバック出撃完了、メリーゲート、出撃準備よし。出撃してください。……メリーゲート、出撃完了』
「有澤も出るようだな。後れを取るなよ、グリーンフィールド」
「了解」

「……ダリオはまだ冬休みか」
「昨日スーパーで鏡餅買ってるところを社員が見たとさ。諦めて一人で行け」
「教育係である貴方の責任ですよ、レオハルトさん」
「耳が痛いな」
「ノブリス・オブリージュ、出撃する!」

「ルーラーは出ないのか」
「リザイアは昼間から泥酔しております。出撃直後に墜落してもよいのであれば、叩き起こしますが?」
「……いや、いい。ステイシス、出撃する」
「ああ、そういえばORCAから伝言を預かっていますよ」
「何?読み上げろ」
「“お前の分のチキンはいただいたぜテルミドォォォォル!!”だそうです」
「あいつ殺す……!」

各企業から選りすぐりのネクストが何機も飛び立ち、夜空にコジマ粒子の軌跡を残しながら向かう先は、旧ピースシティエリア。
そこで、正体不明の巨大兵器が目撃されていた。

「何だ、これは……!?」
「綺麗ですねえ~」
砂漠のど真ん中に、巨大なそりがあった。とにかく巨大なその大きさは、ランドクラブの二倍はあるだろうか。
おそらく全体は金属製、下部には無限軌道を備え、移動することも可能なようだ。
そりの表面はどこもかしこも綺麗に電飾され、明々と巨大なイルミネーションを形成している。
側面に描かれたイルミネーションがなぜかアクアビットマンだったのは無視する方向でいく。
さらには――
『じんぐるべー♪じんぐるべー♪すっずがーなるー♪』
「BGM付きとは……面妖な……」
大音量で周囲に響き渡るクリスマスソングが、場の緊張感を根元から破壊する。その場にいる全員が、どうしたらいいものか全くわからなかった。
「さて、攻撃してよいものか否か……」
フィードバックがアクアビットマンのイルミネーションを眺めながら攻めあぐねていると、突如そりの上方からくぐもった破裂音が聞こえた。
「何だ!?」
「砲撃か!?」
「グレネードか!?グレネードなのか!?グレネードだろう!?」
その場にいる全員が空を見上げると、そりの真上に何かポッドのようなものが浮かんでいるのが見えた。
全員が見つめる中それは段々と上空へ上がっていき、そして、破裂した。
その破裂に全員が身構える中、白い煙のようなものがポッドの中から現れ、そしてすぐに消えた。
「今のは……?」
「新型の兵器、か?」
ポッドの中身が一体何だったのか、誰もそれは分からなかったが、その効果はすぐに知ることになった。
「な……これは一体……」
「綺麗……」
雪が降り始めた。だがそれは真っ白な雪ではなく、緑色の雪。コジマ粒子と同じ色をした雪だった。
「王大人!雪ですよ、雪!」
「この雪ではしゃげるお前がうらやましいよ、リリウム」
ひらひらと舞落ちる雪はネクストのPAに触れると、PAに微々たる干渉を及ぼしながら溶けて消えた。
「やはりこの雪はコジマ粒子か……トーラスめ、妙なものを作りおるわ」
「相性がいいみたいね、私の機体とは(カラー的な意味で)」
皆思い思いの感想を述べる中、突如としてBGMとして流れていたクリスマスソングが停止した。
緊張感のないBGMが消え、辺りに静寂が訪れると、綺麗なイルミネーションも、幻想的な緑の雪も、ひどく不気味なものに思えた。
「止まった……?」
ただ静かにイルミネーションを光らせ続けるそりに、全員の視線が注がれる。
やがてその色とりどりの明かりも消え失せ、陽気なそりは巨大な金属塊へと変貌する。
「終わり、ですか?」
「エイ、なぜそんなに声が残念そうなんだ」
「まさか、これで終わりということはあるま――」
パンパカパーン♪パッパッパッパッパンパカパーン♪
突如先程までのBGM以上の大音量で鳴り響くファンファーレ。同時に再び、きらびやかなイルミネーションがそりの表面に現れる。
「おおー!おおー♪」
「王大人、何かきますよ、なにかっ♪」
「……王小龍、うちのエイをどうにかできるか?お前の弟子と似ているだろう」
「無茶を言うな。リリウム一人でさえ持て余すというのに」
「子供がまぎれこんだか……」
またしても妙なテンションになる一同に囲まれる中、そりの上部からはスモークが吹き出し、さらに何かがせりあがってきた。
「あれは……」
「ネクスト、か……?」
スモークの中から現れた赤と白に塗り分けられた機体は、ネクストよりはずっと小型のものだった。
おそらく全長は5メートルほど、背後には巨大なコンテナのようなものを二つ背負っている。パワードスーツの類だろうか。
「サンタ、か……?」
「サンタです」
「サンタですよ」
「認められるか、こんなサンタが……」
「レッツ、パアアアァァァァァァリイイイイイィィィィィィl!!!!!!」
「「「「「っっっ!!?」」」」」
誰だ今のは。
「トゥ、ミー!ウェルカムトゥ・トーラアアアアァァァァァス!!!!」
「フー・アァム・アアアァァァイ!!!??? アイム・サンタ・クロオオオオオォォォォォス!!!!!」
謎のパワードスーツは突如両手を空に掲げたかと思うと、ぶっ壊れたかと思うほどのテンションと声量で叫びだした。
自分はサンタだ、と。
「サ、サンタさんが……」
「王大人、サンタさんは子供たちの信頼に背きました……」
「阿呆だな……」
茫然とするリンクス達に構わず、自称サンタは両手を真横に広げ、誇らしげに胸を張る。
「HO-HO-HO!!良い子にしてたかなリンクスの諸君!第47代サンタクロースのマイケル・ウィルソンがトーラスと一緒にプレゼントを届けに来たぞ!」
「見よ、この巨大なアームズフォートを!これぞトーラスの技術力の結晶、コジマ・ファンタジア!夢と希望を世界中に届ける、最終兵器!」
「さあ行け夢と希望のコジマ・ファンタジア!世界中の子供たちに、夢を!希望を!コジマを届けよ!」
サンタがそう叫ぶと、そり(以下コジマ・ファンタジア略称KF)から無数のポッドが高速で射出された。
打ち出されたポッドは下部に搭載されたロケットエンジンによって自力で飛行し、あっという間に夜の闇へと消えていった。
「な……!」
「世界中で雪を降らすつもりか……」
追うにも撃ち落とすにも、ポッドはすでに遥か彼方。今からでは追撃はVoBでもないと不可能だろうが、
リンクス達は皆、まぁ綺麗だし放っておいてもいいかな、などと考えていた。
「これよりサンタ・クロース・プラン第一段階開始、あとは世界に雪が降るのを待つだけだ、HO-HO!!」
「意味はあるのか?」
「意味だって!?」
オッツダルヴァの問いかけに、サンタはわざとらしく驚いて見せる。
「HO-HO-HO!!何も知らない良い子のリンクス達には、教えてあげよう、あの意味を!」
「幻想的な緑の雪、コジマスノウの、その意味を!」
「コジマスノウはクリーンなコジマ、毒を抜かれた、緑の灰。YO-HO!!」
「何だと!?」
「あのポッドに詰まっていたトーラスパウダーは空気中のコジマ粒子を凝結させ、地に落とす。
そして地に落ちたコジマ粒子は、およそ一週間をかけて有毒成分を分解し、緑の灰と化すのだ!」
「そんな……」
「夢みたいなことが……」
そう、まさに夢のような話だった。
地表をコジマによって汚染され、アサルトセルによって閉じ込められたこの星で、人類にもはや未来はないと思っていた。
だが、もしコジマ粒子の汚染だけでも除去できれば。人はクレイドルを降り、また地に足を付けて暮らしていけるようになる。
そしてクレイドルが必要なくなれば、そのエネルギーを用いて、ORCAの為そうとした、クローズプランによってアサルトセルを除去することもできる。
「これから約一年をかけて、このコジマ・ファンタジアは世界に雪を降らし続ける!そして一年後、私はまた戻って来よう!
次は世界中に、コジマの緑ではない、草花の緑を植えるために!」
そう言うとサンタはとうっ、という掛け声とともに飛び上がり、背中のバーニアを吹かし始めた。
「さらばだリンクス諸君!一年後にまた会おう!それまで、コジマ粒子のご利用は計画的にな!HO-HO-HO!!」
「サンタの国に帰るぞ、ジョディイイイイイイ!!!」
「イエス、ミスタ・プレジデーント!」
背中についた小さなバーニアだけの出力とはとても思えない上昇力で、サンタは空高く上がっていく。
「メリイイイイィィィィィ・クリスマアアアァァァァス!!!!」
陽気な雄たけびを残して、サンタの姿は見えなくなった。

「サンタ・クロース・プランか……」
あれから一週間が経った。
コジマスノウの全貌はトーラスから直々に好評され、世界中に波紋を呼んだ。
今、サンタ・クロース・プランを成功させるために、コジマ粒子使用縮小の動きが、急激に広がっている。
「トーラスも、たまには良いことをする」
旧ピースシティエリアに残されたコジマ・ファンタジアには、一年分のポッドが積載されているそうで、これから先コジマ汚染が広がらなければ、
今積載されている分のポッドで汚染の浄化には十分らしい。
一週間に一回、コジマ・ファンタジアから射出されるポッドは、遠くから見るとまるで種を飛ばす花のようだという。
「ウィン・Dさん、良いもの作ったんですよ!見てください、これ!」
舞散るコジマスノウを窓から眺めていると、先ほどまで出かけていたはずのエイ・プールがやってくる。
「これは……」
「クリスマスの日に地に落ちたコジマ粒子が、今日分解が終わって灰になったんです。世界最初の、コジマアッシュですよ!」
エイの手に握られていたのは、小さな砂時計の中におさめられた緑色の灰、コジマアッシュだった。
「肥料にもなるそうですね、本当でしょうか?」
「さあな。まぁ、今嘘をついても仕方あるまい」
一年後、サンタは草花の緑を植えに来ると言っていた。その時のための、肥料と言うわけか。
「人々の命を蝕んでいたコジマ粒子が、今度は命を育む役割に回るとは、わからんものだな」
一度はこの世界に絶望した自分が、今はこの先の未来が楽しみで仕方がないということに、ウィン・Dは気づいた。
「エイ」
「はい?」
窓際にコジマアッシュの砂時計を置きながら、エイが振り返る。
「サンタって、いい奴だな」
その言葉に、エイは満面の笑みで元気に応える。
「はい!」
窓際の砂時計は、一年後が待ち遠しいかの様に、コジマアッシュをさらさらと下に流し続けていた。





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