《ごこん…ががごん》

重機械の駆動音が響く此処はキサラギの格納庫。
食料や衣類、そして自動小銃あたりの火器が置いてあり、
小さな無人MTたちがそれを仕分けしてベルトコンベアで必要な場所へと送る。
先ほどの重機械の音は此処から出たものだ。
忙しく走り回るMTたちとは反対に、隅っこに見える二つの人影。
一人は女……、いや男なのだろう、性別的には。
だから彼だが彼女だか不明の……いや三人称は仮に、彼女、としておこう。
彼女の名は、イャン・ウホ・オソカッタジャナイカ。
キサラギにて性転換をうけたしがない運び屋である。

もう一人は男。彼は備品であるウオッカを飲んでいる。
彼はこの格納庫の責任者なのだろうが、
機械に居場所を追われている、
そんな感じが彼には漂う。

不意に彼女は男の飲む酒を取り上げた。
「おい、なにをするんだ?!おれの……」

喚く男を尻目に愛車トラッキングベイビーに乗り込む。
キーを押し、イグニション。

「依頼主に言っときな。今度はちゃんと70コームきっかり振込んどきなってさ!」

アクセルを踏んだ瞬間、トラックは格納庫を飛び出した。



月明かりに照らされたそれは道路を走る。
暫く行くと彼女は時計で時間を確認し、
少しトラックのスピードを落とす。
そしてサイドポケットからウォッカ取り出し口に含む。
其れを少しずつのどに通していく。
もう少しで目的地に着く。

でも何時も何時も安全に事が運ぶと思っちゃいけない
邪魔するものが現れたのだ。



現れたのは三機のオストリッチ。
「おいおいおい、こんな所を嬢ちゃん一人でおっつくなんてぶようじんじゃねーーーーー?」
「そうだぜ。おれ達とぉおおおおおおおおお」
「ひぃよおおおおおおおおおおお!」
彼等は機体に取り付けられたスピーカーから、嗄れた声で彼女に話し掛けてきた。
彼等は薬でもやっているのだろうか、とてもハイだ。
だが薬中だろうが相手はMT、こちらはトラック。
戦えば万に一つでも勝ち目は無い。
だからイャンは力強くアクセルを踏む。
そうしたらちんぴらどもは道路にオストリッチで立ちふさがってきた。

「これで逃げ場はないぜーーー!」
「おとなしく身包みぉおおおおおおおお」
「ひぃよおおおおおおおお!」

でもトラックは止まらない。

「ひええーーーーーーー!」
「ぶつかっちまうぜぇえええええ」
「ひぃよおおおおおおおおおおおおお!」

イャンは巧みにハンドルを切り、MTを交わしていき、

「まじかーーーーーーー!」
「ぶつかっちまうぜぇえええええ」
「ひぃよおおおおおおおおおおおおおお!」

みごとにMTたちをすり抜けた。

「ひぃよおおおおおおおおおおおおおお!」

みごとにすり抜けた……が、

《ダダダダダダダダッ!》

機関砲の咆哮。
聞こえるトラックのスリップの音。
トラックは派手にスピンし、ガードレールにぶち当たった。

――――――場面は変わる。

「たっく、おれの……」
男はふらふらと格納庫を彷徨う。
MTたちに踏まれそうにもなる。
男は叫ぶ。
「……もう如何にでもなれっ!」

《ドゴンっ!》

突然何処からとも無く爆発音。
男は情けなく地面に伏せて、
頭を抱えておいおい泣いた。

爆発したのは男のいた格納庫の隣の隣。
旧世代研究の資材置き場。
屋根には大穴がぽっかりと口を開け、
まるで中から何かが産まれたように見えた。



――――――場面は戻る。

イャンはトラックから引きずりだされていた。

「へへへ、てまどらせやがって、これからどうしてくれよかーーーーー!」
小さい男は黄ばんだ歯を剥き出しにして笑っている。
「決まっているぅううううううううううう!」
長い男はイャンの身体を抑える。
「ひぃよおおおおおおおおおおおお!」
太った男はイャンの服を脱がし始める。

「うえええええ!すげぇぜぜえええええええ!」
「やっちまおうぜーーーーーーーーーーーー!」
「ひぃよおおおおおおおおおおおお!」

ひゅう、と一陣の風が吹く。
そして爆ぜる閃光。

後に残るのは夜風に漂うイオン臭。
倒れるちんぴら。
横たわるイャン。
彼女を見下ろす赤黒い巨大な天使。

彼女は高々と拳を天に突き上げ、
意識を失った。





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