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「第二話 ~蠢く果て無き欲望~」(2006/05/24 (水) 03:24:50) の最新版変更点
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「……冗談にしては、ちょっとキツ過ぎやしないか?」
放たれるオーラが、まず間違いなくおかしい。
何とも形容しがたいが、それは殺気にも酷似していると思う。
『これは……AC……なの……?』
流石に冷静さを失ったオペレーターのシーラ。そりゃそうだろう、あんなものが目の前にいるのでは。
(あいつは何だ……?化け物か何かか……?)
睨み合い。数秒だけ続く、緊張の世界。
(……やるしかねぇ!!)
避けては通れない道。降りかかる火の粉は払うしかないのだ。
「炉心破壊……?」
それを見ただけで、何とも言えない脱力感が襲う。
場所は都市動力炉キエラ。ここを破壊すれば確かに相手には大ダメージだろう。
無論、それを破壊するのも一筋縄ではいかないのが普通だ。何が起こるかわかったものじゃない。
向こうもレイヴンを出してくる可能性が高いだろう。それが施設の外になるか中になるか、その辺りが問題か。
「……どちらにも対応できるよう組むか?そもそも、狭い施設内を探索する以上、それなりに装備を積んでいかなければならないだろうな」
隣のシミュレーターでACの構築を開始する。高火力重装甲をベースにするのがベストだろうか。
コアには格納機能付きを選ぼう。その方が総火力に信頼が持てる。
広い場所、狭い場所にそれぞれ対応した装備を積み、それだけの装備を積める脚部を選択。
程なくして、一機のACが構築される。我ながら、いい出来だ……などと慢心したりはしない。
「……ま、こんなもんか」
無理ではないだろう、不慮の事態に備えた装備も完璧だ。
どんな不慮にも、備えた。そのつもりだった。
「……やっべ、暗視スコープ搭載するの忘れてた」
動力が落ちれば、明かりがなくなるのは当然のことである。
オペレーターからの呆れを含んだ溜め息と、増援報告を受け取る。
(増援って……暗視スコープなしで戦えってか?)
これは増援が屋外に出現していることを期待しよう。
(最悪だ……)
まさに踏んだり蹴ったりというところか。それでも、死ぬわけにはいかなかった。
頭部にオートマッピングはついてないし、あまつさえレーダーすらついていなかった。
長期戦に耐えうることを考えていたら、頭部の選択を思い切り誤ってしまうなど、考えもしなかった事態だ。
仕方がなしに、ブレードの明かりを利用して道を戻っていく。
なんと情けない……と、今更自分で実感してしまった。
(ともかく……今は目の前の敵をぶっ飛ばすだけだ!!)
一つ、また一つとゲートが開く。慎重に、本当に慎重に進んでいく。
どこで現れるかわからない敵と対峙していると思うと、妙な気分だった。
見えない。本当に、何も。
レーダーは何も映し出さないし、本当に増援が来ているのかと疑いたくなるほどに気配が無い。
ある種の恐怖が浮かぶ。それは、目の前に広がる暗黒のせいでもあった。
鈍い音と共に、またゲートが開く。
「……」
暗黒にも少し慣れ、うっすらと風景が見え始めていた。
少し広くなったフロア。襲撃されるなら、ここか。
(通路を出た瞬間に横から出てくるか?)
右か、左か。それが問題だ。
迷っていても仕方が無い。意を決して、一機のACが飛び出す。
轟く射撃音と、左から閃光。
「ちっ!!」
素早く旋回、と言っても、重装型のACでは流石に旋回速度が遅い。
それでも、ともかく肉眼で捉えることが先決だ。
「お前もレイヴンなら、戦場で死ぬ覚悟はできているな」
そんな質問に一々答えている暇なんぞない。
今は、早急に敵を撃破することのみを考える。
ロックオンだけが頼りだ。そうなれば肩のロケットはもう役に立たないだろう。
素早くロケットとブレードをパージし、格納していたパルスライフルを取り出す。
その間も、じわじわと装甲は削れて行った。
「許せよ……これも任務だ」
(るせぇ……このまま負けるわけがねぇだろ!!)
ブースターの炎、音、ライフルの閃光も判断材料とし、素早く探し当てた。
右腕のバズーカと、左腕のパルスライフルを共に構え、捕捉。
「おらっ!!」
瞬間、一気に弾丸を浴びせる。
一度捉えてしまえばこっちのものだ。狭い室内を活かし、壁際へと寄って後方に逃げ込まれるのを防ぐ。
装甲には自身がある。後は火力でごり押しをするだけだ。
(さっきまでの威勢はどうした……?老兵風情が!!)
あえて口には出さない。それが、彼の戦い方でもあった。
爆散するACを尻目に、彼はその場を後にする。
エドのレポートに載ってたG・ファウストとかいうレイヴンだったか。戦闘中にシーラからそう言われた気がする。
まさか暗闇で戦うことになるとは思わなかったが、流石に古いタイプのパーツで構成されたACではあれが限界なのだろう。
ともあれ、何とか危機は去った。
と思っていたのが、さっきまでの事である。
今に至る。
目の前に佇むのは、一瞬ACと見紛うほど、ACに程近かった。
だが、やはりどこかがおかしい。蒼く輝くボディや武装。とてもACとは思えなかった。
『はじめて見る機体よ……注意して』
わかってる……それぐらいは。
疾走を開始するAC。ここまで来るのにいくつか武装を使ったこともあって、それなりに機動力が上がっていた。
残っているのは、およそ半分ほど弾丸が残っているバズーカ。そしてまだまだ余裕のあるパルスライフル。
そして、外部の防衛が疎かだったためにほとんど使われなかったマイクロミサイルだ。
(タンクタイプ……?ミサイル迎撃装置は付いてるかわからんが……ミサイルが有効だな)
途端に疾空する蒼い閃光。突然のことで、一瞬怯んだが何とか回避に成功する。
(……当たりたくは無いな)
冷や汗を垂らしながら、奥歯を噛み締める。
大きく息を吸い込むと共に、もう一度駆け出した。
段差を利用し、レーザーの被弾を防ぐ。その隙にミサイルをロックし、エクステンションに装着された連動ミサイルと共に空へと羽ばたかせる。
吸い込まれるように、正体不明機へ向けて飛行するミサイル。その間も左のパルスライフルは弾丸を途切れさせない。
ミサイルを放つには少々つらい位置へ来れば、素早くバズーカに切り替えて連射。
「うおっ!!」
また、ギリギリの位置でレーザーを回避。正直このACの機動性では、運が良くなければ回避できない気がする。
反射神経は人並みよりは上だと思うが、強化人間には及ばない。
AC自体の機動性は、まぁ武装が軽くなったとは言ってもほんの少しだけだ。
正直回避するのは辛く、実際に何度か脚部に命中している。
(時間はかけていられないな……)
回避運動をとりつつ、相手を誘導する。パルスライフルによる攻撃も欠かさない。
絶好の位置に来たら、一気にミサイルを放つ。
(通信が無いってことは、無人機か……いや、あれはそもそも機械なのか?)
まぁ全てのレイヴンが戦闘中に挑発的な発言をするとも限らない。
それでも、本当に物言わぬ者は少数だろう。
ふと、こんな危機にそんな事を考えている自分が、少し意外だった。
ミサイルとレーザーが、同時に放たれた。互いが互いを目指し、飛んでいく。
「あぁっ!!」
唸りとも、叫びともつかない謎の声を上げながら、必死に回避行動を取った。
右腕部を掠めるように飛んで行き、黒く染まった空で爆発を起こす。
こちらの攻撃は……当たったようだ。煙を上げて、正体不明機は爆破する。
『終わったようね……無事で何よりだわ』
……終わったのか……。
なんだか、無機質な敵を相手にしていると本当に終わっているという感覚が無い。
……あれは何なんだ?機械か?生物か?
このミッションは確か、アライアンスの依頼だ。
と言うことは、バーテックスが送り込んだ新兵器?
しかしバーテックスがそこまでの技術を持っているとは思えない。
と言うか、そもそもあれを生み出す技術が想像できない。
あの化け物は、なんなんだ……?
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