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時刻…不明 UNKNOWN
砂の荒野に、一人の男が横たわっている。
年齢は30代後半程の、もう若く無く、既に頭は白く染まっている。
「…うぅ」
男が目を覚ますと、荒野だった筈の大地が緑溢れ、花が咲き乱れる美しい世界へと変わって行く。
「…ここは…?俺は…そう、黒い奴に吹っ飛ばされて…」

敵ACアントリオンに蹴られた衝撃でクレーターの中へと飛ばされ、デストロイヤ・フリーの熱線を受けた。
中破していたプロウセイルが耐え切れる筈も無く、爆発。散らばった残骸すら、熱線は蒸発させる。

「…ッ!?…もしかして、ここ、天国?俺、死んじゃった?
蒸発しちゃった?コクピットが香ばしい肉の香りで満たされて…?」

…彼は、今自らが居る場所を、天国…死後の世界だと思った。
既に数え切れない程他人の命を奪って来たこの男が、天国に逝けるとは思えないが。

「そうか…死んじまったのか…作戦は、どうなったんだろうな」
随分と気楽だとは思っていたが、死んでしまった今、些細な事だと思った。


時刻…03:06 ギエンクレーター周辺
三人はただ驚き、固まっていた。
目の前の敵だった筈のACを、その味方、つまりもう一機の敵ACが破壊した。
先程の誤射の報復にしては、まるで始めから決まっていた事の様に、滑らかな動きだった。
仲間のACを切り裂き、そのACの武器を躊躇う事無く奪う。
――まるで、予備武装のように。
「あいつ、仲間を…?」
「テメエ!人情ってモンは…無ェのかよッ!」
ラッシュが叫んだ瞬間、ガンナー1の足元が爆ぜる。
威嚇射撃。聞く耳など無い…というメッセージを込めた。
ガンナー2がマシンガンを一斉射すると同時に、ガンナー1が間合いを詰める。
敵機の武装は先程味方機から奪ったリニアライフルとブレードのみ。
間合いを詰め、得意の接近戦に持ち込もうとするが、正確な射撃がそれを阻む。
本来ならばガンナー2との実弾リニア砲を用いた連携攻撃で接近するのだが、今回の作戦ではそうはいかない。
マシンガンとハンドミサイルのみの薄い弾幕では牽制効果が低く、接近する事が困難。
「くそ、おっさん、聞こえるか?聞こえたら返事をしてくれ!」
遠巻きにハンドミサイルを撃ちながら、プロジェクターへの通信を試みるガンナー3。
だが、非情にも返って来るのは静寂のみだった。

時刻…不明 UNKNOWN
「そうだ!天国に来たって事なら、受付みてえなのもあるかも!」
パチン!と指パッチンの音を響かせながら、閃いた事を口にする。

目の前に広がる花畑に、思わず圧倒される。
「…以外と、ベタな風景だね。…おっ!お迎えの方?」
目の前の花畑の中心に、人らしき影を発見する。
天使、という割には全体的に黒い服装が目立つが、絹糸の様な純白の長髪は、とても美しい。
「いや~、こんなお美しい方に出迎えられるなんて、意外と善行してたのかな?」
大袈裟におどけて見せるが、目の前の女性は、優しい微笑みを浮かべるだけだった。
(…なんてキワドイ服装だ、俺も結構な歳の筈だが…チクショー)
(しかし美しい。…もしかして女神様ッ!?)
年甲斐無く醜いリビドーを感じた上、都合の良い妄想まで垂れ流す始末。

「あ、あのですね、えと、失礼ですが、お名前は…?」
緊張、と言うより嫌らしい目つきにならない様に自我を抑えつつ、名を尋ねる。
「…ライラ」
目の前の女性が表情一切変えず、微笑んだまま呟く。
(女神ライラ様…ね。良い名前じゃないか…そうかッ!!)
(あんな格好してるって事はそれなりにアレでナニで、
聞かれた事しか答えないのは、困ってる姿を見るのが大好きなんだなッ!)
完全にアホとしか言いようの無い脳内妄想をスパークさせ、都合の良い結論に持って行く。
(…もしかして誘ってるッ?まさか、死んでいきなりこんな上等なサービスだなんてッ!)
脳内物質の過剰分泌にターボが掛かっている。此処まで行くと単なるスケベオヤジだ。
「そうと決まればァーッ!!」

――ガツン、と鈍い音が響く。
「痛ったたた…アレ?、女神様は?お花畑でスキンシップは?」
広げた拍子にぶつけた両手をさすりながら、我に帰る。
今、彼が居る場所はACのコクピットブロック。
運良く脱出に成功し、熱線の範囲にも入らなかった。
プロウセイルは完全に蒸発してしまったが、彼は生きている。
「何でぇ、生きてるじゃねえか…」
…死んだ方が良かったのだろうか。生きているだけでも奇跡的だというのに。
「得したのやら、損したのやら…」
ぶつぶつと先程の夢を惜しみながら、モニターに周辺の映像を映し出す。

現在地は、ギエンクレーター内部。敵生体兵器の索敵範囲外らしく、こちらに気付く様子は無い。
周辺に危険が無い事を確認し、コクピットブロックから出る。
AC本体が破壊され、通信機能が麻痺している為、連絡を取り合う事も出来ない。
ザッ、ザッと砂に足跡が残る音を立てながら歩く。
辺り一面砂だらけのクレーターで、どうやって通信手段を確保するのか。それが最大の問題だ。
俯いたまま、ただ一直線に進む。足跡を定期的に確認して、直線的に移動出来ているかを確認する為だ。

――コツン。とつま先が触れた所から音がした。
最初は何かの残骸だと思った。しかし、一歩進むたびに、音が大きくなっていく。
足元の砂を調べると、コンクリートで造られた道のような物が現れた。
(まさか、この先に…!?)
クレーターの外周の端に当たる部分に、くりぬいて造られた、もしくは有った所にクレーターが後から出来たのか…
ようやく見えた一筋の光を、ひたすら追いかける様に、走る。

時刻…03:07 ギエンクレーター
焦りが三人を包んでいた。
敵は一機で、こちらは三機。単なる戦力差なら圧倒的に有利な筈だ。
しかし、ACの限界を超えた動きを見せるアントリオンに、翻弄される。
そして、こちら側で対等に渡り合えるのは、ガンナー1のみ。
電子、情報戦特化型のガンナー3と主砲を放てないガンナー2では、相手を補足するのがやっとだった。
(残り38発か…少しはやるようだな)
リニアライフルの残弾を確認しつつ、ハンドミサイルを確実に回避する。

(…このままじゃ、ジリ貧だ。こうなりゃ覚悟を決めるしかねえ)
奥の手、一発逆転の必殺フォーメーション。
「コルト、トーマス。アレをやるぞ!奴の誘導を頼む!」
「その言葉、待ってたぜ!」 「了解。しくじるなよ!」
ガンナー3が巡航型オーバーブーストを起動させる。
「こっちだ!鬼さんこちら!」
高速で円を描く様にアントリオンへと接近しつつ、ハンドガンを乱射する。
「体張ってでも、止めてやるぞぉッ!」
重装型だが、目一杯ブーストを吹かし、ガンナー2はアントリオンへと『直進』する。

「…何の真似だ?」
不可解な敵の動き、そして急に速度を増したフロートAC。
照準すら合わせていないような乱雑な射撃が飛来する。

――ドクン、ドクンと心臓の鼓動が高鳴っていく。
目視とレーダー両方を駆使して、敵と味方の位置がある条件を満たすのをひたすら待つ。
チャンスは一度。外せば、三人まとめてお陀仏。
操縦桿を硬く握り締め、時を待つ。

(敵の狙いが固まった。今だ!)
唐突にガンナー3が腕部武装を解除する。
肩武装等を持たないガンナー3にとっては、敗北宣言に近い。

「戦場で武器を手放すとはなッ!気でも狂ったか?笑わせるなッ!」
アントリオンが武装解除したガンナー3へと狙いを定め、突進する。

「…来たッ!」
――時は満ち、コアの後部ハッチが開く。
ガンナー1は風を切り裂き、砂塵を巻き上げ、飛翔する。
勝利を掴む為に。――生きて、また還る為に。

「来たぞ、もってくれよ、ガンナー3!」
ガンナー1の飛翔を確認したトーマスは、同じくオーバードブーストを起動させる。
無茶な軌道を描いて飛ぶガンナー3は、アントリオンへと接触、
そして、敵ACを掴んだまま、ガンナー2のいる方向へと無理矢理運んで行く。
「貴様ッ、放せ!」
コクピットが警告で埋め尽くされ、機体各所から悲鳴が上がる。
(もう少し、もってくれ!)

「よし、そのまま、そのまま!」
ガンナー2が軌道を合わせ、同じ様に腕部武装を解除する。
「捕まえたッ!」
ガンナー3と挟む様にアントリオンを拘束する。
(くそ、動かん!馬鹿な…こんな馬鹿げた戦法に俺が…!)
機体を最大出力で動かそうとするが、
重量級のガンナー2にも捕らえられたアントリオンに、動く事は許されない。
(馬鹿な、馬鹿な、ばかなバカナッ…!!?)

「「ラァーッシュ!」」

「食らえぇーッ!」
高速で接近するガンナー1の左腕部から蒼い光が伸び、動けないアントリオンのコアを貫く。
拘束を解かれたアントリオンにブレードを突き立てたまま、高速で押すように飛ぶ。
「これで…終いだッ!」
ブレードを引き抜き、落下するアントリオンにありったけの鉛弾を叩き込む。

――地面に叩きつけられたアントリオンが、炎上する。
『プラス』の能力で力を引き出された漆黒のACが、燃え上がってゆく。

後方で支え合いながら立つ二機のACへ、ガンナー1がマニピュレーターでVサインをした。

「…やれやれ、この陣形で一番苦労するのは俺なんだよな、結局」
機体各所からの警報は止まず、左腕部にいたってはオーバーロードで半壊している。
「普段の戦闘で、後方にいる事が多いんだからさ、おあいこだろ?」
「そういう事に、しときますかね。」

『機体耐熱温度限界。緊急冷却装置を作動します』
『ジェネレーターへの負荷が限界を超えました。安全の為、外装部及びブースタへのエネルギー供給を一時停止』
高出力オーバードブーストによる長距離飛行とブレードの使用により、
ガンナー1はチャージング状態へと強制的に移行する。

「お~いラッシュ、さっさと戻って来いよ。なに歩いてんだ?」
こちらの事情を知らない訳でも無いだろうに、コルトからふざけた通信が入る。
「うるせぇ!こちとらチャージング中だ!文句言うな!」
「楽しそうな所悪いんだけどさ。俺達、まだ仕事終った訳じゃ無いんだよね」

時刻…03:08 旧世代軍事基地
クレーターの内部には、大深度戦争末期辺りで使用されたと思われる軍事基地があった。
「こりゃ随分古いな。通信設備は生きてるのか?」
埃と砂にまみれた通路を走りながら、通信手段を探す。
それまでACが通れるほどの大きさの通路がずっと続いて来た。
通信設備が残って無いのであれば、せめて移動手段の一つでもあれば…そんな思いを胸に走る。

目の前に今までとは違う、更に大きな空間が広がっていた。
恐らく、ACやMTのハンガー。残された何かを探して、ひた走る。
「あ…こいつは、AC…?」
旧世代の骨董品級のACだった。頭の中から記憶を探り、搭乗口を探す。
「あった、これだ!火は入っているのか…?起動法は…」
シートに座り、目の前の端末と格闘を始める。
不意に一つのパネルが光り、起動に成功した事を表し、機体情報が羅列される。
HD-H10
XXL-DO
AN-823-B
LN-3001C
GBG-10000
TRVX-QUAD
B-VR-33
WM-X201
RXA-99
LS-3303
WG-1KARASAWA
(こいつは…お宝だぞ!何てこった、オリジナルタイプの『唐澤』まであるぞ。損して特取れってか?)
最後に表示された物…右腕武装の情報を再確認し、驚喜する。
「出来るなら、無傷で持って帰りたい所だが…」
旧式の為、詳細は無理だが、反応の有無くらいは感知出来る筈だ。
レーダーを起動させ、確認。自機より上方に三機、反応がある。
「二機も減っている…やられたのか、それとも…」
あの黒いAC以外にもう一機、ACが現れた筈だが、しかし、敵に増援が無いとは言い切れない。
「通信は…駄目か、古過ぎて対応していない。
接触するしか無いか。頼むぞ、無事でいてくれ…!」
旧式のACを駆り、クレーター上部を目指す。

「楽しそうな所悪いんだけどさ。俺達、まだ仕事終った訳じゃ無いんだよね」
奥の手、必殺陣形で見事敵ACアントリオンを討った三銃士。
だが、彼等の仕事はあくまでも『母体』の破壊だ。
依頼を達成した訳では無いので、当然今撤退すれば報酬は無い。
「…けどよ、今の俺達であのでっかいのを倒す事って出来る?
個人的には満足だし、もう帰っても良いんじゃないかな~なんて…」
無責任な事をラッシュが口にする。
「一応、主砲は全弾残ってるぞ?全部ブチ込みゃ、落ちるんじゃねえの?」
徹底して肩武装を使用しなかった為、対『母体』用の大口径砲は万全の状態で残っている。
あとは狙撃態勢さえ整えば、何とか撃墜する事も可能かもしれない。

一行が進退を迷っていると、ガンナー3のレーダーが未確認機を捉えた。
未確認機はすぐ側まで迫っており、気が付いた時には視界に入っていた。
「何だ、テメェ!…おい、マジで、何?あの機体?」
見慣れない機体に戸惑う三銃士。交戦するにしても、こちらには殆ど武器が残っていない。
ロックアラートも聞こえず、交戦の意思は無い様だが、不信感を隠せない三銃士に指向性通信が入る。
「よう!地獄から還って来たぞ」
「おっさん!?」×3

「何だよ、生きてちゃ悪いのか?」
指向性通信ならば、通じる様だ。声を揃えて驚く三銃士。
「…ハハハ、そうかい!生きてたのか…!」
「生きてんならさっさと通信入れるなりしろってんだ」
「その機体…随分珍しい機体だな。地獄製か?」
トーマスの洒落に声を合わせて笑う。

「機体については後で話そう。それより、仕事はまだ終わっちゃいないんだろ?」
デストロイヤ・フリーの破壊は今だ成し遂げていない。
「…ついて来い。絶好の狙撃ポイント、見つけたぞ」

旧式ACを駆り、クレーターへと出ようとした時に、偶然見つけた狙撃ポイント。
それは、旧世代基地の入り口。目標の射程外な上、高度を合わせる必要が無い。
正に絶好の狙撃ポイントであった。
「こりゃ楽だ!良くこんな所見つけたな。
これなら目視でも十分当てれる。あとは俺に任せな!」
三機のACに見守られる中、狙撃態勢を整えるガンナー2。
砲身にプラズマが蓄積し、発光している。どうやら狙撃準備が整った様だ。
凄まじい大きさの、光の柱が飛んで行く。
「9…10!こいつもオマケだ!」
10本目の光柱が飛んで行く。『母体』は成す術も無く、炎上していった。
今までの苦労が嘘だったかの様な、あっけない最後に、ラッシュが笑い出す位だった。
「よし、任務完了!ってね。帰還すっか!」

収支報告
収入
成功報酬+165000C
特別加算+30000C 旧式のACパーツ+武装 『女神ライラのご加護』
支出
AC「プロウセイル」完全大破。破棄。




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