ウェンズディ機関は、当の昔に滅びたはずだった。
人体と機械を融合させ、大幅な戦闘力の構造を図るという、
究極の強化人間を創らんとした、プロジェクト・ファンタズマ。
人体と機械を融合させ、大幅な戦闘力の構造を図るという、
究極の強化人間を創らんとした、プロジェクト・ファンタズマ。
それも、一人のレイヴンともう一人によって打ち砕かれた。
残存した戦闘能力は無く、ウェンズディ機関も姿を消した。
残存した戦闘能力は無く、ウェンズディ機関も姿を消した。
はずだった。
しかし、ウェンズディ機関の研究員は、
『究極の強化人間を創りだす』ことを諦めなかった。
ファンタズマ計画は、まだ死んでいなかったのである。
『究極の強化人間を創りだす』ことを諦めなかった。
ファンタズマ計画は、まだ死んでいなかったのである。
火星のテラフォーミング。クラインの暴動。
それらのゴタゴタが勃発してなお、今だ動きを見せない地球政府。
打ち破ったのは全て、レイヴンの活躍があってのものだった。
インディーズなるテロ組織、首都を攻撃しようと差し向けられた大型MT、
ACに対抗すべく創られた機動兵器の強奪、そして地上を夢見たレイヴンの、
機動エレベータ襲撃事件。
それらのゴタゴタが勃発してなお、今だ動きを見せない地球政府。
打ち破ったのは全て、レイヴンの活躍があってのものだった。
インディーズなるテロ組織、首都を攻撃しようと差し向けられた大型MT、
ACに対抗すべく創られた機動兵器の強奪、そして地上を夢見たレイヴンの、
機動エレベータ襲撃事件。
どれも新聞のメインディッシュともいえるほどのネタだった。
ざっと読み上げただけでも、これだけの事件があったのだ。
ざっと読み上げただけでも、これだけの事件があったのだ。
誤字:構造→向上 スマネエ
しかし。
ここ、ロストグラウンドと呼ばれる絶海の孤島には、
それらの事件について情報などは全く入ってこない。
ただ一人の研究員が、数体の作業用ロボと一緒に作業をつづけていた。
ここ、ロストグラウンドと呼ばれる絶海の孤島には、
それらの事件について情報などは全く入ってこない。
ただ一人の研究員が、数体の作業用ロボと一緒に作業をつづけていた。
「これで、最後か」
人体改造用のカプセルに入る。ファンタズマ計画の復活を夢見て、
研究員は最後の仕上げに取り掛かった。
人体改造用のカプセルに入る。ファンタズマ計画の復活を夢見て、
研究員は最後の仕上げに取り掛かった。
「ウェンズディ機関は滅び、その一員だった私の父も消えてしまった。
スティンガーなる男が計画を再現できたと言うが、どうだかな」
スティンガーなる男が計画を再現できたと言うが、どうだかな」
研究、研究。その言葉だけが父を満たす原動力だった。
正直、私はあの父親が自分の親であると思えなかった。
生まれた経緯も不明で、ただ生きる理由のためだけに、父の研究を引き継いだのだ。
とはいっても、研究員は自分しか残らなかった。
ウェンズディ機関が崩壊したと同時に、研究員は全て行方をくらましたのだ。
そうなれば、人集めを出来るはずもなく、
データを持っている自分しか出来ないのである。
正直、私はあの父親が自分の親であると思えなかった。
生まれた経緯も不明で、ただ生きる理由のためだけに、父の研究を引き継いだのだ。
とはいっても、研究員は自分しか残らなかった。
ウェンズディ機関が崩壊したと同時に、研究員は全て行方をくらましたのだ。
そうなれば、人集めを出来るはずもなく、
データを持っている自分しか出来ないのである。
「生きる理由か。いっそのこと、レイヴンにでもなればよかったな」
ははは、と自虐的な笑いが込み上げる。
女も知らず、人間もしらず、ただ計画のためだけの1ピース。
それが自分のことだと思うと、心臓をぶち抜かれた気分になる。
しかし、その虚無感を覆い尽くすほどの探究心が、自分の脳で蠢いていた。
私が生まれるとき、もしかしたらプログラムされていたのかもしれない。
全てが無くなった後も、また1から作り直せるほどの知識と技術を。
ははは、と自虐的な笑いが込み上げる。
女も知らず、人間もしらず、ただ計画のためだけの1ピース。
それが自分のことだと思うと、心臓をぶち抜かれた気分になる。
しかし、その虚無感を覆い尽くすほどの探究心が、自分の脳で蠢いていた。
私が生まれるとき、もしかしたらプログラムされていたのかもしれない。
全てが無くなった後も、また1から作り直せるほどの知識と技術を。
「・・そのためだけに。そうだ、全ては研究を成就させるため」
そういって、全てを作業用ロボットに委ね、カプセルに横たわった。
そういって、全てを作業用ロボットに委ね、カプセルに横たわった。
夢を見る。
肉体がいじられている感覚を忘れ、脳神経が浮上していく。
何もない空間へ、全ての神経系列が飛ばされていく感覚がある。
これが機械の世界なのだろうか。
無機質で、何も温かさがない、ただ目的をこなすためだけの世界。
それは、どこかで感じたことのある世界だ。
肉体がいじられている感覚を忘れ、脳神経が浮上していく。
何もない空間へ、全ての神経系列が飛ばされていく感覚がある。
これが機械の世界なのだろうか。
無機質で、何も温かさがない、ただ目的をこなすためだけの世界。
それは、どこかで感じたことのある世界だ。
「・・そうだ、私の世界がまさにソレだったな」
作業用ロボットに囲まれ、日がな一日モニターと睨みあう。
無機質で、何の温かさもない、研究をやり遂げるためだけの世界。
ああ、今と何も変わらない。私はきっと、生ける鉄くずだったんだ。
作業用ロボットに囲まれ、日がな一日モニターと睨みあう。
無機質で、何の温かさもない、研究をやり遂げるためだけの世界。
ああ、今と何も変わらない。私はきっと、生ける鉄くずだったんだ。
意識が浮上する。
恐らく、強化手術が完了したのだろう。後は、それをファンタズマに繋ぐだけだ。
カプセルが音を立てて口を開ける。
むくり、と起き上がる。
恐らく、強化手術が完了したのだろう。後は、それをファンタズマに繋ぐだけだ。
カプセルが音を立てて口を開ける。
むくり、と起き上がる。
目の前に広がる光景は、まさに鉄の墓標だった。
ロボット達は全ての目的を達成したために、その場で動きを止めていた。
コンソールの前に立つもの、ガレージの通路で止まるもの、
作業を終えたためにファンタズマの隣で横たわるもの。
ロボット達は全ての目的を達成したために、その場で動きを止めていた。
コンソールの前に立つもの、ガレージの通路で止まるもの、
作業を終えたためにファンタズマの隣で横たわるもの。
「お疲れ。そして、私も」
ひたひたと、ファンタズマまで歩き、目の前で足を止める。
見上げる先には、鋼鉄の殺戮兵器が佇んでいる。
ひたひたと、ファンタズマまで歩き、目の前で足を止める。
見上げる先には、鋼鉄の殺戮兵器が佇んでいる。
ハッチを開け、コクピットに乗り込むと、
そこはどこか懐かしい暖かさをもっていた。
生きているのだ。私と繋がるために、生をうけたモノなのだ。
そこはどこか懐かしい暖かさをもっていた。
生きているのだ。私と繋がるために、生をうけたモノなのだ。
「・・そうか。お前も全てを見届けたいのか」
そうして、コクピットに座り、スイッチを入れた。
座椅子の脇にあったサークレットを頭にはめ、神経をファンタズマに繋ぐ。
駆動音を上げて動き出す、計画の全て。
脳とシンクロしたことを理解したのか、ファンタズマが動き出す。
そうして、コクピットに座り、スイッチを入れた。
座椅子の脇にあったサークレットを頭にはめ、神経をファンタズマに繋ぐ。
駆動音を上げて動き出す、計画の全て。
脳とシンクロしたことを理解したのか、ファンタズマが動き出す。
「ソウ、ダッタな。繋ぐ場所は、ひとつジャない」
そう、神経と繋ぐだけでは足りないのだ。
座椅子下部から静かに現れる、無数のコード。
それらが自分の身体を貪りはじめる。
そう、神経と繋ぐだけでは足りないのだ。
座椅子下部から静かに現れる、無数のコード。
それらが自分の身体を貪りはじめる。
「スティンガーは、コレが出来なかっタために、負けタンダ」
私は受け入れるためだけに、女として創られたのだ。
私は受け入れるためだけに、女として創られたのだ。
コードはスルスルと移動し、肉体の隅々を調べ上げる。
それは機械的であり、どこか官能的な刺激をもっている。
それは機械的であり、どこか官能的な刺激をもっている。
「あ、アァ。そうダ、これで全テが終わル」
私が人間だった時間が終わる。この瞬間に、終わる。
コードが秘部を緩やかに刺激し、液体の分泌を判別したのか、
スルスルと進入を開始する。
私が人間だった時間が終わる。この瞬間に、終わる。
コードが秘部を緩やかに刺激し、液体の分泌を判別したのか、
スルスルと進入を開始する。
「うぅ・・はぁ、そうカ。これが、ファンタズマか」
幻想とはよく言ったものだ。全てが非現実になってしまうほどの快感。
終わる人間の価値。そして始まる、殺戮兵器の行進。
幻想とはよく言ったものだ。全てが非現実になってしまうほどの快感。
終わる人間の価値。そして始まる、殺戮兵器の行進。
「あ、アァァ・・いこう、私の生きタ証」
全ては幻想に染まった。目的を失った命は、人のソレとは言えなかった。
機能を止め、全てを機械に委ねたのだった。
全ては幻想に染まった。目的を失った命は、人のソレとは言えなかった。
機能を止め、全てを機械に委ねたのだった。
政府から極秘裏の依頼を受け、ロストフィールドを調査することになった。
一人のレイヴンは、依頼内容に疑問を持つことなく、最深部まで進入する。
そして、そこにいたのは。
一人のレイヴンは、依頼内容に疑問を持つことなく、最深部まで進入する。
そして、そこにいたのは。
「よ・・うコソ・・ヴン。
こ・・ファン・・マ・。
ワタシガ・・生きタ、アカシ・・」
こ・・ファン・・マ・。
ワタシガ・・生きタ、アカシ・・」
幻想に囚われ続け、幾度倒されても幻を見続ける、目的を失った殺戮兵器だった。
終