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 では最後に御伽噺をしよう。



 とおい、とおい、むかし。
 遙か昔のお話。最初の人間が生まれるよりも、さらに昔の話だ。



 崩壊したベイロードシティ。
 瓦礫が積み上げられ、煙が上がっている。
 其処は聞こていた音さえも残っていない。
 ヘリコプター特有のローターの回転音、鋼鉄の人形の駆動音、雨音、そして数々の銃声も、なにも残っていない。
 雷を編みこんだ雲が垂れ込んで、天を埋め尽くしていた。
 灰色の雨が、ACレインメイカーの紅い装甲を叩く。だがそれは機体の残熱で蒸発し、モノトーンの霧へ。
 ナニモカモが、同じだった。ゼンブ、余りにも、無力だった。ACさえも滅び逝く世界では無力だったのだ。
 機関砲の砲弾は空間をも貫くのに。砲弾を浴びたヘリコプターは高度を失い、地面に激突、粉々に散るのに。
 そしてなにもかも、その次も、完全破壊の暴力たるACの前では無力だった筈なのに。



 サラは紫電を纏うレインメイカーに追いやられるようにして脱出した。そしてACは爆散した。
 余りにも脆く、余りにも滑稽な、ACの最後だった。飛んだ破片が腹部に突き刺さる。もう長くは持たないだろう。
 灰色の雨が頬を伝い赤い紅を塗った唇に落ちる。
 「にがい……」
 その味は酷く苦かった。雨雲は戦火の煤煙を多く吸い込んでいた。
 時間の進みが遅くなり、夜も昼も無くなったこの世界。
 サラはよたよたと雨の当たらない朽ちたビルの中へと入っていった。
 流れ滴る血液だけが色を保っていた。



 「なにをそんなに生きようとするのかい」



 誰もいない灰色の空っぽの世界に、男の声がやけ響いた。
 濃密な気配が、サラの背後に立つ気配が、彼女の本当の名前を呼んだ。
 「――ジナイーダ」辺りに戦慄が走る。
 「ジャック・O……か」だが彼女は平然と答えた。
 つぶやき、振り返り、死を前にしても以前と変わることの無い眼光でにらみ付ける。
 崩壊する世界の全てを手に入れた男が其処に立っていた。 



 「此処でもその姿なのか、ジャック」
 「ずいぶんと、気に入ってしまっていてね……。この姿なら君たちにも私が、誰だかすぐ分かるだろう?」
 「ははは、その気配を消してからものをいうんだな、ジャック。さすがにお前にもうあえないかと思った」
 「そんなに私に合いたかったとは光栄だよ、ジナ」
 「そう、……かもな。私は、お前に、会いたかったのかもしれない」
 ジナイーダはくすりと笑い、言葉をつむぐ。
 「ジャック。私はお前を愛して、」 



 それからぷつりとジナイーダは黙り込んだ。もう起きれない、眠りに就いた。
 だが穏やかな笑みを浮かべた彼女に、悲しみの涙は無かった。
 ジャックは彼女の瞼を優しく閉じてやった。 



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 音を無くした世界が激震する。 
 「まさか此処までくるとはね、正直感激したよ」
 ジャックはつぶやき、宿敵を見上げた。冷たい雨が勢いを増す。
 「レイヴンとして戦い、戦い抜いて、レイヴンを超え、レイヴンを棄て、ついにインターネサインの領域までたどり着いたか!
  邪悪を粉砕するために私と同じ存在となったか!」
 怒声とともに噴出した瘴気が彼らに襲い掛かるが彼らはひるむ様子は微塵も無い。
 「貴様と一緒にするな!ジャック!」
 青年が口を開く。
 「ドミナントエヴァンジェ!」
 「同類にされては困る」
 少女が口を開く。
 「B・B!」
        パルヴァライズ
 その瞬間、世界が粉砕した。
 時間は意味を無くし、縦横の区別は無に返る。
 「ならば、私はお前たちを愛しぬこう。
  撃滅の嵐の中、殺戮の深遠の中で生き抜くすべを知り、
  最悪の確立を支配する天よりの堕落者、ドミナントどもよ!!!!」



  +



 瞬間、拡声器越しではない声が辺りへ響き渡る。
 あるはず無い大気を殲滅し、不特定の周囲は燃上がり、激滅の嵐によって支配された。
 決戦に結末ついたのか、今でも続いているのかはもう誰にも分からなくなった。




 ――了―― 




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