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何処までも広がる白銀の世界 ノルト・ハイランド。
吹雪の止まない雪原を、三機の異なるACが、割と低速で進んでいた。
「ったく…何時まで経っても止みやしねえ」
「ぼやくな、ぼやくな。俺達が今いるのはノルト・ハイランドだ。何時来てもこんなモンだろ?」
「…おいトーマス。目標地点まで後どれ位だ?」
「そうだな…あと、半時間って所か」



「随分と厄介な仕事なのか?やけに報酬が多いな」
コルナートベイシティの安宿の一室。
自分宛ての依頼文を読み、思わず発した言葉。
内容は、雪原地帯にある地下施設の襲撃に関するものだった。
その地下施設に潜伏している勢力を叩く。只それだけの最低限の情報と、成功報酬だけが記してある。
機密保持の為、契約を交わしたレイヴンにのみ、依頼の詳細を明かすという。
「依頼主とのコンタクトは、マネージャーを通じてのみ、か。」
少々不審な依頼ではあったが、現時点では仕事は一つ。つまり、この依頼のみ。
契約を結ぶ為、マネージャーへと連絡。暫くして、依頼の詳細が提示される。



作戦領域 ノルト・ハイランド座標AP-29地下施設
作戦目標 施設襲撃隊の援護、脱出支援
開始時刻 08:00



「後方支援の為にだけレイヴンを雇うってことは、それだけヤマが大きいって事ね」
施設襲撃隊、つまり護衛対象の詳細を確認する。
「何じゃこりゃ…『レイヴン三銃士』?」
随分と洒落の聞いた名前に、思わず笑ってしまうが、襲撃隊、
つまり今回の作戦の最前線に配置されるレイヴンだ。実力まで冗談では無いだろう。



自分の同業者に対する情報収集力の甘さをやや感じながら、ACガレージへと向かう。
「どんな同業者(レイヴン)が出て来るやら…」
妙な期待を抱きつつ、出撃準備を整える。



時刻…07:55 施設周辺
襲撃時刻まであと五分。
「意外と、ザルだったな。ココの包囲網」
「こんだけ吹雪いてんだ。警戒心が緩んでも仕方無いんじゃない?」
「何だっていいさ。俺達は都合が良いってね」
「そろそろ時間だ。お喋りはその辺にしとけ」
フロート型ACがECMを展開する。
「よし、いくぜッ!」



時刻…08:00 地上
襲撃開始と同時刻。襲撃施設からやや離れた所に、一機のACが投下される。
「システム キドウ」
無機質な機械音がコクピットに響く。
「方角OK。脱出ルートOK。後は待つだけ…か」
襲撃隊脱出予定時刻まで…残り10分。



時刻…08:05 地下施設中間エリア
三機のACは早くも地下施設の70%を制圧していた。
広大な地下施設はその広さが仇となり、突然の奇襲に対応する事が出来ず、前半エリアは壊滅。
しかし、残るエリアに戦力を集中させ、必死の抵抗を続ける。
「さ、ココでラストといきたいね。残りの反応は全部集まってんだろ?」
「弾薬もバッチリ残ってるし。へへ、余裕だね。…そうだラッシュ、おNEWの両肩ブースタ、どんな感じだ?」
「ごっきげんだね。コルト、おめえのACにゃ味わえねえ速さだぜ?こいつは」
「…スピードはフロートの特権だったんだが、便利な時代になったモンだな」
随分と緊張感の無い会話であるが、此処までの戦果は彼らの実力を物語っている。



AG-3、電子戦特化型フロートAC。
頭部、両肩全てにレーダーを搭載し、それら全てとCPUに独自のチューニングを施した、
現行のACでは最高クラスの情報処理能力と索敵範囲を併せ持つ機体。そのAG-3のレーダーに異変が起こった。
軽口を叩き合っていたフロートACのレイヴンの表情が一変する。
「…って、おいトーマス。どした?」
「どういう事だ…?何故、この反応は…」
「何だ何だ?ACでもいるってのか?、出来ればカワイコちゃんの一人位はいるといいんだが」
「…その通りだ。それも一機や二機じゃ無い。四機はいるぞ。なんてこった」
四脚ACのレイヴンが茶々を入れるが、険しい表情を浮かべたフロートACのレイヴンの言葉に凍り付く。
「うそん。クライアントの情報では、ここにゃMTがワラワラ…って話だろ?」
AG-3のレイヴンは見覚えのある反応に、すぐさまCPUのデータベースを検索する。
膨大な量のMT、ガードメカ、そして、企業や組織の扱う規格統一ACのデータ。
「…あった!こいつだ。旧式の規格統一AC、『狭霧』…」
『狭霧』、旧世代の大企業ムラクモ・ミレニアム社の規格統一戦闘用AC。
同タイプだが「警備用」の『有明』と違い、明確な「戦闘用」である。
「さぎり…?旧式…なんだろ?、俺達なら何とかなるんじゃない?」
「型は古いが、それでもACだ!MTやガードメカとは比べ物にならない!撤退の事も考えると…」
耐久力、攻撃力、機動力…全てにおいてMTを凌駕する性能を持つAC。旧式とはいえ、耐久力は高い。
「この数だと予定時間を過ぎてしまう可能性がある…」
「どうするんだ?もう3分しか残ってないぞ」
「だったら3分以内に潰すだけだ!コルト、トーマス、フォーメーション1だ!しくじるんじゃねえぞッ!」



時刻…08:07 地上 
プロウセイルのコクピットに通信が入る。
「レイヴン、クライアントから通信です」
「襲撃隊が予定外の敵と接触している可能性が有る。至急、救援に向かってくれ」
クライアントの指示を受け、施設へと侵入する。
辺り一面に散らばるMT、ガードメカの残骸の多さに驚きを隠せないプロジェクター。
「こいつは…凄いな。半分は斬られている。近接戦用のACか?三機だと聞いていたが…」
スクラップの山を飛び越え、施設奥へと進む。
(大口径弾の薬莢、マシンガンの銃創、
…あれは、ノイズメーカー?ECM装備まで…一体どんなACチームなんだ…?)
戦場に残された物から襲撃隊ACの装備を絞り込もうとするが、特定など出来はしない。元ジャンク屋の悪癖だ。



時刻…08:08 地下施設後半エリア
「敵ACを確認。各機直ちに…ッ!?」「計器に異常!ECM?」
「…よし。やっこさん、やっぱり旧式だな。対ECM装備が無い。いけるぞ」
『狭霧』が現役だった頃には、電子戦技術は発達しておらず、ACサイズの対ECM装備は想定されていない。



AG-1、機動、近接戦特化型二脚AC。左腕部に強化ブレードを装備した高機動型。
右腕武装もマシンガンやショットガン等、近接戦闘用の物を装備する。
「それなりに速いが、AG-1をナメんじゃねえぞッ!」
AC本体のブースタに連動して起動する、両肩追加ブースタ「WB31B-PEGASUS」
それを装備したAG-1の機動力は、狭霧を軽く凌駕し、瞬時に側面を取る。



AG-2、砲撃戦特化型四脚AC。両肩に大口径リニアキャノンを二門搭載。
左腕部にはハンドミサイル、右腕部には補助用ハンドガンを装備した高火力、重装甲の四脚AC。
AG-1が先頭の狭霧の側面を取ると同時に、リニアキャノンを発射。
衝撃で怯んだ狭霧にAG-1の強化ブレードが閃く。――狭霧、残り三機。



時刻…08:09 地下施設後半エリア
プロウセイルの遥か前方に火線が走る。敵反応は既に三つに減っている。
(速い…かなりの戦力だ。もう、一機倒したのか…ッ!?)
前方で青い光が一瞬閃き、次の瞬間、閃光。爆発だ。
(二機目…ッ!?)
このまま進んでも自分は必要無いのではないか…そんな事を考えながら、ACを走らせる。



「くそ!なんてことだ、まともに、戦う事すら…ッ」
計器は依然機能を回復せず、火気管制すらままならず、敵機に振り回される。
AG-2、3のそれぞれ違う方向に発射されたミサイルが、狭霧を追い詰める。
回避方向を限定させるそのミサイルの起動は、目の前に迫るAG-1と共に、機体も、パイロットすらも追い詰める。
――三度目の閃光。残り、一機。



このままでは、自分が此処へ来た意味が無い。
自らの任務は、襲撃隊の脱出支援であるにもかかわらず、
十分に狙えると思っていた獲物をいとも簡単に掻っ攫われる。
レイヴンにとっては、―悔しい。
そして、四度目の爆発。敵機…全滅。



まだ、戦闘地点に到達すらしていない。早過ぎる、結末。
「まだ、残ってやがったのかッ!」
AG-1が敵機と勘違いし、向かってくる。
同士討ちは情けなさ過ぎる。全力で回避行動を取る。
「ラッシュ!やめろ、そいつは味方だ」
「味方?…ああ、撤退支援のお方?」
先程の行為を謝ろうともせず、軽口を叩くレイヴンに腹が立たない訳では無い。が、仕事である。
「コルト、FCSを停止させろ。ロック警告が鳴りっ放しじゃ信用してもらえないからな」
四脚ACからのロック警告が停止し、ACがホールドアップのポーズを取る。
先程の戦いぶりとは打って変わって、軽いノリのレイヴン達を、施設から撤退させる。



――撤退支援と言う程の事は何もしていない。彼らなら自力で脱出しただろう。
何もせず報酬が貰えたのだ。むしろ喜ばしい。…そう考えることにした。
帰還中の輸送ヘリの中で、あのACのレイヴン達と顔を合わせた。
「…若いな。」
二十歳になったばかり位の青年が、三名。
「…貴方が、さっきのACの?」
「はは、ワリィ事しちまったな。獲物は全部頂いちまうし、敵さんと勘違いしちまうし」
「おい、よせよ。 すみませんね、こいつ口が悪くて」
…やはり普通のレイヴンとは違う。自分と同類だ。どこかズレている。
「いやいや。若いっていいねぇ。ところで、君達、随分やり手じゃないか」
「君達ってのは勘弁。アンタ、ちゃんと依頼文読んだの?俺達は…」
「人呼んで!」
『レイヴン三銃士!ARMORED GUNNERS!ヨロシクゥ!』



今回の報酬…86000C。あと、妙な連中との友情。




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