セントラルオブアース繁華街。
賑やかな表通りでは無く、ひっそりとした裏通り。
普段はあまり繁盛していない、静かな酒場「XA2/FFより02A」
しかし、この日だけは盛り上がっていた。
店内には一人のマスターと、客が五人。
男性四人に女性一人。
店内に響くラジオの曲に合わせて、
ドレッドヘアの大男と、紅一点の女性が騒ぐ。
「ノーボール、ノーボーイ、ノーボール、ノーボーイ」
「サワラナイデ、サワンナイデ~サワラナイデ、サワンナイデ~」
男がとあるスポーツの審判の真似をし、
女性が頬を赤らめ、両手で身体を抱きしめ、いやいやの仕草をする。
二人とも相当酔っている。女性のほうは顔が真っ赤に染まっている。
「ゾンビゾンビ」「フ-ロムデスネ」
「ゾンビゾンビ」「フ-ロムデスYO!」
「アーーーーーーーーーー」「アーーーーーーーーー」

(…けったいな嬢ちゃんだな)
やや離れて、失敗した筈の仕事が成功扱いされ、
報酬を貰ったのはいいものの納得がいかず、
こうして憂さを晴らしに飲みに来たプロジェクター。
何時も人のいないこの酒場なら、一人で静かに飲めると思っていた。
…現実はこの有様である。
「アーオアオッアーオ、アーオアオッアーオ、アーオアオッアーオ、アーオアオッアーオ」
「アーオアオッアーオ、アーオアオッアーオ、アーオアオッアーオ、アーオアオッアーオ」
…何の曲なのだろう?マスターも面白がって見物している。
まだ二十になったばかり位の娘が、
男三人を引き連れてこの騒ぎである。
…乗り気なのはドレッドヘアの大男位な者ではあるが。
「ナーインボー」「デストローイ」
「ナーインボー!」「デストローイッ!」パアンッ!
ノリノリでハイタッチまでやりだす始末。
同じテーブルの二人の男性は疲れきった表情を浮かべている。

眼鏡をかけた男性に声をかけてみる。
「…凄いですね。御宅らの娘さん」
「ええ、酒の席になると何時もこれですよ」
ずれた眼鏡を直す気も無いのか、ずれたまま疲れた表情で話す。
「…まあ、憂さ晴らしに飲みに来て、他の方の迷惑にならないように、
この店を選んだのですが…申し訳ないです」
「気にしないでくれ。俺も似たようなモンさ」
ハハハ、と顔を合わせて笑う。
「サクセース、サクセース、サクセーサクセーサクセーサクセェェーーーース!!!」
「サクセース、サクセース、サクセーサクセーサクセーサクセェェーーーースウェ!!!」
ガタン、と席を立ち、急に店の外へと走り出す女性。
あげぇぇぇぇぇぇぇ…と嘔吐の不快な音が聞こえる。
どうやら店の外で吐寫物を撒き散らしている模様。
「…勘弁してくれよ、もう」
小柄な青年が呟く。


バルガス空港襲撃から二時間。
ヘクト達は、悔しさで一杯な今の気持ちをどうにかする為、酒場へ。
そして自棄酒。特に最後まで食い下がったヘクトが。
「マシュタァ~おがわりんぐ…」
テーブルに突っ伏したまま、グラスをマスターに向ける。
流石に心配になってきたのか、目でレミントンに助けを求める。
「…お願いします」
グラスへ安酒を注ぐと、一瞬で飲み干すヘクト。
「…良いのかよ?」
テーブルに突っ伏したまま、スウィフトが言う。
「今は良いんじゃねえの?しょぼくれるよりマシさ」
ヘクトと同じ量の酒を飲んでいる筈のジョー。
かなり酒に強いのだろう。普段とあまり変わらない。
「くのら~この蟲どもめ~大人しくロケットを食らいやがりんぎょくぅぅ」
うわ言まで言い始める始末。

この店に集まっている彼らと、プロジェクター。
二時間前に自分達が戦場で出会っている事を、知るよしも無い。


「ニャウホウ!らって!」「普通にアッオーだろ?」
…やはり何について語っているのか、理解できない。
どうやら音楽の話題らしいのだが…
「マスダ~ラディオ弄っでいう~?」
「壊さなきゃ構わんが…何を?」
懐からディスクのようなものを取り出し、ラジオに挿入する。
…音楽が流れ始めた。お気に入りの曲か何かだろうか?
「…んぁ、く、くひゃはは!
フジコフジコフジコフジコ~!きゃはははあひゃ~!?」
突然何か憑き物でも憑いたかのように笑い始めるヘクト。
「…何ですかね?あれは?」
「さあ。なんでしょう?
彼女、酔うと必ずこの曲を聴いて、ああやって笑うんです」
…理由がさっぱりわからない。しかし、隣でジョーは一緒に笑っている。
「…失礼ですが、おたくら、何の集まりで?
あ、私はしがないレイヴンです」
こんなすっとんだ連中に出会う事はそうそう無い。
土産話にでもなるだろう。そう思って聞いてみる。
「…そうですね。貴方の…同業者、といった所ですか」

同業者。つまり、レイヴン。商売敵だ。
しかし、この間の三銃士といい、自分は本当に妙なレイヴンと縁がある。
『類は友を呼ぶ』とは良く言ったものだ。…そんな気がした。
「ハハ、そいつはいい!よろしくな。チームなんだろ?」
レミントンが頷く。
「チーム名とかあるのかい?よかったら聞かせてくれよ」
無茶な願いだと自分でも良く解かっているが、訊かずにはいられなかった。
「ティ~ムみぇい!?ヒャイヒャイッ!おこらえしま~しゅ!」
「あらし達、『ティームオビュニェームリェス』でぇ~い!」
「…管理データ上では、『飛ん・で・レイヴン』だがな」
スウィフトが素早く補足を入れる。
この男、ツッコミに関しては心得が有りそうだ。
「おいおいスウィフト、そりゃ言わねえ約束だろ?」
ジョーが大袈裟なリアクションを取りつつ言う。
「…そんなこと言われても、うちら飛ん・で・レイヴンやし」
先程までテーブルに突っ伏したまま、ピクリとも動かなかった青年がニヤついている。
…本当に一筋縄ではいかない連中のようだ。

「何処の所属で?」
一口にレイヴンと言っても、色々有る。
火星で主に活動している、「ナーヴスコンコード」所属のレイヴン。
地下世界で活動している、「グローバルコーテックス」所属のレイヴン。
そして、地球上で活動している、「レイヴンズアーク」所属のレイヴン。
訊ねて話してもらえる様な事では無いのかも知れない。
「一応、チームとしては、アークになりますね」
意外とあっさりと話すレミントン。
しかし、二人の会話はそれ以上続かなかった。
「悪いが、お客さん。もう店じまいなんだが…」
マスターが現在最も話の通じるレミントンへと伝える。
「…もうそんな時間ですか。お勘定は…と。これで」
「おっと、俺もな」
マスターに料金を支払い、先に店を出るプロジェクター。
(…こないだの三銃士もだが、戦場で、それも敵として出会うのは勘弁だな。)
…もちろん、既に戦場で出会っている事を彼は知らない。


「…で、隊長とスウィフト、二人ともまともに歩く事は無理みたいですね」
ヘクトは勿論、スウィフトは極端に酒に弱い。
「運ぶしかないか。じゃんけんだな」
…レミントンがスウィフト、ジョーがヘクトを運ぶ事に。
「う~ん…フジコ…」
「…ったく。頼むぜ、俺の頭に吐かないでくれよ?」
ヘクトを背負い、宿へと向かう。
「よいしょ…っと。さあ、行きますか」
「…レミン、トン」
背負われたスウィフトが呻き声の様に話す。
「…降ろしてくれ、大丈夫…」
「本当に大丈夫なんですか?」
「背負わなくていい。…肩、借してくれ」

「…ジョー、」
背中でうわ言を繰り返していたヘクトに突然呼ばれる。
「…女の子は、トイレが近いんだよね」
ジョーが凍り付く。
「…マジで?」「ヘクト、ウソつかない」
「冗談じゃねえ、部屋まで我慢しろ!子供じゃないんだぞ?」
「急げぇ~。早くしないと…」
彼女を背負ったまま、走り出す。
「あんまり揺らすと…ウゥッ…ウエッ」
「あ~もう!何だってこんな目に俺があわなきゃいけねーんだ!」
「揺らさずに…走って…ウエッ」
「俺はフロートACじゃねえっての!」
己の不運を嘆きながら、夜の街を走る。


自宅へと戻ったプロジェクター。
護衛任務終了のメールが届いているが
目を通さず、ベッドに転がり込む。
「…良い夢見れますように…っと」

飛ん・で・レイヴンの宿泊しているホテル。
ジョーが己のドレッドヘアを丹念に洗っていた。
…失禁は免れたものの、自慢のドレッドヘアに吐寫物を撃ち込まれた様だ。
「あ~もう。俺様自慢の髪に直接吐くこたねーだろ…ったく」

今回の報酬…0C。仕事してないし。んで、やっぱり変な連中。





| 新しいページ | 編集 | 差分 | 編集履歴 | ページ名変更 | アップロード | 検索 | ページ一覧 | タグ | RSS | ご利用ガイド | 管理者に問合せ |
@wiki - 無料レンタルウィキサービス | プライバシーポリシー