烏大老。
上位ランカーとして名を轟かせ、アリーナを賑わせていた。
特攻兵器の襲来という苦難をも難なく乗り越え、
彼は今、バーテックスにて指揮官の座を獲得した。兵隊が集う場所。
常に死と隣り合わせの人間が身を置くバーテックス。
そして、アライアンス襲撃宣言。
組織はいつも以上にぴりぴりとしていた。

「・・そうか、もうすぐなのか」
髭を撫でながら、自分の機体を見上げる。
派手さの欠片も無い鉄の鎧。こいつには、随分と世話になった。
幾多数多の任務をこなし、人を殺め、大金を受け取る。
その地獄さながらのループは、壊殺屋サラリーマンといったところか。

「どうかなされたか、大老殿」
背後から声がする。このかしこまった口調は、恐らくファウストの奴だ。

「いや、私も年かな。死期が近いのを感じたのか、急にこいつと話したくなってね」
そういって、自らの分身ともいえる『エイミングホーク』の足を撫でた。
よく見ればところどころ傷があり、弾痕などが目立つ。
戦士の証と言えば聞こえは良い。だが、パイロットとしては情けなさの証だ。

「なるほど。大老殿でも、感傷に浸ることがおありか」
少しだけ口元を緩めながら笑うファウスト。
あまり感情を表に出さない男だ、笑顔を見ることは滅多に無い。

「御主が笑うとはな。明日は雨か、それとも銃弾の嵐・・といったところか」
髭を一撫で、二撫でして笑う。

「なあファウストよ。主は、何故バーテックスに参加した」
エイミングホークの足に腰掛ける。
強化したとは言え、人間の名残か。口が勝手に「どっこいしょ」と言ってしまう。

「死に場所を求めに」
「家族は?」
「居ませぬ」
「そうか。だがな、そういう嘘は胸ポケットを確かめてから言うものだ」

ハッ、と声をあげるファウスト。
胸ポケットを漁るが、何もなかった。

「なかなか、酷いお方だ」
そういって、ファウストはまた笑った。
「そういう大老殿は」
「主と同じよ。恐らく、これが我々レイヴンにとっての最後の戦となろう」

場所は違えど、傭兵として任務をこなしてきた者同士。
その会話に何の面白味もなかったが、なぜかお互い笑うことができた。

「さて、そろそろブリーフィングだ。ジャックも部下を集めている頃だろう」
「そうですね。行きましょう」
早足で部屋に向うファウスト。時間には正確な男のようだ。

重い腰を上げ、二、三度、愛機の足を撫でた。
自分もブリーフィングルームに向おうとした。その時だ。
エイミングホークのコクピットから、電子音が響く。

「む、誤作動か」
整備不良か。後でメカニックに文句を言っておかねば。
簡易エスカレータでコクピットまで上り、中を覗く。
すると、高い音を立ててコンピューターが停止した。

なんとも、不思議なことだ。
「武者ぶるいか?それとも、私があちらにいった時の前挨拶か」
ブリーフィングルームを目指す。
倉庫の出口。私は、愛機エイミングホークの方を振り返った。

「ありがとう。頼むぞ、我が孫よ」
最後の敬礼は、いつも以上に長く感じた。








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