「何、風呂が壊れた?」
アライアンス戦術部隊隊長、エヴァンジェが声を裏返す。
バーテックスの宣戦布告、襲撃宣告を受け、一息いれようとした矢先の話だ。
正直、日々過ごす中でミッション後のこの時間が何よりの楽しみだった。
それがまさか、このような大事なときにコトが起こるとは。
誰だ、風呂の掃除と管理をしている奴は。
まさに今、リニアでハメ殺したい衝動に駆られている。
ああ、AMIDA。AMIDAをモフモフしたい。そうでないと、オカシクナッテシマイソウ。
アライアンス戦術部隊隊長、エヴァンジェが声を裏返す。
バーテックスの宣戦布告、襲撃宣告を受け、一息いれようとした矢先の話だ。
正直、日々過ごす中でミッション後のこの時間が何よりの楽しみだった。
それがまさか、このような大事なときにコトが起こるとは。
誰だ、風呂の掃除と管理をしている奴は。
まさに今、リニアでハメ殺したい衝動に駆られている。
ああ、AMIDA。AMIDAをモフモフしたい。そうでないと、オカシクナッテシマイソウ。
絶望的な風呂破壊工作通知。
なんとかAMIDAのことを妄想し、気分を落ち着かせようとしていた。
すると近づいてくる足音が一つ。誰だろうか。
妙に忙しない足取りだ。
なんとかAMIDAのことを妄想し、気分を落ち着かせようとしていた。
すると近づいてくる足音が一つ。誰だろうか。
妙に忙しない足取りだ。
「・・あ、隊長。どうなされました、こんなところで」
トロットの奴か。
「どうやらな、浴槽に穴が開いたらしい。
これからどうしようか、悩んでいたところだ」
トロットの奴か。
「どうやらな、浴槽に穴が開いたらしい。
これからどうしようか、悩んでいたところだ」
というのは建前、正直頭のなかはAMIDAとお花畑でルンルンだった。
「隊長。提案があります」
「なんだ。いってみろ」
「なんだ。いってみろ」
トロットは入浴セット一式入った桶を持ち替え、敬礼する。
「つい先日、アライアンスとバーテックス本拠地の中間地点に、
銭湯が出来たとの情報を入手しました。
アークから独立したレイヴンが集う場所、となっているようです」
「つい先日、アライアンスとバーテックス本拠地の中間地点に、
銭湯が出来たとの情報を入手しました。
アークから独立したレイヴンが集う場所、となっているようです」
それは聞いたことがあった。
確か、腕のいい元レイヴンの蕎麦屋があったはずだ。
いつか行こうと思っていたが、なんだかんだで行けなかったな。
しかし、銭湯まで出来ていたとは。健康ランドか。
確か、腕のいい元レイヴンの蕎麦屋があったはずだ。
いつか行こうと思っていたが、なんだかんだで行けなかったな。
しかし、銭湯まで出来ていたとは。健康ランドか。
「ふむ、なるほどな。
いいだろう、これよりアライアンス内部で希望者を募り、
その銭湯を制圧する。トロット、貴様はどうする」
いいだろう、これよりアライアンス内部で希望者を募り、
その銭湯を制圧する。トロット、貴様はどうする」
「お背中、お流しします」
「・・・気が早いが、まあいいだろう。いくぞ」
「・・・気が早いが、まあいいだろう。いくぞ」
トロットの迅速な判断と行動のおかげで、さっそく出撃することになった。
無論、企業側には『偵察』と『勧誘』という理由で出撃した。
全くこういうときには頭の回る奴だ。たまに恐ろしくなる。
無論、企業側には『偵察』と『勧誘』という理由で出撃した。
全くこういうときには頭の回る奴だ。たまに恐ろしくなる。
なんだかんだしてやってきた銭湯を目の前に、
アライアンスの同志達は愕然としていた。
ちなみに、今回同行したのはトロット、ジャウザー、プリンシバルだけだった。
ゴードンは金を使うのが嫌だと抜かし、モリは恥ずかしがってこなかった。
兵士達は襲撃に備えての準備でそれどころではないらしい。
戦術部隊とは、こういうときに都合が良いようだ。
アライアンスの同志達は愕然としていた。
ちなみに、今回同行したのはトロット、ジャウザー、プリンシバルだけだった。
ゴードンは金を使うのが嫌だと抜かし、モリは恥ずかしがってこなかった。
兵士達は襲撃に備えての準備でそれどころではないらしい。
戦術部隊とは、こういうときに都合が良いようだ。
「しかし」
「これは・・・」
「大きいわねえ」
「意外と立派なものですね」
「これは・・・」
「大きいわねえ」
「意外と立派なものですね」
思わず見上げてしまう。
立派なつくりだ。純和風であり、恐らく屋根が高いのだろう。
正直、大破壊前にあった人類歴史教科書にでも載ってそうなほど、
最近では見ないつくりになっていた。
立派なつくりだ。純和風であり、恐らく屋根が高いのだろう。
正直、大破壊前にあった人類歴史教科書にでも載ってそうなほど、
最近では見ないつくりになっていた。
「・・まあ、これだけ広いなら文句はあるまい。
久々に足を伸ばして休めるというものだ」
「隊長、お供します」
間髪いれずに背後から声を出すトロット。
私はいつも思う。お前が女だったなら、どれだけよかったかと。
久々に足を伸ばして休めるというものだ」
「隊長、お供します」
間髪いれずに背後から声を出すトロット。
私はいつも思う。お前が女だったなら、どれだけよかったかと。
「じゃあ、私はこっちだから」
そういって手をひらひらさせながら、プリンめは女湯の暖簾をくぐった。
トロットは相変わらず私の背後から離れないで着いてくる。
ジャウザーはどうやら売店のコーヒー牛乳に興味心身のようだ。子供か。
「ジャウザー、それは風呂上がりにしておけ。隊長命令だ」
淡々とはい、と言いながらもそわそわしている。こいつ、幾つだったか。
そういって手をひらひらさせながら、プリンめは女湯の暖簾をくぐった。
トロットは相変わらず私の背後から離れないで着いてくる。
ジャウザーはどうやら売店のコーヒー牛乳に興味心身のようだ。子供か。
「ジャウザー、それは風呂上がりにしておけ。隊長命令だ」
淡々とはい、と言いながらもそわそわしている。こいつ、幾つだったか。
「ああ・・これぞ、AMID・・じゃなかった。天国だ」
大きく伸びをする。
ジャウザーをコーヒー牛乳ECMから解放したり、
身体を洗っているときにやたらトロットがこちらを見てきたり、
いろいろ大変だったが、それを拭い去るほど気持ちが良い。
大きく伸びをする。
ジャウザーをコーヒー牛乳ECMから解放したり、
身体を洗っているときにやたらトロットがこちらを見てきたり、
いろいろ大変だったが、それを拭い去るほど気持ちが良い。
「強化人間となっても、これらは変わらずにしておいてよかった。
いやはや、感覚があると無いとでは違うからな」
そういって、鼻歌なんぞを歌ってみる。
幸い、客はアライアンス以外は2~3人ほどだった。気にならない範囲だ。
いやはや、感覚があると無いとでは違うからな」
そういって、鼻歌なんぞを歌ってみる。
幸い、客はアライアンス以外は2~3人ほどだった。気にならない範囲だ。
気持ちよく鼻歌を歌っていると、女湯の騒がしさが気になった。
なんだ、何が起こっているんだ。
覗くわけにもいかないから、壁に耳を当てて様子を探る。
なんだ、何が起こっているんだ。
覗くわけにもいかないから、壁に耳を当てて様子を探る。
「何くったらそんな大きくなるんだよ。教えてくれよ」
「・・なに、この娘。牛乳のみなさい。ほら、あっちいって」
「どーしても言うこと聞かせたい奴がいるんだよ。
自分は元犯罪者とかいって経験者ぶってさ、私を子供扱いしやがるんだ。
なー、教えてくれよお」
「・・・わかったわ。ちょっときなさい」
「・・なに、この娘。牛乳のみなさい。ほら、あっちいって」
「どーしても言うこと聞かせたい奴がいるんだよ。
自分は元犯罪者とかいって経験者ぶってさ、私を子供扱いしやがるんだ。
なー、教えてくれよお」
「・・・わかったわ。ちょっときなさい」
どうやら、誰かに絡まれているらしい。
やはり巨乳は妬まれるのか。女同士とは大変だな。
やはり巨乳は妬まれるのか。女同士とは大変だな。
「隊長」
「うお」
気がつくと、すぐ横にトロットがいた。
こいつ、何が目的なんだろうか。楽しんでいるのか?
「うお」
気がつくと、すぐ横にトロットがいた。
こいつ、何が目的なんだろうか。楽しんでいるのか?
「先にあがります。私はもう満足した・・いえ。
ちょっと外の蕎麦屋に用事がありますので。それでは」
そういって、トロットは出て行った。
相変わらず何を考えているか解らない奴だ。・・蕎麦か。
ちょっと外の蕎麦屋に用事がありますので。それでは」
そういって、トロットは出て行った。
相変わらず何を考えているか解らない奴だ。・・蕎麦か。
そうして、時間がゆっくり過ぎていくのを楽しみつつ、風呂を出た。
ジャウザーはどうやら、のぼせてしまったらしいく、
他の客に引っ張られて外の椅子にもたれ掛かっていた。
まったく、アライアンスの恥さらしめ。
ジャウザーはどうやら、のぼせてしまったらしいく、
他の客に引っ張られて外の椅子にもたれ掛かっていた。
まったく、アライアンスの恥さらしめ。
身体が冷めぬ間に飲む牛乳は最高である。
何より、冷蔵庫と銭湯の温度差からくるのかわからないが、
牛乳を流し込んだときに来る脊髄あたりの冷えがたまらない。
どれくらい好きかといえば、AMIDAくらい好きな瞬間だ。
何より、冷蔵庫と銭湯の温度差からくるのかわからないが、
牛乳を流し込んだときに来る脊髄あたりの冷えがたまらない。
どれくらい好きかといえば、AMIDAくらい好きな瞬間だ。
「ああ、うまい。これだ、これこそが」
私の一日を締めるにふさわしいイベントである。
私の一日を締めるにふさわしいイベントである。
しかし、遅いな。
トロットは蕎麦を食いに行ったまま帰ってこない。
何をしに行ったのだろうか。そこまで暴食なわけでもあるまいに。
トロットは蕎麦を食いに行ったまま帰ってこない。
何をしに行ったのだろうか。そこまで暴食なわけでもあるまいに。
ジャウザーは女湯から出てきたプリンに膝枕してもらっている。
まだ気絶しているらしい。羨ましい光景だ。私も倒れればよかったか。
まだ気絶しているらしい。羨ましい光景だ。私も倒れればよかったか。
- いや、最悪トロットにされかねない。これは没だ。
牛乳を飲み終え、一息いれる。
さすがにすぐアライアンスから至急された制服に着替えようとは思えない。
こういう場こそ、自由と呼ぶに相応しい空間だ。
そこで企業所属を示したところで、それは野暮というものだ。
さすがにすぐアライアンスから至急された制服に着替えようとは思えない。
こういう場こそ、自由と呼ぶに相応しい空間だ。
そこで企業所属を示したところで、それは野暮というものだ。
「隣、いいですか」
この独特の雰囲気は、軍人かそれに近い人間だ。
「どうぞ。あなたも銭湯がお好きですか」
なんとなく聞いてみる。銭湯好きに悪い人間はいない。
私が見てきた中では、風呂を愛してやまない人間くらいしか銭湯になどこない。
大体は住居に設置されたもので済ませてしまうだろう。
この独特の雰囲気は、軍人かそれに近い人間だ。
「どうぞ。あなたも銭湯がお好きですか」
なんとなく聞いてみる。銭湯好きに悪い人間はいない。
私が見てきた中では、風呂を愛してやまない人間くらいしか銭湯になどこない。
大体は住居に設置されたもので済ませてしまうだろう。
「ええ。ここには縛るものが無い。油の臭いも、硝煙も無い。
自由なところです。ワタシはそういうのが好きでね。孫もつれてくるべきだったか」
そういって、ヒゲを撫でる。
やはり、銭湯好きに悪い人間はいないようだ。素晴らしい。
自由なところです。ワタシはそういうのが好きでね。孫もつれてくるべきだったか」
そういって、ヒゲを撫でる。
やはり、銭湯好きに悪い人間はいないようだ。素晴らしい。
「まさしく、言うとおりですな。
どうですか、あなたもお一つ」
そういって牛乳を差し出すと、快く受け取ってくれた。
どうですか、あなたもお一つ」
そういって牛乳を差し出すと、快く受け取ってくれた。
多少の苦労話を聞いた後、老人は一礼して去っていった。
ジャウザーも目を覚まし、顔を真っ赤にしながらプリンに頭を下げていた。
トロットは蕎麦屋から帰還し、なんとも満足そうな顔をしていた。
そんなに美味かったのか、あの蕎麦屋。
ジャウザーも目を覚まし、顔を真っ赤にしながらプリンに頭を下げていた。
トロットは蕎麦屋から帰還し、なんとも満足そうな顔をしていた。
そんなに美味かったのか、あの蕎麦屋。
そうして帰り支度をした後、銭湯を後にした。
なんとも有意義な夜であった。これから激戦が予想されるだろう。
たまにはこういったモノも悪くない。
なんとも有意義な夜であった。これから激戦が予想されるだろう。
たまにはこういったモノも悪くない。
すると、目の前を横切る黒い影。あのシルエットは、ACのものだ。
辛うじて捕らえた肩のエンブレムには、鷹とターゲットサイトが画かれていた。
そのまま姿を眩ます人型汎用兵器。
どうやら、我々はあのような出来た人間とも戦わなくてはいけないらしい。
安らぎと同時に、戦場の苦痛を噛み締めた。
辛うじて捕らえた肩のエンブレムには、鷹とターゲットサイトが画かれていた。
そのまま姿を眩ます人型汎用兵器。
どうやら、我々はあのような出来た人間とも戦わなくてはいけないらしい。
安らぎと同時に、戦場の苦痛を噛み締めた。
そうして感傷に浸っていると、背後から声がする。
段々慣れてきたが、こいつの目的をそろそろハッキリさせたいところだ。
段々慣れてきたが、こいつの目的をそろそろハッキリさせたいところだ。
「隊長」
なんとも言えない、上気した顔色。独特のにおいは、恐らくアルコールだ。
嫌な予感がする。正直、今すぐこの場を逃れたいくらいだ。
なんとも言えない、上気した顔色。独特のにおいは、恐らくアルコールだ。
嫌な予感がする。正直、今すぐこの場を逃れたいくらいだ。
「なんだトロット。蕎麦うまかったか」
恐る恐る声をかける。
恐る恐る声をかける。
「ええ。特に酒と出し汁が」
- 今、なんといったか。酒?トロット、お前は何を。
「いま、おすそ分けいたします」
ああ、わかった。こいつは酔っているんだ。そして、狂っているんだ。
トロットは手にした瓶をあおり、口に酒を含んだ。
私はその光景をただ、呆然と見ていることしか出来なかった。
安らぎとは、反応速度すらも鈍らせてしまうのか。
それとも、実は私はのぼせていて、これは幻想なのではないだろうか。
それくらい現実味がない光景だ。
ああ、わかった。こいつは酔っているんだ。そして、狂っているんだ。
トロットは手にした瓶をあおり、口に酒を含んだ。
私はその光景をただ、呆然と見ていることしか出来なかった。
安らぎとは、反応速度すらも鈍らせてしまうのか。
それとも、実は私はのぼせていて、これは幻想なのではないだろうか。
それくらい現実味がない光景だ。
「まて、落ち着け。お前はよってい・・ムグアアア」
「あー。隊長、トロットは酒癖わるいのよ・・って。遅かったわね」
「ご愁傷様です。安らかに」
「ご愁傷様です。安らかに」
安らぎ、戦士の苦痛。そして、何より思いっきり感じてしまったのは、
トロットの口移しだった。ああ、AMIDAが見える。
トロットの口移しだった。ああ、AMIDAが見える。
終