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第六話 出会い
カナミは、全てに気づいてしまった。
父がいなくなりすぐにレイヴンが出撃したことで、やはり父がレイヴンだったのだと。
母が死んだ時から、自分のカンは絶対に信じようと思っていたのに、
なぜあの時、父の言い訳を信じて、レイヴンでないと思い込んでしまったのだと、後悔していた。
『おとうさん、、。』
牧場の広場に広がる、二機のACの残骸。
コア部分はどちらのACも完全に吹き飛び、形すら残していなかった。
もはや涙も枯れ、カナミはただ、そこに立ち尽くしていた。
父の死から、三日が経っていた。
牧場は、父と従業員達が死ぬ直前に完全オートにした事で、
しばらくは持つだろう。
だがしかし、カナミ自身は、自分の心がこの静寂にいつまでも耐えられるとは、思えなかった。
四日目に残骸のある広場に再び赴いた時だった。
スーツを着た女性がソコに立っていた。
『あなたは誰?』
「私は、レイヴンズ・アークのレンナ=フォーチュンです。なんだか大変な事になってるみたいね。」
久しぶりに生きた人の声を聞いた事で、もはや枯れ果てたと思っていた涙が、再びカナミの目にあふれ出してきた。
『う、うわぁぁ、、うわぁぁああああああん!!』
カナミは、レンナに抱きつき、大声で泣いた。
誰かも知らない女だったが、誰でも良いから、カナミはこの悲しみを誰かにわかってほしかった。
カナミは、がむしゃらにレンナの胸で泣いた、、。
カナミが泣き終えると、レンナはカナミにACガレージを案内してほしいと告げた。
カナミは、レンナが何をするのかわからなかったが、レンナにガレージを案内する事にした。
ACガレージの通信端末が集まる部屋に来ると、レンナはレイヴンズ・アークのシステムとコンタクトをした。
そこには、レイヴン達のランキングが映し出されていた。
『すごい、、こんなの、見たことない。』
「あなたのお父さんは、たぶん毎日見ていたと思うわよ。
もしも、この中の相手と戦う事になったら、お父さんは死を覚悟しなくちゃいけなかったハズだから。」
ランキング一位のジノーヴィーや、その他上位レイヴンは、アリーナで人気なので有名であり、
TVにもたまに放送されるので、カナミも少しは知っていた。
だがレイヴンのアリーナはランキング上位はともかく、下位層のものはほとんど見たことがなかった。
カナミがレイヴン達の事をまったく知らないのは、
大衆のTVの好況物としては、レイヴン同士の血なまぐさい危険なバトルよりも、
AIAC同士によるフォーミュラフロントリーグのほうが好まれ、よくTVでも放送されていたからというのも大きかった。
「ACタラダムチェインの搭乗レイヴン"シュラスバ"の情報削除。
ACテラワロースの搭乗レイヴン"寺杷"の情報を削除、と、、。」
『まって!!』
レンナが寺杷の情報をランキングから抹消しようとしたその時、カナミが腕にしがみついて彼女を止めた。
「ちょっと、何するの!仕事だから邪魔しないで。」
『テラワロースの搭乗レイヴンは死んでないんだからぁぁぁぁ!』
この娘は何をとち狂った事言っているのかと、レンナは思った。
「でも、AC二機の残骸はアソコにあったわよ?アレはどういう事なの?」
『わ、私がレイヴンなの!寺杷!寺杷カナミなんだから!!』
レンナは、カナミの言っている事を、すぐ嘘だと見抜いた。
「嘘言って、、あなたのような小さい子に、レイヴンが勤まるハズないでしょ?」
『嘘じゃない、、!寺杷は死んでないもの!強いレイヴンは、絶対に死なないんだからぁ!!』
レンナは困り果てた。
レイヴン"寺杷"は、個人情報の詳細な記入がガレージの位置以外まったくされてなく、名前も苗字だけの登録だったので、
カナミが自身をレイヴンだと言い切ってしまえば、レイヴンとして続けていけてしまうからだ。
「しょうがないわね。あなたの言っている事を否定しようとは思わないし、レイヴン"寺杷"の情報は消さないわ。」
カナミはホっとした。
「だけど、あなたがレイヴンである証拠、私に見せてくれる?」
カナミはうろたえた。レイヴンである証拠なんて、何も知らないからだ。
免許証か、それとも証明書か、いろんなものを考えたが、まったく知らない物など即座に出せるわけがない。
『わ、わかった!ちょっと待ってね!!』
カナミはとりあえず逃げたのだった。
「あーら、人をバカにしてくれちゃって、、。ま、いいわ。私は帰ろうっと。
そうだ、これだけは、これからのあの子の過酷な人生を察して、ココに書いておいてあげるかな、、。」
レンナはレイヴンズ・アーク本部に戻り、しばらくしてからカナミがACガレージに戻ると、ある書置きを見つけた。
『レイヴンの証は力、、。おとうさんの仇をとりたくて、あなたがレイヴンとしていつづけたいなら、力を身につけなさい。
レイヴンズ・アークは、いつもレイヴンがトレーニング施設に訪問するのをお待ちしています、、。』
カナミはそれを見て、自分のしようとしている事を何も否定しない、とても厳しくも、優しい言葉だと思った。
カナミはレイヴンズ・アークに向かい、受付にレンナと会えるよう催促した。
「あら、よく来れたわね、オチビちゃん。」
カナミはちょっとムっときたが、とりあえずまず気になる事を聞いた。
『どうして、本当はおとうさんがレイヴンだったって、知ってるんですか?』
「あなたは、本当に鈍いのね~。私は、あなたのお父さんのオペレーターだった人なの。
お父さんは任務を受けなかったから、最初の面会で話しただけだったけど、
男の人がレイヴンだったって事くらいは、知ってるのよ?」
カナミはこの日ほど、自分がうかつだったと思えた日は無かった。これからは気をつけようと思った。
「で、おチビちゃんは何をしに来たのかな?」
『えと、ACを買いに来ました!』
レンナは、何かイジワルを言おうと思ったが、カナミのまっすぐすぎる瞳を見て、何も言えず、ただこう言った。
「あなたのお父さんが乗っていたACは、壊れちゃったしね。お金はどのくらいあるのかな?」
カナミは、一つの通帳をレンナに差し出した。
『(ごめんなさい、おとうさん、、。絶対、稼ぐから、、。どんなことしてでも。)』
通帳を渡した瞬間、レンナはとても困った顔をして、こう言った。
「こんな少ないお金で、ACを買えると思っているの、、?」
家のものも出来る限り売り払って集めてきたお金でも、ダメなんだとカナミは思った。
「あ、、チョット待ってね、、。ギリギリ足りるかも、、。」
「こんなACでどう?」
レンナは、カナミに出来上がるACの予想図を見せた。
レンナがカナミに見せたACは、現代において考えられるACの構成の中で、最も安いものだった。
『と、言われましても、、。わかんない。』
「そうよねぇ、、。このACの最悪さ、あなたには、、。」
レンナがものすごい表情で、その予想図のACを語るものだから、カナミは不安になってきた。
『どう、、最悪なんですか?説明してください。』
「ええとね、新しく登録されたレイヴンに配られる、基本機体っていうのがあるんだけどね。」
『うん。』
「その機体よりもさらに安くて、武装が乏しいの。うん。」
さすがのカナミにも、それが理解できた。
「ま、死ぬね。」
レンナに死の宣告のようなものを告げられたショックで、カナミは気絶していつの間にか医務室にいた。
「ちょっとちょっと!あのくらいで気絶しないでよ!ビックリしたじゃない!!」
『すみません、、。』
カナミの調子が正常であると判断したレンナは、カナミにさらに言おうとしていた事を話しはじめた。
「たしかに最低に近いACだけど、上級レイヴンはね、こんなACでも依頼を遂行できてしまうのよ。」
『そうなんだ、、。でも、私はACに乗ったことすら、、。』
「そうね。レイヴンのアシスタントはオペレーターの仕事だし、出血大サービスで私が乗り方教えてあげるわ。
こう見えても私、元レイヴンなんだから!!」
『ほ、本当!?』
「でもね、一つ条件があるわ。私が認めるまで依頼を受けない事。いいわね。」
カナミは、嬉しさのあまりレンナに飛びついたのだった。
続く
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