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『俺に手を貸せ。お前の力が必要だ』
そういって、彼は手を差し伸べてきた。

ガラクタのように捨てられた人間にとって、
これほどまでに人が神々しく見えたのは初めてだった。




特攻兵器の襲来で、自分は企業から捨てられた。
といっても、アライアンスを設立する企業が、
力の無いものの首を切ったというだけのことだ。

自分は優秀なテストパイロットでもなければ、
企業に大きく貢献できる能力を持った人間でもなかった。
何処にでもいる、ACの操縦資格を持つだけの男だ。
世界が混沌としているこのご時世、お払い箱にされた人間の末路は無残なものだ。
退職金がわりに渡されたのは、スクラップ寸前のAC一機。
これを一体、どうしろと言うのだ。
ジャンク屋にもっていったところで、この損傷では処分に金を取られてしまう。
ゴミを押し付けられ、さらには職場まで失った。
損傷したACの足に背を預けると、次第に立つ力さえなくなって行った。
もう精神は限界なのだろうか。

「は、雨まで降ってきやがった。もう御終いだな」

そういって、力なく崩れ落ちた。



そのときだ。
氷を削るような音を立てながら、滑るようにこちらへ近づく物体が見えた。
あの推進システムは、恐らくフロートACのものだろう。
ACに関わる企業にいれば判別することくらい出来る。

フロートACは目の前で止まる。
高い電子音と共に、ACは機能を停止した。
コクピットが開き、ACのコア後部から人影が現れる。
「なんだ、死神のお出ましか」
もはや失うのは自分の命のみ、何も恐れるものなどなかった。

男がワイヤーを伝い降りてくる。
「おや。お前さん、生きてるのか」

声に反応し、右手を上げてみせる。
「死神じゃあなかったようだな・・・」
「ふん、それは悪いことをした。
ところで、そのスクラップはお前さんのか」
「ああ・・退職金の代わりだとさ」
「そうか・・・」

呼吸が乱れる。無気力人間に長雨が応えたのか。
もはや意識は虚ろなものとなっていく。死ぬ前に人間と話すことが出来たか。
もう満足だ。そう思った瞬間だった。

「お前、俺と来い。
見たところ、お前の面は『もう何も失うものは無い』と言っている。
だったら俺に使われて砕け散った方がいい。俺がそう決めた。
そのスクラップを修復して、お前は俺の右腕になれ」

強引で俺様思想が強そうだが、何故か自分はその男を気に入ってしまった。

そういって、手を差し伸べる男。
救いの手だ。何も無い男を必要としてくれる人間もいるのか。
思わず涙が込み上げるが、なんとかそれを飲み込む。


「・・俺は、VOLA。元テストパイロットNo18.VOLA-VOLANTだ」
「ふ、そうかい。
俺はウォーンタン・バスカー。バスカーでいい」

しっかりと、バスカーと名乗る男の手を握った。
この男についていけば、自分の居場所を見つけられるかもしれない。
何より、何も能力が無い男として自分を捨てた企業に、
少しでも打撃を与えることが出来るかもしれない。


特攻兵器襲撃後、名も無いレイヴンが一人、翼を広げたのだった。





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