「父さん」
ガレージで機体の調整をしていると、息子が声をかけてきた。

「どうした、リム」
息子に目をやる。こう見ると、大きくなったものだと思う。
男手一つで育ててきたが、立派になったものだ。

「企業から、防衛の依頼が来てるよね。
とても嫌な予感がするんだ。今回は・・断ってくれないか」
心配そうな面持ちで、こちらを見上げる息子。
私の遺伝子がどのように作用したら、こんな出来の良い子になるのだろうか。
少し不思議に思う。


「・・それは出来ん。お前のためでもある。
母の居ないお前だけには、苦しい生活をさせてやりたくないんだ」

そうして、リムの頭を撫でる。
面影が母親によく似ている。
母親は、リムを産んですぐ、行方をくらましてしまった。
子供を育てることが重荷だったのだろう。
私はその時、誓ったのだ。この子だけには、苦労させまいと。

「ありがとう、父さん。
でも、危ないと思ったら逃げてくれよ」

「ああ、そうするよ」
そういうと安心したのか、リムはガレージから出て行った。
息子が部屋に戻るのを見届けると、自然と溜息が出た。
あの子は、俺と暮らしていて幸せなのかと。
無理にでも母親を探し、預けた方がよかったのではないかと。

レイヴンなどという仕事をしていると、自然と気苦労をかけてしまう。
だが、俺にはこれしか出来ない。
アリーナで観客をわかせ、企業の依頼を受け、大金を得るにはこれしかないのだ。

「大丈夫だ、必ず帰ってくる」
機体の整備は万全だ。ナービスを狙う若造がいると聞く。
若い芽は摘んでおく。この弾丸でな。


                • 当日


「 若造が・・調子付くなよ・・・ 」
フィンガーマシンガンが火を噴く。
銃弾の雨とはまさしくこのことか、敵の装甲を削り取っていく。
だが、それも長くは続かなかった。
相手はあの弾幕に対し、回避行動を取り始めた。
恐ろしい反応速度。よほど才能に恵まれているのだろう。

「・・だが、この機体で負けるはずがない!」

リムの顔を思い浮かべる。負けるわけにはいかない。
敵をロックする。トリガーを引くと、マイクロミサイルが轟音を上げて連射される。
ミサイルの後を追うように、敵に接近してありったけの弾薬を叩き込む。

(とったぞ!)
爆音と共に、黒煙が舞う。
いくらACとは言え、あの一斉射撃に耐えられるはずはなかろう。

―――ザシュリ

側面から、鈍い音が響く。
レーダーに反応、まさか、あの弾幕を回避していたのか。
「 読み違えたと言うのか・・ 」
深々と切り裂かれたコア。恐らくもう機能すまい。

ふ、と笑みを零す。
リムの感は正しかったのだ。自分の実力より、息子の感の方が上回っていたのだ。
(子供のいうことは、聞いておくものだな・・。)

胸ポケットにしまった写真を取り出す。
「 ついに・・・俺の番か・・・ 」
燃え盛る機体の中で、リムの顔を浮かべた。

機体が、爆散した。




自分の感が当たらないようにガレージで祈っていた。
しかし、父は帰って来ない。
ニュースで流れる勢力争いの報告。そして、その場にいたレイヴンの死。
映し出された残骸は、よく目にしていたものだった。

「父さん・・」

胸が痛む。たった一人で自分を育ててくれた父を失った苦しみ。
肢体が切り裂かれそうで、神経が悲鳴をあげていた。

「父さん、仇は取るよ。僕は強くなる。
一人で生き抜けるように、強くなるよ」

ガレージに響く雄たけび。自分の中で、黒い塊が咆哮をあげた気がした。


「・・レイヴン。貴様らは全員、俺の手で終わらせてやる」
狂犬が解き放たれた。
鴉達を食い殺す、狂犬が生まれたのだった。






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