※上記の広告は60日以上更新のないWIKIに表示されています。更新することで広告が下部へ移動します。

「…あれ、ブラウさん。なぜここに?というか、なんでこの場所知ってるんですか?」

ガレージの外側に立って、僕に声をかけてきたのはブラウさん、その人だった。
一昨日のバーでの時と同じ、やや無精ひげだが、服装はなぜかスーツだ。

「あぁ、バーのマスターに聞いてな、ちょっと君と話がしたくて来たんだ。」
「僕と話?」
ブラウさんは「あぁ」というと、
「ボトムリーグの試合が昨日だろ?今日はオフだと思ったんだが、無理か?」
「いえ、時間は大丈夫ですけど。一応ACの整備や、昨日の対戦データの洗い出しをしようとは思ってましたけどね。」
そういうと、ブウラさんはフッと笑顔を見せた。
「…うーむ君はアーキテクトとしては真面目だな。」
「ブラウさんは?」
「はっはっはっ、俺様は試合の後はいっつも呑んだくれちまって、次の日は二日酔いでフラフラだぜ。」
ブラウさんはがっはっはっと陽気に笑う。
「まあなんというか、そんな感じですね。ところで…」
「そんな感じって…ま、いいか。なんだ?」
「今日なぜ僕を訪ねてきたのか、なんですけど…」

ここで立ち話もなんなので、ということで、僕の部屋へと案内することにした。


「それにしても、急にいらっしゃるなんて。びっくりしましたよ。」
「はははっそうか、確かに急にだったな、すまなかった。」
「いえいえ、別にかまいませんよ。僕もエキスパートリーグにチームを置くアーキテクトとお話ができるだけでも光栄ですよ。」
「おぃおぃ、ずいぶんと持ち上げてくれるな、イルス君…」

とりあえず、前置きもこれくらいにして、本題に入ってもらうとしよう。
なぜブラウさんがここへ来たのか。話とはいったい?

「ブラウさん、さっそく本題といきたいんですが。僕を訪ねてきた、というのは?」
ブラウさんはスーツの懐からひとつの封筒を取り出し、テーブルの向かい側、僕のほうへと置く。
「えーとな。これもマスターから聞いたんだが…イルス君、スポンサー側とあまりいい関係じゃないらしいな。」
「…あぁ、叔父から聞いたんですね。」

叔父さんは心を許した相手には、ホントなんでも喋っちゃうなぁ…

「えぇ…確かにあまりいい関係とは言えないですね…」
「…ふむ。昨日たまたまオフで、おまえさんとこのマスターと一緒に、君の試合を見てたんだがな。」
僕の試合、見てたのか…頷くとブラウさんは進める。
「あの限られた装備で、的確に相手ACにダメージを与える戦法。アセンブルもAIも相手のツボを的確に突く戦いだったな。あれは…どういう戦術に基づく物だったんだ?」
「そうですね、もうご存知のとおり、僕のチームは武装も装備も資金も限られているので、最小限のダメージと、相手の弱点を突き、損害を少なくする。そんな戦い方をイメージしてAIにそれを盛り込みました。
…少し消極的な感じもしましたけどね。」

そう、消極的だった。
逃げ回って物陰に隠れて攻撃をする。被弾をしたときパーツ破損で次試合続行不可能という状態をどうしても避けたかったため、結果的にそうなった。。
ギリギリも資金でそろえたパーツだ、勝ったとしても破損して次の試合にでれなくなってしまっては意味がない。

しかし…昨日の試合を思い出すと…あぁなんか勝ったのに落ち込んできたぞ…

「そんな暗い顔すんなよ。まぁ消極的といえば消極的だったかもしれんが…だが勝ちは勝ちだ。そんなに気にするようなもんじゃねえぞ。」
「…そうですか?」
「そうだぜ?レギュラーリーグとかだと、まあ確かに中には「魅せる戦い」が求められるような場面もある。
ネオニアの濃厚に練られたACの圧倒的な戦術や、オーガの高火力ゴリ押しのド派手戦法とかな。」

「だがエキスパートリーグみたいな複数ACを出場させるようなリーグでは、“ゴリ押し”だけでは勝てないことが多い。“押”したり“引”いたりってな。そんな駆け引きも必要なわけだ。時には“逃げ回る”ことだって立派な戦術だ。」

「別におまえさんの戦い方がチキンだって言ってる訳じゃねえぞ?」と付け足す。

「とにかくだな…イルス君、おまえさんはおまえさんらしい戦い方をすればいいんだ。それを見失わなければ大丈夫だ。」
「そうですか…?」
「そうだ、「魅せる戦い」なんてものは、まず勝ち上がってからするものだ。君は試合が派手か消極的かなんてことを考える必要なんかないんだ。」

ニコッと笑うブラウさん。
「俺はこれでもあの一戦を見て高く評価してるんだぜ?」
…僕はなんかこの一言で消極的かどうかなんて悩みは吹っ飛んでしまった…気がした。

――「自分に自信を持て!」と言うと、ブラウさんは立ち上がった。
「そういうわけで、俺はそろそろ自分のチームに帰るぜ。いや~シーズンオフに入っちまうとついついダラけちまう。」
「あ~エキスパートリーグは、ちょうどこの前全シーズンを終えたばかりですからね。」
「そーいうことだ。この時期は他のチームもオフ入ってるとこ多くて、情報とかも全然入ってこねぇから参っちまうぜ。」

やれやれと頭を書くブラウさん。あれ?この人結局何しに来たんだ?

「あれ、ブラウさん、話ってそれだけ?」
「あ~あああぁ…ウン、まあそれだけだ。残りはほら、その…封筒の中に書いてある。」
さっきテーブルに置いた封書を指差す。

「その中に、俺が今日イルス君を訪ねてきた理由が書いてある、読んでもらえればわかると思うぜ。。じゃあな、今度またあのバーで呑もうぜ。」


部屋に一人残された僕は、そんなブラウさんの背中を見送り、そして…置いていった封筒の頭を破り…そして中に入っている紙…あれ、これは…

『拝啓、イルス・ブレーム氏へ。

私は、チーム・ブルーネメシスの人事担当、キャリー・レメンと申します。
紙面での突然のことで失礼することをお許しください。

我がチームは、現在サブアーキテクトを探しています。
ご存知の通り、エキスパートリーグは5体のACを構築し、対戦へと望みます。
ただ、この『5体分のAC』のアセンブリ、AIを構築するのは非常に手間暇がかかるのです。
そこで、是非ともメインアーキテクトであるブラウをサポートする人物を希望していました。

しかしサポートする、というのはAI構築の知識だけでなく、ACに対する知識が必要です。
そこで、我々は将来有望な“アーキテクト”という条件で探していました。

我々は、貴方のような人物を探していました。
支援もまともに受けられないチームで貴方の才能を潰してしまうより、遥かに有意義な日々を過ごせると思うます。

人として、アーキテクトとしても。


追伸:貴方の人選は、ブラウの強い希望で決まりました。
お考えいただいたら、下記の連絡先へご一報ください。』

そして、紙面の下には連絡先として、チーム・ブルーネメシスの連絡先が書かれていた。


これは…引き抜き?
ブラウさんが、僕を自分のチームに欲しいって…

確かに今のチームの現状は、アーキテクトにとって「ヒドイ」状況だ。
受けられない支援、フォーミュラFに対して極めて消極的なスポンサー企業。
正直言って、スポンサーからの僕の評価は「いらないヤツ」だ。

だが、ブラウさんやブラウさんのチームが僕を必要としている…のか?


そして、なによりブラウさんのチームで…憧れのエキスパートリーグに参加できる…
サブアーキテクトとしてだが。でもブラウさんと共の戦える…

今虐げられた道と、新たな道。
どちらが僕にとってどちらがいいのかは、もはや考えるまでもなかった。


僕はこの日の夜、ブルーネメシスへメールを送った。
この話に対しての返事をしたい、と。

送信して数分、突然僕の情報端末の携帯電話機能がが着信音を鳴らせる。
着信音はジュブナイルのジールアリーナで流れるあの曲。着信先は知らない番号。
僕は繋げる。

「はい、チーム・イリオモテのアーキテクト、イルス・ブ…」
『あぁ、イルス君、意外と返事早かったな。』

声の主はブラウさんだった。
『今ちょうどキャリーの部屋にちょうど居てだな、メールをちょうど見て直接電話してみたわけなんだが…あ、なんで女の部屋に居たのか、とかは野暮なことは聞くな…』
「ブラウさんに、この件について直接お話にあがりたいのですが。」
間髪居れず僕は話し始める。
「正直、突然のことで驚きました。…でもちょっといきなりな話だったので、もっとちゃんとあなたとチームのリーダーとして、お話をしておきたいのです。」

無言。しばらく無音。

ブラウさんは長いとも短いともつかない静寂の間をあけ、
『…そうだな、確かに急すぎた話だ。だが、まあなんというか俺の中の“カン”が「おまえさんがイイ」って告げたもんでな。』
…そうだな、と一息つけ、
『グランド・アリーナの近くにある「鳥の泣き所」…そこに明日、夜の7時ぴったり、その時間にその店の奥のカウンター席で待ってる。店の場所、わかるか?』
「鳥の泣き所…あぁ、あそこですね。有名ですよあそこは。わかりました、明日の7時、ですね?」
『あぁ、そうだ。そこで、おまえさんのこの事に関しての考えを聞かせてくれ、イルス君。』

「…はい、わかりました。かならず…行きます。」
『あぁ、待ってるぜ。』




| 新しいページ | 編集 | 差分 | 編集履歴 | ページ名変更 | アップロード | 検索 | ページ一覧 | タグ | RSS | ご利用ガイド | 管理者に問合せ |
@wiki - 無料レンタルウィキサービス | プライバシーポリシー