レイヴン
アナトリアの傭兵。―
アナトリアの傭兵。―
わたしは戦場にいた。
戦場。生死を掛ける。それは戦い場所。
わたしはその中にいた。いつも。
額から流れる血液が目に染みる。酷く咽喉が渇く。死ぬ。死ぬ。
戦場。生死を掛ける。それは戦い場所。
わたしはその中にいた。いつも。
額から流れる血液が目に染みる。酷く咽喉が渇く。死ぬ。死ぬ。
わたしの番が来ただけだった。次はわたし。わたしが殺した、あいつらのように。
目の前のモニタに映る光景がやけに綺麗。これが戦場……悪くない。
ただいえる事は、まだ死にたくは無い、とかそういうことではない。
一言だけ。そう、そっと一言、呟いた。力強く。凍えるような、鋭さで。
その言葉を聞いた相手は少しわたしを撃ち抜くのを躊躇ったがすぐ殺した。
自然に出てきた最期の断末魔。ひしゃげかけたコクピット内の大気を振動させた。
目の前のモニタに映る光景がやけに綺麗。これが戦場……悪くない。
ただいえる事は、まだ死にたくは無い、とかそういうことではない。
一言だけ。そう、そっと一言、呟いた。力強く。凍えるような、鋭さで。
その言葉を聞いた相手は少しわたしを撃ち抜くのを躊躇ったがすぐ殺した。
自然に出てきた最期の断末魔。ひしゃげかけたコクピット内の大気を振動させた。
ここでわたしは死んでしまう。
物語の歯車は此処で一旦、停止する。
物語の歯車は此処で一旦、停止する。
カツリ、カツリと靴底が硬い廊下の床を叩く。
それは二人の人間が鳴らす音。
当人は、背の高い男と瘠せたの女。
それは二人の人間が鳴らす音。
当人は、背の高い男と瘠せたの女。
「はい。彼は目覚めましたが……、しかし!」
男へ反論するは女。女の名はフィオナ。
反論されるはエミール=グスタフ。〈コロニーアナトリア〉の最高権力者だ。
反論されるはエミール=グスタフ。〈コロニーアナトリア〉の最高権力者だ。
「けけけけけ。やすやすとアレを返却するわけにはいかない。あのネクストACは私の物だ」
彼は笑っている。ぎらりんと眼を輝かせている。壊された未来。それは修復されるのだと、企んでいる。彼を……あのレイヴンを使って。
「しかし……彼は、意識が在りません。それでは人形です!!」
拾われたレイヴンは死にそうだった。そして、魂だけ死んだ。
体は生きている。
これが本当に生きているということなのか……それは解らない。
体は生きている。
これが本当に生きているということなのか……それは解らない。
「AMS適正はあったのだろう。それに彼はレイヴンだ。そうだ、きっと……」
「依頼するというのですか!?」
「ああ。私の為……このコロニーアナトリアの未来の為。彼には 協 力 してもらう」
「……卑劣な」
「依頼するというのですか!?」
「ああ。私の為……このコロニーアナトリアの未来の為。彼には 協 力 してもらう」
「……卑劣な」
「くけけけけけ。こ、これでアナトリアは、……全世界は、私の物だ。あっはっはっはっははははははは!!!」
物語の歯車は再び動き出す。
ぎりぎりと高鳴り、操る者をひき潰しながらぐるぐるぐるぐる。
全てを愚図愚図に引きちぎる為に。
鋼鉄の歯車は止まらない。
ぎりぎりと高鳴り、操る者をひき潰しながらぐるぐるぐるぐる。
全てを愚図愚図に引きちぎる為に。
鋼鉄の歯車は止まらない。
―――死は怖いものだ。それが恐怖だからこそ、人は生きていける。
コンコン……彼女の柔らかなこぶしは硬い扉を叩く。
「入るわね?」
返事は無い。フィオナは躊躇いがちに閉ざされた扉を開ける。
レイヴンのかすかな吐息が病室の支配者だった。
レイヴンのかすかな吐息が病室の支配者だった。
レイヴンはベッド仰向けに寝かされていた。
医療器具は粗方取り外されていた。
反射なのだろう。レイヴンは此方に首をぐるりと、捻った。
開いた口から涎が零れる。
医療器具は粗方取り外されていた。
反射なのだろう。レイヴンは此方に首をぐるりと、捻った。
開いた口から涎が零れる。
「ごめんなさいね……起こしちゃった?」
目は開けているが何も見てはいない。
「テレビ点ける?……それとも……」
首筋にAMSジャックが埋め込まれているのが見えた。
彼女の目尻から涙が流れた。
彼女の目尻から涙が流れた。
「ごめんね。……ごめんね!!」
全ては時代のせいなのだ。 生まれた時代が悪かったのだ。
意識の無いレイヴンにフィオナから依頼が伝えられる。
その始終、レイヴンの顔は微しも動かなかった。だが……
その始終、レイヴンの顔は微しも動かなかった。だが……
「……ということなの」
彼は彼女の説明を聞いていたのかは分からない。
だが、レイヴンは立ち上がった。
だが、レイヴンは立ち上がった。
「……ぁ……。」
首は相変わらず捻れていた。
レイヴンの口は何かを、意味ある言葉を紡ぎ出そうとしていた。
しかし、無常にも言葉にはならずに、空気が吐き出されるだけで終わった。
レイヴンの口は何かを、意味ある言葉を紡ぎ出そうとしていた。
しかし、無常にも言葉にはならずに、空気が吐き出されるだけで終わった。
音が鳴る。喧騒。それとは。違う音。貴様を。何か、機械が蠢く音。高い音。今度は。低い音。響く音。鈍い音。音。わたしが。音、・・…音!!
その全てが。殺す。圧し掛かり、締め付け、わたしを・。・。、。」。::。、・
その全てが。殺す。圧し掛かり、締め付け、わたしを・。・。、。」。::。、・
レイヴンの頭にノイズが走った。だがすぐ消える。
それは生前の記憶の痕。今のレイヴンにはそれを感じ取れない。
頭に”判りません”との文字が出る事も無い。何も解らずに、消えていくのだ。
それは生前の記憶の痕。今のレイヴンにはそれを感じ取れない。
頭に”判りません”との文字が出る事も無い。何も解らずに、消えていくのだ。
しかし唯一、彼の頭にこびりついて離れないものが在った。それは意思ではなく、意地。
レイヴンであった彼の根本の根本。
レイヴンであった彼の根本の根本。
『 依頼・・・・ ヲ、、 完璧・・…に・・・スイコウ…・・・ス、スルッ!! 』
これだけは譲れない。絶対に消えない。消されない。唯一つ残された信念。
だからこそ、レイヴンは空を駆けることが可能である。
レイヴン
―――アナトリアの傭兵が往く。――
―――アナトリアの傭兵が往く。――
【糸売 ?】