男はリボルバー銃を弄んでいた。
両手のそれをくるくると風車のように回し、革のホルスターに仕舞う。
長い純白の髪をなびかせ、漆黒のジャケットを身に纏う。
ふだんとまるで変わらない表情。その能面にバイザーゴーグルをかけて。
彼――レイヴン:ピース・メイカーは格納庫へ向かう。
今こそ、出撃の時である。
-----〈シティガード援護〉----
緊急の依頼だ
シティがレイヴンの襲撃を受けた。それも二人組みだ
ガードたちが、必死の抵抗をこころみるが、結果は見えている
こちらは君のほかにも、レイヴンを雇った
報酬は低いが、我々の出せる最大の額だ
頼む、我々を、いや、善良な市民だけでも、助けてくれ
しかし気に掛かる事がある
僚機として同行するロスヴァイゼのことだ
彼女は、腕利きだ 何故報酬が低いこのミッションを選んだのか・・・
いや・・・ こちらの考えすぎだ 気にしないでくれ
それでは、宜しく頼む
-----------------------------
トンネルから射出されるように飛び出した彼の機体――ブルースチールは幻想の闇夜に映し出される月光を背に受け、ビルの屋上に着地する。
後ろには、僚機のヴァルキュリアCが、ブースタで滞空していた。
光学・アイは、破壊されたシティの景観を戦慄と捉え、
集音・イヤーには、鳴り響く爆発音と、カードたちの悲痛な叫び、そして……殺戮を愉しむやからの下卑た声。
ピース・メイカーは、ACと一体となり、右手の銃――WG-HG235を構え、力強いブーストジャンプ。
ビルの屋上より、戦場へ舞い降りる。
《ミッション目的-エネミーの排除》
《マップデータ取得終了-レーダー波照射-スクリーンに投影します》
《FCSを起動-銃弾の補給開始-安全システム完全解除》
《 メインシステム 戦闘モード起動します 》
赤と紫、そして白のトリコロールが、装甲が吹き飛び、今にも崩れそうなガードMTの前へ飛び込み、銃撃。
必滅の威力を持った銃弾が、破壊を愉しみすぎて油断した敵の頭部に食い込む。
瞬間、敵は電気系統をやられ停止したが、すぐさま復旧し、スラスターブーストでビルの合間に退避する。
『うう……、君は、わたしたちを、助けてくれるのか?』
「そうだ、僕はレイヴンだ。依頼を受けおい成功させる。必ずな」
ガードに後は任せろと伝えるが、彼らは一向に動かなかった。
だから言った、「何故行かないんだ!」と。そして彼らは皆、同じことを言うのだった。
『これは意地だよ。わたしたちガードの、使命だ。それは市民を守る事だ。
逃げ送れた者たちの退避が済んでいない今、わたしたちが下がったら、
とてもじゃあないが、君たちだけでは防ぎきれない。
だから今……今だからこそ!! わたしたちは、立ち上がるんだ!!!』
MTたちがACに、挑みかかっていく。
彼らは敵の逃げ場をひとつ、またひとつと潰していく。
そしてACを一機、追い詰めることに成功した。
嵐のような砲撃が、お見舞いされる。
跡に残っていたのは、最早判別不能の、燃え尽きた鉄屑だけだった
ブルースチールは疾駆する。
僚機のヴァルキュリアCが大変だ。すでにAPが10%を下回っている。
照準をズームアップ。ハンド・ガンを彼女を襲う敵機に向け、ロックオン。トリガーが幾度と無く引かれる。
それは狙い通りの所にヒットする。腰部に重大な損傷を与え、滞空していた敵ACは地に落ちた。
一足遅れて、頭部COMがエネミーの情報を掲示、暗唱する。
《敵ACを確認。バウンティです。敵は強力なプラズマライフルを装備。
接近は危険・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・》
しかし、ピース・メイカーの耳にはそれは届かなかった。
何故ならブルースチールのコアには大穴が空いていからだ。
その光学・アイに最後に映ったものは――、
僚機であるヴァルキュリアCがこちらにライフル砲を向けてた姿だった。
そして、砲口に灰色の硝煙が立ち上っていた……。
------
『レイヴンズ・ネスト:レイヴン名簿更新
場所:破棄済みシティにて
ピースメイカー:死亡確認
トラスター:死亡確認
インヴィジブル・Q:行方不明―発見次第、名簿復帰
・・・
以上更新、終了』
-----
私は視神経に直接投射されるまっかな光景に恐怖を覚えた。
私に課せられたミッション。
それはシティガード側が雇ってくるだろうレイヴンに追随し、監視し、
万が一、彼が予定外の行動を取るイレギュラーだとしたら、即刻抹殺せよ、という内容。
依頼主は、『ネスト』。
ネストとの契約。私がレイヴンとして、活動できるのは、全てネストがバックアップしてくれるからだ。
だから、今回のネストの、最早ハイブに不要なセクションを破壊し破棄する計画に参加した。
イレギュラーを排除し、この地下世界に恒久なる平和をもたらすため……。
そうネストに私は子供のときから、言い聞かされて、今まで育ってきた。
だが私のやりたかったことは、こんな事じゃない。
騙されるのは傭兵の常だ。そんなことは、分かっているんだ。
だけど騙す側には、なりたくは無いのだ。
騙して何になるのか。人が、幸せになれるというのか。人を守るため、人のために戦う人を殺してもいいのか!
私は、分からない。いつも、こう言う任務に参加して、成功させて、たくさん殺して、私だけ生き残る。
……もう、絶対やりたくないよ……本当に……こんな事……。
私は、
私は……、
---------
『レイヴンズ・ネスト:レイヴン名簿更新
場所:ガルシティ オフィス地区にて
ロスヴァイゼ:死亡確認
・・・
以上更新、終了』
両手のそれをくるくると風車のように回し、革のホルスターに仕舞う。
長い純白の髪をなびかせ、漆黒のジャケットを身に纏う。
ふだんとまるで変わらない表情。その能面にバイザーゴーグルをかけて。
彼――レイヴン:ピース・メイカーは格納庫へ向かう。
今こそ、出撃の時である。
-----〈シティガード援護〉----
緊急の依頼だ
シティがレイヴンの襲撃を受けた。それも二人組みだ
ガードたちが、必死の抵抗をこころみるが、結果は見えている
こちらは君のほかにも、レイヴンを雇った
報酬は低いが、我々の出せる最大の額だ
頼む、我々を、いや、善良な市民だけでも、助けてくれ
しかし気に掛かる事がある
僚機として同行するロスヴァイゼのことだ
彼女は、腕利きだ 何故報酬が低いこのミッションを選んだのか・・・
いや・・・ こちらの考えすぎだ 気にしないでくれ
それでは、宜しく頼む
-----------------------------
トンネルから射出されるように飛び出した彼の機体――ブルースチールは幻想の闇夜に映し出される月光を背に受け、ビルの屋上に着地する。
後ろには、僚機のヴァルキュリアCが、ブースタで滞空していた。
光学・アイは、破壊されたシティの景観を戦慄と捉え、
集音・イヤーには、鳴り響く爆発音と、カードたちの悲痛な叫び、そして……殺戮を愉しむやからの下卑た声。
ピース・メイカーは、ACと一体となり、右手の銃――WG-HG235を構え、力強いブーストジャンプ。
ビルの屋上より、戦場へ舞い降りる。
《ミッション目的-エネミーの排除》
《マップデータ取得終了-レーダー波照射-スクリーンに投影します》
《FCSを起動-銃弾の補給開始-安全システム完全解除》
《 メインシステム 戦闘モード起動します 》
赤と紫、そして白のトリコロールが、装甲が吹き飛び、今にも崩れそうなガードMTの前へ飛び込み、銃撃。
必滅の威力を持った銃弾が、破壊を愉しみすぎて油断した敵の頭部に食い込む。
瞬間、敵は電気系統をやられ停止したが、すぐさま復旧し、スラスターブーストでビルの合間に退避する。
『うう……、君は、わたしたちを、助けてくれるのか?』
「そうだ、僕はレイヴンだ。依頼を受けおい成功させる。必ずな」
ガードに後は任せろと伝えるが、彼らは一向に動かなかった。
だから言った、「何故行かないんだ!」と。そして彼らは皆、同じことを言うのだった。
『これは意地だよ。わたしたちガードの、使命だ。それは市民を守る事だ。
逃げ送れた者たちの退避が済んでいない今、わたしたちが下がったら、
とてもじゃあないが、君たちだけでは防ぎきれない。
だから今……今だからこそ!! わたしたちは、立ち上がるんだ!!!』
MTたちがACに、挑みかかっていく。
彼らは敵の逃げ場をひとつ、またひとつと潰していく。
そしてACを一機、追い詰めることに成功した。
嵐のような砲撃が、お見舞いされる。
跡に残っていたのは、最早判別不能の、燃え尽きた鉄屑だけだった
ブルースチールは疾駆する。
僚機のヴァルキュリアCが大変だ。すでにAPが10%を下回っている。
照準をズームアップ。ハンド・ガンを彼女を襲う敵機に向け、ロックオン。トリガーが幾度と無く引かれる。
それは狙い通りの所にヒットする。腰部に重大な損傷を与え、滞空していた敵ACは地に落ちた。
一足遅れて、頭部COMがエネミーの情報を掲示、暗唱する。
《敵ACを確認。バウンティです。敵は強力なプラズマライフルを装備。
接近は危険・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・》
しかし、ピース・メイカーの耳にはそれは届かなかった。
何故ならブルースチールのコアには大穴が空いていからだ。
その光学・アイに最後に映ったものは――、
僚機であるヴァルキュリアCがこちらにライフル砲を向けてた姿だった。
そして、砲口に灰色の硝煙が立ち上っていた……。
------
『レイヴンズ・ネスト:レイヴン名簿更新
場所:破棄済みシティにて
ピースメイカー:死亡確認
トラスター:死亡確認
インヴィジブル・Q:行方不明―発見次第、名簿復帰
・・・
以上更新、終了』
-----
私は視神経に直接投射されるまっかな光景に恐怖を覚えた。
私に課せられたミッション。
それはシティガード側が雇ってくるだろうレイヴンに追随し、監視し、
万が一、彼が予定外の行動を取るイレギュラーだとしたら、即刻抹殺せよ、という内容。
依頼主は、『ネスト』。
ネストとの契約。私がレイヴンとして、活動できるのは、全てネストがバックアップしてくれるからだ。
だから、今回のネストの、最早ハイブに不要なセクションを破壊し破棄する計画に参加した。
イレギュラーを排除し、この地下世界に恒久なる平和をもたらすため……。
そうネストに私は子供のときから、言い聞かされて、今まで育ってきた。
だが私のやりたかったことは、こんな事じゃない。
騙されるのは傭兵の常だ。そんなことは、分かっているんだ。
だけど騙す側には、なりたくは無いのだ。
騙して何になるのか。人が、幸せになれるというのか。人を守るため、人のために戦う人を殺してもいいのか!
私は、分からない。いつも、こう言う任務に参加して、成功させて、たくさん殺して、私だけ生き残る。
……もう、絶対やりたくないよ……本当に……こんな事……。
私は、
私は……、
---------
『レイヴンズ・ネスト:レイヴン名簿更新
場所:ガルシティ オフィス地区にて
ロスヴァイゼ:死亡確認
・・・
以上更新、終了』