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エネがアリーナ参加当初、戦績が低迷していたことは周知の事実であるが、ある時期を境に彼女は急激に戦績を伸ばし始める。
一部では借金がかさんで強化人間にされたのでは、という噂も本気で流れたが、いたって彼女は健康だった。
現在では他のレイヴンに戦闘の手ほどきを受けたのではないかという説が有力だが、定かではない。
エネは家族の手術費用を稼ぎ終わった後もアリーナに残った。
当初今度は自分の為に金を稼ぐのかと思われたが、なんと彼女はアリーナで獲得した賞金の八割以上を火星中の慈善団体に寄付し始めたのである。
この行為には火星中が衝撃を受けた。
人気取りのためでは?とも言われたが当の本人は周りに媚びるどころかろくに取り合うこともなく、着実に自身のランクを上げつつ多額の寄付を行っていた。
寄付の理由についてはメディアが熱心に聞き出そうとしたが、彼女がその理由について述べたのは一度だけだ。
その時彼女は静かにこう語っている。
「私は運が良かったからこうして家族を助けることができましたが、火星には愛する人を助けたくても助けられない人、誰にも助けを求めることができない人が数多くいます。
私はそういう人たちに一人でも多く、幸せになって欲しいんです。私の得た賞金で誰かが幸せになるのなら、この体が動かなくなるまで、私はACに乗り続けます」

ある日の夜。自室で本を読んでいたエネのもとに、専属のオペレーターから通信が入る。
「エネ、大変です」
「どうしました?」
読んでいた本を閉じて傍に置いてあったPDAに耳を傾ける。
「P財団の輸送車両が襲撃を受けました」
「なんですって!?」
P財団とはエネが寄付を行っている慈善団体の一つだ。
その規模は大きく、孤児院などの福祉施設を数多く所有している。
「襲撃の目的は不明ですが、襲撃を受けた輸送車は大破、積み荷の現金は奪取され、犯人は現在も逃走しています」
「すぐ出撃します!」
「わかりました」
通信を切ると、急いでパイロットスーツに着替えるエネ。
着替え終わるとPDAだけを引っ掴んで自宅を出る。自宅からACのガレージまではすぐだ。
「誰がテロリストなんかに渡すものですか……!」
奥歯を噛みしめながら、エネはガレージまでの道を急いだ。

「現金輸送車に護衛も付けんとは……全く楽な仕事だった」
「この金もあのエネとかいう女が稼いだ金か?」
「おそらくな。まったく、せっかくの賞金をあんな下らねえとこに寄付するなんて、いかれてるぜ」
荒野を三機のMTが土埃を上げながら疾駆していた。
会話からもわかるように彼らはP財団の輸送車を襲撃した犯人グループで、大金を入手した彼らは現在悠々とアジトに向かうところだった。
「しっかしあの財団――」
「待て、何か来る!」
一人がレーダーに映る機影に気付き立ち止まる。それに続いて他の二機も移動を停止した。
三機が今来た道を振り返る。
「上空だ。……あれは――」
甲高いエンジン音を響かせながら接近してくる一機の飛行機。
巨大なカーゴを持つその形は、AC用輸送機独特のものだった。
「ACか!?」
「AC!?追手か!」
「馬鹿な、たかが三機だぞ!?ACを投入するほどのことでも――」
三人がうろたえている間に、輸送機のハッチが開き、ACが投下される。
「あれは……」
静かに自由落下するAC。エメラルドグリーンを基調としたカラーリングを施した、軽量型のAC。
宝石のごとき美しさを秘めたそのACは、ピースフルウィッシュに間違いなかった。
「ピースフルウィッシュ!エネの機体だ!」
「何?……自ら取り返しにきたのか」
地上に降り立ったピースフルウィッシュは、自分に視線を向ける三機のMTにハンドガンを向ける。
「奪取した積み荷を返しなさい。素直に返せば、命だけは助けましょう」
「命だけは、だと?何様のつもりだてめえ……」
「あなたたちこそ何様のつもりですか。あのお金は、あなた達のような暴漢が易々と手をつけていいものではありません。返しなさい」
「断る、と言ったら?」
「……残念ですが」
乾いた一発の銃声。
ピースフルウィッシュの持つハンドガンから放たれた一発の弾丸は、MTの持つマシンガンを正確に吹き飛ばした。
「ここに、骨を埋めることになるかと」
「てっ、てめえ!」
あまりにも過激な挑発に、とうとう三人がキレる。
マシンガンを向ける二機と、マシンガンを吹っ飛ばされたため肩のロケットを向ける一機。
三機は各個散開しながらそれぞれの武装でピースフルウィッシュを狙う。
「……残念です」
放たれるマシンガンのクロスファイアをジャンプで避け、ロケットも空中で難なく回避する。
「どなたが積み荷を持っているのかは存じませんが、できれば名乗り出ていただけませんか。手間が省けます」
軽快な身のこなしで易々と攻撃を避けながら挑発ともとれる言葉を投げかけるエネ。
「誰が言うかよっ!」
怒りに身を任せてマシンガンを乱射するが、ろくに狙いもせず放たれた弾丸がピースフルウィッシュにあたるはずもない。
「そうですか……」
一旦三機から大きく距離を放し、オペレーターに通信をつなぐ。
「こちらエネです。奪取された積み荷の金額、わかりますか?」
「待ってください。……ええと、五万コーム、ですね」
「……わかりました」
オペレーターとの通信を切ると、再び三人に向かってエネが言う。
「面倒ですから、奪取したお金は差し上げましょう。地獄での免罪符にでもお使いください」
「ああ!?」
「五万コームならばすぐに取り返せる額です。これを諦めれば、私のあなたたちに対する怒りも抑えなくて済む」
「てめえ何言って――」
バガァッ!
MTのロケットが突如爆発する。爆風をもろに浴びたMTは半身を吹き飛ばしながら、その場に倒れこむ。
ピースフルウィッシュのハンドガンからは硝煙が立ち昇っていた。
「な――」
「私利私欲のために弱者の糧を奪ったあなた達を、遠慮なく粛清できるということです。
全力で殺します、愛した金に抱かれて死になさい」
言い終わると同時に、ピースフルウィッシュが急激に加速、突進する。
OBによる爆発的加速で一瞬にしてMTとの距離を詰め、ブレードで斬りつける。
装甲を大きく引き裂かれ、怯むMT。ピースフルウィッシュはそこにすかさず、ハンドガンを何発も撃ちこむ。
銃声が鳴る度にMTの装甲が爆ぜ、のけぞる。五発撃ちこんだところで、MTは爆散した。
残る一機にピースフルウィッシュが向き直る。
「くっ……!」
攻撃してくる気配はない。戦意喪失だろうか。
「な、何が弱者のためだ、偽善者め!そうやって善人ぶっておきながら、どうせ心の底で俺達を見下してるんだろうが!」
「…………」
「お前らがやってるのは人助けなんかじゃねえ、自己満足だ!寄付も何もかも、てめえらが優越感に浸りたいがためだけにやってるに過ぎねえ!」
ピースフルウィッシュは静かに銃口を向ける。
「……可哀想という言葉は、あなたのような人の為にあるのです。さようなら」


RAVEN NAME:エネ
AC NAME:ピースフルウィッシュ

アリーナの女神と呼ばれる女性レイヴン。
家族の手術費用を稼ぐため、まだ少女と呼べる年齢でありながらアリーナへと身を投じた。
参戦当初は機体性能、操縦技術ともに半人前で下位に低迷するが、ある時期を境に戦績を伸ばし始め、見事手術費用を稼ぐことに成功する。
急に戦績を伸ばし始めたことに関して、他のレイヴンから戦闘の手ほどきを受けたとも言われているが、真相は定かではない。
その後もアリーナにとどまり、着々と順位を上げつつも獲得した賞金のほとんどを慈善団体に寄付し始め、女神と賞されるようになる。
高齢を理由に引退後、財産をほとんどを使い自ら孤児院を設立、孤児達に囲まれて余生を送る。
生涯家庭を持つことはなかったが、彼女を母と呼び慕う者は数多い。
92歳の春、多くの子供たちに見守られながら天寿を全うする。
葬儀には多数の彼女の子供たちが参列し、孤児院の中庭には立派な墓が建てられた。
彼女の墓には一年中、参拝者と花束が絶えることはない。
彼女の設立した孤児院、ピースフルウィッシュは、ジオシティ郊外の緑に囲まれた場所に今も存在する。
多くの子供たちの笑い声とともに、彼女の墓に見守られながら。




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