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報酬のみで依頼を判断するレイヴン。
巷じゃそういわれているらしい。まあその通りなのだから仕方ない。
それにそう呼ばれてるってことはある程度は名が知られてきたってことだ。
おかげで最近は羽振りのいい仕事もよく回ってくるようになった。いいことだ。
傭兵稼業は楽しい。街でおもちゃのような機械を破壊するだけでいくらでも金が転がりこんでくる。
簡単に殺すだけで簡単に金を手にし、なり上がることができる。まさに俺が望んでいた世界だ。
――だが。だが俺は、全く満たされてはいなかった。

俺は今、クレストからの依頼でAC“スタティック・マン”を駆り僚機のACとともにグラン採掘場に赴いていた。
キサラギ掃討。クレストから請け負った仕事の内容は、僚機とともに採掘場内部のキサラギの残党を殲滅するというものだった。
キサラギの残党部隊なんかに、ACを二機も向かわせる必要なんざないと思うが。
僚機のレイヴンは、どこのどいつかは知らないが、クレストによるとそれなりの腕はあるらしい。
「俺は中の敵を掃討する。お前はここを抑えてくれ。」
そう僚機に言い残すと俺はさっさとゲートを開け採掘場の奥へと進む。
別に外にいてもいいが多く稼ぐなら多く倒した方がいい。弾薬費はかかるが破壊報酬ぐらい出るかもしれない。
ゲートをくぐり内部にいたMT部隊を右腕のライフルで一掃していく。
どいつもこいつも数発で沈黙しやがる。手ごたえのない玩具ばかりだ。
部屋の中のMTを掃討するが、レーダーにはまだ反応がある。隣の部屋だ。
「やれやれ、さっさと終わってほしいもんだ」
部屋のゲートを開け隣の部屋へ進むと、さっきと同じ型のMTがたむろしていた。
「ふん、面白くないな」
連中を見下しながら引き金を引く。
一発。二発。銃弾がMTの紫の装甲にめり込む度にのけ反り、そして三発目で黒煙を上げて動かなくなる。
こんなものが、企業の主力か。他愛ないな。
分離してこちらへ特攻してくるミサイルタイプのMTを迎撃しつつ、分離した片割れの飛行MTを順調に撃破していく。
「なんだ、もう終わりか?」
気づけば部屋の中に動くものは無くなっていた。残骸から黒煙だけが揺らめくがそれもすぐになくなる。
「いえ、待ってください……まだ奥に反応が……?」
オペレーターから通信。疑問形であるところからどうやら彼女もこれで終わりと思っていたのだろう。
「奥だと?」
自分が入ってきたゲートとは別のゲートを見る。その先にはエレベーターしかなかったはずだ。
「地下、ということか……」
スタティック・マンの躯体を旋回させ、エレベーターのゲートへと向かう。
「あっちは、まだ終わらないのか?」
僚機のレイヴンのことが気になりオペレーターに訊いてみる。
「そのようです。」
「仕方ない……一人でやるか……」
ゲートを開け、エレベーターを起動する。軽い衝撃とともに床が下降を始めると、途端にノイズが入った。
「レ…ヴン、通…が……!」
オペレーターとの通信が切れる。呼びかけてみても反応はない。
「ジャミング……ちっ、厄介だな……」
レーダーを含めた通信機器の障害にいらだちを覚えつつ、エレベーターが降り切るのを待つ。
エレベーターが止まると同時に、目の前のゲートを開き、その先に広がる空間に飛び出た。
左右の幅は狭いが、奥行きのある部屋。
その部屋の奥に、一機のACがいた。
全身を緑に染め上げた、逆関節のAC。見たことのない機体だった。
「お前がリーダーか」
ライフルをACに向けつつ、半分威嚇の意味合いで言葉を投げかける。
帰ってきた言葉は、どんな返答よりも意外なものだった。
「……お前か。会いたかったぞ」
「!?」
最初はその返答内容に。そして次に、その声に驚愕した。
少し声色が低くなってはいるが、その声は間違えようもない、唯一友と呼べた男のものだった。
「クライゼンか……!?」
「久しぶりだな。なかなか上手くやってるようじゃないか。聞こえてくるお前の噂、まさに悪党のそれだぜ」
「生きてたんだな……よかった……本当によかった……」
クライゼンが生きていたことに安堵し、構えたライフルの銃口を下げかけたとき、クライゼンの機体がスタティック・マンに向かってマシンガンの銃口を向けた。
「な……!?」
「確かに、よかった。だが、今は手を取り合って喜ぶような状況じゃない。そうだな?」
彼が何を言わんとしているかは、すぐに察しがついた。
「お、おい。まさか……」
「俺たちはレイヴンで、そして今俺たちは戦場で敵として居合わせた。なら、選択肢は一つだろう」
「……本気なのか?」
「言ったはずだ。友をも殺さねば上に行くことはできない。世界は、そういう風にできてるんだ」
――マジかよ。せっかく再開できたってのに、すぐに殺しあわなきゃならないなんて。
世界がそういう風にできてるっていうんなら、恨むぜ、管理者――
「……やるしか、ないんだな」
「そういうことだ。お互い仕事だ、悪く思うなよ、“ストリートエネミー”」
ブーストを吹かしながら高速で近づいてくるAC。それが、自分の覚えていた最後の光景だった。


その後は、何も覚えていない。何が起こったのか、自分が何をしたのか。
ただ、気がついた時には、目の前に半壊した逆関節のACが横たわっていた。
緑色の装甲は幾つもの銃創を作り、今では焼け焦げた部分と塗装が残っている部分が半々といった具合だ。
「クライゼン……!」
「……ふふ、やるじゃないか。見直したぜ」
「もう喋るな、今助ける……!」
そう言って体に巻きつけたベルトを外そうとするが、クライゼンの言葉によりその手はとまる。
「待て……もう無駄だ」
「そんな……まだわからないだろ!?」
「わかるさ……自分の体だ……」
「とにかく、今そっちへ行く!」
ベルトを外し、コアのハッチを開けようと手を伸ばす。
「……成り上がれよ」
「!?」
「友の、俺の屍を踏み越えて、成り上がれ。跨ぐんじゃない、踏んで行くんだ。そして上り詰めろ。俺たちを馬鹿にしてた奴ら全員を見下ろせる、頂点に」
「いやだ!お前も、お前も一緒じゃないと俺はいやだからな!?」
「あまり俺を困らせるな。今は喋るだけで精いっぱいだってのに――っ!?」
ごほごほとせき込む音。何か液体が飛び散る音。
「……楽しかったぜ、お前といた毎日は」
「生きていればまた一緒に過ごせる!だから死ぬな!」
「もういい。俺はもう十分、楽しんだ……」
「そんな……」
機体のあちこちで小爆発が起こり始める。この様子ではまもなく、機体は爆散するだろう。
「火葬はいらんようだな」
「待てよ!ほんとに死ぬのかよ!?やっとまた会えたんだぞ!?」
「なんだ、泣いてるのか?会った時も泣いていたな、お前は。せめて最後ぐらい、笑ってろよ」
「……無茶、言うな……」
スピーカーの向こうから、苦しそうに笑う声が聞こえた。
「まぁ、お前らしいといえばお前らしいか。……じゃあな。あの世で、お前の悪名が聞こえてくるのを待ってるぜ」
「クライゼ――」
メインモニターに映し出されたACは、爆発音とともに、無数の鉄屑となって消えた。

いつの間に入ってきたのか、スタティック・マンの背後には、僚機のACが無言で佇んでいた。
「……なぁ、これも管理者が決めたことなのか……?」
誰に、というわけでもなく、質問を投げかける。
「せっかくまた会えた親友と、喜ぶ暇もなく殺しあわなきゃならないのも、管理者がきめたことなのか!?」
コンソールに拳を叩きつけて叫ぶ。
その叫びに応えたのは、今日初めて聞く声──僚機のレイヴンだった。
「……確かに管理者がお前たちを殺し合わせたのかもしれん。だがな。最終的には、お前が選んだことだ」
「……!?」
「お前が選び、戦い、殺したんだ。なんでもかんでも管理者のせいにして生きる暇があるなら、自分が選んだことに責任を持って生きろ」
それが死んだ者に対する手向けだ、と言うと、僚機のACは踵を返してさっさとエレベーターに乗り込んでしまった。
自分が選んだこと。親友をこの手で殺したこと。そのことに、責任を持って生きる……
「……道は、ひとつだな。待ってろクライゼン。すぐにお前のとこまで、俺の名声を届けてやるぜ」

「――、――ン。起きてください、ドン」
「ん……?」
軽い昼寝のつもりが、どうやら大分眠っていたらしい。随分と懐かしい夢を見た。
「お休みのところ申し訳ありません。ヴェロッキオの旦那がおみえです。何でも急を要するとか」
「……わかった。すぐ行くと伝えろ。もう通してあるのか?」
「すでに下でお待ちです」
「ん。……ブルーノ」
足早に部屋を出て行こうとする部下を呼びとめる。
「はい?」
「……お前、友人を殺したことはあるか?」
「友人、ですか。自分はまだありませんが……?」
「そうか。……因果なもんだな、成り上がるってのは。時には友も手にかけにゃならんとは」
「……だからこそ、今のドンの地位があります」
「かもな。ああ、悪かった、もう行っていいぞ」
「はっ」
部下が出て行ったのを見送った後、鏡の前に立って服装を整える。
あの以来の後すぐに俺はレイヴンを辞め、またこのスラム街に戻ってきた。
理由は単純だ。この街で、レイヴンとしてではなく、マフィアとしてのし上がるためだ。
街に戻ってからほどなくして、管理者が破壊された。
聞けば、破壊したのはあのとき僚機だったレイヴンだという。全く、どこで縁があるか、分かったもんじゃない。
管理者が破壊されたせいでレイヤードはかなり混乱していたがかえってこっちは商売がやりやすかった。
誰もかれもが現実から目を背けるためにクスリをやり、女を買って抱く。
そうやってクスリをさばき、女を売り、ときには手を他人の血で染めながら、俺は怒涛の勢いで、ファミリーのボスになった。
今この街で俺の名前を知らないものはいない。
道を歩けば誰もが顔を強張らせて道を開け、事務所には日に何回もアホどもがペコペコ頭を下げながらやってくる。
ようやく勝ち取った名声。悪名という、この世で最も汚れた名声だ。
「俺とお前で取った天下だ、クライゼン」
そう、俺がここまで上り詰めたのは全てはクライゼンのおかげだ。
彼は悪党としてのレクチャーを死の間際まで、いや、その死さえもがレクチャーだった。
彼がいたからこそ今の俺がある。この地位は、二人で勝ち取ったも同然のものだった。
ネクタイを締め、階下に下りていくと、かつては敵対していたものの、現在は停戦協定を結んでいるマフィアのボス、ヴェロッキオがいた。
「お休みのところすまんな、“ドン・クライゼン”。こっちも急用でね」
「何、すこし昼寝が過ぎただけだ、構わんさ。それよりどうした」
「うちの娼館ががさ入れにあってね。まぁあまり見られて困るものはなかったんだが、もしかするとあんたのとこに飛び火が行くかも知れんと思ってね」
その報告にわざとらしく肩をすくめて見せる。
「やれやれ、どうせ証拠がなくてもうちに来るつもりだろう、あいつらは」
「警察との気苦労が絶えんな、あんたは」
「ふん、当然だ。俺は警察からしてみればすぐにでも消し去りたい街の天敵――」
――ストリートエネミーだからな。




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