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 この世界は一度、紅に染まったことがある。それはもちろん比喩では無い。現実に、染まった。
 世界は、あらゆる物を壊し、ぶち抜き、再生不能にしていった蟲たちの色に染まったのだ。
 いまになってはぜんぜん降っては来ないが、以前はばしばし、そりゃもうばんばん降ってきたものだ。
 ミサイルのよう飛んできてアスファルトはめくれて、ビルをぶち抜き倒壊させて、そして変わりに蟲がすいちょくに立っていたものだ。
 その様は滑稽でもあったが、まるで墓石のように感じた。さしずめ、埋葬されたのは、以前の文明。 死神は蟲ってところだろうか。
 こういう風に、旧世代の人類も、埋もれていったのだろうか。
 そういう風に、我々も、彼らのように忘れ去られて、いつか発掘される時を待つのだろうか……。
 
 まあ、考えても仕方がない。
 特攻兵器事件のそれからもう、十年……いや、十一年かもしれない……。
 どうも時間軸の焼失期間が長過ぎたようだった。焼失期間と呼ばれるその時代の記録はのこされていない。ゼロだ。
 そうだ、なにも――記憶すら残っていないのだ。当時、私たちは生きていたはずなのに、一切のものが抜け落ちている。
 あるものは家族と共にシェルターの中にいたり、またあるものは戦場にいたり、ただただ呆けていたり……。
 しかし、戦っていたらしい。誰もが、生きるために、戦っていたのだ。それだけは私たちの中に残っているたったヒトツの記憶だ。

 標準時刻をつかさどる原子時計はその戦いによってか、すでに失われていた。
 「ほなどうしよか」と悩んでいた所にまつむし博士のまつむし時計が新しい時代を刻んだのだ。
 それから、十年たった。だから、現在は、まつむし暦十年という事になる。

 やっぱり企業間抗争(ミラージュとクレストが主。たまにキサラギ。さらに時たまUSE)はふたたび激化した。
 どうしようもない位に激化した。
 最初の五年は仲良くやっていたのだが、新技術や、遺失文明の発掘に着手しだしたら、すぐにこうなった。

 レイヴンもふたたびあらわれることになった。
 がしかし、今の彼らには後ろ盾がないものだから大きな仕事――戦闘とかは、ランカーみたいなやつらにしか依頼される事は無い。
 そして、力を持っていても不運なヤツにも依頼は来ない。 
 そういうやつを私は沢山知っている。

 だからだ、レイヴンにも格差問題とか生じてしまったりする。正直もうすこしで組合ができるだろう。
 悪くないと思う。統制された傭兵生活は、なかなか心地が良いものだ。
 まあ、そんなところが今の時代。
 これから語るのは、そんなこんななレイヴンたちもいるし、その周辺ののん気なお話。


 ……ノンケじゃないよ、ノンキだよ!? 



 それは現実に起きているのだ! 地軸が傾き、地球は横倒し回っているのだ!
 なんと特攻兵器事件後、地軸がどんどんずれる、ということがおきてしまったらしいのだ。
 何故かこんなことに!?――ということは今もさっきもさっぱりわからない。……焼失機関には分かっていたかも知れないが。
 海王星だかがそんなのだかと、きいたことがある。そして太陽が一番当たる部分が一番寒いんだと。でも地球では熱い。凄く雨も降る。
 だから海王星だかとは違うんだな。と実感する。あっこよりはあったかいもんね。
 そんな中ででも、人類も、ほかの生物たちも、みんなけっこう適応できているので良かった。
 磁場が歪んで、インターネット網、レーダー、地形地図の大更新が必要になったのは面倒だったけどね……。

 しかし、それよりもっと深刻な問題がある――赤道南極化だ。 
 ここ、アーナルトコウナルはもちろん影響を受けた。
 もともとアーナルトコウナルは、赤道よりちょい上くらいだったのだ。

 暖かいというより熱い気候だったものが、いきなり超寒い冬将軍かっぽする北極へと成り代わったのだから、
 薄着しかもっていない砂漠の民はどうすればいいのか、とこまってしまう。
 
 ところどっこい、昔からアーナルトコウナルはキサラギ社の領土である。
 寒いのはいやだから、アーナルトコウナル地域全体を あ る も の で蓋ったのだ。
 そしてこの地域は記念(なんの記念だかは知らん)に、不滅都市《NYORAI》と名を変え、都市が自力で、雪に埋もれたら這い出たりして生活している。      



 そんなこんなだけど、今日はひさびさの晴れであった。晴れの日は、都市は甲羅干しをする日だ
 だから警備隊が干されている《NYORAI》を警備していた。 すごくぽかぽかしてきもちいかった。
 
 あるところに、オストリッチが三機いた。
 端っこで固まって警備というか、やる事がなくてぶらぶらとしていた。

 『晴れの日だぜーーー!』
 『母なる太陽……これほど嬉しい事は無い』
 『ひぃよおおおおおおおおおお!!』
 『サンナンが何か来たってだぜーーー!』
 『ふふん。ほんとうだな。だれだろう』
 『ひぃよおおおおおおおおおおおお!!』

 レーダーよると彼らに向かってくる反応がある。
 敵性のシグナルは出ていない。通行許可の表示もあった。
 それもキサラギ領永久許可というすごいものだった。



 アラユルモノを乗せられそうな大きさの、青色に塗られたホバートラックが雪原を走ってきた。

 〈ぶっぶー!〉

 ホバートラックのクラクションが鳴らされる。
 だがそのクラクションは五月蝿い甲高い音ではなくて、幼い感じの電子音声で超かわいかった。

 トラックは三機のオストリッチの前で止まった。

 「ごくろうさまです」と、運転手が顔を出して許可証を示した。
 運転手はなんとクマだった。いや、クマのぬいぐるみだった。
 しかしあたくし地の文、まちがった。クマはそこを、「えれくとろあみぐるみだ」と訂正しました。ごめんなさい。

 オストリッチ、丁寧に拝見して、許可証を返す。
 クマはそれを受け取り、窓を閉め、アクセル・ペダルを踏むと、
 オーバードファンの回る音が冷たいけどきもちい空気に響き渡る。
 オストリッチの歓迎を背景に、青いホバートラックは不滅都市《NYORAI》へ向かう。

 『がんばってくださいぜーーー!』
 『まあ、セイゼイがんばることだな……』
 『ひぃよおおおおおおおおおおおおお!!』

 ぶっぶー! 
 なんと都市の全貌は、まるで巨大な《AMIDA》だった。
 まるでなんてもんでなくなんと、アーナルトコウナルをすっぽり蓋ったのはキサラギの生物兵器《AMIDA》だった。
 さすが記述トリックであるなあ!

 『いまどきあんな車めずらしいんだぜーーー!』
 『いやまてよ、あの車ときたらもしやしたら……』
 『ひぃぃいい、ひぃぃいい、ひぃいいよおおお!!』

 心に思うところあったのか、オストリッチたちはトラックを追い、駆け出す。
 レーダー感度を全開にして、彼らも《NYORAI》内部へと入っていった。




 天井ところどころにぶら下がるコウコウアンドンがぼうぅーとした明るさで地面を照らす。
 ここはKO-BA13番区画――《ほとんど無人区画》と呼ばれているオートメーション化された工業区画だ。
 関係者は立ち入りを許可されているが、明らかに彼女はそれとは違う。
  
 区画内の空気――灰色の霧が、少女の髪の毛に小さな滴を創り出す。
 モノトーン……落ち着いたこの中で、彼女の紅い眼だけが色を放っていた。



 関係者として許可された彼らはベルトコンベアに積荷を移していた。
 ベルコンが荷物を載せて、どんどんと流れていく。
 小さい荷物をクマが運び、彼にもてない大きい荷物は車が運んでいた。

 クマの名前は〔ヒルベルト・ベンデル・シタイナー〕。
 こんな姿だがレイヴンである。えれくとろあみぐるみはクレスト製“HI-プラス”の証だ。

 ヒルベルトは結構実力は在るのだが、不運にもレイヴン不況に巻き込まれ、そらもうぎょうさん借金を背負ってまった。
 それでこのたびパーツの仕入先のオーナーから
 「腎臓売るとレイヴンできなくなるから、私のところで働いて返せ!」
 と言われてしまったので汗水たらして働いているのだ。えれくとろあみぐるみは汗水も出る優れものだ。
 だが臓器があるかは知らない。

 えれくとろあみぐるみとは、クレストが開発して実用化している電工血管《エレクトロン》の
 一本一本に精神を成着(成仏定着)させ束ねた(毛糸みたいだからあみぐるみにしたり出来るのです)素体のことだ。
 数本ちぎれた程度では、行動に支障はなく、いままでのメカ-プラス(機械の身体のこと。脳みそを移植する)共通の欠陥であった故障を極限にまで排除出来る。
 いまだ開発段階で、試作品が作成されただけだが、なぜかすげーいっぱい市場に流通してしまった。いわゆる横流しですねわかります。
 また、エレクトロン系の部品が使われているものになら、たいていの場合、憑依(取り付いて、電神経系にハックを仕掛けて乗っ取ること)が可能。


 また、車は〔くるび〕という名前だ。先ほど、クマに持てない荷物を“運んだ”と書いた。
 しかし荷台を乗せて、クマが動かしたという比喩ではない。
 すなわち、くるび自体に腕があり、自分で考えることが出来るのだ。
 つまり、AI――人工知能を搭載しているのだ。なおCOMは女性型である
 
 今回の仕事は、他の大きな仕事と重なってしまったオーナーが、
 くるびとヒルベルトに「お前等がいってきなさい」と命じたのだった。

  ん で !

 すでに運んできた荷物はコンベアに移し終わり、くるびも腕をしまっていた。

 「うぉぉ……、腰が痛い」
 〈チャント運動シナキャ駄目デスヨ〉
 「……やっぱそうみえる?」
 〈いえすデス〉
 「この毛の所為だとおもう!!」

 クマが不貞腐れて、かわいらしいおててとおあしをじたばたさせているところ、突然、誰かがそっとその毛糸を掴んだ。
 最初くるびかなんかだと思ったが、彼女はもう車形態に戻っているしおかしいと思った。
 バッと飛び起きて身構える。
 
 「だれだ!!」

 敵かもしれないと、レイヴンの本能が言う。だがその正体は以外な者だった。

 「ひゃうんっ……、あ……ぁああっ!」

 何者かの正体は、何と幼い少女だった。
 少女はヒルベルトの大きな声にビックリし、尻餅をついてしまっていた。
 赤いビロードのような瞳に大粒の涙を浮かべている。

 「どどどどどど、どうしたんだ!?」とヒルベルトは慌てて、
 くるびから自分のジャケットを取り出して、少女に着せた。
 彼女の衣服はぼろ布だけで、ほとんど裸だった。

 少女はあったかそうにそれに首をうずめて

 「あぁ……おとうさんの匂いがするよぅ……あぁったかいよぅー」 
 
 そう言い、涙を流す。そしてくぅくぅと寝息を立て始めた。

 「不思議な少女だ、何処から来たのだろう、」
 と思考するヒルベルトは、そっと起きないように少女を抱きかかえ、くるびに運んでいく。
 彼もくるびも生体スキャンは備えていないが、擦り傷くらいの治療は出来るだろう。


 一通り、少女の見当たった外傷は治療し終わり
 あとは少女の目覚めを待ち、彼女が誰かで何処から来たかを聞かなくてはならない。

 その時、彼の強化された聴覚は彼とくるびを呼ぶ声を捕らえた。
 聞き覚えがある声――あの三機の警備オストリッチのパイロットの声だった。

 『かあいいクマさんでておいでだぜーーー!!』
 『貴様にはなんぞとも借りが無いがその車、渡してもらおうか……』
 『ひぃよおおおおおおおおおおおお!!!』

 しかし、聞き取った機体の駆動音はオストリッチのものではなかった。
 一機のOWLと二機の85式に乗り換えていた。
 
 『俺たちの兄弟のかたきとらせてもらうだぜーーー!』
 『この一戦で勝負が決まろうか・・・』
 『ひぃよおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!』

 どんどんと声が近づいてくる。だからヒルベルトは逃げる事にした。しらん事に巻き込まれたくは無い。
 くるびのエンジンをかけようとする。がしかし、かかってくれない。

  な ぜ だ !

 そうだ。ヒルベルトには関係なくても、くるびにはあった。正確に言うと彼女のオーナーに関係があった。
 なんと彼らの兄弟を、オーナーは殺していたのだ。彼らのその怨みを今ここで晴らす気なのだろう。
 
 〈ゴメンナサイひるべると 私ハ戦ワナクテハナラナイノデス』
 
 つたなく組み合わせられた電子音が決意を述べる。
 ヒルベルトは迷いつつも、少女を抱えて、区画の出口まで走って行った。


 くるびは、声の元へ向き直る。敵と対峙するヘッドライトが灯る。
 それは決意の証明書。従順な下僕は主人に忠実を果す。

 〈私ハ、注文ニ従イシ、其レヲ忠実ニ再現スルタメノおーなーノ道具デス!!〉

 従属は消して、自己を犯すものではないのだから!!

 ここで逃げたら何時か彼らはオーナーと出会うだろう。
 その時私は居ないかもしれない、その時に私が死んでいて私以外がオーナーについていたとしても 
 それが通るならその時は誰も居ないかもしれないじゃないか!

 だから戦うのだ!
 
 そう、機械の心が、全身の歯車が、シリンダーが言います。

 全ては守るため。
 大好きな主人が死ぬ事無いように。
 もしその心が作られたものだとしてもだ!

 〈敵サンハ、やっつけマス!〉 
 〈ダカラ、オトナシク……〉 
 〈 死 ン デ 下 サ イ ! 〉

 トラックのエンジン出力が跳ね上がる。ボンネットに浮かび上がる光。
 ――それは⑨のマーク。                    
 全てのものが倒れても、自らは倒れずに主人と生死を共にする、覚悟の刻印《エンブレム》。

 〈予備出力機関、回転開始――電力供給おぅけい!〉
 〈えふしぃえす起動・・・火器安全しすてむ解除!!〉

 埋め込まれた電工血管《エレクトロン》にいかずちが走る。
 FCSが起動され、電力が全兵装へとなだれ込む。
 ボンネットが迫り出し、勇ましき胸となり、眠る野獣の意思――MZ重機関砲をあらわにする。
 大部分を覆う三次元曲面装甲に、二重三重に防御スクリーンが張られる。

 荷台の覆いが音を立ててはじけ飛び、現れる四本の巨大な腕は、格納された武装から好きなものを選ぶ。
 機体底部は四つにわかれ、高速可変ホバー四脚となり、地上を高速でかつ縦横無尽に機動する。

 仕上げにヘッドライトの光が煌々と輝き、最後の一言。

 〈めいんしすてむ、戦闘もーど起動シマス!!>
                        
 戦いの火蓋は切られた。あらゆる物を吹き飛ばす、戦闘車両《ビークル》は迎撃を開始する!
 

 OWLを頂点とした三角形で敵は突っ込んできた。
 ライフルを撃ちながら、タックルを仕掛けてくるが、くるびは軽くいなす。
 OWLも85式も高速だが、所詮はMTだ。ACなみの速度を出せるくるびに追いつけはしない。

 くるびはブーストジャンプ。
 敵機を飛び越え、背後を取り、銃撃。
 二挺のマシンガンが火を噴き、OWLに無数の穴が開く。
 バズーカ砲が砲火をあげ、左の85式の下半身と上半身を真っ二つにする。
 ENライフルがピンクの光線を吐き出し、右の85式の装甲をドロドロに溶かした。
 爆発。装甲が、シリンダが、MTの頭部や腕が、うすあかい天井へと打ち上がる。
 爆音。爆音。爆音、爆音。爆音爆音爆音。たまに破裂音。――パンパン!パパパパン!  
 
 〈迎撃完了……?〉

 くるびは勝利を確信した。
 それはそうだ、ふつうならば。
 敵機が戦闘不能になり、決着がついている。
 
 だが、ここを何処だと思っているのだ。
 ここはキサラギ領、巨大《AMIDA》の不滅都市《NYORAI》だ。

 常識は通用しない彼らの領地内のMTだ。
 なにか、仕掛けがされているかもしれない。
 そして、やはり、 さ れ て い た 。
 敵でも、味方でも、なんでもおもしろくしてしまうキサラギの魔の手が迫る!

 ビルの上。クレスト超最高、と書かれたヘリポートの上に、何者かがいましてストレンジャー。
 それは二機のロボットだった。
 一機は人間の等身大で、もう一機はその肩の上に乗っていた。

 『あらー。 こわれちゃいましたですよ、ハイ!』
 『うわー。 ほんとうだ。 ほんとうだ』
 『いもようかんの準備しなきゃですよ、ハイ!』
 『そりゃあ、ちがう番組だあねー?』

 奇妙なやり取りをする彼ら。
 そのうち、等身大のロボットがその肩の上のロボットの腕を掴み、
 投げ縄のようにブンブンとまわした。

 『『~あちゃこちゃあちゃこちゃー! おおきくなってねー♪~』』

 そんな声と共に大きいロボットは小さいロボットを放り投げ、MTの残骸にまで飛ばす。
 小さいロボットの口から、せみの口のような機関が迫り出し、MTの装甲を貫いて、なにやら怪しげなエネルギーを送る。
 そしてエネルギーが注入され終わった時、MTたちが蠕動し、脈動する。
 機械が生き返る。パイロットが死に絶えた今、動かしているのは誰なのか、それはわからない。
 しかし、また動き、襲ってくるのなら、くるびは迎え撃たなくてはならない。
  
 MTたちが震えながら一つになっていく。
 サーモグラフィーで見ても、熱源はない。
 なのに、溶解し、煙を上げ、つぎつぎと融合していく。
 ついには接している地面やビルまで飲み込み始めた。

 くるびは、キケンと判断。後退する。
 周囲10メートル四方のものは飲み込まれていた。
 その中心に、敵はいた。
 だがそれは最早、MTではなかった。
 機械とアスファルトとビルを《AMIDA》の肉で繋ぎとめた化け物だ。
 腐った緑色のしぶきを上げ、化け物は暴れ始めた。
 

 「続」




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