…多くの人が住む巨大都市、朝と言うにはまだ薄暗い夜明け前
町全体がまだ眠る中、1つの兵器格納庫に明かりが灯っていた

「ガッ… おはようレイヴン、調子はどう?」
「ああ大丈夫だ。…あ~、いや、悪いな。眠い。」
「もう、だから言ったのに…。ところで彼はまだかしら? そろそろ時間なのだけど」
「ま、その内来るだろ」

機体のチェックを済ませ、ウトウトしながらしばらく待っていると
1機ACの反応が出た

「…来たぜ、寝坊すけさんがよ」
「ガッ… おいおい、来てやったのにそりゃないだろ」
「30分の遅刻です」
「俺は低血圧なの!朝に弱いの!」
「ハイハイ。じゃあホラ、さっそく行くぜ。日が昇っちまう」


…2機のACが共に移動を開始する
そのエンジン音は戦いの時とは打って変わって静かなものである
朝焼けの光に照らされ、それは兵器とは思えないほど美しく輝いていた

~12時間前

「あんちゃん、何ゴソゴソやってんの?」
「ん?ああ…明日のお仕事は朝早くてな、今日は仕事場に泊まるんだ
 だからお前、また隣の家にお泊りさせてもらえ。もう慣れたろ?」
「え!じゃあまたおいしいご飯が食べられるかな!?」
「うぐッ …ああ、きっと俺が作るのよりうまいのが食えるよ」
「わー!じゃあお泊りの用意してくる!」
「…やれやれ」

…身支度を終えると子供を隣人宅に預け、街へと車を走らす
田舎に住んでいる為、仕事の度にガレージのある都市中央部まで車で移動しなくてはならないのだ
仕事仲間は
「俺ならそんな事しないね。こっちに住むのが賢いんだよ」
と軽くあしらってばかりだが、都市部はしばしば戦場になる事もある
万一の事を考えれば、子供の為には今の生活が最善だろうという判断だった


…田畑の続く郊外を抜け、都市部へ入る頃にはすでに日も落ちかけていた
夕日を浴びて高層ビル郡はオレンジの光を放ち、それが微かな哀愁を漂わせる
しかしその光景が、この男にため息をつかせるのだった

道中、車に備え付けの電話をプッシュする
仕事仲間の一人へ連絡が取りたかった

「よう、俺だ」
『久しぶりだな、どうした』
「明日空いてるか?仕事があるんだが」
『へっ。お前からの電話はいつもそれだな。どんなヤマだ?』
「発電施設の内部調査だ。報酬は200000c、お前の取り分はその40%だ」
『調査だけの割には高額だな…。本当にそれだけか?』
「ま、"なにか"いたら排除しろとは言われたが」
『そのなにかを処分させようという魂胆が見え見えだな』
「で、どうなんだ。や ら な い か?」
『…いいぜ、どうせ暇だしな。ただし、ヤバいと思ったらすぐにズラかるんだぜ』
「ああ。その時は依頼主に違約金を払う」
『それもお前が全額払うのな』
「チッ。じゃあ詳しい事は一時間後にメールする」

…すでに暗闇に包まれた街中を走り続け、ようやくガレージに着くと
見知らぬ女が1人腕組みをして立っている

「遅いじゃない?レイヴン」
いや、よく知る女だった

「8分の遅刻よ」
これが口癖だ

「さ、中へ入って。明日の作戦を話すわ」

男をレイヴンと呼ぶこの女
仕事で個人契約をしているオペレータ官なのだが、冗談の通じない堅物で
特に時間に関しては昭和の頑固オヤジよりも厳しい
…以前、1度だけ男が2時間もの大遅刻をした事があったが、その時ばかりは
普段物静かな彼女からも鉄拳が飛んだ

顔に出来たアザは一週間消えなかった

以来、男は10分以上遅れてくる事はなくなり、彼女も呆れ半分にそこまでは許容しているのだった


「…と、こういう手筈でお願いね。…って、ちょっとレイヴン、聞いているの?」
「聞いてるよ」

男はPCでメールを一通送信してから、ずっと機体をいじってばかりいる

「機体の整備は済んでいるんじゃなかったの?」
「済んでるよ」

黙々と胴体周辺の細工を続ける

「明日と言っても、あと数時間後には出発なのよ。休まなくて平気なの?」
「平気だよ」
「…じゃあ管制室にいるから」

オペレータ官の女性はため息を1つついて、寝床代わりの管制室へ向かう

…ガレージの明かりは彼女が目覚めるまでずっと点いていた

102 名前:↓[] 投稿日:2005/12/07(水) 13:18:40 ID:XYW9BYiL0
「いい?これから隔壁を開放するから、後は予定通り作戦時間終了まで調査を続けて」
「ああ」「了解」

すでに2体のACは発電施設内へ侵入している
施設内に人影はなく、小さな照明のみの薄暗い通路が続く

「なあ、お前の、それ」
「あん?」
「頭よぉ、暗視装置付いてんだよな」
「ああ、他にも色々付いてるぜ。だがこの程度の暗さなら使う必要もないだろ」
「へぇ…でも壊れやすいんだろ?」
「デリケートと言え、デリケートと。精密なんだよ」

「はいはい2人共、無駄口はその辺にして。そろそろ地下ブロックへ入るわ」

「そこが本命の調査区域なんだな?」
「ええ。…隔壁を開くわ」

大きな音と共に、これまでにない厚みの隔壁が開放される





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