スペシャルアリーナ…AC同士を戦わせる、レイヴン同士の賭け事に過ぎなかったアリーナ。
それを傭兵管理組織が興行化し、刺激に餓えた民衆の支持を得、圧倒的人気を誇る娯楽と化した。

オールド・アヴァロン。
スペシャルアリーナと呼ばれる巨大なドームで、鉄の巨人達が砲火を交じわせる『戦場』
今でこそ、VRシミュレータを用いたVRアリーナが全盛を極めるが、
元々AC達が戦闘を繰り広げていたその巨大なドームは改装され、
観客を大いに盛り上げる巨大観客席となっていた。


アーマードガンナーズからの出場依頼を承諾し、
指定された合流地点、オールド・アヴァロンの某ホテルへと向かう。
スペシャルアリーナの予選は全てVRアリーナ上で行なわれる為、機体データのみ持参すれば良い。

予め三銃士が予約を取っていたホテル地下のレストランで、彼等との速い再会が待っていた。
あの作戦から一週間も経っていない。腐れ縁とはこの事だろうか。
「待ってました!」
見慣れた三人の若者達。既に彼等は戦友と呼べる…そんな気がしていた。
既にテーブルの上には豪華な料理が並んでいる。
普段の企業相手の打ち合わせとはかけ離れたその光景に、思わず口元が緩む。


レーダーに自機と敵機以外の新たな反応が現れ、その新しい反応から分裂するかの様に数を増す。
敵ACの肩から射出されたコンテナから、無数のミサイルが花火の様に広がっていく。
敵機の捕捉を一時的に中断し、ミサイルの回避へと全力を注ぐ。
全速力でACを後退させ、ミサイルを限界まで引き付け、すぐさま切り返す。
円を描き前方へと舞い戻って来る物、障害物に激突する物、凄まじい数のミサイルが消滅していく。
(…まだだ、また来る!)
ヘクトの予測通り、敵機から再度コンテナが射出され、無数のミサイルが発射される。
先程と違うのはミサイルと共に、敵ACが接近してくる事。
射程外などお構い無しに両手のショットガンを乱射しつつ、エース&ジョーカーが向かって来る。
散弾の一部が装甲の表面を削る。装甲の薄いクイックトリガーには、決して馬鹿には出来ない。
襲い来る無数のミサイルと散弾の嵐を、機体を巧みに操り被害を最小限に抑える。
機動力はこちらが数段上。アサルトロケットをパージし、機動戦へとシフト…

「…思い切りが、良くなったな」
VRシミュレータのモニターを見つめながら呟くスウィフト。
あっさりとロケットをパージし、機動戦へとシフトしたヘクトの行動を評価しての事。
「ええ、良い判断です。彼女も成長したという事ですよ」
同じくモニターを見ていたレミントンが同意の言葉を上げる。
以前のヘクトならロケットに拘ってパージなどせず、状況判断を遅らせていただろう。
「判断力を中心に、射撃制度、機体制御等、軒並み成長していますよ。今後が楽しみですね」
中指で眼鏡を押し上げつつ、少しだけ微笑む。

「…成長してなきゃ、ワリ食うのは俺達だからな。
下手糞のままなら、今頃死んでるか、売り飛ばしてる所だ」
いつもの苦い表情のまま、シビアな言葉を言い放つ。


「…あんだってぇー!?」
素っ頓狂な声を上げるプロジェクターに、トーマスが繰り返す。
「だから、作戦もクソもないって。無理に合わせる必要は無い、って事。
俺達は俺達のやり方で、おっさんはおっさんのやり方でいいって事さ」
「…そんなもんなのか?」
チーム戦、という主旨で行なわれる今回のアリーナ。
多数対多数の戦闘で物を言うのは、AC同士の連携、そう思っていたのだが…
「誤射さえしなけりゃ、その方が戦い易いし、肩に力も入らないしね。
俺達は勝手に連携取るからさ、おっさんは遊撃手、って訳」
「そうそう。俺達の連携に無理に合わせる必要無いって。
せっかく汎用性重視の機体なんだからさ、どうせならフォローに回ってくれよ」
連携に無理に参加する必要は無い…三銃士は口々にそう言った。
確かに彼等の言う通り、急造のぎこちない連携を取る必要は無い。
その上、彼等のACは連携戦闘に特化した機体だ。完成された連携を崩す様な真似は賢い選択とは言えない。
自分は遊撃手としてフォローに回るのが正しい選択だろう。彼等の言葉に従っておく事にした。

「じゃ、そういう事で、乾杯といきますか!」
カァン、という音と共に、束の間の宴が始まる。



両肩のコンテナミサイルを撃ち切った後、パージ。
結局、大したダメージは与えられなかった。悔しさと嬉しさが合わさった、複雑な気分がジョーを包む。

残された両手のショットガンを同時に放つ。直撃すれば装甲の薄いクイックトリガーには致命傷となる。
…しかし、当たらない。両肩武装を捨て、多少身軽になったと言えど所詮は重量二脚。
軽量二脚型ACとの機動戦は劣勢を極める。ショットガンの直撃距離でありながら、捕捉する事すら厳しい。
上下左右、そしてマルチブースタを積極的に用いたクイックトリガーの機動性に振り回される。
攻撃範囲に優れている筈のEOも、完全に補足する事は難しいのか、さしたる戦火を上げていない。

「だぁーッ!チラチラ視界に入っては消えやがる!何時の間にこんないやらしい戦法を覚えたのかね?」
一方的に攻撃を受ける形になるエース&ジョーカー。
自機の放つショットガンは流れ弾が少々当たる程度。対して敵機のハンドガンは少しづつ、だが確実にAPを奪って行く。
『AP50%、機体ダメージが、増大しています』

「っきしょう!なんてやらしい戦い方だ!本人には色気のかけらもありゃしねーのによー!」
VRシミュレータの外にも響く大声でジョーが叫ぶ。
聞こえたのか、レミントンが口を手でおさえながら肩を震わせている。

『AP10%、機体ダメージが、増大しています』
結局、そのまま翻弄されっぱなしで押し切られ、ヘクトの勝利でシミュレータは終了。

満足げな表情でシミュレータ室から出てくるヘクトとは対照的に、疲れた表情を浮かべるジョー。
「どうだった?少しは強くなったでしょ?」
「ええ、素晴らしい上達です。この調子で頑張って下さい」
まるで、何かの教習所の様な二人の会話は、とてもレイヴンには見えない。

「で、何でまたいきなり訓練なんてやる訳?アリーナにでも出るのかよ?」
疲れた表情で肩を落としたまま、ジョーが口を挟む。
レミントンの提案でVRシミュレータを久しぶりに起動させたが、その理由の説明は済んでいなかった。
「…!鋭いですね、ジョー。その通りですよ。5日後のアリーナです」
訓練の事で頭が一杯だったレミントンは、何の為に訓練をするのかを話していなかった。

ゲームセンターで渡された資料の中の一文には、こう記されていた。
『5日後、オールド・アヴァロンで開催されるスペシャルアリーナは、選定試験を兼ねている』と。
そしてその選定試験とは、『バルガス攻略戦』の参加レイヴンの選定であるという事も。

「…決勝を除きVR戦、弾薬費、修理費も自己負担不要、優勝すれば300000C。
そして大会の主旨は俺達の十八番と来たもんだ。別にその選定試験とやらが無くとも、絶好の大会だな」
レミントンの話を聞き終えたスウィフトの第一声。筋金入りの拝金主義者らしい感想だ。

「そう、だったのか…よぉーっしッ!」
素早く立ち上がり、一目散にVRシミュレータ室へと飛び込むヘクト。

「皆、何やってんの!?あの時の借りを返すんだ!絶対優勝しないと!特訓特訓ーッ!」
飛び込んだと思えば、顔だけシミュレータ室から出し、大声を上げる。
既に気合は十分の様だ。凄まじい覇気を見せ付けられた残りの三人の士気も否応なしに高まる。

「…機体の構成を変えておくか」
「次は私がお相手しましょう」
「高機動機相手の捕捉訓練だな…」


――レイヴンチーム『飛ん・で・レイヴン』士気は上上ッ!





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