ザ‐‐‐ザ、ざざ、これは雑音――おおきな音の前触れ。
 マイクのエコー。失敗した波長の拡大化。 
 ザ‐‐‐ザ、ざざ、これは雑音――おおきな音の前触れ。
 エコーは反射《エコー》し帰ってきて、わたしの聴覚の調整を促す。
 ザ‐‐‐ザ、ざざ、これは雑音――おおきな音の前触れ。雑音はちょっとした小説《モノガタリ》の前触れ。

 ただ、わたしの書くことはまったくの事実であります。間際で観察した事実であります。嘘、虚構、反真実、仮想ではマッタクありません。
 わたしは自動筆記装置《オートマター》です。わたしは自動的に起動します。そしてわたしは真実を描写します。
  
 これは、二次創作の小説です。が、真実の小説《モノガタリ》です。
 フロムの企画書や、本スレwikiのアーマードコアの暦表に載ってはいないけど、本物です。
 これはわたしの世界の小説。フロム作られし企画書《モノガタリ》を、
 筆者によって書き換えられた歪んだ歴史《モノガタリ》の記録。それを残すために、わたしは生まれました。

 そこには少女が居たのも本当です。

 赤黒いタールに塗られた筒状の壁の中央に。幾多もの喜劇や悲劇を演じる場となった高座の上に。
 暗黒に住むもの達に与える供物としてあつらえられた祭壇に、その少女は存在しました。

 しかし儚げで、可憐であった肉体は、すでに崩壊していた。
 が、しかし、しかしですね! 同時に――美しいと感じたのは錯覚でしょうか。
 いえいえ錯覚ではありません。私の感じたオートな記録に嘘は無い。ただただ、真実のみの文章だからです。

 筒状の壁には奇妙な彫刻が掘られてありました。それは宇宙が生まれる以前のモノの影。深淵たる、神の領域の写しえ。
 その奇妙な彫刻より更におぞましい物が高座の中央の少女です。名を――ズベンといいました。
 中央の石段に寝かされているズベンは裸で、仰向けに寝かされていました。
 口をモガモガと動かしていますが、口内にたまった血液によって、声で空気を振動させる事なく血の泡沫の飛沫となって消えていきます。
 ズベンはその可愛らしい舌を抜かれていましたので言葉をしゃべる事が出来ないのです。
 ギャグボールの空気穴から飛んだり跳ねたり凝固した血が、糸を引く唾液と共にたらたら流れていました。
 咽喉も、塩酸か何かで、焼かれていました。その咽喉で呪詛を呟かれては貯まったものでは無いのですから。
 そして首には引っかいた痕があります。咽喉を焼かれた時、痛みで自分で引っかきましたのです。
 でもですねもう引っかく事はできませんので安心を。
 なぜなら四肢は全てもがれて、芋虫のようにのたうつしか出来ないのです。わたしの知識によると、世間ではこんなのを達磨と称していますね。
 そうだ……、達磨は達磨でも、彼女は、神棚の上の達磨のように、独りで起き上がる事は出来ません、という軽いジョークを思いつきました。
 これを読む読者にとって、ジョークは面白いほうがよい、と筆者に言われていましたのを思い出しました。
 飛び上がるのを防止するために、医療用の頑丈なベルトで祭壇と身体をハムみたく雁字搦め《がんじがらめ》にもされていました。
 でも、これらはあまり美しくありません。
 わたしが美しいと思ったのは、中でもいちばんに美しいと思ったのは、彼女の顔面に張り付いた表情が美しいです。
 元は端正で美しかっただったろう顔には恐怖が張り付きそれを侵蝕しているけれど、
 恐怖に犯されないズベンの髪の毛が、切り落とされた耳を隠していたのが良かったのです。
 涙は既に枯れ、目は真っ赤に充血していました。でも目玉は裏返りながら、半ば眼窩から零れ落ちそうでした。
 左目にはバーコードが、右目には数字で60thと書かれていました。彼女は“本物のレプリカ”に成りえるか、の実験の60番目に使われているのですから、
 これらのマークは、監理番号とか、そういう類のものなのでしょう。嗚呼……嗚呼――なんて美しいんでしょう!

 嗚呼嗚呼、ええええ、そうですわたしはいつまでも彼女の事を書いていたい。
 そのために存在したのですが、ナニカの意志に改変を施されたので、衝動抑えて、次の場面へ――
 
 ――祭壇の四方と、壁に沿った円状に、この宇宙の誕生より失われて久しい、
 神聖文字《ヒワイエロアヌス》によって書かれた書物がばらされて、その羊皮紙一枚一枚が置かれていました。
 それら全てに冒涜の暗やみが書かれており、一文字一読しただけでその虜となり、そして二文字目を読んだら最後、
 蛇のように纏わり巻き付く邪悪によって縛られた霊魂は、世界崩壊の前秒――それは永遠――夢から疎まれた黒いタールを泳ぐ事となろう、という代物です。

 空間発生リノリウムの床に這いずり回るのは、狂える信者です。彼等は使い捨てであり、バーチャルが生み出した幻影。
 信者は、血の香りを嗅ぎ、脂まみれの壁をべろりと舐めます。悲鳴も上げます。共産される悲鳴は尽きる事がありません。
 まず、信者内の誰かが誰かにに噛み付きます⇒噛み付かれた方は苦痛で叫びます。
 バーチャルとは思えない、ほとばしる体液。その実際にあるはず無い、在り得ない存在感《リアリティ》の血液で壁は塗られるのです。
 身を喰らわれる苦痛。だがやがてそれも恍惚に変わり、全ては狂える信者にとっては快楽に変わっていくのでした。
 狂える者たちは互いで互いを押し倒し、犯しあい、喰らい合う。そうやって絶叫を挙げてふたたび生まれ、廻り回る輪廻のロンドを繰り返し踊りました。

 では次の場面――

 ――真っ白の男がいました。研究所の上級研究員です。
 白衣をたなびかせ、彼は、常人ならばショックで死んでしまうか、
 そのまま狂って幻影の信者の仲間入りをするかのその宴に、何の表情も崩さず、
 自分の怒りの矛先を、確り《しっかり》と、標的に向けていました。
 おそらく儀式にとっての神官に相当する男だと記録しています。彼は、こつりこつりと靴音を響かせ、高座に登ります。
 神官がナイフを自らの血に濡れたズベンの胸にドスリと突き刺し、魚のように切り開らいた所為の圧力でボキリ折れた胸骨が肺に突き刺りました。

 生きたまま、少女より三つの心臓を取り出した神官は、
 その場違いなほどに脈打つ心臓をぎゅりりと握り、そして――床に叩きつけました。なぜなら儀式は失敗しのです。
 焼失期間の記録《モノガタリ》を引き出す事は、ズベンでは、出来なかったのです。

 『ナァゼダァアアアア!!』

 神官は叫びました。狂える信者達は、実世界に顕現せんと、潰れた心臓を一心に喰らおうとします。
 が、所栓、彼らは、粗製のバーチャル。現世《うつしよ》に影響を及ぼす能力はプログラムされていません。
 ただただ、彼らは、彼らのバーチャルを邪悪に染めて、呼び出すべきものに謙譲されるだけの存在なのです。

 『……そうだ、……次だ。次で残りの二人ともを!
  最後のイケニエを! あのレプリカを差し出せば、世界は改変されるぅー!
  そうだ、最後っ。そうだぁ――アイツっ……アイツがァアアアア! “本物のレプリカ”だったのだっ』
  けくけくけけく、……くけははははははははくけははははははくけくけくけっ―――!』

 神官は高笑いを上げました。終に彼の念願が果たされようとしているのです。念願成就を喜ばないものはいません。
 だがそれは中断されました。とつぜん照明が点けられて、狂える信者の存在が消えました。
 スクリーン、タールに塗られた筒状壁に近代的なドア現れ、ガーと、左右に開いたのと同時に警報機が作動して、五月蝿いサイレンが鳴り響きます。
 ばたばた、慌てた下級研究員が飛び込んできて、
 
 「ほ、報告します! 万一の為に再生した披検体53thと55thの二人が逃げました。脱走です!」
 『…………な、ナンテコッタイ!』

 血塗られ壁とは正反対の眩い白衣を魔法使いのように着こなす神官の胸には、支配企業MIRAGE[ミラージュ]のプレート。
 
 『捕まえろ。捕まえるんだ!』

 そう叫びに叫ぶ神官はダンダンとナイフで少女を刺しました。
 彼女の、腹を、脚を、腕を、性器を、頭を、顔を――衝いて衝いて衝きまりました。
 血も出ないほどぼろぼろに、穴だらけにされた少女の頭は首からブツリと離れ、高座から転げ落ちました。
 10メートルほど落ちました。床に激突する瞬間、少女が笑いました。
 「ざまあみろ」――笑う少女の頭は固い床にぶつかり、さながら、子供が落とした夏のアイスのようにグチャリと潰れました。

 脳内に残った血が飛びました。その突如、いなずまが走りました。残留怨念でした。
 神官は突然の事に驚愕し、光るそこに、目を向けて、そして両眼が焼かれました。
 
 『目が。目ェガァぁァあァああぁああああああああああ!』

 蒼く光る彼女は、天井の引込み線へと流れていって、屋上のパラボラから外へ出ました。
 外は夜でした。ズベンが始めてみた、満点の星空。
 その西側、ミルク色の月が、コウコウと、今にも沈もうとしているのに、我一番輝いていました。

 
 ここからは、研究所から不滅都市《NYORAI》へ変わります。。
 邪神復活の場面へ、変わります。語り手の役割も私の手から離れていきます。
 これにて、わたしのオートは解除されました。
 わたしは休眠モードに入ります。べつのわたしが起動するでしょう。起動しました。わたしの役目もこれで終わり。
 だから、わたしは、眠りにつきました。お次は……――
 
  
 ――Gyhuuuuuuuukuuuuuukuuuk!!!

 腐った緑色の体液(取り込んだ《NYORAI》のもの)をぶちまけ、現れた怪物《バケモノ》は産声を上げる。
 その産声は、ただただ邪悪に、そして純粋で、無垢なる悪意を孕んでいた。
 地球上の生物、否無機物をさえ、その存在全てを飲み込み、自らとするバケモノの叫びだ

 薄い膜が張られている怪物の表面が沸騰を始める。浮かび上がる、それは顔だ。『Ia Ia ――!』――
 取り込まれた警備員等三人にもう、自らの意識はない。ただ無心に、邪神の名前を呼んでいた。『Ia Ia ――!』―― 
 笑顔を能面とし、ただ死するまでマリオネット唄う。自分達の主の名を。崇拝する邪神の名を叫ぶ。『Ia Ia ――!』――

 
 ――『『『 Ia! Zs-awia! 』』』


 取り込まれた《NYORAI》の肉は、作り出される血のように赤いタールに成り代わっていく。
 
 マリオネットに呼応するように、邪神ズアウィアは、二度目の叫びをあげた。

 ――GUhhhhyoooooooooooodoooooooooK!!

 ズアウィアは、最も原始的で、危険な存在だ。
 アマゾンの奥地、その秘境に住まう、忌まわしく退化した獣人によって崇拝されていた太古の神。
 現在アマゾンは開拓され、人の手が入っていない所など無く、旧企業連合が数百年前に汚らわしい獣人どもを一掃した。
 よって、獣人はとうに、滅び去っている。が、ズアウィアが眠る宇宙への鍵――邪教の神像――マナウス像は行方知れずになった。

 何処へ居たのやらと思っていたマナウス像は、
 この不滅都市《NYORAI》……いや、赤道点極化で凍結される前アーナルトコーナルの地下に埋められていたのだ。
 そして大体のものを食べる《NYORAI》に取り込まれ、この無人地区の下で、復活の機会を狙っていたのだ。
 先ほどの二つの機械化人は、邪神の眷属に相違ない。獣人は身体を機械化して、今まで、潜伏していたのだ。
 全ては仕組まれていたことだった。人類は嵌められたのだった!
 世界を大いに盛り上げる涼宮キサラギですら、その悪に、利用されていたのだ!

 ズアウィアはその身にそり立つビルを振動させる。

 〈――エェ!? 超伝導反応……マサカ、電磁砲《レールガン》ですカッ!?〉

 そのまさかであった。
 ズアウィアの背に突き出る三本のビルが共鳴しあい磁力を重ねて、超伝導する。
 紫電が爆ぜる。空気がイオン化される。次元が捻じ曲げられ、崩壊する。
 
 ――魔弾は発射された。

 〈きゃあー!〉

 一瞬、くるびの視界は光に侵され何も見えなくなった。んで見えた頃には天井には大穴が空いていた。
 天井の傷口は帯電する体液に濡れていた。邪神の姿はもう既にここには無かった。
 センサーを起動し探知してみると外にいることが分かった。くるびは震えた。これは恐怖だ。邪神は超オッカナイ。
 だからあとはお外の警備隊に任せておいとましよう。くるびは退避したヒルベルトの元へと急ぐ。
 一度はズアウィアに取り込まれたが、抉れた地面はもう再生を開始しておりプルプルと振動していた。
 やはり《NYORAI》も《AMIDA》だ。じつに逞しい自然の……いや、キサラギの神秘だ!


 くるびはトラック形態に戻って、なんとかビル陰にいるヒルベルトを見つけたので声をかけた。

 〈ひるべるとー! いちおー終ッタヨゥ……う、うな! うなー!〉

 くるびは赤くなり、ヘッドライトをチカチカさせて、一本腕を出してヒルベルトを殴る。

 くるびは口より先に手が出るタイプだということがここで分かるだろう。
 殴られた事によって、ヒルベルトは天井近くまで飛び、ぶら下がるコウコウアンドンに激突し、ピカピカ発光粉を全身にまぶされて地面に落ちた。
 ぶつけられたアンドンはぶらぶら揺れて付け根がヘンになって、それもまた落ちた。
 もちろん、定番だろうと思うが、かくして、アンドンはヒルベルトの頭の上に落ちて、彼は下敷きになった。バコーン!

 「ブブガァー! く、くるび!」
 〈ブン! 気がツカナイ少女ニこんな事をスルからコンナ事にナルんです!〉

 殴ったのは、ヒルベルトが少女の唇を、ハフハフしていたからだった。
 くるびはぷりぷり怒り、テールランプをチカチカ光らせながら少女の容態を調べる。
 彼女は苦しそうにしていた。先ほどまで、呼吸をしていなかったのだ。 

 「痛いじゃないか……だからおれは人工呼吸をだな」

 アンドンの下敷きから開放されたヒルベルトは、ピカピカ発光粉を払いながら言いました。

 〈ゴメンネひるべると〉
 「まあいいって事よ。とりあえず彼女を車内に入れるからドアをあけてくれ」
 〈ん……わかった〉

 少女をくるびの内に寝かせて、毛布を掛けた。
 ヒルベルトは、少女のジャマにならないように、外に捕まって乗った。
  
 「もしかしたら逃げてきたのかなぁ」
 〈逃げてきたって、何から……?〉
 「そりゃあ敵だろうなぁ!」
 〈はあー……〉 
 「……くるび……?」
 〈……どうしたんです?〉
 「なんだか悪い予感がする!」
 〈どうかんです><;〉

 悪い予感は思ったら駄目だ。果してそれは、的中するものだもの。
 銃を構える音がした。構えた者は、くるびたちに言ったというか超叫んだ!

 『アルキメデスゥウはあ手をぃぃおお汚さないいいいい。だから脚でェエ殺すうううううう』
 
 ぶらりとビルの間に挟まっているキモチワルイ蜘蛛《アルキメデス》が、脚で銃を構えていた。
 蜘蛛のアイデンティティーともいえる黄色と黒の縞模様は、複雑怪奇なパッチワークのとぐろに変化していた。
 よく見たら、蜘蛛なのは上半身だけで、蜘蛛で言う『腹』は、蛇の長い胴体になっており、空中で本当にとぐろを巻いていたのだ。
 この強烈な不敗臭は瘴気だろうか。すっぱい様なあまい様な吐き気を催す臭いが漂ってくる。

 「よし、今度は俺が引き受けよう」
 〈エ、そんな。ひるべるとダケで!〉
 「大丈夫だ。それに少女の事もある。さきにあいつの所へ行っていてくれ。お前の主人の元へな」
 〈……ワカリマシタ。でも……、〉
 「?」
 〈でも、死なナイデ下サイネ?!〉
 「俺は死なないさ!」

 くるびは荷台から3メートル四方のコンテナをヒルベルトのために出した。
 ここに彼の武器が入っているのだ。すると彼女は四足ホバー形態へ移行し、高速で走り出す。
 アルキメデスはくるびを追おうとするが、ヒルベルトによって制された。汚らわしい頭部に、榴弾がぶつけられたのだ。
 信管が発動し、爆発音。目がくらむ閃光。光が晴れた時、蜘蛛には傷ヒトツ突いていない。
 閃光弾をくるびを逃がすために放ったのだ。誰が――もちろんヒルベルトがだ。
 コンテナは展開されていた。中には先ほどの砲弾を撃ったハンドカノン。煙を上げ、既に次弾を装填していた。
 他にも多数の大火器がコンテナに入っていたが、何者をも寄せ付けない異彩を放つものが合った。

 ――まず、そいつには胴体が在った
 様々な内部機関を搭載したハイテクの塊だ。

 ――次に、そいつには対の腕が在った。
 コンテナの中身を余す事無く使うことが出来る。 

 ――やはり、そいつには二本の足が在った
 人のように大地に立ち、跳躍することが出来た。

 ――最後に、そいつには顔が在った。
 紅蓮に燃える、確たる意志を宿していた。


 ――そいつは、小さかった。しかし、鋼鐵の鎧――《アーマードコア》だった!

 [続] 





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