こんにちは、エネです。
今日はお天気が良いので買い物にやってきたのですが……駅前で変な人を見ました。
いえ、正確には“今日も見た”なのですが……

「地球は我々人類の故郷である!しかし母なる地球は荒廃し、環境が――」
“美しい地球を再び!”などと書かれたタスキをかけ、募金箱を持って大声で叫んでいるあの人。
なんでも地球の環境を再生するために活動していて、寄付金も多く集まっているとか。
この辺に遊びに来た時はいつもあの人を見るんですが……もしかして毎日いるんでしょうか?
あれでもあの人、同業者なのに……お仕事どうしてるんでしょう……
あの人――アースセイバーさん――はアリーナに登録されているレイヴンで、ランクは私の少し上、といったところです。
機体には高価なパーツを数多く使っていて、少し分けてほしいぐらいです。もちろん現金に換えて。
……そういえば、以前知り合いに「あんなにパーツ買うお金があるなら寄付金に回せばいいのに」といったことがあるのですが、
その知り合いは「……普通逆に考えないか?」と私のことを奇異の目で見てきました。
つまり、寄付金でパーツを買っている、とその知り合いは言いたかったんでしょうけど……
そんなことする暇があるなら、ミッションに出るなりアリーナに出るなりしたほうが早いと思うんです……
まぁもし本当に寄付金だけでパーツを買ったのだとすれば……それはなんというかその、すごいですよね、いろいろと……
言葉は悪いですが、変態の域だと思います……

ある日、アリーナのロビーでアースセイバーさんに話しかけられました。
この人、アリーナでもあのタスキ掛けてるんですね……しかも募金箱まで持ち歩いてて……
「あーミス・エネ。ちょっといいかね?」
「は、はぁ……」
特に急いでもなかったので応じてしまったんですが、これがいけなかったんです。
周りにいた人も憐れむような眼で私を見てますし。
「君は、今の地球についてどう思う?」
「ち、地球ですか?えっと、なんだか色々と大変らしいですね……」
「うむ、そうなのだ。今の地球では環境汚染がひどく、このままでは地球に暮らす人々は――」
なんだか長くなりそうだったので私はこの辺で集中を切って今夜の晩御飯は何にしようかとか色々考えていたのですが、
急にアースセイバーさんが私の肩を掴んできたので現実に引き戻されました。
「ミス・エネ!」
「は、はいっ!?」
「そこで君に、少しでいいから寄付をお願いしたいのだ!母なる地球の為に、君が今日アリーナで得た賞金の、ほんの数パーセント、いや0.1パーセントでもいいから、寄付してくれないだろうか!?」
ああそういうことだったんですか……
きっとアースセイバーさんはロビーで誰が勝ったかメモしていたんでしょうね。
それで試合が終わった後勝った人全員に声をかけて行ったんでしょうね。
そして今日珍しく勝った私にも白羽の矢が……せっかく勝ったのに……ひさしぶりに勝ったのに……
悲しみに暮れ返事をしない私に再びアースセイバーさんが訊いてくる。
「どうだろうか!?我々の故郷たる地球を救うために、ほんの数コーム、寄付してくれないだろうか!?」
私火星生まれの火星育ちなんですけど。
「え、えっと……このお金はその……家族の手術のためのお金ですから……」
私が手術費用をためるためにアリーナに出場していることは有名な話だ。これならこの人も引き下がるだろう。

案の定アースセイバーさんははっとした顔をして私の肩から手を離す。
「……そうか、すまなかった、ミス・エネ。しかし私が集めているお金もいわば地球の手術費用なのだ」
あれ?
「君にもわかるはずだ、手術費用をためることがどれだけ大変か。もし少しでも地球を救いたいと思う気持ちがあれば、ほんの数コーム、寄付してくれないだろうか」
……駄目だ、この人には何を言っても通じない……っていうか言ってることがめちゃくちゃな気がします……
仕方がないので私はずっと気になっている事の真相を確かめることも兼ねて、こう提案してみた。
「あ、あの、でしたら……ACのパーツを買うお金を、寄付金に回してはどうですか?結構高価なパーツを買えるぐらいのお金はもっているようですし……」
周りにいた人たちの顔が、一気に引きつるのが見えました。アースセイバーさんの顔も引きつりました。
もしかしたら私は、とんでもないことを言ってしまったのかもしれません。
「い、いやそれはだね、ミス・エネ!そのお金はACの修理費兼強化費用というか、私がアリーナで稼いだお金はやはりアリーナの為につかうというか、その……」
うわあ……
ここまで取り乱すとは……やっぱり知り合いが言ってたことが正しかったんでしょうね、きっと……
「あ、あの……」
「な、なんだ!?」
目が泳ぎまくってて正直怖いです、アースセイバーさん。
「こんなことを言うのは失礼かもしれませんが……あなたを信じて寄付した人たちのこと、裏切らないで上げてくださいね?」きゅるん☆←アースセイバーにはこの効果音が聞こえた
「っ……!?」
ばたーんっ!
「ひっ!?」
いきなり白目を剥いて倒れるアースセイバーさん。こっちに倒れてこなくて本当によかった。
「あ、あれ……?」
ざわつく周囲。誰もかれもが私とアースセイバーさんを交互に見やります。皆さん、私は何もしてません、本当です。
「え、えっと……あ、後はよろしくおねがいしますぅっ!」
いたたまれなくなり、その場からものすごい勢いで逃げ出す。きっと今の私はリミカOB状態。
久々にアリーナで勝てて今日はなんてすばらしい日なんだろうと思ってたのに、こんなことになるなんて、私はもしかしたら運を使い果たしてしまったのでしょうか?

あの厄日から数日、少し変わったことがあります。
アースセイバーさんの機体構成が、前よりも随分と安価なパーツで構成されるようになったのです。
それからニュースで、匿名の人物から地球政府に環境再生のための多額の寄付金が送られてきたという事件をやっていました。
やっぱり寄付してなかったんですね、アースセイバーさん……
それにしても、どうして急に真面目に寄付をするようになったのでしょうか?
訊いた噂では本人いわく、女神のおかげで目がさめた、そうですが……
「アースセイバーさん」
「ん?おお、ミス・エネ。どうしたんだい?」
「これ、少ないですけど募金です」
「!!?あ、ありがとうミス・エネ!やはり君は素晴らしい人だ!」
「早く地球が、よくなるといいですね」
「ああ、きっとすぐに良くなる!すぐに地球は、以前の美しさを取り戻すさ!」
少し暑苦しいのが苦手ですが、アースセイバーさんは、今日も地球のために頑張っています。





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