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 その夜は月がはっきりと見えた。
 綺麗だった。
 そんな時に赤い雨が降った。
 それは世界を埋め尽くした。
 後に残るのはその残骸と、
 焼け、爛れた大地のみ。
 私たちは全てを失った。

 だがその半年か幾らか経過すると、
 失ったものも帰ってくるのものである。
 あの特攻兵器たちもメッキリ降らなくなった。
 最初のうちはざばざばと雨あられのようだったのに。
 今では一週間に郊外にほんの少しだけだ。
 雨の方がもっと多い。

 それにアライアンスのおかげで
日常品もいたるところに回るようになってきた。

 だが束の間の安寧は、今日で終わりを告げる。

 突然のバーテックスの襲撃予告。
 ――二十四時間後の悲劇の始まり。

 都合の良すぎるキサラギの生物兵器の脱走。
 ――小さいAMIDA、大きいAMIDA。そして空飛ぶAMIDA。

 機会を狙っていたかのように再び世界を蓋う特攻兵器。
 ――そして謎の兵器、パルヴァライザーの出現。

 いまや、アライアンスはぼろぼろだ。
 戦術部隊は壊滅状態。
 レヴィアタンの全機消失。
 彼らに戦う力は残されては居ない。

 でもバーテックスも同じようなもの。
 戦闘部隊のレイヴンはジャック・Oに粛清された
 ジャック・Oも行方をくらませた。
 先導者を失い、力の象徴たるACもない。
 彼らには戦う気力さえ残っていない。

 戦闘は膠着状態。
 誰かがどちらかに肩入れするだけで戦況は傾く。

 だがその後の歴史を大きく揺るがす従来な役目を背負いたいやからは
いったい何所にいるのだろうか。いや、居ない。

   誰も居ない。

 誰も居なかったのだ。


 しかし地上ではそんなこんなになっているのだが地下ではそうも行かなかった。
 何故なら、誰かが戦っているからだ。
 
 一体、誰が?

 答えよう。彼はレイヴン。

 誇り高き傭兵だ。



@ACLR超外伝:~正義の味方は闇夜を征す。往け我らの救世主!!~



 時は少し遡ることになる。

 崩れたビル。
 穴だらけのアスファルト。
 あたりには突き刺ささった特攻兵器が天にのびる。
 そんなところに屋根が吹き飛ばされたバーボンハウスが一軒。
 そこのカウンターには老人。
 彼のほかには誰も居ない。
 居るのはレイヴンG-ファウストただ一人。
 バーテンが居ないので彼は居なくなったバーテンの代わりに
 自分で自分の酒を棚から選ぶことになる。
 腰が痛い。
 実に侘しい。

 入り口から鐘の音。
 老人はそこに目を向ける。
 ジャック・O。
 バーテックスの先導者。

「……ファウスト。緊急の依頼だ」
 ジャックは息を切らせている。
「…飲んでからじゃ、駄目か?」
「駄目だ」
「そうか……」
「……すまない」
「謝る事はないさ。本当にない。
 んで何時だ。何時、俺は出撃すればいい?」
「………すまない」
 ジャックは再三頭を下げた。








 「おそかったか……?」
「…………。」
 「まあ、やれる事はやってみよう」
「………。」
 「まだ、死ぬわけには、いかないからな」
「………………。」

 G-ファウストは愛機パンツァーファウストに語りかける。

 G-ファウストはパンツァーメサイアはエレベータに乗せる。

 ジャックの話によるとこのエレベータから降りた後、奥へ進み、中枢を目指すらしい。
 だが道順の全ては推測に過ぎない。
 ジャックも誰も中枢にはいった事がない。
 だれも入ったことの無いところへ往く。
 何が待っているかは誰も分からない。
 だが、彼はレイヴンだから。
 それ以上でも以下でもないから。

 「 依頼を完璧に遂行する。 」

 それがレイヴンであるかれの存在理由なのだ。


 どんな思いがあろうともエレベータは地下へと降りていく。

 エレベータは止まり、扉を開く。
 パンツァーメサイアはエレベータからおりる。

 そして突然の警告。

 《敵機セッキン・・・キケンキケンキケンッ!》

 パンツァーメサイアのレーダーが敵影反応を示したのだ。
 距離は近い。

 G-ファウストはコンソールを叩き、パンツァーメサイアに命じる。
 パンツァーメサイアの旧式のCOMが素直に主人の命に従う。
 「戦闘モード、起動!」
‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐
 作戦目標、敵勢力ノ殲滅。周辺地形でーた取得。
 中央まるちすくりーんニれーだー及ビ作戦領域ヲ表示。
 FCSヲ起動-全部武装ヘノ電力供給開始……最終安全装置、解除。

  <めいんしすてむ、戦闘もーど起動シマス!!>

‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐

 G-ファウストはパンツァーメサイアのスラスターを吹かせ、跳躍。
 後ろから爆音が聞こえる。
 エレベータが破壊された。
 想像以上の感激的な出迎えであった。

―――――――――――――


 大気を爆裂させ、ACパンツァーメサイアは疾駆する。
 敵機を撃破する、そのために。


 頭部COMが敵機の正体を告げる。
 《敵ACヲ確認。ACぴんちべっくデス。敵ハぐれねーどヲ装備、近距離戦ハ危険……》
 ACピンチベック。
 過去最強をうたったランカージノーヴィーの愛機であるデュアルフェイスを模したもの。贋物。


『……調子、良さそうだねえ。嘘とも知らずのこのこと……』

「お互いな…。お前もレイヴンなら、戦場で死ぬ覚悟は出来ているな 」

『そうだね』

「ほう……、わかった、かね」

『ジナイーダと約束したんだ』

「約束か……。まあいい、そこを退いてくれないか。そうでなければ……」

『貴方に僕は殺せないよ』

「……そうか。老兵をなめるな」

『そうだよ。……この機体で負ける筈が、ないんだもの!』


英雄の贋物と戦場の救世主が激突した。

ピンチベックのグレネードが咆える!
ピンチベックのアサルトライフルが唸る!
ピンチベックのレーザーブレードが光る!

だが、パンツァーメサイアには当たらない。

G-ファウストはミサイルを何発か撃った後、ライフルで的確に射抜く。
弾丸は各部のジョイント部分に命中し、機関の動きを鈍らせる。
鈍った所で次は目を潰す。―――胸部メインカメラを潰す。―――頭部センサーを潰す。

『何故?なんで当たらないんだ!』―――誰も居ない。

『管制塔がいれば……』―――仲間など何所にも居ない

『負ける筈が無いんだ!』―――誰も助けに来ない。

『この機体で、負ける、筈が、ないんだ……』―――彼は何時も一人だった。

煙を上げ、紫電を纏い、ピンチベックは踊る。
ふらふらゆらゆらととても滑稽だった。
彼は死に急ぐ小汚い蛾だった。何も出来ない唯のクズだった。

『ごめん……ジナイーダ。僕は……』

ピンチベックは地面に片膝をつく。

『……僕は、誰にも、必要とされていなかったッ!!!』

 ―――贋物は燃える。

『でも……でも僕は、僕は!!』
                    ピンチベック
己が敵パンツァーメサイアへ背中の荷を捨て 贋 物 は走る。

展開される閃光。

閃光は灯火であり蝋燭の火であった。


そして、――――――――――――――――……。




            パンツァーメサイア
 連鎖する爆発音をBGMに機甲救世主は中枢へと向かう。

 依頼を果すために。

 自分の存在理由を創るために。

 せめて特攻兵器が降らない世界にする為に老兵は死に場所を求め、彷徨い往くのだった。


                                    〔完〕


        




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