タイトル『崩壊へ……』

 広大にて深淵たる何たるモノにも冒せぬ暗黒領域、その名は宇宙。

                      トランスフォーマー
 その暗黒の片隅に、素晴らしいほど発達した機械生命体が暮らしている惑星『セイバートロン』があった。
 しかし、彼等もまた知性を宿しているものには逃れられぬ宿命を背負わされていた。
 己の理念信念確信私心愛誠虚言の渦巻きなる最大最強最悪の争い、戦争。
 知的生命たるものは己の存在理由を賭し、陣営に分かれて闘うが常だった。
 機械生命体陣ではサイバトロン、一方はデストロンと名乗る陣営が存在した。
 本来、善か悪を判断する基準など無いはずだが、これは我々人類にも多大な影響を及ぼす事となる争いだ。
 我々が考えるに正義はサイバトロン、悪はデストロンと言う感じだ。
 その戦争は人類の祖先が誕生する、否、地球が爆誕する以前から続けられていた。
 事の発端は独裁者メガトロンがセイバートロン星の唯一のエネルギー『エネルゴンキューブ』を独占しようとした事から始まった。
 しかしメガトロンに反発したコンボイたちとの最大の戦場、タイガーパックスにての大爆発により
 『エネルゴンキューブ』は機械生命体たちの手を離れてしまった。
 彼らはそれらの陣営に分かれ、捜索を開始、そしてたった今その場所が判明した。
 『エネルゴンキューブ』の墜落地点は、地球だったのだ。

 
 地球―青々と茂っていた森はほぼ消滅し、黄色い砂塵にて埋め尽くされようとしていた。
 人類は『レイヤード』というから地下世界から地上に這い出て久しく、
 進出前後の完全な一体感は消えうせて、各地で武力衝突が行われていた。
 人類は争い、資源を奪い、自然から孤立していった。
 そして彼らは『旧世代の遺産』を発掘し、史上最低最悪の、『赤い雨事件』を引き起こした。
 それにより世界は崩落の歩みをさらに速めたのだった。

 あれから半年余りたった。
 アレほど発達していた文明は殆ど滅びてしまい、ある十数ヶ所の地域を除いては知的文化レヴェルも格段に落ちていた。
 そして赤い雨事件が引き起こされた地域は、その除かれる地域の一つだった。
 そこでは事件以前まで三つ巴で潰しあった企業が結成した企業連合『アライアンス』と、
 旧レイヴンズ・アーク主催者のジャック・Oが率いる武装勢力『バーテックス』とがいがみ合い、
 どちらかの勢力に従属し守ってもらい、その代わりに戦場にに参加しようという武装勢力、
 彼らが利権を奪い合うそのおこぼれを生活の糧としている力のない弱小の民たちで成り立っていた。
 偶発的な戦闘は多数あった。しかし他の地域と比べれば“比較的”平和だったのだろう。
 だが平和と言うものはいつかは崩れ去る。そして、その速度はとても早い。
 それは絶対宇宙の法則である。覆せるものではない。全てのモノは壊れ逝く運命にある。
 人類の存亡か、滅亡かを賭した戦争が幕をあけるときが来たのだ。


 サークシティより幾許か離れた所で、ジャック・Oは『フォックス・アイ』に牽引された
 レ=ドーム式電子探知機をしきりに操作し何かを探していた。
 本来は拠点にてもっと大型の計器を使えばよいのだが生憎い、電波状況と視界が悪かったのだ。
 彼の隣にはG・ファウストが愛機『パンツァーメサイア』がたたずみ、護衛を務めていた。
 護衛といってもただ右腕のライフルを空に向けてリモートロックを作動させて置いただけだった。
 何故なら必要が無いからだ。彼もジャックの探している存在を知っているからだ。
 
 『ジャック……、せめて“彼ら”には、俺たちが往き着く先に何があるのかを、教えてくれてやったほうが良かったのではないか?
  といってももはや遅いか……俺が、話しておくべきだったな……云々……』

 “彼ら”というのはバーテックスの戦闘部隊のライウン、烏大老、ンジャムジ、そしてΩのことだ。 
 
 「すまない。私は事が起こるのはもっと後だと思っていた。
  人類がこのまま滅亡して久しくなる頃に、起こると思っていたのだ……」

 『その人類が滅亡してから起こるはずだった事が何故今起こるのだ』

 「あの赤い雨事件が原因だろう。我々が、起こしてしまったのだ。
  『エネルゴンキューブ』の暴走を……。そしてヤツラがやって来てしまうのだ」

 『ヤツラか……今頃になってもヤツラが本当に来るのかが……いや、存在するのかが甚だ疑問なんだよ、ジャック?
  俺は破壊した管理者に教えられたのだが………だが管理者は嘘は言わない……何時も正しかった……云々……』
        
 「事実、私も貴方が同じ事を知っているという事を知るまでずっと疑問に思っていたよ、G・ファウスト。
  だが実際の問題『キューブ』は存在してしまう。
  だからヤツラも……機械生命体たちも必ずやって来るに違いない。『キューブ』には電波発信機能が備わっているのだから。
  ……ち、畜生……もうやって来た!!」

 ジャックの額には青筋が浮び、両眼は真っ赤にぎらついていた。正直言うとジャックはムがつく状態だった。
 正直、決壊寸前だった。最近のΩの言動や、この宇宙人(機械なのだから宇宙機械か)事件のことで頭を悩ませっぱなしだった。
 震えるようにフォックス・アイはモードを移行させる。機体にもその主人の感情が表れているようだった。
 備わった探知機能を最高出力で発揮し、いまだ黒い空をめいっぱいスキャンした。
 黒く立ち込める雲の合い間を何かが落ちて来た。
 
 『アレは……まるで特攻兵器に見える……いや、特攻兵器は『キューブ』作りだしたが機械生命体の劣化コピーだったな
  ……コピーが本物に似ているのは当たり前か……
  ……機械生命体ご一行様ご苦労様だ。旅館はこちらでござい、長い旅疲れたでしょうがゆっくり休まず、我々と共に……云々……』
 
 ファウストの声音は底辺レヴェルで落ちついていた。
 レイヴンになったら最後、畳の上では死ねないのだ。
 戦いに身をささげたレイヴンに逃げる場所など何処にも無い事を知っている。
 そして彼もまたイラついていたのだ。なぜならΩの(ry……。

 「ああ、君の言うとおりだ。彼らは何千何億何兆年も宇宙を彷徨い、やっと此処に辿り着いたんだ』

 ジャックは一息置いて、機上無線をバーテックス全軍に繋がるチャンネルに回した。

 「全軍に次ぐ!!!総員、第一次戦闘態勢に移行せよ!!
  隕石よりの使者サイバトロンを援護し、続いて降下してくるであろうデストロンを撃滅する!!」
                         
 同時に二人の機体はOBでぶっ飛び、隕石の“落下地点”に赴いた。
 普通は“着陸地点”と言うはずだが、その着陸が普通ではなかったため“落下地点”なのだ。

 落下地点は資源不足のため放棄されたアライアンス集積場だった。
 人は居なかった“だろう”から、死亡者もいない“だろう”。
 なぜ“だろう”かというと、落下のエネルギーで集積場は跡形も無かった。
 ただ丸いクレーターがぽっかりと口を開けて彼らを待っていた。
 真ん中には発色の良い真っ黄色に塗られたカッコイイアメ車がクレイジーにフロントからズブリと突き刺さっていた。
 二人のレイヴンは夜空を仰ぐ。
 もう一つ、もう二つと、クレイジー隕石が増えていくのが見えた。
 ジャックの歯軋りが激しくなった。

 隕石は大気圏を突破し落ちてきた割りに低温だった。
 素晴らしい冷却機能だ。ジャックの目が幾許輝いた。
 二人の到着を確認するかのように隕石が自立稼動をはじめた。
 最初はガクガクと動いていたが地球の重力に慣れ、普通にクレーターから這い出てきた。
 ガラス質に変化した砂をバリバリ踏み砕きながら進んできた。
 隕石はサイバトロンと言う組織の一員らしい。我々に有益な正義の味方らしい。
 サイバトロンの一味は、辺りを見回し、こちらを見つけると通信によるコンタクトを申し出てきた。
 ジャックは待っていたと、冷静にサイバトロンの申し出を了承する。
 通信は文字によって行われた。ファウストはその様相を見守った。

 《おいらはサイバトロンの、ばんぶるっていうんだ。
  おいらの発声装置は故障中でね。文字だけなんだ。すまない。んで君たちは此処に済む勇気生物かい?》

 「そうだ。ただ文字が違っている。勇気ではなくて有機だ。
  そしてこの惑星では音が同じでも文字が違うと意味も違うから気をつけるんだぞ。
  そしてそして私の名前はジャック・O、緑の相方はG・ファウストだ」

 《うん、わかったよ。ジャック・OとG・ファウストだね?
  でも不思議だ。君たちはおいらをみて驚かないのかい?》

 「いや、酷く驚いている。ただ、表に出さないだけだ……ビクゥッ……ビクビクッ」

 《すごいなぁ。おいらの直線的な意思統御システムじゃ、感情のきふくはおさえられないなぁ》
            
 ジャックはたった今地球に落ちてきたバンブルに自分達が君たち機械生命体同士の争いについてどのくらい知っているかを話した。 

 《すごいなぁ。そこまで知っているんだ。まあ、どうでもいいやそんなこと。
  んでは、『キューブ』は何処にあるんだい?
  おいらたちサイバトロンはそれを見つけ次第とりもどさなくちゃいけないんだ》

 「承知している。ああ、なかまのサイバトロンたちにも連絡をお願いするよ。
  私達としてはさっさとお持ち帰りして貰いたい、大歓迎で尻を貸そうじゃないか、とな? 
  君たちが探している『キューブ』は我がバーテックス本拠地サークシティの地下にある。
  いまだに前人未踏の区域がはびこる大迷宮の奥底だ。もちろん門番も居るぞ?それも中々手ごわいぞーー!!」

 『!! ジャック、落ち着け!!!ジャックーーーー!』
 
 もはや決壊寸前のところでファウストに宥めだれた。彼がいなければバンブルを破壊していただろう。
 ジャックはその目に浮かべた怨み辛みの1000%涙をちり紙で拭き、鼻水をかんだ。
 そんなことも露ほども知らないバンブルは地べたを指した。
 
 《門番ってアレかい?》

 それはペッチャンコのパルヴァライザーだった。
 この破損率では再生はほぼ不可能だろう。

 「おおお、こんな所にも出たか。時刻を急がないとならないな。しかし可哀想だな。ペッチャンコだ。
  おおかた衝撃波でペッチャンコだろうな。もはやペッチャンコだもの!」 

 《そうだね。デストロンたちが来る前にかたをつけないとね》

 「いや、来る前ではない。どうせ闘わねばならないのだからかたがつくのは決戦後だろう?
  というか“かた”つけてもらわんと私達が困るんだけどな!?分かる!!?解る?!!!!ドゥーユーアンダスタン!!!!!!!!!!

 『落ちつけ、ジャック。このままではサイバトロンとも戦うことになってしまうぞ!!』

 「す、すまん!……ハアハァ…ァァーー…さて君たちはこれから何に変身するのがお望みかい。本拠地にはいろいろそろっていてね?」
 
 《うんうん、要らないよ。おいらはこの姿でいいよ。カマロGTOっていうんだ。すごく気に入っているんだ》

 「ッキキキ!!…うはぁぁあああ……まことにざんねんだぁ……このときのために用意したになぁ……まあ、デストロンが来るの時間までまだあるだろう。   
  兵器は逃げないからからじっくり考えてくれ」
 
 ジャックは自らの首を掻き毟った。以前からの古傷が破れ、血が滲み出る。 

 「君の命がかかっている選択だからねぇーーけけけけけけけ」

 《ねえ、大丈夫?感情は素直に吐き出した方がいいよ?
  ぼくに言ってご覧よ。聞いてあげるよー》

 にぶいバンブルはジャックが貴様を殺してやると思っていることに露ほども知らない。
 ジャックは切れた。ジャック・Oの脳の血管は比喩では無く音を立ててぶち切れた。裂けた首からは血が噴出した。
 両眼は半ば眼科からはみ出ていた。野太い舌からは熱い粘つくよだれがだらりと垂れ下がってた。
 折角のファウストの忠告も無視した。そして彼を蹴り倒した。

 バンブルは蹴り倒されたパンツァーメサイアを見て唖然とした。気が変になったジャックを感じてもっと唖然とした。

 「もっと素直に、もっと美しく、もっと最強に。それが私の夢であり理想であり、目指す所だった。
  君に会えてよかったそれを思い出せたありがとう。うんじゃぁそろそろ世代交代の頃だろう。低燃費はおとなしく、死ね」

 ジャックは思い出した。これからは素直になろう。かごの中の鳥ではない。
 荒ぶる戦場にていけるものの全てを略奪する神の憲兵なのだ。
 彼は戦闘モードを起動する。二次ロックオンを知らせるサインが光ったその瞬間、
 ジャックはトリガーを引いた。何本も何本もフォックス・アイから標的へ蒼い線が引かれる。標的はどろどろに溶けた。

 今出来ることの仕上げを行うためにレイヴンは無線を再び全軍へ繋いだ。

 「破壊せよ、ナニモカモを!!己の障害と思うものスベテを!!
  これよりわれ等はレイヴンだ。バーテックスもアライアンスも関係ない!!
  思い揺るがすスベテを全てを総てを凡てを・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
                  パルヴァライズ
                   粉 砕 セヨ          」


 通信を切ったジャックは、スラスターを起動し、どこかへと走り去った。
 もはやその後ろ姿にかつての影は無い。
 彼はレイヴンであり、レイヴンを超越したものへと変貌しようとしていた。

 世界の鼓動は止まり、崩壊へのレクイエムが聴こえた。



 続く・・・・・・





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