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確かに、現在ACパーツにおける利益は膨大なるものである。
しかし、我が社の本質はACパーツに留まっているばかりではない。
もっと広大なる研究の海へ、もしくは研究という自由を求めて羽ばたかなければ。

全ては知識と欲求を追及することが、我々の道である。



「諸君」
キサラギ第13技術開発局、生体科学部門所長、シモツキが声をあげた。
白衣にフレームの曲がったメガネ、さらにはサンダルという風変わりさだ。

そのシモツキの一言で、研究室はシン、と静まり返った。
地位は高いが、研究に没頭するあまり、身支度など無意味と感じてしまうのだろう。

「鏡野がミラージュに引き抜かれてしまったおかげで、
どうにも生体兵器の開発が進まない。これはどうしたもんだ」

ざわざわと研究室が騒がしくなる。
鏡野と呼ばれる女性研究員は、年齢に反比例してかなり度合いの高い変態で、
いつでもよくわからないロマンとアイディアを生み出し、実行してきた。
キサラギを去った理由は不明だが、こちらとしては相当な痛手であった。

「しかしシモツキ所長。
いつまでも鏡野に頼っていては、我々の知識は活かされません。
ここは一つ、緊急会議を開き、今までに無い兵器開発について話し合いましょう」

「なるほど。非情召集警報を鳴らせ!
全員、身支度を整えてから会議室へ集合だ!」
シモツキが部下に指示をだすと、研究員一同は銭湯へと走っていった。



「さて、ではこれより新規兵器開発案思考会議を開こうと思う」
シモツキは黒板の前に立ち、一本締めで会議は開始された。

「まず、具体案から募ってみよう。意見のあるものは手をあげ」
シュバッ、という音がするほど、鋭い挙手。

「じゃあお前」
はい、と手にしたレポート用紙を片手に読み上げる研究員。

「まず、我がキサラギが誇る生体兵器を組み込もうと思います」
おおお、と会議室にざわめきが立つ。
シモツキは黒板に「せいたいへーき」と書きなぐっていた。

「過去幾度かに渡り、生体兵器を開発してきました。
大型の蜘蛛、大型の蟲、超絶にデカイ団子蟲、生体ビット。
これらを見る限り、この技術を兵器に組み込むことは可能なはずです」

さらに歓声があがる。シモツキも意気揚々と過去生体兵器の図を書きなぐる。

「つきましては、人間、またはレイヴンが搭乗でき、
内部から操作、操縦できるような生体兵器を開発してみてはいかがでしょう」

もう教室、もとい会議室はドンちゃん騒ぎである。
ある種、特殊な性癖をもったものの集まりながら、ここまでまとまりを見せるのは、
キサラギならでは・・・だと思われる。

「まとめましょう。
つまり、バイオアーマーとして獣神らいg」
べしゃ、という音と共に、研究員は倒れてしまった。

「うん?ああ、開発中の生体兵器が脱走したのか。
おい、そこの死体と一緒に回収しておけ。死体?ああ、餌にしろ」
そうして、最初の意見はあやふやになり、振り出しに戻ってしまった。





「生体兵器に搭乗する、という案が出たが、これは可能か?」
シモツキが黒板に書きなぐった兵器郡を消しながら問いかける。

「いえ、恐らく無理でしょう。
いくらレベル5の強化を施したレイヴンでも、
生命を持った生体兵器を操ることは困難でしょう。
恐らく、扱えるものが限られ、全く商売にならないと思われます」

研究員の一人が静かに答え、着席する。
どうにも芳しくない。しかし、こちらには隠し種がある。

おほん、と咳払いをし、霜月が教壇に手をついた。
「では、ここでうれしいお知らせだ。
純キサラギ性のACが、先ほど完成したと、私の脳センサーに連絡があった」

「なんと!」
「とうとうアレが動き出すのですか!」

興奮する研究員達。こういった刺激は、発案の手助けになるだろう。
言ったそばから、もう研究員達のテンションはマックスだった。

「そうだ。AC、人型に限った話はここまでにしよう。
これからは、新型生体兵器の案を募ろうと思う」
うおおおおお、と研究員のスタンディングオベーション。
恐らく、これが変態同士の共鳴というものなのだろう。




「さて諸君、お楽しみの時間だ。ここからはフリーな意見で、
大いに生体兵器を想像しようではないか」

机を円の形に配置し、その円の一部にシモツキも加わった。
総勢10名の変態会議。シモツキは大いに期待を寄せるものであった。

「では時計回りに。まず、おまえ!」
シモツキが指差す。

「・・名前は、AMIDA。これは譲れない」
ただ一言だった。経緯も何もあったものじゃない、とにかく名前はAMIDAだと、
そういって立ち上がったと思ったら座ってしまった。
信念が強すぎるが、もう名前は決定したようなものだった。
その証拠に、研究員全員が大きく首を縦に振っているのだ。

「これ以上の名前はないだろうな。
さて、では次。おまえ!」

「はい。過去の生体兵器について見てみますと、
どうにも開発した兵器郡は、レーザーのようなものばかり出しています。
これをどうにかしたい」
隣の研究員が席を立つ。

「では、ここは生物兵器というものを存分にアピールすればよいだろう。
生命・・そう、生物とは我々と同じ、命を宿した固体であるのだよ。
つまりだ、我々の肉体に眠る、武器になりそうなものを参考にしてみようじゃないか」

おお、と研究員一同は歓喜の声をあげる。
さらにその隣の女研究員が席を立つ。

「人間が内包する身体機能の中で強力なものといえば・・。
これしかありません。胃酸です」

女研究員は席につき、足を組みなおした。

「なるほど・・・それは素晴らしい。
では、次の意見。おまえ!」

「大体の意見は出てしまったな。では、私は形状についての意見をば。
これまでの生体兵器は、どことなく奇妙なものや、生理的嫌悪感を催すものでした。
現に私は、蜘蛛方の時に思わず失禁してしまったほどです」

しん、と静まり返る会議室。
シモツキは思う。こいつはもう、女ではない。完全な研究員なのだと。

「これから世界に羽ばたくキサラギとなるならば、
ヴィジュアル面にこだわりを持たさねばなりません。
つまり、これです!」

ばん、とノートの切れ端に書きなぐられた絵を、机に叩きつける。
恐る恐る覗き込む、研究員一同。
そこには、複眼のかわいらしいフォルムをしたモノが画かれていた。

「これは・・・ゴクリ」
「いける、いけるわよ!」
「いけるな、これはもらっただろう」

研究員一同の内部思考では、すでに決定の二文字が脳裏を過ぎっていた。
その後、さっそく研究室に戻った彼らは、
新型生体兵器AMIDAの開発に勤しんだのだった。



形の整ったAMIDAを、培養液でさらに安定させる。
生体兵器、ということで何か武装を施すべきか悩んだが、
それでは生命らしさを感じないという意見が大多数だった。

そこで、酸を放出するタイプと、自然発火し自爆するタイプを生成した。
案が決まって数日で8割完成に至ってしまうあたり、
我がキサラギの科学力は正直世界一ではないかと、シモツキは思った。

「うむ、かわいい我らの子供達よ。さあ、餌の時間だぞう」
ウキウキと培養液の中に餌を投下する。
モキャモキャと動きながら餌を食む生体兵器に、シモツキは感無量といった具合だった。

すると、後方から足音。もう他の研究員は眠ったはずだが、おかしい。
後ろを振り返ってみると、そこには。

「はあい、元気?シモツキのじーちゃん」
「か、鏡野!?なんでお前がこんなところに」

そう、ミラージュに引き抜かれた鏡野が満面の笑みで立っていた。

「おー、おおおおおー。いいねえ、さすがじいちゃんのチームだ。
この子、名前はなんていうの?」

培養液にへばりつき、すりすりと頬をこすりつける鏡野。
「・・AMIDA、だそうだ。一発で決まったぞ」
へえ、と関心した様子で、鏡野はAMIDAを見つめていた。

「で、何しにきたんだ。また悪さしにきたんだろう、わかってるんだぞ」
いつでも鏡野は研究室内でゴソゴソしたと思ったら、
完成間近のパーツや兵器に細工していくのだ。今回もそうに違いない。

「いんや、今日は遊びにきただけ。ミラージュってさ、つまんないんだよ。
だからいろいろ細工して面白くしてやったんだけど。
でもやっぱり、ここが一番居心地いいねえ」

ぐーっと伸びをする。全く発育していない胸が上下していたのを見ると、
やっぱり牛乳飲ませとくんだったなー、と、シモツキは後悔した。

「まあ、見るだけなら構わんが、ミラージュに漏らしたりするなよ。
そうしたら、勢力をあげて貴様をAMIDA漬けにするからな」

「あっはは、じいちゃんこえー。ま、今日のところは帰るよ。
面白いものも見れたしね。またくるよー」

手をひらひらと左右に振りながら、鏡野は帰っていった。
まったく、我が孫ながらなんて自由奔放な奴だろう。

「さて・・餌の続きをと。あ!」
すると、カプセルの一つから、まだ掌サイズだったAMIDAが消えていた。

「か、か、か。鏡野おぉぉ!」
その後、研究室の入り口には『鏡野禁止』という札が貼られたのであった。




「じいちゃんは相変わらず、詰めが甘いなあ」
そういって、掌サイズのAMIDAに頬擦りする。
「こいつ、可愛いなあ。よし、お前は私が育ってやるからな。
じいちゃん以上にロマン溢れた形状に育ててやるから、覚悟しろよ!」

そういって、鏡野はミラージュ本社の寮に帰っていった。

開発が進み、様々な成果をあげ、場を引っ掻き回したことは、
報道で大きな話題となった。
その中でも、突如として現れては空中を浮遊する、謎の生物については、
特攻兵器襲来以後も話題となったのだった。





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