彼は大きな体に似あわず器用に小さく音を立ててドアを閉めた。
 ドアの向こうでは、たった今寝かしつけた闇黒三姉妹が、すやすやと眠っている。
 大人以上の能力を持っていてもヤハリ子供なのだ、彼女等は。
 絵本を読み聞かせたりしてやって初めて安心して眠れるのだ。
 この世界の界隈に身を置いて長い彼にはモウ、到達できないほどの安堵を抱いて……。

 彼――MMM(メガマッチョマックス)はそろそろと彼女等を起こさないように台所へ行き、戸棚からインスタントコーヒーを出した。 
 ずらりと並んだ粉コーヒーの瓶から一つ選んでスプーンですくった三杯をカップに入れて丁度沸いたお湯で溶かした。
 ゆったりとコーヒーの香りを含む湯気があがる。
 べつだん美味くは無い。寧ろ、不味い。こんな苦くて酸っぱいものを何故、飲みたくなるのかまったく分からない、そんな飲み物だ。
 彼女と共に居た時、彼女が飲んでいたから、彼も真似をしたのが始まりだ。ソレから止められなくなった。ズズッ、と一口啜る。
 いや――実際分かっているのだろう。何故なら……っと、はて、なにかドアを開ける音が聞こえたような……?
 おや――ズッズッと、まろやかに啜っていたところ、彼の目の前を通過する影があるではないか。
 ステルス機能がありそうなまっくろなパジャマを着て、てけてけとっとこ、歩いている彼女は暗黒三姉妹の三女、テップだ。
 因みにだが、彼女のお茶は美味いのだ。というかソレしか能がないというべきか。
 しかし、それでいいのだ。MMMは彼女の淹れてくれたお茶が大好きだから。
 そんなテップが何故歩いているかというと、彼女はトイレに起きたのだった。
 何時の間にやら三姉妹たちが寝て一時間も経っていた。

 MMMはゆっくりとカップを傾けながら、彼女を観察した。
 テップはもそもそ動き回り、柱に頭をぶつけたりしながら、
 卑猥な生物がしょく腕で食べ物を探すが如きな腕の動きが止まり、仮想のドアノブを捻り出した瞬間、MMMは動いた。
 俊敏な動作でテップを掴み上げ、すぐさまトイレへ彼女を座らせた。そしてもちろんドアを出る。変態じゃないからね。
 そして、しばらく。
 ジャー。
 と、水の流れる音がして、テップが出てきた。が、あいもかわらずのゾンビーの様であった。
 そのままトイレの傍らに立っているというか、開けたドアと壁に挟まっているMMMに気づかず、
 自らの寝床へ戻っていったがしかし、ちょっとだけ意識を取り戻したのか、MMMに向かって言った。
 「ありがとーえむすりぃ……」
 MMMは少しだけ笑った。
 
 MMMはベランダに出た。
 見えるは何本もの鉄筋コンクリートビルのまんなか部分。しかども、どれでも真ん中があるわけではあるまいて。
 真ん中が抉れてしまっているが何とか立っているビルや、もはや真ん中から無いビルもあるし、
 天辺の方だけ壊れてあとは無傷なような、しかしどももとからの欠陥で何もしなくても崩れそうなビルもある。
 即ち、見上げても、下げても、同じように空の黒さと耀きと同じな此処は、廃墟である。
 アスファルトには割れたガラスが散らばっており、それが空の月光をキラリキラリと反射していた。

 この文明の墓地を作ったのは、紛れも無い、あの、蟲たちだ。
 それが大挙して押寄せ降って来る現象を、われわれは赤い雨と、呼んでいる。
 幾百幾千幾憶との特攻兵器が降り注ぎ、この廃墟を作り上げたのだ。
 その戦い否、一方的虐殺に何人死んだか分からない。
 企業等の重要拠点に借り出されたレイヴンも、ほとんど還ってこなかった。
 MMMもそれに参加した。 
 だがMMMはそれが出来た。
 だからMMMは、今、生きている。
 すべての任務を成功させた男――鋼鐵粉砕の運命すら捻じ曲げるというかへし折る殺戮爆弾の豪雨の中生還した、最強の男はたった今ここ居る。
 彼が昔守りぬいた場所に――しかし今は誰も居なくなったこの場所に……。

 
 んで場面は変わりまして、時代も変わった。なお、この物語は、MMMの特攻兵器を防いだ話じゃなくて、その後のちょっとした任務での話。
 MMMが特攻兵器を防いだ話は他の人に任せましょう、それがいい。
 さて、アーク所属のレイヴンに貸し与えられ本当は無人であるはずのガレージの居住部分。
 しかし無人じゃなかったりする。
 テーブルにパソコンと資料を広げた女と、ぐったりとカーペットに横になる筋肉の塊で、合わせて二人が居た。
 時刻はお昼前一時間で二人ともちょっと、お腹がすいていた。台所から、コトコト何かが煮えていた。お昼ごはんのシチューである。
 おいしい匂いが漂う中、女――オペレータのヘルヴァはディスプレイから顔を上げて、筋肉の塊こと、レイヴンMMMに話し掛けた。
 「MMM依頼よ、キサラギからだわ……どうする?」
 「フゥー、きまっているだろう、依頼受けずにどうする!」
 「だって……」
 「……だってもないだろう、この状況じゃあキサラギでもクサナギでもヤマタノオロチでもクトウリュウでもなんでも来てくれだ!」
 そう、MMMに言われたヘルヴァは、顔をしかめて泣いて懺悔した。 
 「……ごめん。あたしが悪いのだ。あのとき、ああしていなければ今頃はミッションは成功して君の期待も大破しなかっただろうなあ。
  ……嗚呼、ぁぁごめんねごめんね! あたしがわるいんだ、わるものだ! あーんあーんモウ死んでやる、死んでやるぞ!」
 「まあまあ、モウ過ぎた事だ。忘れような。それで……その依頼とやらの内容はドウなのだ」
 「あ、ええ、それは……えっと――」
 ヘルヴァはディスプレイをMMMに見えるように向けた。
 依頼はこんな内容だった。

 『親愛なる、ムキムキマンのMMMさまへ
  貴方の傍らにいつも居るキサラギからの依頼です
  われわれキサラギは、世界的に重要な気密を手に入れました
  貴方が前に守り抜いたバレットシティ地下に大きな空洞を見つけました
  どうやらそこをミラージュかクレストが一人のさばって選挙しているようなのです
  従ってこの地下空洞を破壊してください
  爆弾を設置して埋没させるのが一番だと思います
  実に手っ取り早くて簡単ですね
  マッピングは出来なかったので、そちらでいい場所を見つけてとっとと取り付けて爆破してください
  早急なお願いです
  いっぱいお金出すですから宜しく
  貴方のお友だちのキサラギソフトウェアより……』
  
 「……」
 「……」
 「なんだこの依頼は!」
 「あたしだって知りたいわよ」
 「気密は機密だろうな、選挙は占拠だろうな!」
 「でも案外そのままかもよ。キサラギだし」
 「そうかもしれないな。キサラギだし……」
  キサラギは変態であるが莫迦ではない。
 しかし、本当にそれでいいのかとつっこみいれたい!
 
 さて、ところは変わって、何処か知らん場所。
 そこには緑色した変な薬品をごぽごぽ煮立てた釜をオールでかき回している変態が居った。
 変態は白衣を着ていて、ヤハリ見たまんまのマッド博士だった。
 ゴミ箱はティッシュが丸められて山盛りだった。中には名札のようなものもあった。
 だけどそれは名札だった。さらにキサラギの名札だった……。
 マッド博士は虚空に叫ぶ。

 「おうおぅー、わたしの研究がツイニミノルゥウウ。
  わたらああの研究は世界一の成功を収めてシマウゥウウウ。
  だけど世界はわたやしあをミトメテクレナイィイイイイイイイ。
  だからこんな世界だなんていらない。
  殺す。殺す。メタメタミチミチにして殺してやる。
  あっはぃっはっははぁあああいああああxはっはあああっああぃいいぁつああああはあああああああああああ! はあはあ、うっ……!」
 
 なんと面妖な。これこそ変態のキ☆ワ☆ミよ……。


 さて、くどいようだが、またところは変わって、ガレージ。
 MMMの愛機ハイパーチェストがトレーラの荷台に脚を折りたたんでお山座りしていた
 ――このハイパーチェストは四脚なので前後で2つのお山が出来た。
 そして、改造されたクレストの戦闘指揮車がバックでいっしょに荷台乗せる。この車の名を、シュトルムと言う。
 アークがまだ機能していた頃なら輸送ヘリクランウェルを飛ばしてくれただろうが、
 今はモウその組織は無くなったのだから野良レイヴンのように民間に直接依頼するか、自分でそれらを飛ばす。
 元々はレイヴンはAC以外の免許を取れなかったりするけど、もう世間では免許などどーでもいい雰囲気なのだ。
 けれどもMMMはトラックの慎重な運転やヘリの細かい操縦は苦手だ。ヘルヴァもそれに然り。だから委託せざるを得ない。
 ……ん? ACの操作? んなもん気合だ気合。ACは気合で動くのだ! オペレートも然りだ!

 さて話がずれたがすぐ戻ろう。
 今回は移動距離が少し長いので、自走していく訳にも行かず、陸路を使って目的地まで運ぶのだ。
 舗装が少しばかし剥げた道路をACを乗せたトラックがグングンと進んで行った。
 二人はホロを被せた荷台に居た。たまにホロをめくっては外を見ては、目的地まで過ごした。
 田園風景も、自転車またがる駐在さんも居ないが、たのしかった。

 そして時間が経つ。なれば遠く、見方を変えると座薬にも見えるというかほぼ座薬な弾丸型のビルが何百本と立ち並ぶ姿。
 しかしナカには先っぽが無いものもあったり、半壊どころか触れたら蓄積ダメージ超過で崩れる寸前というモノまであった。
 そう目的地――バレットシティが見えてきたのだ。

 「ワッハッハ! みてよMMM、やっぱりあれは座薬だわ!」
 「これこれヘルヴァ、レディーが座薬座薬言うもんじゃあない、がしかし、あれは本当に座薬だなあ」
 「でしょでしょ……でも……人が見当たらないわね」
 「うむぅ。本当だ、どうしたのかなあ」
 いままで激しく抱き合いながらワハワハ笑っていた二人だったが、なんだが寒気を覚えてきた。
 この町に何が起きたのだろう。
 二人は急いで乱れた衣服を直し、何が起きてもいいように、身構えた。
 
 バレットシティは昔MMMが守り抜いた町だ。
 赤い雨事件前よりずっと人は少なくなったが、まだ町には人が大勢暮らしていたはずだ。
 皆皆上を見ては「アッー!」と叫んでうずくまったりする陽気な人々だった。だが今来たらモウ、人は誰もが居なかった。
 依頼主のキサラギが、駆逐したのだろうか。
 いや何も考えないで置こう。イラナイ事に首を突っ込まない方がいいのだ。
 とくに、キサラギに置いては、逆に突っ込まれる事になる……しかしナニをドコにかは言わない。

 ACの暖気が終り、鋼鐵の巨人はトレーラーの荷台とりむくむくと立ち上がって地に足をつけた。
 すらりと伸びた四の足は俊敏な機動性と旋回性能を約束し、上半身は何モノも受け付けない強靭な装甲を纏う。
 厚さが極端に薄いが沢山のセンサーの詰まった頭部は敵の攻撃にさらされ難く、
 両腕に装備された巨大なカニバサミは鉄を溶かすプラズマを放つと同時に、その堅さを生かして近接戦闘に持ち込める名武器のETTIN。
 更に背部には長大な両肩リニア・キャノンを背負って居り、何モノをも打ち砕く力ある正義を暗示していた。
 これがMMMの愛機ACハイパーチェストの全容である!

 トレーラーはヘルヴァが乗る改造戦闘指揮車シュトルムを降ろした後、そそくさと来た道を帰っていった。
 シュトルムのパラボラ・アンテナが地形を把握し、作戦領域への入り口の、特定を急ぐ。
 果して、地下への入り口は見つかった。肉屋さんの下だった。 
 「随分と庶民的な場所にあるんだなあ」
 「ぶつくさ言わないのー! 入り口は庶民的だけどとても深いんだから」
 「ほんとかね」と呟くMMMはETTINで肉屋さんをこっぱみじんにしたら、地下へ続く大穴があいた。
 四角い穴だった。周りの材質は石だ。なにやら壁に刻まれた解読不能の象形文字が下に向かってズラリと並んでいて、
 まるでおいでおいでをしているようだった。
 MMMは壁に接触しないように慎重に機体を操作し降下していった。主に気合で。
 ヘルヴァのシュトルムも車体下部からブーストを噴かせてそれに追従する。これも気合で。
 「MMM、上昇する時、あたしに言ってよ? 接触するから」
 「まかしてもらおう」
 
 降下しきると同時にシュトルムはマッピングを開始した。
 ハイパーチェストはめり込んだ、針のような脚を引き抜こうと頑張っている。
 「むうぅ……抜けん!」
 「作戦領域到達、続いて周辺の観測を開始!」
 ぴこんぴこん。探知レーダーの音が石材の壁を走査しドンドンと地図を作成していく。
 だが……、
 「あら」
 「どうしたのだ」
 「奥の方……多分奥よね。そこだけど、そこから先は周りの材質がレーダー波を受け付けないモノに変わってしまっていて探査できないわ。
  残念だけど、そこからはハイパーチェスト自体でマッピングするしかないわ」
 「そうか残念だ……ん、どうしたんだヘルヴァ。顔色が優れないぞ?」
 MMMはサブスクリーンに映るヘルヴァを見て言った。
 「うん……ちょっとね」
 「ちょっと?」
 「いやちょっとじゃあないわ」
 「大変なのか、どうした?」
 「そうよ、大変にやばいわ!」
 「おれも抜けなくて本当にやばいぞ!」
 
 ヘルヴァはマッピングの結果をハイパーチェストに転送した。
 メインスクリーンに地図が出た――それも特大でとても長かった。
 ふぅーと、MMMとヘルヴァは溜息を同時に漏らし、薄く笑った。
 なお、ハイパーチェストの脚はまだ引き抜けていない……。

 なんとか脚を石畳から引き抜いたハイパーチェスト。
 MMMは歩行ペダルを踏みながら水筒に入れてきたコーヒーを啜った。
 サブモニターの向こうでも同じ音が聞こえた。ヘルヴァもコーヒーを啜っている。
 ほかほか。ゆげがゆらりとコクピットに充満し、独特の香りを醸し出す。
 「ワッハッハ! やはり不味いぞ、コーヒーは!」
 「なら飲まなきゃいいんだけどな、豆も高いし」
 「だが、私はまけない、こんなものには……グゥ!」
 「ワッハッハ!」
 肉達磨とそのパートナーの二人は、笑う。
 ハイパーチェストはゆっくりだが順調に固い石畳を踏みしめる。シュトルムは自動操縦でそれに続く。
 一見のんべりしているが、シュトルムのパラボラ・アンテナは始終忙しそうに動いている。
 突然の敵の接近を警戒しているのだ。
 そして警戒の甲斐あって、ナニカがその網に引っかかった。甲斐が無い方がいいのだが……。

 MMMとヘルヴァはカップに残ったコーヒーを飲んで水筒を仕舞った。
 ハイパーチェストのメインスクリーンに送られてきたデータが表示される。

 《敵総数、四体。》
 《機名不明。》
 《しかし生物兵器の可能性大!》
 
 少ない情報だがそれだけ分かれば充分だった。
 「生物センサーをオンにしたわ。存分に暴れてらっしゃい!」
 「まかせてもらおう」

 MMMは両脇のコンソウルに太い指を叩きつける!
 そのタイプ音は激烈、無差別、大激震!
 何モノをも紛壊せしむる威力をもつ一撃必殺!

 《メインスクリーンに作戦領域を表示。》
 《ジェネレータ出力戦闘安定値に到達。》
 《ブースタ、及び各装備のセーフティを解除。》
 《電力供給パイプ分断の成功をお知らせします!》
 《テェィントン!》
 《モード変更コードを受け付けます》

 そしてMMMは機神の目覚めのコードを叫ぶ!

 「戦闘モード起動せよ!」

 《はい》
 《戦闘モード、起動します!》

 針のような四足が石畳を穿つがちゃんと一瞬で、引き抜かれる!
 鎧の中枢たるコアからは蒼と紅の光の血液が、脈動する!
 頭部の幾つもの光学・アイが暗い世界を背景に鮮明に、耀く!
 ぶら下がったままだった巨大カニバサミが戦闘で敵を殴打する武器となるのを待ち望み、
 背部の両肩リニア・キャノンへのエネルギー充填率はただいま120%を超えた!
 いざ、四足ニ鋏一本ヅノの機神が戦闘を開始する……。

 敵は生物兵器、そう、データでは表示されていた。
 だが、見た目は、ほとんど機械だった。
 装甲を施された外殻は平面と曲面がうまく融合された、キサラギ製兵器の特徴を持っていた。
 関節からは、たまにニョロリと黒い寄生生物が顔を出す。あれはレーダーの役割を持っているのだろう。
 死神のカマを連想させる腕を持ち、顔は三角形で、複眼がその大部分を蓋っている。
 その名を機械化かまきり《ヤーツザキニー》。遂にダニや蜘蛛に飽きたか、キサラギ!
 ヤーツザキニーはしゃこしゃこと器用に四本の脚を動かして、ハイパーチェストに襲い掛かってきた。

 敵はハイパーチェストとちがい、石畳に脚がめり込まなかった。何故ならばたばたと羽を使っていたからだ。
 あの巨体だ。飛べないだろうが、羽を使い揚力おこしているからこそ、自重で潰れずに、脚もめり込まずにすむのだろう。

 よって、弱点は羽だと、そう確信したヘルヴァはMMMに言った。
 そしてMMMの返答は唯一つ、
 「まかせてもらおう!」
 それだけだ!
 
 MMMはブースタの出力を最大まで上げて、機体を浮上させ、目前まで迫っていた敵の攻撃をかわす。
 攻撃をかわされた敵は激昂し、ふよふよ漂うハイパーチェストを追う。
 MMMはそれを待っていた。すかさずペダルを放し、機体を自由落下させた。
 そして2体のかまきりをぺしゃんこしにした。にゅるんるんと隙間から這い出る巨大ハリガネムシをブースタの炎で焼き払いつつ、
 頭部センサーの機能を使って、残った敵をロック・オン。
 鋼鐵の右腕から真っ赤なプラズマが射出され、一匹を消し炭に、モウ一匹の半身を消し飛ばした。
 痛みを感じないのか、その生物兵器は半身を失いながらもハイパーチェストに飛び掛ってきた。
 だがMMMは予想済みである。鋼鐵のカニバサミが振り上げられる。突撃してきたかまきりは、それに押し潰され一刀両断され、
 ふき飛んでいったその先で、プラズマを受けて死んだ。

 《敵残存数ゼロ》
 《システム、オールグリーン》

 頭部COMがそう告げる、戦闘は終った、と。
 敵の残存数はゼロだ、と。
 「やったわね」
 「ああ、やってやった。さて、機体の強制冷却を開始する」
 ハイパーチェストには重大な欠点があった。冷却性能である。
 だから、戦闘を極めて迅速に終らせなくてはいけないし、終ったら終ったで、そこで何分か、休まなければならないのだ。
   
 「ねえ、MMM。さっきの敵はやっぱりキサラギの……」
 「ああ、多分な。ダニや蜘蛛のヤツなんかは見たことあるが、かまきりは初めてだ」
 「でもダニとか比べて、かまきりってかっこいいよね」
 「そうでもないぞ……ほれ、あそこ見てみ」
 「ん……ヒィイイイ!」
 変態かまきりのバラバラになった欠片から、何本もの鉄柱がうねうね這い出て来た。
 ハリガネムシである。キサラギはちゃんとかまきりにお決まりな寄生虫まで兵器に使うなんて最高いや、最低か、きもいし。
 
 「うわ、きもい」
 「そういうな、どこで聞かれているかワカラン。出るぞ」
 「そ……そうね、自重する。でも……くんくん、なにか、臭わない?」
 「う……そういえば先ほどより、なんだか鉄臭いなあ。ハッ!」
 二人同時に、「「ま、さ、か!!」」と言ったら出てきた。
 「よばれて飛び出てたぞ。ジャジャジャハアハア……ウッ、ドピュー」
 冷却が最終段階に入った頃、どこからか最低な声が聞こえてきた。
 なお、きもいや変態などは、キサラギにとってほめ言葉である!

 「だれ?」
 ヘルヴァがお決まりで声の主が誰かを問う。
 「いけけくけええええ。おれは切れ痔持ちのキサラギ技術者であるぞ!」
 「やっぱりかぁぁー!」MMMが絶叫する。
 マッド博士の安物のスピーカーを通した声は、ドコまでも純粋に紳士で変態で面妖だった。
 「お前も、そんなに、褒めるなよオ」
 うわー! 痔の文。いや、地の文まで聞こえるだなんて、なんてキサラギは変態なんだ!
 ああ、モウ言わないぞ! 
 お、さてさて、マッド博士は話題を変えたぞー!

 「やあ、ムキムキのMMMくん。ぼくはあなたがだいすきであす。
  でも、こんんかい、きみに来てもらったのは、ぼくがきみうがだいすきだからではなきゅて
  あたっしが、今回必要としているのが、貴様のオペレータのヘルヴァたんであるのであす!
  だから――ぽちっとな!」
 「きゃー」
 「ヘ、ヘルヴァーが、急に石畳に穴があいて落ちていった! ああ、そしてその穴がきゅっとちぢんでなくなった!」
 「はっはっはっはあああああああああああ、説明的口調ありがとう!
  莫迦メ、まんまとだめされてくれたな、依頼をしたんのはこのおれさ、そうともしらずにのこのこと、はめられたのは!」
 「五月蝿い! だまれ。変態め。ヘルヴァをドコへやった。今すぐ返せ! 吐き出せ莫迦者!」
 「きひいいいいいいいいいいいいいいいい。なんで莫迦って言うの。ぼくは莫迦じゃなくて変態なのに!」
 「ばーかーばーかーおまえのカーチャンー」
 「う、うわああん!」

 ……なんだこの空間は!
 ちょっと仕切り直しする。
 シリアヌスいや、……シリアスに行こうじゃないか……。はあ、登場人物全部キャラが濃くて、使い難いったらありゃしない……。
 仕切りなおしでテイク2↓

 MMMはセンサーを全部開放するが、声の出ているスピーカーさえ見つけることは叶わなかった。
 ETTINで穴のあいたはずの石畳を攻撃するが、現われるのは丁寧に積み上げられた石ばかり。
 「くっくっく。だめだよ、MMMくん。キミは、今、ナンセンスだ」
 「お前は……なぜ、ヘルヴァを!」
 「そうだな、死ぬ前に、貴様に教えておいた方が良さそうだ。相思相愛みたいだしな、はっはっは!」
 スピーカーの奥の挑発的な技術者の声にギリギリと歯軋りするMMM。
 「そうだ。彼女は選ばれたのだよ、神に……いや、ぼくたちには善良な神でも、キミたちには……邪神とでも言った方がいいかもしれないね。
  ああ、邪神だ。われらの永久の信仰をつかさどる、邪悪な神様。あは! 
  ああ、よこしまな神よ、われにその名を云う顕現を与えたまへー! いあ! いあ!
  うがぅうううううー! あがぁああああああああ! はあはあ……洗礼を受けたぞう。
  狂信者。よこしまな神を崇める、邪悪な人間、ドウとでも言え、わたしはそれを喜んで受け入れよう。
  わが神の名を『ズアウィア』と呼ぶ。――Ia! Zs-awia! Zs-awia! HAHAHAHAHAHAHAHHHAAAAAAAhhhhhhhhh!
  かつて熱帯雨林ジャングルの先住民によって信仰されていた、超古代の神だ。
  自分の形を持たず、ただ、タールのような液体で、この世に顕現される。
  しかし、ズアウィア様は容を持ちたいと願っている。
  そしてその一途な邪神の願いは、叶うのだ。彼女――ヘルヴァの肉体を寄り代にすればね!」
 
 なんということであろうか!
 太古の邪神が、ヘルヴァを寄り代に、この世に再び生まれ墜ちようとしているだなんて。
 そんなことが、もし、実現すれば、地球は愚か、この太陽系が邪悪に染まるだろう。
 だが、MMMはそんなこと、心配していなかった。
 何故なら、彼は、MMMは、ヘルヴァが居なくなってしまう悲しみの方が世界の破滅より、より絶望的だったのであるからして。 
   
 「……」
 「どうだ。なにかいってみろ、鋼の傭兵、レイヴンよ!」
 「……」
 「どうだ。なにかいってみろ、刃の尖兵、レイヴンよ!」
 「……」
 「どうだ。なにかいってみろ、荒らしまわる者、レイヴン!」
 「うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!
  ぐぅおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」

 MMMは熱く咆えた!
 そのダイナマイトな遠吠えは、拡大されて、世界を振動させた!
 びりびり揺れる大気に触れたスピーカーが破裂し、キサラギ技術者の声が聞こえなくなった。
 辺りは闇に包まれて、センサーがぽぅと弾ける様に珠に光る。
 なにかを訴えるように、光っては消える。
 そしてそれが目にも止まらぬ速さで繰り返されるようになり、ハイパーチェストは暗闇を打ち消し、全てを照らし出す。
 《この道を逝け!》
 《この道を進め!》
 《駆け抜けろ!》
 《飛び出せ!》
 《現実を、受け入れろ!》
 《そして、捕まえた現実を踏み躙り、へし折って、そして上書きするのだ!》
 その爆動へのMMMの返答は、勿論、
 「まかせてもらおう」
 その一言!

 MMMは自らの依頼を信念のメモリーカードに上書きした。
 照らされた道は、モウ真暗ではない、ただただ進むのみ。
 だが、道には壁がある。盲進してきて突き当たって首の骨を折っぽてやらんと待ち構えている。
 そうだが、だが、MMMはそれを受け入れ、首の骨を折ってやろうと思っていた。
 そのかわり、その壁を打ち破り、破片は音速を越え、光速をも超越し、過去へと戻り、その存在を否定するようにプログラムを書き換える。
 だから、首の折れたMMMは存在を否定され、肉達磨の超健康体の最強で鉄壁のMMMだけが、そこに存在するの繰返し!
 輪廻が廻る! ――ギリギリギリギリ!
 輪廻が廻る! ――ギチギチギチギチ!
 窮極の空。宇宙を越えて、銀河を書き換える、MMMの闘志は、邪神などに屈服しないのだ!  
 いざ、旧神――MMMは、神を打ち滅ぼす、世界の命運を分けた革命を、今起こしたり……。

 『―旧神の黙示録第十四章九段落より抜粋―』

 
 














































これで、終わりかな……ん?
キュワワーキシンキシンドミナントドミナントドミナントドミナント……
う、うわー

おわり





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