――楽しかった。
胸が高鳴り、血液が音を立てて、身体を巡る。
永らく忘れていた『戦場』の鼓動が。
命の…奪い合いが。

レイジングトレントⅣを撃破し、己のガレージへと帰還したG.ファウスト。
整備員達にACを預け、自室へと向かう。

何年ぶりだったのだろう。
VRシミュレータ等ではなく、実戦でACと戦ったのは。
現役の頃…空の無い世界、そして管理者の手から巣立った人類が降り立った大地。
あの頃は数え切れない程のMTを、ガードメカを、ACを――命を、壊した。
あの、「サイレントライン」攻略作戦の後、自らは引退した。
己の人生で最も楽しかった瞬間は、あの作戦だと断言できる。
企業の枠に捉われず、レイヴン達が力を合わせて果たしたあの作戦。
『レイヴン』という職業柄、主な依頼主である企業は切っても切れない存在だった。
自分が嫌悪する企業の枠に捉われずに、同業者達と協力して作戦を成功させたあの戦いが。

あれを超える程、楽しい戦いが待っている…ジャックの描くシナリオの向こうに。
だから、ついて行く。思想や人望等では無く、あれを超える戦いが待っている。

――ただ、それだけの為に。

時刻…19:30
自室で仮眠を取り、その後情報を整理する。
全22名のレイヴンは残り9名にまで数を減らしていた。
アライアンス、バーテックス共に、所属レイヴンの大半を失い、
アライアンス戦術部隊隊長のエヴァンジェは行方不明。
実質、アライアンス側のレイヴンは若き獅子、ジャウザー一人となっていた。

現状の整理を終え、コップへ注いだ水を飲み干す。
――奥の端末から、コール音が響く。ジャックからの次の依頼だった。

『我々の拠点、サークシティの心臓部とも言える
 都市動力炉キエラを、アライアンスが狙っているとの情報を得た。
 恐らく奴等もレイヴンを送り込んでくるだろう。それを貴方に『選定』して欲しい。
 資格を持つ者であれば逃がし、持たない者であれば用は無い。消してくれ』

時刻…20:02 都市動力炉キエラ内部
「待って…ACの反応よ。目的は既に果たしているわ。
 無理をせず、脱出するかどうかは貴方次第よ」
コクピットに専属オペレータ、シーラの声が響く。
炉心を破壊し、作戦を成功させた一機のACが地上を目指す。
(弾は十分。機体にも特に問題は無い。…どうする?)

「炉心は既に御釈迦か。選定の価値は有りそうだ」
動力炉内部へとACを進ませ、それなりの広さを備えた場所で待ち伏せの姿勢を取る。
「力を見せてもらおう。そして、覚悟も」
開いたゲートへ銃口を向けつつ、そう呟く。

『敵ACを確認。パンツァーメサイアです。
 敵はブレードを装備。近距離での戦闘は危険…』
五月蝿いCPUの機械音声を切り、マシンガンを構える。
「道を開けろ!邪魔なんだよ!」
二機のACの右腕武装が、同時に火を噴いた。

カンカンカン、と跳弾したマシンガンの弾が機体へと当たる音が響く。
(良く動く…。左右に狭い地形で、あれだけ動けるとは…やるようだ)
施設内では広い方とはいえ、ACが機動戦を展開するには少々狭い。
上下の動きを含んだトリッキーな動きは、操るレイヴンの技量の高さを示していた。

(…軽装だが、フレームに重量があるのか?補足しきれて無いぞ?)
ロックアラートが時々消える。どうやら敵機はこちらを補足し続ける事が出来ない様だ。
(機動戦に持ち込めば…いけるッ)

敵機の動きに反応が追い付かず、翻弄されるパンツァーメサイア。
(老いたな…だが、まだ手は有る)
敵に対して垂直に下がり、壁を背にする。
死角を少しでも減らし、敵機を補足する為だ。

「動きを止めた!?何を…ッ!?」
一瞬だけの戸惑いが、ACの動きを鈍らせる。
ゴガン、という鈍い音と共に、CPUが悲鳴を上げる。
『右腕部、破損』 
右腕のマシンガン共々、肘から下が切断される。関節部にロケットが直撃したのだ。
「くそ!今までの動きはブラフだったってのかよ!」
(こんな閉所じゃミサイルは役に立たない…ブレードでしのぐしか無いのか?)

主武装を失っても、敵ACの動きにダメージは感じられない。戦意を失ってもいない様だ。
(腕は見せてもらった。次は…)
「…お前は、何の為に戦うのだ?」 

「な…!?」
突然、敵機から通信が入る。声がコクピットに響くと同時に、敵ACが動きを止める。
戦場で武器を突き付け合っている時に、である。正気の沙汰では無い。
「…生きる為さ」
だが、何故か己もACを止め、敵ACを見つめたまま口を開いてしまう。
可笑しな話だ。先程まで撃ち合っていたAC同士が動きを止め、会話をしている。

相手の回答を聞き、少しだけ微笑む。
(…合格だな)
ブースタを吹かし、上部の通路へと向かう。
目的は果たした。長居は、無用だ。

「…逃げる?」
不可解な行動を取り、そして離脱していくパンツァーメサイアを目で追う。
右腕部ごと主武装を失った自機にとってはありがたい事なのかもしれない。
「どうやら逃げられた様ね。…トラップ等を仕掛けた形跡は無いわ。脱出して」
「了解」
シーラの指示に従い、動力炉から脱出する。
先程の敵ACの不可解な行動については、今は考える必要は無いと割り切って。

施設の入り口まで目と鼻の先まで到達した時、突然シーラから通信が入る。
「熱源反応よ…ACの物じゃない。どうなってるの?」


役者は揃った。
全ての探求者が集い、踊る道化を超えて行かなければ、人類に明日は無い。
人の操りし道化と、人では無きモノによって操られる道化。
三名の探求者は、誰が何を望み、何を手に入れるのだろうか。

明日の見えない人類の向かう先は…





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