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「最終話 レイヴン・ディオストラーダ」(2006/05/28 (日) 10:56:23) の最新版変更点
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「レイヴンは不要、人類には私の管理が必要」
機械音声がゆっくり呟く。何かを確認するように。
「私が、管理する」
一斉に、スタードラゴンが動き出す。
「レイヴンを、排除」
ディオは施設内をウロウロしていた。
迷っているわけではない、実際、目的地は不明である。
(D…D、Eはどこだ)
次々通るゲートには様々な名称が。
彼は今、F-9を目指していた。
何か根拠がある訳ではない、ただ其処へ行かなければ行けない。そんな気がした。
(スタードラゴンが消えて行ったのは…F-8から正面)
その先に、管理者へ通じる何かがあるのではないか。
ディオはそう考え、F-9を目指した。
(此処じゃない、って事も考えられるんだよな)
此処を選んだ理由、それは一人の少女の夢。
今迄見事に的中していた夢の無いようだが、所詮は夢。
(スタードラゴンが沢山。なのにまだそんなのは一つも…)
丁度その時、通信機から叫び声が聞こえて来た。
誰のものかは解らない。彼の知らないレイヴンだろう。
『居たッ!スタードラゴンだ!』
『応援を頼む、C-8だ』
『了解、今から向かいます』
『こちら桃白々3号、スタードラゴンと接触。ルキフェルと交戦』
『3号、場所を教えて!』
『D-1だ』
『2体!分が悪い、助けてくれ!』
『場所を言え、場所を!』
『G-7だ!早くしてくれ!』
『MTまで出て来たぞ、なんだ一体』
次々と通信機から声が聞こえて来る。
(管理者に気づかれたか、いや、もっと早く気づいていたはずだ)
丁度そこへ、ディオに鈴から通信が入る。
「混乱して来たわ、大丈夫?」
「今の所俺の前には何も現れてない、近くに誰も居ないのかな…」
見ると、目の前にF-8の文字。
(近いな、良し)
ゲートをくぐった途端、通信機からノイズが聞こえて来た。
(まずい…アタリって事か)
引き返し、皆に場所を伝えようとするがゲートが動作しない。
「最初っから…1人で来るんじゃなかった」
ぽつりと独り言を呟き、前進する。
(それでも管理者は俺を狙って来るのかな)
過ぎた事を無駄に考える。次いで無意味と解し、苦笑する。
F-9のゲートをくぐる。マグナとスタードラゴンが交戦した場所だ。
「さて…」
ディオの周りはやけに静かだった。皆が交戦する音さえ聞こえない。
(施設の中でも隔離された場所、か…)
以前、スタードラゴンが消えるように通ったゲートをくぐる。
長い、地下への通路。暗く、そして狭い。
「ディオ?ディオ!?」
鈴は困惑した、突然ディオとの通信が途絶えた。
「ああ、もう!なんなのよ!」
思い切り機械を叩くが、手が痛くなっただけで終わる。
周りの臨時オペレーター達が何事かと彼女を見る。
「どう…したんですか?」
一人の女性オペレーターが鈴に声をかける。
「レイヴン一人との通信が途絶えたの」
苛々しつつ答える鈴、なにやら通信機を色々いじくっている。
『おーい、鈴ちゃん。ディオが最後に居たのはどこだ?』
通信機からハンスの声。
「ええと…F-7からF-8までの間で途絶えたわ」
『了解、行って来る』
(F-9が近いな、ディオと会った場所か)
グーと共に、F-9目指し進むハンス。
通信機から何かを叩く音が断続的に響く。グーからの通信。
(ああ…ACの中じゃ聞き取り辛いな。モールスは駄目か…)
「グー、マズイ。ACの中じゃまともに聞こえないみたいだ」
陽気な声で答えるが、内心は焦っている。
一方グーはACの中でガックリ肩を落とした。
(どうしよう…)
『こちら桃白々3号、スタードラゴンを撃破。ルキフェルは思った以上だ…』
『3号、C-8へ来てくれ。また出て来た!』
『スタードラって、うわ!ティラ!?』
『ティラ?居たか、そんな奴?』
『ジャンヌダルク、弾切れ。帰還します』
『了解、離脱して下さい。…気をつけて』
『じょ…冗談じゃ…』
『E-3!誰でも良い、早く援護してくれ!』
『遅かったじゃないか…俺はもう…駄目だ』
『レイヴン!応答して、レイヴン!』
「わーぉ、なんだこりゃ。閉まってるぜ?」
ハンスが通信機に向かって声をかける。
「な…ん…ザザー…く…ガ、ガ…」
「あん?ノイズかかってんのか?まずいんじゃないのか、これは」
ハンスが機体を後退させ、もう一度告げる。
「今度は大丈夫か?ゲートが閉まってひらかねぇ」
「え?ああ、そう…じゃなくて、閉まってる?」
鈴が慌てふためきながら応える。
「ノイズまでかかってるし、閉まってる。こりゃディオは出迎えられたな」
ハンスが力無く応えた。丁度そこでデモリッシュがやって来た。
「う、おお?ティラだっけ、残念だが此処は通れない」
ハンスの問いに、ティラは何も答えない。
「ディオは管理者に招かれちゃったみたいだな、1人で」
それだけ聞くと、デモリッシュは引き返した。
F-7へと通じるゲートを開くデモリッシュ。
向こう側には、スタードラゴンが居た。
「来たか!」
デモリッシュ越しに見えたスタードラゴンに対し、攻撃するハンス。
スタードラゴンはゲート奥へと後退し、デモリッシュが追撃する。
「必要ないとは思うが、行くぞ、グー」
ハンスとグーがそれぞれ追いかける。
『ちょっ…と、多いわよ。これ!』
『ハッハッハ!俺の踏み台になるが良い!スタードラゴン』
『最強のレイヴンの機体も、これだけ多いと無様ね。美しさの欠片も無い…』
『ところでこいつらはなんなんだ?AIなのか?』
『AVEX!遅かったか…』
『妹よ、なんかこれはヤバそうだぞ!』
『解ったから喋ってないでなんとかする!』
『損傷が7割を越えた!帰還する、脱出ルートを教えてくれ』
そんな阿鼻叫喚を知らず、ディオは狭く長い通路を降りて行く。
暫くすすむと、開けた空間へと到達した。
(また真っ白か…)
白く、大きく開けた空間。
スタードラゴンを撃破した時の場所に似ている。
そこには、一機のACのような機械があった。
ACに似ているが、ACではない。
「最後の防衛戦…か?」
「違うよ、レイヴン。これが私の本体だ」
機関音声が告げる。だが、スタードラゴンの時よりずっと人間らしい。
だが、男性のものとも女性のものともつかない微妙な声色だ。
「野ざらしの本体を守らせるより、ずっと効率的だ」
管理者が告げる。
「自分自身を最強の鎧で守るって事か?」
「そういうことになる」
目の前のACのような物体が一歩、前に出る。
「スタードラゴンが今迄倒したレイヴン、その情報を全て統括させた」
管理者の声に、少し歓喜の色が入ってるように感じられた。
「レイヴンを襲わせたのは、そういう目的もあったのか」
「あの機体ではいずれ限界が来る事は予想の範疇だよ、レイヴン」
「その予想以上に、早く俺が邪魔しちゃったわけだな」
「そうだ、レイヴン。だから私は何より早く君を消去したい」
管理者がまた一歩、距離をつめる。だが攻撃する気配はない。
「俺達人類が管理者を必要として無い、ってのは解ってるよな?」
ディオが管理者に確認する。頭上ではレイヴンがまだ戦っている。
「愚かな事にな。だが、レイヴンを排除すれば全てが滞りなく進む」
管理者の声に、今度は怒り垣間見えた。
(疑似人格か…それにしても良く出来てるな)
「現状、君は最強のレイヴンだろう。あのスタードラゴンを下した唯一の存在」
管理者の言葉に、ディオは真面目に考えた。
「まさか、上の連中は皆スタードラゴンにやられてるのか…?」
「安心したまえ、数で不利なのはこちらだ。数が減りつつある」
この言葉を聞いて、ディオは少し安心した。
「君たちが此処をみつけるのは予想外だった」
「だろうな、俺達だって予想外だった」
ディオの言葉に、管理者は暫く沈黙した。
「夢か?」
静かに管理者が問う。
「ああ、夢だ?お前が決して見る事の出来ないものだな」
ディオも静かに答える。
「もう少しで、楽にレイヴンを、人類を支配する為の準備が整った」
口惜しそうに、管理者が発した。
「ギリギリセーフじゃないか」
ディオは少し笑ってさえいた。
(リウェッタは…間接的に世界を救った事になるよなぁ…)
「だが、問題無い。ここで君を消去すれば、事実上私に敵対するものは無くなる」
「どうだろうな、俺は自分が最強のレイヴンだなんて思って無いし」
「スタードラゴンを倒した、その結果が物語っている」
管理者が淡々と答えるが、ディオは苦笑しながら返す。
「ティラってレイヴンが最強だと考えなかったのか?トップランカーだぞ?」
「スタードラゴンの前には力無く崩れたようだが?」
管理者は容赦なくディオに事実を突きつけた。
ディオはティラが襲われていないとばかり考えていた。
ティラが生きている、という事実が彼にそういう考えをさせた。
「だから…俺があんなに有名に…あの傷はそれでか」
「命だけは助かったようだが、愚かにもまた歯向かうとはな」
「さて、レイヴン・ディオ」
ACのような物体、が腕を前にのばした。砲台の用なものが見える。
「そろそろ終わりにしよう」
その言葉を合図に、管理者はディオへ攻撃を開始した。
やたらと大きなレーザーを躱し、ディオが反撃する。
(ACじゃない…から、どうすれば良いんだ…)
目の前の兵器は、もの凄い速度で移動している。
(早いッ!)
突然、後方から衝撃が加わった。
ディオはコクピットの中で悶絶する。
「レイヴンは不要」
管理者が抑揚の無い声で呟いた。
ディオは反撃しつつ、叫んだ。
「管理者も不要だなぁ!」
リニアライフルが直撃したが、目に見えてダメージは無い。
「私が、人類を管理する」
呟き続ける管理者、ディオも叫び返す。
「お前には無理だ。第一、させやしないさ!」
リニアライフルをもう一発放つが、管理者兵器はそれを躱す。
兵器を見失ったディオはすばやく機体を後退させた。
だが、側面からの攻撃で無情にも彼の機体の右腕は吹き飛んだ。
「…くそっ」
距離を取るディオ、管理者も動きを止める。
「終わりだ、レイヴン。君は良く頑張った」
管理者が声をかけるが、ディオは反発する。
「お前に褒められたって嬉しくないって…」
同時に、武装を解除する。左手のブレードだけを残す。
「そうだ、俺が負けても上にはレイヴンが沢山いるんだけどな?」
ディオが言い放つが、管理者は静かに冷たく返した。
「此処に来る前に、私は準備を整え全てを消し去る」
「…なるほどね」
ディオはブーストを吹かす。
「良し、終わりにしようぜ!」
突撃するディオに、レーザーが数発打ち込まれる。
1発、2発と回避し、3発目を右肩に直撃。跡形もなく右肩は消え去る。
兵器は目前。管理者も両手を構えた。
(ブレードか…?)
だがディオは止まらない。
兵器が両手を交差させつつ振り下ろす。
ディオは目一杯機体を左側に旋回させる。
振り下ろされた手で、ディオの機体の右足が吹き飛んだ。
そして、ディオのブレードが管理者を捕らえ、切り裂く。
けたたましい音を立てながら床をころがるディオの機体。
「…ぉうわっ!」
右足を失い、立てないディオ。
少し先に、管理者兵器が佇む。大きく、切り裂かれた状態で。
「何…故だ…レ…イヴン」
管理者の声が聞こえる。途切れ途切れで声も機械らしく無機質だ。
「人類に…は…私…の管理が…」
管理者の途切れる言葉の先を察し、ディオが口を挟む。
「必要ねぇって、何度言わせるんだ」
兵器が、爆散した。
突然、施設地下に熱源反応を察知した鈴。
レーダーに表示されてはいるが、そこは存在しない場所。
それでも、彼女は声を上げる。
「ディオ!ディオ!聞こえる?どうなったの?」
先ほど迄のノイズが嘘のように、ハッキリ彼の声が聞こえた。
「勝った、管理者は…もう居ない」
側に居たオペレーター達が歓喜の声をあげて数人抱き合った。
「なんだ?」
突然動きを停止したスタードラゴンを前に、困惑するハンス。
「終わりか」
デモリッシュから声が聞こえて来た、女性のものだった。
「ディオが、やったのかな」
通信機から次々と声が聞こえて来る。
誰もが確信した、終わったと。誰かがやり遂げたと。
中には不満を漏らすレイヴンも居たようだが、ごく少数だった。
知らぬ間に終えた事に誰もが最初疑問に思ったが、それも短い間だった。
後ろで騒ぐオペレーターを無視し、鈴はディオに声をかける。
通信機からも騒がしい歓喜の声が響くが、それも無視する。
「そこは何処?大丈夫なの?」
暫くの沈黙の後、通信機からディオの声が聞こえて来た。
「あー…それが脚をやられてさ…そして、なんか崩れてるんだよ、ここ」
「えっ?ちょっと…崩れてるって…」
鈴が思わず声を上げる。
「ああ…うん、そんなわけで…俺駄目っぽい」
生気の失せたディオの声が鈴の耳に響く。
鈴が声を張り上げる、後ろのオペレーター達も異常に気づく。
「ちょっと!何言ってるの!?ディオ!ディオ!」
「…」
通信機からは何も聞こえない。
鈴は力無く崩れ、涙を流した。
ディオは結局、帰還しなかった。
彼だけでなく、帰還しなかったレイヴンも居るが。
クーゲルシュライバーを上げて彼らを弔い、墓を建てた。
その時にフォッカーとフェリアルギアスの墓も一緒に作られた。
特に、ディオの墓は記念碑のように大きく立派なものだった。
盛大な歓喜の宴も早々に、世界は元の姿へと戻って行った。
この一連の事件は公に出る事無く、闇の中へと消え去る。
レイヴンの記憶からも消え失せ、クーゲルシュライバーの存在も同じく失せる。
セヴンビークスの皆は、ワイズの協力を元に立派なレイヴンとして活動。
リウェッタもレイヴンを目指し、マリア達から訓練を受けている。
ティラはいつのまにか姿を消し、一時期アリーナを騒がせた。
ワイズと王猫天が結婚したり、Ⅳ号がやっと王虎天と交際しだしたり。
様々な事を世界は受け止め、何事も無かったように回り続ける。
管理者の崩壊から数年、世界はその事実を忘れる。
ディオというレイヴンの存在もまた、人々・レイヴンの記憶から消え失せた。
そんな中、数少ない真相を知る二人が彼の墓を訪れた。
「イマイチ、実感がないんだよな」
ディオの墓の前で、ハンスが呟く。
傍らに立つグーが、花を添える。
「皆から忘れられた英雄、か…」
墓を見つめ、ため息をつくハンス。
その時グーが、何かに気づいた。
ハンスの服、腕の裾部分を引っ張るグー。
「ん?なんだ、グー?」
遠く、足音が聞こえて来る。次いで男の声。
「お?それが俺の墓か?なんだ、デケェなぁ!」
———THE END
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