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「あるナービス領レイヴンの話」(2007/05/03 (木) 17:16:50) の最新版変更点
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『・・・・・・ですから、現在もっとも活発に衝突を繰り返しているのはミラージュとナービスです。 また、表立っての行動はあまり聞かれませんがクレストも動きを――――』
「あーあーはいはいわかったわかった。 そういうことはあとでゆっくりメールしてくれ」
なお延々と最近の企業共のいがみ合いを説明しようとするオペレーターの声を無理矢理遮り、狭いコアの中でシートにもたれかかる。
ゆっくりと息を吐きながら、めまぐるしく変わる外の景色を眺めてみる。
・・・やめた、見れども見れども断崖絶壁が続くようじゃあ意味ねぇわな。
「やれやれ・・・ナービスも面倒なもん見つけてくれやがって」
誰にともなく愚痴をこぼす。
いや、愚痴というよりは八つ当たりか。
何せ、自分はそのおかげでこうして稼がせてもらっているのだから。
『――――目標地点に到達。 戦闘準備に入ってください』
不意にオペレーターの声がコアの中に響く。
(なんか機嫌悪そうだが、拗ねてんのかね)
まぁ、そんなことはどうでもいい――――仕事の時間だ。
「さて・・・行くか、相棒」
コントロールパネルを叩き、クラッチを踏み、システム起動。
システム、待機モードから戦闘モードへ。
同時、ヴン、と鈍い音が頭上から響く。
それは愛機のCOMが目覚めてまず最初にする欠伸。
そして、これから狩る獲物に対しての舌なめずり。
コアの中にごまんとひしめく計器類があわただしく動き出す。
「うーむ、今日もやっぱり絶好調。 さすが俺の整備」
意味もなく、自賛する。
たいしたことはない、ちょっとした景気づけだ。
だがしかし、その言葉に嘘はない。
武器弾薬、関節、内装。
どの部分にも異常はない。
もちろん異常をきたすような整備をする馬鹿にレイヴンを名乗る資格はないが。
ふん、とひとつ鼻を鳴らしてシートに腰を据え直し、
「――――よっしゃ、稼がせてもらいましょ」
獰猛に嘯く。
そしてゆっくりと、しっかりとスティックを握る――――刹那、レイヴン[リオプレウス]の駆る[ヴリトラ]が、地上へと解き放たれた。
*
――――馬鹿でかい鉄の塊が落ちたにしては、随分と軽やかな着地をする。
よくこの重さと落下による衝撃を脚の屈伸だけで支えられるな、と毎度思う。
しかしよくよく考えてみれば、人間の5倍にもなる大きさのACにとって、この程度の動作は人間が多少高いところから飛び降りるのと変わらないのかもしれない。
そんな余分な思考を垂れ流しながらも、目はレーダーに映る敵影の数を場所を把握している。
数は4、おそらくさっき運ばれている最中に見たミラージュのMTだろう。
瞬間、顔をしかめる。
「おいおい・・・ダチョウ狩りくらい、合格したばっかで泡食ってる新人にだってできるだろうがよ」
あからさまにため息をつき、軽く頭を抱える。
レーダーに映った4機のMT――――OSTRICHは、MTの中でも最弱と言って過言ではない代物だ。
確かに新興企業であるがゆえに兵器物資に乏しいナービスに、それもたとえ建前とはいえ『侵攻』ではなく『調査』に向かうにはコレで十分だろうが、レイヴンが相手取るには役不足なんてレベルではない。
やれやれ、と首を振りながら、それでも気の抜けた指に無理矢理力を込め、スティックを握りなおす。
これは『仕事』だ、いちいち文句は言っていられない。
くだらないほど容易いなら、楽に稼げると思わねばなるまい。
そう自分を納得させ、目を閉じ、深く息を吸う。
ゆっくりと呼気を整え、再び開かれた眼はまさに猛禽のごとく鋭い。
「しゃーねぇ・・・さっさか終わらせて帰るとするか」
小さくそう呟くが早いか、ペダルを限界まで踏み込み、蒼い機体を躍らせる。
両手に握ったスナイパーライフルを活かす為に搭載した、全FCS中最長のロック距離を誇るF75Dのサイトには、すでに一匹目の哀れな生贄の反応が。
フルブーストで加速した勢いを殺さぬまま旋回し、角を曲がってMTの姿を視認するが早いか、両手のスナイパーライフルが同時に火を吹いた。
『なっ・・・貴様・・・・・・?!』
今際の言葉すら残せずに、鉄屑と化したMTを尻目に、さらにその奥から歩み出てこようとしていたMTに向かって引き金を引く。
『お前・・・まさかナービスの・・・うわぁぁぁぁぁっ!』
驚愕そのものという声を上げ、絶命するパイロット。
あまりにわかりきったことをほざいて死んだ相手に対し、思わず愛想を尽かしてしまう。
やはり、雑魚は雑魚らしい断末魔しか吐けないのだろうか。
黒煙を上げる鉄の塊を踏み越え、断崖の先、少しばかり開けた場所でうろちょろしていた二機に照準を合わせる。
『ひっ・・・来るな、来るなぁぁぁ!』
『こ、この野郎・・・これでも喰らえ!』
無様に震えた声を上げ、必死で恐怖心を打ち消しながら、MTのパイロットがミサイルを放つ。
だが、しかし。
「・・・どこ狙ってやがる」
軽量フレームに高出力ブースタを搭載した愛機からすれば、そのミサイルは遅すぎる。
ブースタを吹かして宙を舞い、容易くミサイルの軌道を逸らす。
二機のMTが慌ててこちらを振り仰ぐ、が、それよりも早く二発ずつの弾丸をMTに叩き込み、黙らせる。
MTが派手な火柱を上げて少しも経たないうちに、コアの中に無機質な機械音声が響き渡った。
『――――周辺にエネルギー反応なし。 敵部隊の全滅を確認しました』
「・・・はい、ご苦労さん」
張り詰めていた緊張の糸を緩め、肩を鳴らす。
こんな程度の仕事で62000cとは随分奮発したものだ。
(仕送りの分を差っ引いたら、今日は気楽に飲み明かすか)
そんなことを考えながら、何気なくメインモニターを空へと向ける。
見上げた空は、どこまでも青く澄み渡り――――その空を、吹き抜ける風に抗えぬ雲が、何処ともなく流れていった。
――――ナービスの発見した『新資源』。
その存在は、この荒れ果てた荒野に争いの種を撒き散らし。
芽生えた争いは、レイヴンに多くの“対”をもたらした。
報酬と、損失。
名声と、汚名。
尊敬と、侮蔑。
生と、死。
彼らが手にしてゆくのは、果たして、いずれか。
『・・・・・・ですから、現在もっとも活発に衝突を繰り返しているのはミラージュとナービスです。 また、表立っての行動はあまり聞かれませんがクレストも動きを――――』
「あーあーはいはいわかったわかった。 そういうことはあとでゆっくりメールしてくれ」
なお延々と最近の企業共のいがみ合いを説明しようとするオペレーターの声を無理矢理遮り、狭いコアの中でシートにもたれかかる。
ゆっくりと息を吐きながら、めまぐるしく変わる外の景色を眺めてみる。
・・・やめた、見れども見れども断崖絶壁が続くようじゃあ意味ねぇわな。
「やれやれ・・・ナービスも面倒なもん見つけてくれやがって」
誰にともなく愚痴をこぼす。
いや、愚痴というよりは八つ当たりか。
何せ、自分はそのおかげでこうして稼がせてもらっているのだから。
『――――目標地点に到達。 戦闘準備に入ってください』
不意にオペレーターの声がコアの中に響く。
(なんか機嫌悪そうだが、拗ねてんのかね)
まぁ、そんなことはどうでもいい――――仕事の時間だ。
「さて・・・行くか、相棒」
コントロールパネルを叩き、クラッチを踏み、システム起動。
システム、待機モードから戦闘モードへ。
同時、ヴン、と鈍い音が頭上から響く。
それは愛機のCOMが目覚めてまず最初にする欠伸。
そして、これから狩る獲物に対しての舌なめずり。
コアの中にごまんとひしめく計器類があわただしく動き出す。
「うーむ、今日もやっぱり絶好調。 さすが俺の整備」
意味もなく、自賛する。
たいしたことはない、ちょっとした景気づけだ。
だがしかし、その言葉に嘘はない。
武器弾薬、関節、内装。 どの部分にも異常はない。
もちろん異常をきたすような整備をする馬鹿にレイヴンを名乗る資格はないが。
ふん、とひとつ鼻を鳴らしてシートに腰を据え直し、
「――――よっしゃ、稼がせてもらいましょ」
獰猛に嘯く。
そしてゆっくりと、しっかりとスティックを握る――――刹那、レイヴン[リオプレウス]の駆る[ヴリトラ]が、地上へと解き放たれた。
*
――――馬鹿でかい鉄の塊が落ちたにしては、随分と軽やかな着地をする。
よくこの重さと落下による衝撃を脚の屈伸だけで支えられるな、と毎度思う。
しかしよくよく考えてみれば、人間の5倍にもなる大きさのACにとって、この程度の動作は人間が多少高いところから飛び降りるのと変わらないのかもしれない。
そんな余分な思考を垂れ流しながらも、目はレーダーに映る敵影の数を場所を把握している。
数は4、おそらくさっき運ばれている最中に見たミラージュのMTだろう。
瞬間、顔をしかめる。
「おいおい・・・ダチョウ狩りくらい、合格したばっかで泡食ってる新人にだってできるだろうがよ」
あからさまにため息をつき、軽く頭を抱える。
レーダーに映った4機のMT――――OSTRICHは、MTの中でも最弱と言って過言ではない代物だ。
確かに新興企業であるがゆえに兵器物資に乏しいナービスに、それもたとえ建前とはいえ『侵攻』ではなく『調査』に向かうにはコレで十分だろうが、レイヴンが相手取るには役不足なんてレベルではない。
やれやれ、と首を振りながら、それでも気の抜けた指に無理矢理力を込め、スティックを握りなおす。
これは『仕事』だ、いちいち文句は言っていられない。
くだらないほど容易いなら、楽に稼げると思わねばなるまい。
そう自分を納得させ、目を閉じ、深く息を吸う。
ゆっくりと呼気を整え、再び開かれた眼はまさに猛禽のごとく鋭い。
「しゃーねぇ・・・さっさか終わらせて帰るとするか」
小さくそう呟くが早いか、ペダルを限界まで踏み込み、蒼い機体を躍らせる。
両手に握ったスナイパーライフルを活かす為に搭載した、全FCS中最長のロック距離を誇るF75Dのサイトには、すでに一匹目の哀れな生贄の反応が。
フルブーストで加速した勢いを殺さぬまま旋回し、角を曲がってMTの姿を視認するが早いか、両手のスナイパーライフルが同時に火を吹いた。
『なっ・・・貴様・・・・・・?!』
今際の言葉すら残せずに、鉄屑と化したMTを尻目に、さらにその奥から歩み出てこようとしていたMTに向かって引き金を引く。
『お前・・・まさかナービスの・・・うわぁぁぁぁぁっ!』
驚愕そのものという声を上げ、絶命するパイロット。
あまりにわかりきったことをほざいて死んだ相手に対し、思わず愛想を尽かしてしまう。
やはり、雑魚は雑魚らしい断末魔しか吐けないのだろうか。
黒煙を上げる鉄の塊を踏み越え、断崖の先、少しばかり開けた場所でうろちょろしていた二機に照準を合わせる。
『ひっ・・・来るな、来るなぁぁぁ!』
『こ、この野郎・・・これでも喰らえ!』
無様に震えた声を上げ、必死で恐怖心を打ち消しながら、MTのパイロットがミサイルを放つ。
だが、しかし。
「・・・どこ狙ってやがる」
軽量フレームに高出力ブースタを搭載した愛機からすれば、そのミサイルは遅すぎる。
ブースタを吹かして宙を舞い、容易くミサイルの軌道を逸らす。
二機のMTが慌ててこちらを振り仰ぐ、が、それよりも早く二発ずつの弾丸をMTに叩き込み、黙らせる。
MTが派手な火柱を上げて少しも経たないうちに、コアの中に無機質な機械音声が響き渡った。
『――――周辺にエネルギー反応なし。 敵部隊の全滅を確認しました』
「・・・はい、ご苦労さん」
張り詰めていた緊張の糸を緩め、肩を鳴らす。
こんな程度の仕事で62000cとは随分奮発したものだ。
(仕送りの分を差っ引いたら、今日は気楽に飲み明かすか)
そんなことを考えながら、何気なくメインモニターを空へと向ける。
見上げた空は、どこまでも青く澄み渡り――――その空を、吹き抜ける風に抗えぬ雲が、何処ともなく流れていった。
――――ナービスの発見した『新資源』。
その存在は、この荒れ果てた荒野に争いの種を撒き散らし。
芽生えた争いは、レイヴンに多くの“対”をもたらした。
報酬と、損失。 名声と、汚名。 尊敬と、侮蔑。生と、死。
彼らが手にしてゆくのは、果たして、いずれか。
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