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休日。特にすることもないのでアリーナのカフェでレジーナと雑談していたのだが、ふとあることを思い出したので彼女に訊いてみた。
「そう言えば明後日は、父の日ですね。レジーナは、トルーパーさんに何かプレゼント用意するんですか?」
巨大なパフェをつついていた手を止め、信じられないといった表情でこちらを見るレジーナ。
声は出していないがもし出していたら、はあぁ~~~~~~??とでも言われていただろう。
「あたしが?あの馬鹿親父に?なんで!?」
「なんでって……お父さんに日頃の感謝の気持ちでも……たった一人の娘なんですから、喜んでくれるかと思いますけど……」
「感謝ぁ!?感謝なんてしてるわけないでしょいつもいつも余計なことばかりして!」
具体的には、アリーナでレジーナに勝った相手を呼び出して模擬戦でボコる、近寄る男を片っ端から呼び出して模擬戦でボコる、他多数。
「いや、それは……レジーナのことを思ってのことだと思いますよ。空回りしてばかりですけど……」
「それが余計なことだって言ってんの!」
ばん!と両手でテーブルを叩くレジーナ。衝撃でテーブルの上の食器がけたたましく跳ねる。
「まったく、あの親父ときたら以前は全くあたしの相手なんかしなかったくせに、数年ぶりに会ったら迷惑極まりない親馬鹿になりやがって。」
ぶつぶつと文句を言いながら再びパフェをつつき始める。
その様子を、アップルボーイがほほ笑みながら見つめる。
「……何よ?あげないわよ。」
「いえ、そうじゃなくて。だからこそ、なんだろうなと思って。」
「何が?」
「トルーパーさんですよ。レジーナが家出した理由が自分が家庭を顧みなかったからだって分かってるから、今その分を取り返そうとしてるんですよ、きっと。」
「…………」
「まあ、多少やりすぎというか、接し方が分からないと言った感じではありますがね。不器用なんでしょうね。レジーナのこととなると特に。」
「うん……あたしと一緒でね……」
外の景色を眺めながら、微笑を浮かべてレジーナは呟いた。

今日は父の日らしい。つまり自分のような世間では父親と呼ばれる人間が愛する子どもからちやほやされる日らしいのだ。
自分は一度もそんなことはされたことがないが。
まあそれは自分のせいでもある。
母親を失った彼女に楽をさせてやるために必死に働いたが、それが娘にとって全くの逆効果だとは気付かなかった自分が悪い。
結果、娘は家を飛び出した。
数年が経ち、偶然同じレイヴンとして再開して、今度は娘の為に生きようと思ったのだが、どうにも娘にはそれが迷惑らしい。
最近ではそれが災いしてかナチュラルに嫌われてきた気がする。
「父親、か……」
良い父親とは一体どんな感じなのだろうな。
そんなことを考えながら、自分の部屋の前まで来ると、意外な人物がドアの前に立っていた。
「……オス。」
つい今までずっと思考の対象となっていた人物、つまりは娘のレジーナだった。
「あ、ああ。どうした?」
「え、えっと……これから、暇?」
「うん?まあ、暇だが。」
「そ、そっか。……えっとさ、これから、食べにいかない?奢るよ」
珍しく態度が消極的だ。顔も恥ずかしそうに少し赤らめている。
「……父の日に食事に誘うことが、そんなに恥ずかしいか?」
「んなっ!?」
娘の見なれない様子が可笑しくてついからかってしまう。
まあ確かに、娘から自分に接触してくるなどというのは今までなかったことだから、恥ずかしいのも分かるが。
「……じゃあ、お言葉に甘えさせてもらおうかな。どこに行くんだ?」
「ま、付いてきなって。」
二人で街中を歩く。丁度夕飯時、また父の日ということもあってか、街は家族連れで溢れている。
「……なあ、レジーナ。」
「うん?」
「良い父親ってのは、どんな感じなんだ?」
「……は?」
「ずっと仕事一筋で、お前とはろくに遊んでやったこともなかったからな。父親として、娘にどう接すればいいか、わからないんだ」
「…………」
「日頃私がやっていることは、お前にとって迷惑なことだとは自覚している。だから最近は行動も控えたが……」
「なあレジーナ。私はお前にどう接してやればいい?」
「…………」
沈黙が流れる。娘は何も言わない。
答えを諦めかけたとき、娘が足を止める。
少し遅れて私も足を止め、娘の方を振り返る。
「どうした?」
「……どうもしなくていいよ。こんな仕事だからさ、元気でいてくれれば、それだけでいい。」
「レジーナ……」
「確かに、親父がしてたことは迷惑だったけどね。最近、それもあたしに対する愛情ゆえなんだって分かってきた。」
だからって、もうしないでほしいけど、と娘は笑って付け足す。
「分からなかっただけなんだよね。親父も。あたしも。」
「親父は幼かったあたしにどうしてやればいいか分からなくて。あたしは親父がどんな気持ちで働いてるか分からなかった。」
「でも、今は分かるよ。親父がどれだけあたしのことを思っててくれたか。親父がどんなに愛情に不器用だったか。」
「だからさ、親父もほんとは、もう分かってるんじゃないかな……」
父親として、どうすればいいか――
「……どうだろうな。考えてみるよ。」
私の弱気な答えに、娘は笑顔で頷いてくれた。久しぶりに、娘が笑ってくれた気がする。
「あーほら、あの店。この前みんなで食べに来たんだけど、すごくおいしかったんだよ。」
目的の店を目の前にしてはしゃぐ娘。
確かに、外観も良く、外からでも中の様子がよく分かり、感じのいい店だ。
「ふうん、いい店じゃないか。じゃ、入るか。」
「親父。」
「うん?」
「……いつも、ありがと。」
「……ああ、こちらこそ、な。」




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